28話目 繋がり
「これで、ここでの私の役目も終わりね。」
「ありがとうございます、エリナさん。
ここまで面倒を見てもらってしまって。
漸く自分の足で立って歩き始めることが出来るような気がしてきました。」
「これからよ、これから。すべてはこれからだと思うの。」
「そうですね、今から始まるんですよね。
だから、もうこそこそ隠れる必要はないんです。
これは返します、妖精の首輪を。
姿を隠している必要はありませんから。
それと、今回の件で、エリナさんにお礼を言わせてください。」
「お礼なんていいのよ、私は話を聞いて、そしてここに連れてきただけ。
私がしたのはそれだけ。
癒しの居場所、再出発のための仕事、このすべてを用意したのは死神さんとその旦那のじいさん、秘書官とサッちゃん、そしてバートリから派遣されてきた職員さんたちなのよ。
お礼を言うなら、そっちにして。」
「エリナちゃん、遠慮しないで感謝を受けておきなさいよ。
私はたちは幽霊さんのこれからを支えて行く者たちで、私たちこそまだ何にもしていないわ。
あなたは彼に希望を与えた。
彼の今の感謝は希望を持てたこと、前を向いてしっかり歩いて行ける道筋が見えたことに対するものだわ。
それを今回、幽霊さんにもたらしたのはあなた。」サッちゃん
「でも、私は本当に彼の話を聞いて、連れてきただけなのよ。」
「それだけで君は幽霊君に生きる希望を与えたんだよ。
面白いよね。人と人との繋がりって。
君と幽霊君の繋がりが、俺たちと幽霊君を繋いでくれて、そして、彼の生きる希望を持つきっかけとなったんだよ。」じいさん
「人と人との繋がりか。
いろんな人に繋がることによって、いろいろな可能性が出来てくるということね。
その繋がりを作るにはどうすればいいのかしら。」
「それは相手を色眼鏡で見ないで、真っ直ぐに見つめること。
そして、相手を理解しようとすることから始まるんじゃないかしら。
相手の体がでかくて強面だからと言って、怖がったり、躊躇することなく。
相手がひ弱そうだからと言って、バカにしたり、蔑んだりしないで、しっかりと向き合うことから始まると思うわ。
そうしないと、特に不幸な人には寄り添えないと思うな。
寄り添えないと、ここの施設の設立の目的である、不幸な人々の救済、癒し、再出発はできないと思うんだよね。」ほとぼりが冷めるのを旅団の宿舎の裏庭でじっと待っていた秘書官
「先入観を捨てて、真っ直ぐ、きちんと向き合うかぁ、難しいなぁ。」
「君とシュウ君の志を果たすにはこれから多くのものと繋がる必要があると思うよ。
いつもうまくいくとは限らないけど、かと言って繋がりを作ることを躊躇することは志を捨てることだと思う。
だから、勇気を持って一歩進んで行く必要があるだと思うよ。」じいさん
「そうねぇ、そうよねぇ、わかったわ。
私も幽霊さんと同じように前に進むわ。
まずは、幽霊さんのお父様、エルフ族の王族と族長会議の事務局長に幽霊さんのことについて聞いてみるわ。
父親としての本当の思いを。」
「父さんの僕に対する思いを聞くの? 」
「そう、私はあなたの話から事務局長をどうしようもない父親だと決め付けて、今回脱出を急いだの。
たまたま、幽霊さんにとってはいい結果となったけど。
私が色眼鏡で見た事務局長とは実は違っていたら、今回のことの顛末をきちんと話さないといけないわ。
事務総長があなたのために思い描いていた未来を変えてしまったんだもの。
自分の思い、なぜそうしたかをちゃんと伝えることが繋がりを持つということだと思うの。」
「そうかぁ、そうだね。
話してみた結果、やっぱりどうしようもないと感じてしまうかもしれないけれど、話してみてほしいな。
父の姿がエリナさんの真っ直ぐな目にどのように映るのか。」
「大精霊様方も常々おっしゃっていますね。
大事なことは情報を鵜呑みにしないで、自分の足で、自分の目と耳で確認しなさいと。
これもそのことですね、お姉さま。」
ゴセンちゃん、その通りよ。
私、やっぱり、事務局長に会って話をしなければならないわ。
「じゃ、早速、戻りましょうよ、ゲストハウスに。」
わかったわ。そうしましょうね。
「私はこれから、直ぐに、エルフ領の王都に戻ります。
私の仕事はエルフ王族の調査。
まだ、始まったばかりで何の成果もあげていません。
私は私の仕事をしなきゃ。
