11話目 料理教室へのお誘い
「それではお部屋にご案内いたします。
皆様のお荷物はどれでしょうか。
持てないようでしたら、メイドに申し付けください。」
玄関の脇に置かれていた私の荷物を、ちょっと大きいので風魔法で持ち上げた。
そして案内のメイドさんの後ろについて二階に上がった
ゲストに一人にメイドさんか一人という感じだ。
シュウ、残念ね。
ここにはあこがれのエルフメイド戦隊以下略が既に結成されていたわよ。
絶対シュウには王都のゲストハウスには近寄らせないんだからね。
私はメイドさんの後姿を見て、強く心に誓った。
タイさんとアイナさんにもメイドさんことはシュウに内緒にしておくように頼まなきゃ。
ソニアちゃんの報告はおいしいお菓子についてだけだろうし。
私は案内された部屋に入り、荷物を床に置いた。
「お茶の用意をしてまいります。
御用の際はテーブルのベルを鳴らしていただければ、私が、私の手がふさがっている時には別のメイドがやってまいりますにゃ。」
「にゃ? 」
「申し訳ございません。
ゲストハウスのメイドを3年前から務めておりますが、実際に仕事をしたのは今日が初めてでして、とても緊張しております。
至らない点は、ご容赦願いますか。」
「ここのメイドさんたちって、皆さん初仕事ですか。」
「私は3年間練習ばかりでした。
でも3年で本番が迎えられて幸運でした。
さる方は50年間ずっと練習を積み重ねられてきたということです。」
「お聞きしてもかまわないのなら、その50年の方は私たちの仲間の誰の担当になられたんですか。」
「えっと、確かソニア様だったと思います。」
「失礼を承知でお聞きしますが、その方にお子様はいらっしゃいますか。」
「ええ、確か30歳になるお子さんが、もうやんちゃ盛りで、しつけるのが大変とグチをこぼしておりました。」
ソニアちゃん、終わったな。
お菓子の食事は絶対許されないな。おかんメイドさん的に。
「その他にご質問がなければ、失礼してお茶のご用意を致してまいります。」
「あっ、お茶は2人分お願いしますね。」
「どなたかとご一緒されますか。」
「あなたと二人で、ゆっくりとお茶をしたいの。
いろいろな立場のエルフ方とお話をするのも私の仕事だから。」
「えっと、よろしいのですか。私がご一緒しても。」
「もちろんです。」
「私が聞いていた人類の方はとても偉そうにしていて、私たちメイド風情など空気と同じだとメイド研修で教わりました。」
「ああっ、まぁねぇ、人類軍のお偉いさんだとそんな感じかもね。
肩書だけで実力がないから、威張れるものにはとことん偉そうにするのよ。
でも、私たち旅団員はそんなことはないのよ。
エルフの方とは一人でも多く仲良くなりたいし。
仲良くなるには肩書でえらそうにしてもダメでしょ。」
「確かにそうですね、人から与えられた肩書で知らない人に威張ってもちっともえらくは思えないですね。」
「私はあなたと仲良くなりたいの。
だからまずは一緒にお茶して、ここのことをいろいろ話してほしいの。
もちろん仕事上で話してはいけないことは聞かないからね。
あと、ここでのお茶の用意の仕方を知らないのでそこはお願いしますね。
お湯は私の方でいつでも用意できるので言ってね。」
「ありがとうございます。
お茶の下準備はしてありますので、少々お待ちいただけますか、すぐにご用意いたします。」
「では、お言葉に甘えて、お願いしますね。」
感じの良いメイドさんはドアの前で一度お辞儀をすると、お茶の用意をするために廊下ではないこの部屋の続きの別の部屋の方へ入って行った。
この部屋付きのメイドさんの勝手仕事をする部屋なのであろうか。
私は部屋を改めて見回してみた。
ここも玄関と同じく全てが木で作られていた。
それを丁寧に磨いたのか、やはり光って鏡のようになっていた。
いつ来るかも知れぬゲストのために、あのメイドさんは毎日綺麗にしていたのだと思うと頭が下がる思いだ。
エルフ族は保守的だと、新しい事には二の足を踏む種族だとソシオさんは言っていたが、裏を返すと一度決めたことは無駄かもしれないと思っても、実直にやり遂げるということなのだろう。
私は綺麗に磨き抜かれた部屋に感心し、新しい友人のエルフ族により一層の好感が湧いてきた。
ここのはリビングであるらしく、ソファーとテーブル、その他の調度品と装飾品が感じ良く置かれていた。
カーテンから冬の陽が入ってきている。
今日はポカポカして暖かい。
その陽の温かさをより感じるために、私は外を見てみたくなり、部屋からバルコニーに続くドアを開けた。
温かい陽が頬をてらす。暖かい風が髪を揺らす。思わず目を細める。
そして、魔の森を抜けるときに感じた何とも混乱したような魔力が私の頭を困惑に導いた。
思わず目頭にしわが出来てしまう。
この感じの悪い、いえ、混乱したような魔力は一体どうしたのかしら。
「お姉さま、確かに変な感じのする魔力ですね。
風に乗った魔力なのでお姉さまの方が強く感じることが出来るとは思うんだけど。
何か混乱したこと以外、流れてくる魔力から感じ取れることはありますかね。」
そうねえ、混乱・・・・と言うより困惑だわね。いつもと違っていることに対する。
そして、心配しているわね。
