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5話目 魔の森のざわめき

私たちは道のわきにあるお店や露店をいろいろ見て回りながら、ゆっくりと王城のある丘に近づいて行く。


私はシュウへのお土産、おいしそうな食べ物がないか探しているところ。

マドリン経由で難なくここまで来れるようになったので、今度シュウに買って食べさせてあげるものを探しているの。

美味しと言ってくれたら作り方を覚えようと思う。

その時は材料も買いに来なきゃね。


んっ、作るよりも買った方が早いか。

いやいや、旦那様に作ってあげるのが妻の務めだわ。


ソニアちゃんはお菓子のお店ばかり覗いている。

でもおなかが一杯の様で、覗いてお店を覚えているだけね、きっと。

これは王族の調査の合間に買いに来て、目を付けたお菓子をすべて制覇するつもりだな。


タイさんとアイナさんは、マドリンと同じように、お茶や調味料を物色していた。

タイさんは風魔法が使えないので、アイナさんと一緒に今度買いに来る約束をしていた。

くれぐれも越後屋さんは連れてこないようにお願いします。

買い占めて、人類領でぼったくり商売を始めることが確実なので。


カメさんとカロリーナさんは2人で手をつないで、繋いだのは初めのうちだけだね、その後ずっと腕を組んで密着しているわね。新婚さんだね。

私もシュウと一緒なら・・・・・、それは違うわね、私はシュウを手伝うために別途王都に調査に来たのだ。

まずは、ちゃんと調査を済まさなければね。


そのためには、まずは王族と族長会議にきちんと調査目的を話して、協力を取り付けないとね。

でも、王族と族長会議の人たちってカロリーナさんのような海千山千のえげつない人たちだけよね、きっと。

小娘だと思ってなめられないようにしないと。


「お姉さまに意地悪するような奴らは、私が王城と一緒に地下に沈めて埋めてやるわ。」

「奥様に意地悪するような悪人は監獄空間に送りこんで1日バナナ一本の生活を強いるつもりですわ。」


過激だなぁ、ここは私がしっかりしないと大惨事やら神隠しが起きそう。

しかも、エルフの王族限定で。

調査対象を埋められては、仕事が進まないわよ。


やがて、周囲の商店が途切れ、目の前にはりっばな石造りの建物が見えてきた。

人の流れはさらに王城を目指して道を登って行く者とこの立派な建物のいずれかをめざして、歩いた行く者に分かれていた。


カロリーナさんが振り返る。


「これらの建物にはいろいろな行政組織やギルド、上級学校などが集まっているわ。

道を登って行った先にある王城やその周囲の建物がエルフの国の頭脳だとすれば、これら目の前にある建物は手足になるわね。

具体的な施策を実施する機関や学び研究する機関が集まっているところなの。

上に登って行く人たちよりもこの周囲の建物に入っていく人の方が多いでしょ。」


「確かに王城の方へ登っていく人の数は少ないですね。」


「さぁ、ここからは丘を登ることになるけど、さっき、食事をしたので大丈夫よね。

特にソニアちゃんは高カロリーなお菓子を爆食いしていたので、元気が余っているんじゃない。」

「カロリーナちゃん、なんと失礼な、爆食いなんてしていません。」


「「「「・・・・・・まだ入ると言うのか・・・・・」」」」


ソニアちゃんのお腹の容量はどのくらいなのと考えていると、行政機関が集まっている建物群を抜けた。


「ここから魔の森の地帯に入るけど、道から外れないでね。

魔の森に迷い込んだら・・・・・」


「「「「入んだら? 」」」」」


「助け出せないかもね。」


ひょえぇぇぇ、魔の森、怖すぎ。

迷い込んだら屍一直線、確定と言うことね。


「ソニアちゃん、手を繋ごうか。」

「お姉ちゃん、タイさんとも繋いでいい。」

「じゃ私はアイナさんとも繋ぐわ。」


4人が数珠繋ぎとなりました。


そんな、魔の森を切り裂く道をしばらく登って行くと漸く森が開けて、下の行政機関の建物群よりも荘厳で高い建物が目の前に飛び込んできた。

その圧倒的な存在感は人類で言えば教会本山の礼拝堂に相当するように思えた。


そう言えば風の大精霊シルフ様は例の似非礼拝堂を一日で作ったと言っていたわね。

恐るべし大精霊。


"えっへん。"


