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暗闇の原因

「俺はいったい………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いや、まだここなのか!?何度目が覚めても何も見えやしないぞ!?」



 悠は目が覚めた。だが、目の前は真っ暗だった。


 最初の眠りから、悠は既に何回、いやもしかしたら何十回も既に経験していた。


 2度目の目覚めでは、寝ぼけていたのか、恥ずかしげもなく同じ思考を繰り返し、ゆっくりと2度目の眠りにつき、3度目では途中で気づき、4度目、5度目の目覚め以降は、目覚めと共に自分が未だに暗闇の空間にいることに気づき、ウンザリするようになっていた。


「ここはどこなんだよ!? もしかして、ずっと暗闇の空間で1人過ごすのが、地獄ともいうのか?」

 

 悠の声が暗闇の空間に虚しく響き渡る。


 繰り返し目覚めるごとに、変わらない真っ暗な光景にウンザリしていた悠だが、その心境はウンザリから永遠とこの暗闇の空間に捕らわれる続けることになるのではないかとい絶望感に変わり始めていた。


 だが今回の目覚めでは変化はあった。


 虚しく自身の声だけが響き渡る暗闇の空間の中で呆然としている悠だったが、これまでとは違うことに気づくことになった。


「あれ、声がでている?」



 そう、声を発すことができ、その声が耳に届いているのだ。それにもっと大きな変化にもきづくことになる。


「このドクンドクンってなん……って、心臓の鼓動か。あれ、それじゃあ今までの俺は? ん?」


 悠は、前回の目覚めとは全く違う自分の体の変化に戸惑ったような声をあげる。一切の音がない無音の暗闇の世界だったが、今は体内からドグンドクンという音が確かに聞こえているのだ。

 

 だが、そこでに新たな疑問が浮かんでくることになる。


「なんで心臓の鼓動が聞こえるようになったんだ? 声もだ。手や足は……ない……のか?」


 本来なら、この暗闇の空間で目覚めた時にするべき、自分の体の状態の確認。だが、悠はそれを今までしてこなかった。


 体の感覚などなく、夢心地の意識の中で思考をしていたことから、ただ、ただひたすらに今までを振り返り、眠り、目覚めては繰り返し過去を振り返りっていた。


 そして何かを考えることにも疲れ、不安と絶望に飲まれ始めていたのだ。


 だが、ここにきて自分の声、そして命の鼓動によって、自分の現状に真正面から向かい合うことができた。


 それは生きている証が胸で鼓動を刻んでいるのだから。

 

 そして、悠の意識は、今までよりも明確になっていた。ただ、過去を振り返り、途中で疲れ、そして眠ってしまうような、半分意識が眠っている状態からは抜け出していた。

 

 だからこそ、悠は、今の自分の現状に対する疑問を棚上げることはできなくなっていた。


「心臓は鼓動をしている。だけど、今気づいたという事は……まず間違いなく、前回の目覚めでは心臓は鼓動していなかったはずだ。それに声もだ。そして、体の感覚も何となくある。だけど、手足は……ない。頭は……声が発せらるんだから、あるんだろうな」


 悠は、自分の体を見ることはできない。頭があるということは視力も回復している――はずだが、依然と視界は真っ暗。


 考えられることは、視力は回復していないのか、真っ暗な空間にいることに変わらないかだ。


 悠は、後者だと判断しながら、自分の体に意識を向けながら、動かせる場所がないかを確認していく。


「動かせるのは口のみ……」


 体に力は入らなかった。


 というよりも、心臓の鼓動は聞こえるが、意識を向けても、体に感覚があるような気がしないのだ。


 確かな事は、ただ一つ。


 生きているとうことだ。


「だったら、今まではどうだったんだ?」


 悠が心臓の鼓動に気づいたのは、今回の目覚めだった。だとしたら、前回の悠の状態はどのような状態だったのか疑問に感じるのは当然だろう。


「魂か何かの状態だった? そして体が回復し始めている……としか考えられないような」


 再び命の鼓動が動き出した。声を出せるようになった。


 そして、命の鼓動が動き出す前から、意識があったとしたら……半信半疑であるが、悠が自分が魂の状態だったのではないかと思うのは当然の帰結と言えるかもしれない。

 だが、何故そのようなことが進行しているのか悠には分からなかった。そもそも、悠は自分の回復魔法で肉体を復活させようとしていなかった。


そして、何もせずとも肉体を回復が勝手に回復していくような特殊能力もない。


「誰かが治してくれている……!?」


 悠は、誰かが自分を治しているくれているのかと思うがすぐに、「そんなことあるのか?」という疑問が胸中に浮かぶ。


 だが、それも仕方がなかった。そもそも、周りに誰かいる気配がないのだ。そもそも、暗闇の空間で何も見えはしない。


 そして、自分を救ってくれるような人物がいたと思えない。魔王は倒し、味方だった多国籍軍は総攻撃。一緒にいた仲間も一人もいなかった。そもそも、悠と一緒に戦える人間なんていなかった。


 もし、悠を救うとなると、総攻撃後の場所に出向き、気づかれずに魂を回収した上に、回復までする必要がでてくるのだ。


 悠の記憶では、魂という存在の有無を学んだことなどなく、ましてや魂から肉体を回復させるという、蘇生魔法といっても過言ではない魔法も聞いたことはなかった。


 そして、そのようなことできる魔道兵がいたという話も聞いたことはなかったし、そもそも悠よりも回復魔法が得意な魔術師も魔道兵士もいなかった。


「でも、実際に俺の体は……う! また……」


 肉体が戻り、意識が明確になり始めていた悠だったが、急にくる眠気ばかりは変わらなかった。


 そして、今回は今までよりも意識がはっきりとしていたからこそ、穏やかに眠りに導かれるのではなく、強制的な睡眠に近い感覚を悠は感じていた。


(次起きたら、もっと肉体は……回復しているのだろうか。それに、もしかして、この暗闇の空間は……俺の治療がバレないための……隔…離……)

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