33話目 父の思い 後編
「それでホスト役に入れるが何もするなと言ったんですね、
人類式の教育を受けて、志があるものならば、その言葉に反発して自ら未来を切り開くだろうと。」カメさん
「その通りです。そのようになってほしいと思いました。
ファンニが生きていればはっきりと言ったと思います。
自分の未来は自分で切り開くものだと。
私はエルフ族ですから、自分の未来についてそのようにリスクのある賭けには出ることはできません。
でも、息子の人類としての気質に、ファンニの人類式の教育に賭けました。
どうしようもないところまで追い詰められれば、自ら動くだろうと。
しかし、この部分について私は賭けに負けたようです。自分の息子を賭けるという暴挙に出たにもかかわらず、負けてしまいました。
アマデオは自らの未来を切り裂くのではなく、何と始めてエルフ族らしく行動し、目の前の困難から逃げ出してしまったのです。
その姿を見たのがエリナさんですね。
そして、アマデオを人類として生きて行けるように導いていただいたようです。
エリナさんありがとうございます。
お礼の言いようがありません。
私のすべてを差し出しても足りないぐらいです。
賭けに負けた八方塞がりのどうしようもないエルフの親子を、人類の行動力を持って、救ってくれたのですから。
あなたがいなければ息子はそのまま魔の森の屍の一つとなっていたでしょう。
私は息子の屍を探し続けて、同じように屍を晒していたでしょう。
あなたが、あなた方旅団の皆さんが、アマデオを救って、そして、希望のある未来へと誘ってくれました。本当にありがとう。」
「私からもお礼を申し上げます。
アマデオさんがエルフ族としての生き方ができないこと、ファンニさんの遺言のエルフ族として生きることの狭間で苦しんでいたのを間近で見てきました。
私は夫にアマデオさんの希望をかなえてほしいとしか言えませんでした。
いずれにせよ、このままでは彼は遅かれ早かれ八方塞がりの現実に押しつぶされるかもしれないという予感はありました。
しかし、人類として生きることを学んだアマデオさんにエルフ族としての生き方しか示すことのできない私は全くの無力でした。
本当にただただ見守ることしかできない自分を歯がゆく感じました。
見守ることしかできない自分に対してエリナさんは躊躇うことすらなく自分の持っている力を、持っている繋がりを利用して、アマデオさんを救ってくれました。
救っていただくだでなく、居場所と仕事、生きるすべと生きる意味をお与えくださいました。
私と夫がどうあがいても与えることができなかった生きる希望という宝物を。
本当にありがとうございます。」
「そんな私は、良く事情も吟味せず、ただ感情に任せて突っ走っただけです。
反省しています。
お二人のアマデオさんの自主性に期待するということを踏みにじってしまいました。
もしかしたら、もっと別の可能性があったのかもしれません。
私の早とちりでアマデオさんのいくつかの可能性を潰してしまったのかもしれません。
ごめんなさい。」
「もしかするとそう言うことかも無きにしも非ずかもしれませんが、アマデオは今希望に満ちて、前に進もうとしているんでしょ。」
「はい、それは間違いありません。
これからは充実した人生を歩んでくれるものと思います。」
「だったらそれが最良じゃないですか。
それをもたらしたエリナさんが、何もできなかった私に謝る必要などありません。
それに結果が良ければいいじゃないですか、エルフ族的にはそれが最も重視されるべきものですよ。」
「そう言っていただくとなんかちょっとは役に立ったかなぁと思います。」
「エリナちゃん。今回はこれで良かったのよ。どこにも問題はないわ。
アマデオ様は自分の将来に希望が持てたし、そうなってほしいという事務局長とリリアナ様の願いもかなったし、第1081基地は早速その機能を果たし始めたし。
良かったのよ。
次回からは少し慎重になったらそれでいいのよ。
てっ、なんでソニア様は正座しているのかなぁ。」カロリーナさん
「いまさらそれ言うの。途中からずっとこのおかんメイドにさせられているんだけど。」
「変な言葉使いが出かかったとき足がしびれて警告を発するように、体に学習させているところです。気らしないでください、皆様方。」
「みんなぁぁ、気にしてくれぇぇぇ。」
「まだ、自覚がないようですね。石でも抱きますか。」
「ひょぇぇぇぇ、拷問反対。」
なんとなくまた一つ、エルフ族と距離が縮まったような気がする。
でも今回のことはラッキーなことが重なっただけで、私としては大いに反省すべき点があった。
人ひとりを救うことがこんなにも大変だなんて。
死神さんは幾人もの不幸な人や世間に見捨てられた人を救うつもりだとその方法と場を作ってきている。
すごいことだ。
今回は私もそれに乗っけてもらったのだ。
アマデオさんを救ったのは死神さんとじいさん、バートリの派遣職員の皆さんなのだ。
私は無力だった。
"それは違うと思いますわ。一番大事なことをやり遂げたのはエリナちゃんです。えらいです。"
一番大事な事?
"そうです。アマデオさんの過去を、澱んだ過去との繋がりを断ち切り、新たに旅団の基地に居る人類の方と繋いでくれました。
その繋がりで希望に満ちた未来が見えて来たのではないでしょうか。"
本当にそうだったらうれしいのですけど。
"光の公女として、自分の力を過信するのはいけませんが、あまりに過小評価するのは、これからあなたについて行こうとする者を不安にします。
今回のことでまずかった点は反省し、うまく言った点は自分に力が付いたのだと信じてほしいと思のいますわ。"
まずかった点とうまく言った点かぁ。よく考えてみるわ。
"そうしてくださいな。
・・・・んっ、トレントさんが呼んでいるわ。
エリナちゃんにすぐ来てほしいみたい。"
シルフィード様の言葉を聞いた直後に、私は魔の森の方から衝撃と驚き、そして、歓喜の心が載った魔力が風に乗ってやってきたことを感じ取った。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
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この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」
の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。
「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。
もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。
この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。
また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。
10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。