"作ったのはシルフィード様ではなくて、シルフ様ですよね。"

"兄の功績は妹の功績。"

"お兄ちゃんが腹ペコは妹も腹ペコ"


どこかずれてしまったような気がするんだけど。


"んっ、魔の森がざわついているわね。迷子でも出たのかしら。"

"あっ、確かに、何か悲しそうな、心配しているような感じがしますね。

シルフィード様は魔の森を事由に出入りできますか。"

"できなくはないけどしたくないわね。かの者たちの静寂を奪いたくないの。"


"シルフィードちゃんが静寂を破る。

修羅場でも発見したの?

ちなみに私は魔の森からのざわめきは感じられないけど。"


"修羅場は無理ね。旦那と愛人がこの魔の森に逃げ込んだら、どんなに強い旦那センサーを持っている奥さんでも発見はむりだと思うの。だから、修羅場はなし。"


「シルフィード様、旦那と愛人がわかれ話をするために魔の森に入ったという設定の場合はいかかですか。」


"むむむっ、その場合はこじれればあり得るわね。

盲点だったわ。


ちょっと言って確認してくるわね。

きっとわかれ話がこじれて刃傷沙汰になったので森がざわついているに違いないわ。

これは由々しき事態よ。

切りつけられてケガをして動けなくなるかもしれないもの。


どっちがって。


当然旦那の方ね。こんな魔の森に来ないと別れ話もできないような甲斐性なしだもの。


かの者たちの静寂を破るおばかカップルめぇぇぇ、このシルフィード様が一部始終を観察して、見事に裁いてくれようぞ。

では参る。"


見えないけどシルフィード様が行ってしまったわね。

おかんだから、子供じゃないから心配ないか。

一応、風の大精霊様だし。

見かけはあれだけど。


「エリナさん、ソニアちゃんどうしたの、王城を見上げて黙っちゃって。

王城の壮大さに圧倒されたのかしら。

人類領にもこのぐらいの建物はあるんじゃない。」


「カロリーナさんすみません、立ち止まったりして。

突然目の前に大きな建物がどっんと現れた感覚に襲われたみたいです。

森を抜けて、ドカンと現れてみたいに感じてびっくりしたというか、なんというか。」


「エリナさん、急にどうしたのですか。具合でも悪いんじゃないですか。」ボソ

「タイさん、実はシルフィード様が魔の森がざわついているというの。

何か男女の痴話げんかで刃傷沙汰になっているのいないので、兎に角様子を見行くとか行かないとかで一人で騒いでいたのよ。

それを呆れて聞いていたというのが本当のところなの。」ボソ


「具合が悪くないのなら安心したわ。」

「ありがとう、タイさん。」


「エリナさん、具合が悪かったのかい。」

「うんん、もう平気よ。

壮大な王城を見上げていたらちょっと貧血気味になったのかもね。

ともかく今は普通だから。」


「大丈夫のなら先に進みましょか。

もうすぐ、王族と族長会議の建物に着くから、また具合が悪くなったらそこで一休みしましょうか。

何か疲れが取れそうな飲み物でもいただいて。」


「お菓子は?」

「ソニアちゃん、ちゃんとお菓子も用意するように言うわ。

でもさっき食べたばっかりでお腹に入るの。」

「もう、一時間以上も前だよ。魔の森の入り口で最後のクッキーを食べたのは。」

「ソニアちゃんいつの間に。屋台でのどら焼きが最後じゃなかったの。」

「えへっ、隠していたの。」


また、お菓子談議に戻りつつ、私たちは王城を回り込むように伸びている道を進んで行った。


一方では、相変わらず魔の森からざわめきが聞こえてくる。

今度はなだめるような、心配するような感覚。

何が起こっているの、シルフィード様の言うかの者とは誰だろう。


私はソニアちゃんがどれだけお菓子を愛しているかを聞かされながら、心の片隅では魔の森のざわめきが気になって仕方がなかった。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願いします。

もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。


第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。


「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」

の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。

「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。

もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。


この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。

また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。


10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。

この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。


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