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ゴブリン討伐……?

戦闘シーンとか書くの慣れてないです……

 それから、俺はここに来た理由を話し、魔王と仲間になったと話した。この地域のゴブリン族とは戦った事は無い。だから勇者だとはバレてはいない様子だ。

 おさは、深く考えこみ、仲間の一人ゴブリンを呼んだ。ゴブリン語でコソコソと会話して、そして何度か頷いた。


「間違いないノォ……『ゴブレア』族ノ仕業ジャナ」

「ゴブレア族って、この地域には居ないハズじゃ……」

「最近、領土拡大の為ニ、コノ森に拠点を造り、コノ地域の人間を襲イ、生活してオル」


 ゴブレア族、このゴブリア族とは違って、凶暴で武力をもって制するゴブリンの種族だ。

 サベッジウルフという獰猛な魔物を従えている事で有名で、集団戦のコンビネーションは凄まじい。


「魔王サマノ 支配カラ逃れたゴブレア族ハ、ココ最近、各地に勢力ヲ 拡大しているのジャ」

「……なるほど、それでゴブレア族がここらで暴れているっつー訳か」

「我々ハ、魔王サマノ考えに感銘をウケ、忠義を誓ったのジャ……。しかし、勇者タチニ倒さレ……・」


 支配から逃れたゴブレア族は、争いを始めた……という事か。


「ふん、それで、そいつらはどこにおるのだ?」

「コノ森の奥ジャ……」

「時間がない、今すぐ行ってゴブレアを狩らせて貰うぞ」

「待ち成さレ、我々の仲間も連れていくとシヨウ。ギャガギギャガヤギャ!」


 ゴブリン語を暗唱すると、颯爽と現れた八匹のゴブリン、そしてさっき案内してくれた二匹のゴブリンの計十匹が長の前に集まった。


「先鋭部隊……腕は確かジャ。」


 そう言って付けられた護衛は、十匹からなる先鋭部隊だった。

 槍や剣、こん棒や鎌、盾や動物の皮で造られた鎧、そして骨を加工して作られた兜を装備している。


「お主ハ……その杖、魔術師ウィザードじゃナ?」

「ああ、そうだけど。どうかしたのか?」

「イヤ、何でもなイ、戯言ジャヨ」


 長は何かを考え込んで、口元が綻んだ。

 気味が悪いが、考えていても仕方ない。ゴブリン達は準備を終えた様で、そろそろ出発の時間みたいだ。


 そしてリーダーの先導で、俺達二人は後ろを着いて行く事になった。

 もう道もないし、足場もかなり悪い。もう人間が生半可な気持ちで来ていい場所じゃなかった。

 それから、日も徐々に落ちて来たせいなのか、蜜柑色みかんいろの光が差し込み始めていた。


 風が吹いて、不気味なざわめきが辺りから聞こえる。森だからか、夕暮れだからか、やけに涼しさを感じる。

 俺とラバナは、特に会話らしい会話は無く、黙々と歩き続けていた。

 そんな中、俺は木々の隙間から見える空を仰ぎながら、ラバナに問う。


「ラバナ、ちょっと聞きたいことがあるんだがな」

「どうしたのだ、勇者よ」

「んー……なんか違和感があってだな」

「何がだ?」

「骨だよ、コイツらの装備の『骨の兜』……。自分達の頭の形に合うように割ったり、それをロープで繋げたりしている。骨格からして動物や魔物だが、左のアイツは違う」


 十匹のゴブリンが、俺達を円で囲むようにして進んでいる内の一匹、俺達の左を歩くゴブリンに視線を送った。

 そのゴブリンは最初に出会った内の一匹、リーダーじゃない方ゴブリンだった。


「ふん、貴様もマヌケではないようだな」


 鼻で笑うと、ラバナは一言「気を付けろ」と、だけ言った。

「言われなくても、人生は常に気を付けてる」と心の中で返事をする。やはり、ラバナも気が付いている様だ。


 ―◇―


 しばらく歩くと、ゴブリン達が急に立ち止まり、前方に指を指す。

