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12話目 帰らない者

「わかったわ。今のは聞かなかったことにするわ。」

「ありがとうございます。」


「でもね、そのことだけじゃなく、本当に困ったら、言ってほしいの。

エルフ族では解決できないけど、人類だったらできることがあると思うの。

もちろん逆もあると思うわ。

お互いを助け合うことで外交の先にある友好が生まれると思うの。」


「わかりました。相談させていただけることを心に留めておきますね。」


「ところで、このゲストハウスの周りの木々って、魔の森と繋がっているの。」


「はい、その通りです。

魔の森の木々が少しづつ王城の敷地に入り込んできています。


できるだけ残そうとはしているのですが、石造りの建物の下に入り込まれますと建物が壊れてしまいますので、最低限の伐採はしております。

もちろん伐採した木はこのゲストハウスの修理に使ったり、薪にしたりとただ切って捨ておくことがないようにしています。」


「じゃぁ、バルコニーの先にある木々は魔の森の一部と言うことね。」


「はい、魔の森がどうかされましたか。」

「私は何か魔の森の魔力を、魔力に乗せられた思いを感じ取れるようなのよ。」

「そうなんですか、エリナ様は大変実力のある魔法術士様なのですね。

大魔法術士は魔の森の意思を感じ取れると言われています。

そのような大魔法術士はエルフ領でも両手で数えるほどしかいない賢者で、私の知っている限りでは片手で足りるぐらいしかおりません。」


「私は未だ修行中の身で、おっしゃるような大魔法術士とは程遠いですよ。

きっと、私の魔法特性と魔の森の何かがたまたま波長が合っているということだと思うの。」


「ご謙遜を。魔の森の意思が感じられるということはそれだけの実力があるということですから、それでもまだまだ修行が足りていないとおっしゃるのであれば、今よりももっともっと偉大な魔法術、そう、賢者にになれるということですね。