でも、どうすることもできないもどかしさの気持ちも混じっているわね。
「誰か魔の森で迷子になったのかしら。
それを魔力の強い誰かが見つけて心配しているとか。」
そんな状況も考えられるというところかしら。
やっぱり、これ以上のことはわからないわね。
さっき、魔の森に探索魔法を使ってみたんだけどうまく使えなかったの。
ぼんやりとしか中の様子が感じられなくて。
「そういえばシルフィード様が魔の森の様子を見に行ったというか、修羅場を期待して覗きに行ったというか。
もし迷って苦しんでいる者がいれば、こちらに知らせてくれるか、手を繋いで森の外に連れ出してくれると思いますの。
シルフィード様からの報告がないので、お姉さまは今のところ特に心配する必要はないかと思いますの。」
確かにね。様子の分からない魔の森に見に行くわけにもいかないし。
あの森では私の魔法がうまく使えないようだから、私の方が迷子になってしまうわ。
「とりあえず、シルフィード様のお帰りを待ちましょうよ。」
私はゴセンちゃんの言葉に従い、いやな感じは残ったが、メイドさんとお茶をするためにバルコニーから部屋の方に戻ってきた。
「バルコニーにお出になったのですか。」
「そうなの、窓から入るお日様の光が暖かくて、つい外で陽を浴びたくなったの。」
「寒くはなかったですか。」お茶とお菓子を出しながら話の相手をするメイドさん
「今日の朝一番で人類領を出てきたんだけど、向こうは、冬の寒さが厳しくてね。
昼間でも外で陽の光を浴びたいとは思わなかったの。
でもここの陽は暖かくて、つい、外に出たくなちゃったの。
陽の光を浴びないとなんだか元気が出ないのよね。」
「うふふふふ、そうですわね。
陽の光は体だけでなく心も温めてくれるような気がしますものね。」
「そうなのよね。心も温まってくるもんね。」
「さぁ、体をもっと温めるためにお茶をどうぞ。それと、このアップルパイも如何でしょうか。」
「アップルパイですか。うぁわわわ、おいしそう。あなたが焼いたのかしら。」
「今朝作ったんですよ。私の担当が若い女性と聞いたので、甘いものがお好きかと思って。」
「私のために焼いてくれたの。」
「はい。どのようなものがお好きかまでは情報が入ってきませんでしたので、それなら、私の一番得意なものを作ることにしたのです。
お口に合いますかしら。」
「じぁ、早速、いただきます。あなたも一緒にお茶にしましょうね。」
「はいっ、ではいただきます。」
「おいしいわねぇ。
やっぱりリンゴが違うわねぇ。野菜と果実はエルフ領よねぇ。
これだけのものを人類領で買うとなると・・・・、お財布が軽くなるわ。」
「気に入っていただいて、うれしいです。」
「その上、作り手も上手だから、材料が生きてくるのよねぇ。
ねえ、いくつかお菓子の作り方を教えてもらえないかしら。
私たちの個人的な調査として、エルフ族の料理を学ぶということがあるの。
そして逆に、エルフ族に人類の料理を広めるというのもあるわ。
エルフ族と人類の交流として、お菓子を皆で作ってみませんか。」
「何か楽しそうですね。私の仕事はここでお客様方に楽しく過ごしていただくこと。
エリナ様が個人的な仕事を楽しくこなすためと言うのであれは、精一杯そのお手伝いをするのが私の仕事です。
お仕事の手が空いた時に一緒にお菓子作りをしましょうか。
手の空いている他のメイドも呼んで。」
「そう、人類は料理好きなタイさん、食べるの方が好きなソニアちゃん、そして、料理好きのエルフのアイナさんも誘わなきゃ。」
「ゲストハウスは料理教室になりそうですわね。」
「と言うことは、事務局長の奥さんのリリアナさんも誘いましょう。」
「それはいいですね。きっと、楽しくて、おいしくて、心が晴れますわ。」
「リリアナさんの心が晴れる? 」
「あっ、つい余計なことを申してしまいました。
今のことは聞かなかったことにしてください。お願いします。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします
この物語「優しさの陽だまり」は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
第108旅団の面々は3つのパーティに分かれて行動することになりました。
「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」
の本編はシュウを中心として、月の女王に会いに。
「優しさの陽だまり」はエリナを中心としたエルフ王族の寿命の調査にエルフの王都へ。
もう一つは駄女神さんを中心とした風の聖地の運営に。
この物語ではエリナの王都での活躍をお楽しみください。
また、この物語は本編の終盤に大きな影響を与える物語となる予定です。
10/5より「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語も「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
「優しさの陽だまり」の前提ともなっていますので、お読みいただけたらより一層この物語が美味しくいただけるものと確信しております。