 言っていたゴブレア族の拠点だろう。森の中で隠居するかの如く作られたそれは、木の壁で囲まれ、ツリーハウスのような物もいくつか見える。拠点にしちゃ、随分とでかい。


「ギャガァ!」


 その声音を合図に、ゴブリン達は一斉に拠点へと向かった。

 突撃合図が出た様だ。俺の方を見て、リーダーゴブリンが、「早く行けと」言わんばかりに必死になって、剣先で拠点の入り口を指している。


「はいはい、分かった分かった。我が呼び掛けに加速せよ――<ブースト>!」


  奇妙な言霊を紡ぐと、それに応じたの魔法が発動した。

 身体能力……速度向上魔法<ブースト>──それを俺自信に掛けて、先に走るゴブリン達に遅れを取らない様にしたのだ。

 まぁ、<ブースト>が無くても俺の方が速いだろうが、次の呪文は唱えるのに少々時間が掛かる。その為の保険、という訳だ。


「心剣と真剣、泡沫うたかたつるぎ、我が呼び掛けに応え、現出せよ――<エント・ヴィケル>」


 呪文を紡ぐと、俺の手に現れたのは一本の『つるぎ』だった。

 剣製魔法けんせいまほう<エント・ヴィケル>……この魔法を覚えるのは随分と苦労した。

 魔術師ウィザードが剣を持つことが禁止されてるならば、剣を造る魔法を覚えればいい……単純だ。


「さて、行くか」


 加速ブーストした俺は拠点の入り口前まで、他のゴブリン達を差し置いて、一番乗りで到着した。

 一匹のゴブリンが俺の横を通り過ぎようとした時、俺はそいつの兜を掴んで、俺の足元へ放り投げた。


 そして――、


「ギャガアアア!」


 剣を振りかざし、切り裂いた。

 そのゴブリンは悲鳴を上げ、身体を震わせ、そのまま絶命する。


「やはり、気付いておったか。そ奴は、“人間の骨”を兜にしておったからな」


 ラバナは――その様子を見て、嗤っている。

 ゴブリンは――その様子を見て、呆然と立ち尽くしてしまった。


「ギャアギャアアアアア!」


 リーダーゴブリンは怒りを露わにし、今度は俺を攻撃するように命じている様だった。

 すると、こん棒を持ったゴブリンが一匹、俺の顔に向かって跳びかかって来る。中々の脚力、流石は『ゴブレア』族だ。


 対し俺は軽くしゃがみ、両手で剣を突き刺した。剣はゴブリンの腹を通り、背中から剣と血が飛び出て、ぽたぽたと俺の頬を赤く濡らした。苦痛の声を上げるゴブリン。俺は体制を戻して剣を下ろすと、そのままゴブリンはずり落ちて、死んだ。


「まずは二匹……次は、リーダーか」


 俺はリーダーゴブリンに向かって歩み出す。

 するとリーダーを除く七匹が、四方八方から一斉に跳びかかってくる。


 だが、遅い。左足を軸に回転して剣を振れば、一匹、また一匹と次々に倒れて逝った。膨張ブーストした俺の速度からゴブリンを見れば、その動きは停止に等しい。七匹とも、空中で華々しく血を散らしながら、俺の周りで死没していく。


「ギャ……ギャガギャギャガガ!?」

「おーい、勇者よ。このゴブリンが『話が違う……魔術師ウィザードは近接戦に弱いんじゃないのか』だと」

「って、やっぱ言葉分かるんじゃねーか!」


 長が俺のクラスを聞いた理由は、最終的に俺達を殺すつもりだったからだろう。ゴブリア族の村を襲撃させた後に、殺す気だったに違いない。


「ったく……。行くぞ!」


 俺は猛スピードでリーダーとの距離を詰める。

 ……あと数m、もう少しという時に木の陰から突如、俺の面前に何かが現れる。


「……サベッジウルフ……!!?」


 こちらを睨む炯眼けいがん、鋭い牙、鋭い爪……、ゴブリア族が従える狼の魔物モンスター――サベッジウルフが立ち塞がった。かなりの巨体、全長二、三メートルはあろう黒い狼だ。