それはきっとお料理にも言えることかもしれませんね。

おいしい焼きリンゴが作れたら、次はリンゴのジャム、そして次はアップルパイと、おいしいものを次々と作りたくなるような。」


「そうよねえ、それにおいしいと言ってもらえるともっともっと別のおいしいものを作って食べさせたくなる。

わかるわ、その例え。

人のために役に立つ魔法を覚えると、もっと役に立ちたくて、より難しい魔法の習得を目指す。

その魔法を使うための魔力が足りないなら魔力が増えるように努力する、と言うことですね。」


「はい。私は魔法の能力はあまり高くありませんが、お料理で人類のゲストをもてなせればうれしいと思います。」

「これから人類とエルフ族の交流がどんどん大きくなっていくと思うの。

あなたのような方が人類とエルフ族の強い絆を作っていくのだと思いました。

頑張りましょうね。」


「はい。もちろんです。」


その時、廊下側のドアがノックされた。

「見てまいります。」

メイドさんはお茶のカップを置くと、すっと立ってドアの前まで移動した。


「どなたさまでいらっしゃいますか。」

「・・・・・・」

「えっ、そうなんですか。エリナ様にお断りをして、ただいま参ります。先に行っててください。」


「どうかしたんですか。」

「仲間のメイドが手伝ってほしいと申しますので、取り急ぎのご用がなければ、少々伝いに行きたいのですが。よろしいでしようか。」


「私は構いませんよ。ここでお茶を楽しんでいますから。早く行ってあげてください。」

「ありがとうございます、失礼いたします。」


メイドさんは丁寧にドアの前で頭を下げると出て行った。


「どうかしたのかしら。」


「お茶とこのアップルパイをいただいてもいいかしら。」


窓や扉も開いていないのに風が髪を吹き上げたと思ったら、見慣れた幼女が隣に座っていた。

足が床に届かないところがかわいい。


「ソニアちゃんのところには行かないのですか。」

「ソニアちゃんはなんかメイドさんとお取込み中だったので。」

「どんな話をしていたのですか。」

「お菓子を食べ過ぎだから控えてだの、そうしないと夕飯が食べられなくなるだの、バランスのとれた食事をしないとツルペタのままだの、等々。

正座させられて滾々と絞られていたの。」


「見捨てて、こっちに来たということなの。大精霊様。」呆れたゴセンちゃん

「ゴセンちゃん何を言うの、見捨てたわけじゃないの。

魔の森に散歩に行って疲れたから喉が渇いて、お腹が空いたの。

ソニアちゃんのことろはお茶もお菓子も食べつくした後だったわ。」


「まぁ、叱られても仕方ないような食生活をしていたソニアちゃんにも責めがあると思うので仕方ないけど。

シルフィード様もあまりソニアちゃんのお菓子の件では甘やかさないようにお願いしますね。」


「ぶ~うっ。」


「大精霊様、ソニアちゃんとぶうたれ声がそっくりですよ。」

「ゴセンちゃん当然よ、ソニアちゃんは私の大事な使徒だもの、ぶうたれ声が似てても不思議じゃないでしょ。」

「ツルペタのところもですね。」


「・・・・・・・・」


「まぁ、幼女だから仕方がないわよ。その内に成長しますよきっと。」

「ソニアちゃんはね。

私はチンチクリンの呪縛から逃れられないからずっとこのまま・・・・・。

うぇ~ん、素人の失敗作の腕輪が意地悪言うのぉぉぉぉ。」

「助けてくれる肝心のソニアちゃんが説教部屋、合っているわよね、に隔離されているのでウソ泣きしても泣き損ですよ、大精霊様。」

「ちぇっ。」


「ところで、魔の森の様子はどうでしたか。何か動揺する心が魔力と一緒に風に乗って漂って来るんですが。」

「ああっ、あれね、魔の森のトレントさん、木の魔物と言うか妖精、が一体動揺していたからなの。」

「トレントさんって、誰ですか、大精霊様。」


「魔の森の木のごく一部は木じゃなくて、木の妖精のトレントさんなの。

魔の森の魔力はトレントさんが流しているものなのよ。」


「私がその魔力を認識できるのってなぜかしら。

大魔法術士は感じられるそうだけど、私はまだ修行の途中だからとてもそのようなたいそうなものではないし。」


「恐らく風と水の魔法術士で、土のアーティファクトを身に着けているからじゃないのかしら。」

「ソニアちゃんもそうですよね。風と水、そして、土の魔法術士。」

「ソニアちゃんの場合は風を覚えたばかりだから経験値の差じゃない。」

「まあ、その説明ならな納得ですね。」


「話を戻すと、どうしてそのトレントさんが動揺していたのかしら。」

「何でもいつも魔の森に迷い込んでは数刻の間、そのトレントさんの足元で過ごし、帰って行くエルフの若者いるらしいの。。

でもね、昨日に限って帰ろうとせずにずっと足元にうずくまったままなんですって。


トレントさん的には仲間と草木以外は魔の森に居てほしくないので、いつもは迷い込んだエルフに少し怖い思いをさせて、二度々魔の森に迷い込まないように脅してからちゃんと出口まで送って行くらしいの。


でもその若いエルフは懲りずに何度も来て、数刻過ごし、帰って行くことを繰り返して行くうちに、トレントさんたちも慣れたというかそんなもんだと言うことで、気にならなくなっていたというの。

でも昨日はそのまま帰らずに足元でうずくまったままらしいわ。

慣れたので不快感はないけど、どうしたのかって、今度は困惑して動揺していたわ。」


「その気持ちのまま魔力をレントさんが放出したのを、今度はお姉さまが探知したというわけね。」


「そのエルフの若者はまだそのままでいるのかしら。」

「ちょっと待ってトレントさんに聞いてみる。・・・・・・」

そう言って、目をつむって集中するシルフィード様


「まだうずくまったままだって。」

「家族が心配しているわよきっと、帰ってこないって。

迎えに行った方がいいかしら。」

「でも本人の意思で、危険と知っている魔の森に出入りしているんでしょ。

帰ろうとお姉さまが促しても素直に帰ってくるのかしら。」

「確かにそれもいえるわね。その辺りの事情を知らないと無駄足になるかもね。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願いします。

もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。


第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。


「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」

の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。

「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。

もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。


この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。

また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。


10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。

この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。


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