35話目 陽だまりからの追伸
これで「優しさの陽だまり」は終了となります。
お付き合いいただきありがとうございます。
「陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから」にトレントさん視点からの事情が語られています。
是非、お楽しみください。
3/5より新しい物語「炎の誓い 聖戦士のため息 別伝」を公開いたします。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の新しい別伝になります。
さぁ、これからが仕事の本番だわ。
私たちはエルフ王族の寿命について調査しに来たはずよ。
シュウ以上の甲斐性なしの再出発やトレントさんの増殖、ソニアちゃんの正座説教をしに来たわけじゃないの。
皆、ここに来た目的を忘れているんじゃないの。
私たちは王族と族長会議の調査結果が出るまで交流会にうつつを抜かしていただけじゃなく、トレントさんが生まれた日の午後からはちゃんとリリアナさんの伝手を頼って、人類領に移住したことのある王族やその子供であるハーフの皆さんと話し合いを重ねた。
話題が王都と教会本山の門前町のお菓子屋さんに終始してしまったのは私のせいじゃないわよ。
そう、世間が悪いのよ。
お菓子の情報交換だけは異様に進んだのを疑問に思いつつ、漸く、事務局長からエルフ側の調査結果の説明がございました。
それによると、人類領に移住していた王族と王都にずっといた王族では寿命が変わらないというか、行っても行かなくても寿命の低下は見られないということが分かった。
なんだつまらない。
エルフ王族を人類領に派遣していたことは全くの無駄だったのかと、事務局長が絶句していた。
あんたら、何か試みたらちゃんと結果を検証しないとダメでしょと、100回は言いたかったが、これがエルフ族よねぇというカロリーナさんのつぶやきで、振り上げたこぶしを渋々下げたような気分を味わってしまった。
人類とエルフ族の間に生まれたハーフについては面白い結果が得られた。
生まれたハーフが風か炎の属性を持ち、且つ、王城に住んでいなかった場合には、その子の寿命は人間とエルフの半分、つまり70+300の半分の約200歳前後になるとのことだ。
ハーフの子が水属性で、王都に住んでいない場合にはエルフ族の300歳となり、王都つまり王族の住まいである王城に住んでいた場合には魔法属性に関わらずエルフの元々の寿命の400歳になるとのことだった。
ソニアちゃんはそうすると王城には住んでいないので、これから300年は生きるということか。チンチクリンズの呪縛で7~8歳で成長が止まっていたので、だいたい500年は生きるということね。
ソニアちゃんにそのことを聞いたら、特に思うことはないらしい。
自分の寿命よりも、親しい人が次々と亡くなっていくことが哀しいと言っていた。
私とシュウを見送ることが理であり、避けることができないのが今は一番つらいと言っていた。
調査を進めていくと、どうも王都に住んでいるということが寿命に大きく関係するのではないかということになり、王城に勤めていた方の寿命についても調査を行ってみた。
エルフ族は調査は早いんだけど、結果を検証するのがちょっと苦手らしい、
そして、その調査結果が驚愕に値するものだった。
王城に長く勤務するほど寿命が長いという結果となって出てきた。
これは王城に勤務することがいいのか王都に居ればいいのかという議論に発展し、今度は王都住民の寿命調査という、大掛かりなものになってしまった。
その結果がまた驚くべきもので、王都がいかに大きいかということをまずは認識させられることなった。
その結果とは、暮らしている場所や勤務先が王城に近いほど寿命が長くなる傾向にあることがわかってきた。
このようなことが分かったのは王城に近いほど公的機関が密集しており、故人の公務員としての勤務記録が把握しやすいことが上げられた。
また、王城から近い地区になるほど代々一族が王都に暮している者、遠くの地区になるほど最近王都にやって来た者とという傾向があるので、このような調査が可能になったと事務局長は言っていた。
ただし、これを公表すると王城の周辺に全エルフ族が押しかけてくると思われ、それをきっかけに、王族と族長会議への不満、つまり、エルフ族の現秩序体制が崩壊し、結局のところ種族の衰退を加速させてしまうことが懸念されるとのことだった。
エルフ族の情報の伝わりが異常に早いことが裏目に出る格好だ。
ということで、王族と族長会議のトップ層の会合で、この事実は秘匿し、王城に居るとなぜ寿命が長くなるのかを極秘に、且つ、緊急に調査を開始するとのことだった。
その秘密がわかれば、私たちの志である全種族の救済が大いに前進する可能性があるので、何かわかったら連絡をくれるとのことだった。
また、機会があれば是非王城周辺を旅団側でも調査してほしいと懇願された。
エルフ族はここの王都に千数百年以上も暮していながら、そのような事実に全く気が付かなかったので、エルフ族だけの調査では心もとないとのこと。
今回のように是非、人類の視点で調査してほしいと国王、王妃、王太子をはじめとした王族、そして、王族と族長会議の主要メンバーにこぞって頭を下げられてしまった。
私たちとしても、是非、その王城の謎を知りたいので、いったん帰って、旅団のメンバーと相談してから、再度調査隊を派遣することを固く約束した。
大丈夫よねきっと。人手が割けなかったら、カメさん夫妻だけでも旅団調査隊としてねじ込めばいいわね。
これで一安心しだわ。
国家秘密の共同調査が始まることになり、一気に人類とエルフ族の友好関係が進んだと旅団の外交部であるカメさん夫妻はそっちの面でも大変喜んでいた。
という様に、私たちの旅団の調査は新たな大きなぞを生む結果となった。
しかし、アマデオさんのことを初めとして、今回の王都での旅団の調査は実りの多いものとなった。
調査と空いた時間でのエルフ族との交流、そして王都の散策であっという間に1週間が過ぎた。
その朝も一週間前と同じ、良く晴れた朝だった。
窓から入る朝日が眩しくて、目が覚めた。
そして、窓の外から若々しい希望に溢れた魔力を感じた。
"おはよう。エリナさん、カタリナです。修行が終わりました。"
念話が使えるのね。
"はい、これは妖精魔法ですので、妖精と風の大精霊様以外に聞かれる心配はありません。"
出発する準備が整ったの。
"はい、ブリアンダちゃん、セルシオ君も一緒です。
魔の森とこのゲストハウスの境目に取りあえず根を下ろして居ます。
いつでも出かけられます。"
トレントさん仲間にはサヨナラを言ったの。もう戻れないかもしれないのよ。
"はい、済ませてきました。
戻れないと言っても、デルフィナちゃん、クルロ君が魔の森に残るので、トレント族とはいつでも意識を共有できるんです。
姿は見えないけど、寂しいということはありません。
皆、頑張って来いと言っていますし。"
わかったわ、じゃぁ、一度旅団の基地に行きましょうか。
でもどうやって移動するのがいいかな。
"擬態の魔法でエルフ族の形をすることができます。それで移動して、ブリアンダちゃん、セルシオ君は旅団基地に近接した木、眷属が一杯生えているところに根を下ろします。
そして、旅団基地の様子をまずは知りたいと言っていました。
私は擬態したままエリナさんに付き添います。"
わかりました。
じゃぁ、皆が起きてくる前に出発しましょう。
人類の地へ、トレント族が新たに根を下ろす場所へ。
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この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」
の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。
「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。
もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。
この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。
また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。
10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。