 躊躇なく、サベッジウルフは左腕を振りかざし、俺を引き裂こうとする。


「ぐっ!クソッ、不意打ちか!」


 辛うじて、それを剣で止めた。

 だが、すざましい力だ。いつ押し切られてもおかしくない。


 すると、もう一本、サベッジウルフは余った右手を横に振り、俺の脇腹を直撃する。

 そのままふっ飛ばされ、木の幹に激突した。


「っ!油断した!」

「おーい、勇者よ死んだか?」

「この程度で死ぬわけねーだろ!……次が来る」


 俺が立ち上がって剣を拾おうとすると、先にラバナがそれを奪い取る。


「……この剣、ちょっと借りるぞ」

「はぁ?お前、戦えんのか?」


 まぁ、いいか、ラバナはやる気みたいだ。

 ウォーミングアップを兼ねて来たのもあるし、任せてみるか。

 だが、不安が拭い切れない俺は、再び<エント・ヴィケル>を唱え、剣を生成する。


 サベッジウルフが「グオォオ」と、鳴きながら突進してくる。


「これは、魔法で造られた剣であるな――ならば」


 魔王の持っていた剣が消えていく――まるで、身体に吸収されているようだ。


「煉獄の劫火、地獄の業火、我が烈火――<ヘル・フレイム>!」


 使えないハズの魔法の呪文を唱えると、黒い炎と爆風が共に炸裂する。木々を破壊し、地面をえぐる。

 その爆炎にサベッジウルフは、惰弱だじゃくな声を吐いて吹き飛んだ。

 俺はその光景に「え?」と一言漏らす。


「貴様の剣は、100%魔力によって生成されたもの、吸収して我の魔力に還元した」

「な、なるほど」


 流石だな、までは言わなかった。どうしてもプライドが俺の邪魔をした。

 だが、強さは認めざるを得ない。何も使えないハズだったコイツがまだこんな力を持っていたとは……。


「ふん、我の力に恐れて、声もでないか勇者!命の恩人に感謝せよ!」

「いや、それはお前もな――!」

「ギャガガギャガーッ!!!!」


 ラバナの背後、頭上の木の枝から、リーダーゴブリンが剣を突き立てて、降ってくる。


「『クソッ、人間と魔王の分際で!!』と、言っておるぞ」

「通訳どうも!っと!……ふぅ、これで最後だな」


 リーダーゴブリンを空中で斬る。

 ゴブリンの死体を蹂躙して、残党を狩るため戻ろうとすると、一匹のゴブリンが俺達の元へ駆け寄る。

「まだ居たのか」と剣を構えると「ギャガギガヤ、ギャガガギギャ」と鳴いて攻撃する様子を見せない。


「コイツは、『私達は、ゴブリア族のゴブリンです。ゴブレア族の連中から助けて頂きありがとうございます。魔王様と……人間』と言っておるな」

「やっぱり……ここがゴブレア族の村か、あんな廃村が集落な訳ないわな」

「ギャガヤガギャ!」

「『魔王様、流石です!本当に凄い!隣の人なにあれ弱い』と言っておる」

「おい、嘘つくんじゃねーよ」


 どうやら、ここがゴブリア族の村みたいだ。

 まぁ、何がともあれ襲われなくて良かったなー……と、思う。

 しかしまだ残党が居る。それを狩るため、俺はひるがして来た方向へ戻ろうとする。


「ギャガアガヤ」

「『遅いから泊まっていったらどうですか?』だと、どうするんだ勇者?」


 確かに、予想よりも時間を食った。空を見ると、もう暗くなりつつあった。

 街に戻る前に辺りは暗くなる事は、火を見るより明らかだ。

 ここはお言葉に甘えさせてもらうしかないか。


「……そうだな、頼む。明日の朝に残党を狩って街へ戻るぞ……ってどうしたラバナ」


 ラバナが俺の前に佇んで、腰の袋から何やら取り出す。


「ほら、ポーションだ。背中、血が出ておるぞ」


 そして、照れくさそうにポーションを俺に渡した。

 木の幹に背中をぶつけた時に、枝か何かが刺さったのだろう。


「あ、わ、悪いな……」


 そういや俺の分は、行きにこいつにあげたな。

 俺がポーションを飲み干すと、「ほれ行くぞ」とラバナは颯爽とゴブリンの村へ入って行った。


 こいつにも優しい所あるんだなとか思いながら、俺も村の中に入る。

 前を歩く魔王ラバナ、歓迎するゴブリン達。

 しかし、前を行くラバナが、何故だかふらついている。なんというか、立っているのが精一杯にも見えた。


「おい、ラバナ……大丈……」


 俺が声を掛けると、紅い髪をゆっくりと靡かせながら、ラバナが……倒れた。

 汗と顔の火照りが凄い。俺は、本日二回目のぶっ倒れに『え?』と困惑する事しかできなかった。暑さ?いや、ここはそんなに暑くはない。やはり……疲労困憊か。

 ゴブリン達も歓迎ムードから一変、慌てふためいている。


 とにかく、俺は休憩できる場所へ連れて行く為に、再びお姫様抱っこならぬ魔王様抱っこでラバナを持った。



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