その合間に、今回の顛末をリリアナさんと事務局長に話します。
どういう返事をもらえるかわかりませんが、話してみないと始まらないもんね。」
「がんばってな。」
「父さんとリリアナさんにはよろしく伝えてください。」
「がんばってよ、私も秘書官の仕事・・・・は中断中で、ここの施設の運営を手伝います。」
「ちょっとみんな待ってよ。
お腹が空いていては、いい仕事ができませんよ。
雌鶏が今朝生んだ卵で朝食を用意しますから、皆で食べてから、それぞれの仕事に取り掛かりませんか。」
「「「「賛成。」」」」
私は雌鶏さんが必死に産んだ卵で作ったハムエッグをメインにした朝食を、幽霊さん、じいさん、秘書官、サッちゃん、そして、バートリから派遣されてきたその他の職員と共に、楽しくいただいた。
この癒しと再生の施設も順調に運営がスタートできたようで安心した。
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帰りは妖精の首飾りをバッグにしまって堂々と風見鶏を転移して行った。
さすがに、城壁都市と王城のゲストハウスを繋ぐ風見鶏は使わなかったけどね。
途中、朝からお玉を振り回して世間話に夢中の村長の奥さんの隣を通った時には声を掛けられた。
「あら、エリナちゃん。人類領に言っていたの。
村に来たなら一声かけてよ。水臭い。
人類領のお土産に得意の肉まんを山ほど持たせてあげるんだから。」
「ありがとう、ちょっと急いでいたんで。ごめんなさいね。
今度からは必ず声を掛けさせてもらうわ。」
「そうしておくれよ。必ずだよ。
でっ、所でこれからどこ行くの。」
「王都に戻ります。ちょっと、人類領に報告に行っていただけですから。」
「王族のところへ戻るんかい。
じゃっ、肉まんを持たせるわけにはいかないわねぇ。
こんな庶民の料理よりもおいしいものを食べているんでしょ。」
「うううっ、私は食べてないの。
でも、きっと、おばちゃんの肉まんの方がおいしいと思うの。
私を思って作ってくれているんでしょ。」
「うれしいことをいってくれるねぇ、エリナちゃんは。
あんまん持ってく? 」
「いいわねぇ。ほしいわ。おばちゃんのあんまんも絶品だから。」
「ほんと、エリナちゃんはかわいいこと言うわねぇ。いっぱい持ってく。」
「そんなには。でも、あげたい人がいるので、いっぱいください。」
「あげたい人がいるんだ。シュウ君、ソニアちゃんやタイさん、アイナちゃん、カメちゃん夫妻。それとあとどのくらいいるの、上げたい人は。」
ええと、ゲストハウスの私担当のメイドさんと、おかんメイドさんと、リリアンナさん、そして、事務局長にも。
他に4人いるわ。」
「昨日一日で、4人もあげたい人ができたんだ。
もうそんなにもいろいろな人と繋がったんだね。
その繋がった人を大事にしなくちゃいけないよ。
その人たちを介して、もっともっと多くの繋がりができて、気が付かないうちに、エルフ族と人類の友好が深まっていくんだから。」
「うん、わかったわ。繋がりを大事にするね。」
「はいよ、あんまんが入った手提げバッグだよ。あっちで蒸してもらって食べな。」
「ありがとう。また来るね。」
「いつでも、毎日でも来ておくれよ。
私の可愛い娘だと思っているんだからさぁ。」
私はおばちゃんとの太い、もうぜっていに切れそうにない繋がりに心が温かくなった。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」
の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。
「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。
もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。
この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。
また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。
10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。




