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18話目 迷い人 その3

「確かに君は王城の外部の者で、王城に勤める者とは繋がりがなく、外の世界、人類領に繋がりがある人だね。」

「でしょ、王城がいやだったら、エルフ領に居るのがいやだったら、私のつながりを利用して外に出ることができるわよ。」


「王族、王城とは関係のない世界か。

ここの魔の森よりももっと王城から離れられる世界か・・・・・・。」

「まぁ、私もここを離れろと言っているわけでわいけどね。

それが可能だということを、私と繋がりができるというのはそういうことも意味するとを知っておいて損はないと思うの。

あなたがそうしたければね。」


「僕がそうしたければが。

じゃあ、まずはさっきの話の続き、僕の思いを聞いてもらってもいいかな。」

「もちろんよ。あなたがそうしたければそうすればいいの。

ここにいるのは、あなたと私と、魔の森の木々と草花、そして暖かい風を運んできた風の精霊だけよ。

あなたの気にする王族、王城に勤める者、エルフ族は誰もいないわ。

話したいことを話せばいいわ。」


「うん、そうするよ。僕がしたいから話すんだからね。


僕の母さんは65年前に亡くなったんだ。

僕が40歳の幼児扱いから少年へ変わったころだよ。」


「人類で言えば幼稚園から小学校に上がったころかしら。」


「その通りだね、エルフ族もそんな学校制度だよ。

エルフ族は非常に寿命が長いので、体の特徴と成長の速さは人類とあまり変わらないけど、心は時間を掛けて、100年ぐらいだね、ゆっくりと成長させていくんだ。親や親族、周りの大人手助けを受けて。

特に幼児期は親が、特に母親があれこれ手を掛けてなんでもやってくれたりするのが一般的なんだ。


でも僕の母さんは人類。

人類領で暮らしていた父さんと一緒になり、僕を生んだのが母さんが25歳の時なんだ。そして僕が40歳の幼児期を終わったころに亡くなった。


エルフ族は少年期になってもまだまだ、親や周りの大人があれこれ手を掛けて成長させてくれる。」


「ということは、少年期に入るころあなたの母親は亡くなったということね。」

「そうなんだ、でもそれは仕方ないよね。

人類とエルフ族の寿命という理の違いなんだから。


僕の母さんはそれが当然わかっていた。

父さんと結婚したとき、僕を生んだ時、種族の理を一番理解していたのは母さんなんだ。


少年期に母親として必要な手を掛けることができない、息子の成長を手助けできないと思い悩んでいたようだよ。


そして、母さんは1つの決断をしたんだ。」


「一つの決断、何なのかしら。」


「僕を人類の子供と同じように育て、教育する道を選んだんだ。

自分が世話をできる内に大人として独立して生きて行けるようにね。」


「あなたを人類領に連れて行って、教育したということなの。」

「違うよ、逆だよ。

僕が5歳の頃、丁度100年前だね、父さんが130歳、母さんが30歳の頃にエルフ領に戻って来たんだ。母さんのたっての希望で。」


「じゃぁ、ファンニさんはエルフ領でだった一人で、あなたに人類式の教育を施したというの。」

「だった一人でではないかな。

当時はまだ人類領との行き来はできていたから、当然母さんの人類領での繋がりを利用して、助言をもらっていたと思うよ。

特に母さんの母さんや姉妹からは。

だって、母さんだって初めての子育ったんだから。」


私はファンニさんの凛とした決意に痛いほど心を打たれた。


「母さんの献身的な教育のおかげで体が出来上がる35歳頃には、大人になるために必要な躾と教養はすべて身に着けていた。


ただ、その教育方針がエルフ領では余りに性急で特異なために、エルフ領では受け入れられず、僕と母さんは王城のコミュニティでは孤立状態だったんだ。

僕たちに理解のあるエルフの王族と結婚をした人類の方もいたにはいたんだけど、人類の理には逆らえず、やがて他界されてしまったことも僕たち母子が孤立していく一因になったんだ。


当然、父さんもそんな母さんの僕への教育に関してはあまり口を出さずに一歩引いたところから見守っているような状態だった。

王族と族長会議の仕事も忙しかったし。


僕の教育が終わったその後の母さんの亡くなるまで5年間は、今度は僕が年老いて弱っていく母さんの面倒を見ていたために、僕の王族コミュニティからの孤立状態はそのままだった。

だから、王族の間では父さんは良く知られていても、僕と母さはいないものとされていたことも不思議な事じゃなかったんだ。

実際父さんのところにはお見合いの話もまれに来ていたらしいし。

父さんは苦笑い、母さんは僕が手を離れたんで、自分が死んだ後の父さんのことを心配して、今の内から後妻候補として唾つけときなさいと進める始末で。」


「エルフ族と人類の婚姻って、ソシオさんが言うほど何とかなると言う、サバサバしたものでもないのね。

せっかく一緒になっても、寿命の理の違いという壁はそうそう乗り切れるものではないのね。」


「やがて、僕が40歳の時に母さんは他界したんだ。

なくなる寸前に僕の手を握りしめて、死にゆく人の力とは思えないほど力強く、そして、僕に言ったんだ。


"私たちの元に生まれて来てくれてありがとう。私は理にしたがって、土に還ります。

これからはお前の時代です。

大人になるために必要なことは身に着けているはずです。

これからは父さんを手伝って、父さんを助けてエルフ族として生きるのですよ。

それが私の最後のあなたに対するお願いです。"


そう言って、僕の手を離したと思ったら、目を閉じで、そのまま亡くなったんだ。

もうそのころは人類領に行く道が閉ざされていたので、母さんの人類側の親族に亡くなったことを報告できないのが、心残りだったよ。


母さんは、人生の後半をすべて僕にささげた生き方だったような気がする。

僕は感謝しているんだ。

生きるすべを教えてくれたことを。


そうして、僕は母さんが亡くなってから一月後、漸く落ち着いたころに父さんに言ったんだ。


母さんに遺言にしたがってと言う訳じゃないけど、母さんが授けてくれた生きるすべを生かすために、父さんの仕事を手伝わしてほしいと。」


「それを聞いたあなたの父さん、事務局長は何と言ったの。」


「父さんはこういったんだ。


"まだお前は幼児期から漸く少年期に入ろうとしているんだろ。

子供はまずは勉学に励め、体を鍛えろと。

母さんがお前にどのような教育を施したかは良くは知らん。

しかし、それは人類の教育だ。

人類領でこれから生きていくつもりならまだしも、人類領に行くすべが閉ざされた今、お前はエルフ領で生きていくすべを学んで行かなければならない。

エルフ族として生きてくすべをな。


まずは学校に行かねばな。

王族の初等学校はいつでも入学が可能だ。

母さんが亡くなって、1ヶ月。

そろそろ落ち着いただろう。


母さんの死にいつまでもこだわっていてはいかんな。

お前を生んで育ててくれた母さんのために少しづつ前に進まないとな。

学校に行ってみたくなったら言ってくれ。

入学の手続きを取るよ"


でも僕はすでにエルフ族の学校で学ぶべきものはすべて納めていた。

研究のような高度な学問はまだだけど、エルフの王族が学ぶべき高等教育はすべて学んでいたんだ。

母さんとその依頼に応えてくれたた家庭教師によって。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願いします。

もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。


第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。


「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」

の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。

「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。

もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。


この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。

また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。


10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。

この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。


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