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魔王討伐

授業中の暇潰しに妄想した話です。

文章とか書き方とかおかしいかもしれませんが、よろしくお願いします。

 とある世界にとある言い伝えがあった。

 数千年に一度、『闇黒大陸』と呼ばれる大陸に『魔王の城デットリーバレー』という巨大な城が出現し、それと同時に『魔王』が君臨するという言い伝えがあった。

 やがて、魔王は世界を支配し、世界を恐怖に貶める……と。


 ある日、その言い伝えが現実のものとなり、魔王が君臨したのだ。

 やがて魔王は、その強大な力と軍力で各地を征服し、自らの支配下に置いていった。

 それを脅威を感じた国々が、莫大な懸賞金を魔王に賭けた。

 幾多の冒険者が魔王に立ち向かったが、誰一人として、その大陸に向かった冒険者は帰還する事は無かった。


 その一方で、何の変哲もないド田舎で勇者の血を引く俺が産まれた。

 幼少の頃から故郷を離れて、王都で剣術や魔術を学んでいたのだが、久々に故郷に帰ると俺の住む村は魔王によって滅ぼされていた。

 義憤と絶望に駆られた俺は、魔王を倒すという一心で十六歳になった頃に旅に出た。

 信頼できる仲間を捜し、各地を旅した。それなりに腕の立つ仲間を見つけ色々な場所を回った。

 共に強くなり、魔王を倒すという目標を掲げ、ようやくの思いで魔王の城まで来た。


 まずは、その仲間を紹介するとしよう。


【勇者】――エーレン=アーダルベルト

 俺の名前だ。伝説の剣『アロンカリバー』を王より授かって、旅をする。


剣士ナイト】――アルド=ガードロフ。

 兄貴分的存在で、俺よりも大分と年上だ。俺がアルドから学んだ剣術は数知れず。


魔術師ウィザード】――アンドレアス=ベーベル。

 好奇心旺盛な老人で、旅に着いてきた理由も『好奇心』らしい。


僧侶プリースト】――カタリーナ=ベルハルト。

 金髪ボブヘアーの女性僧侶。教会で孤児院を経営している。


【商人】――エリル=クラウス。

 茶髪のツインテールのかなり腕の立つ商人で、俺よりも歳下の少女。


 そして、俺達六人は、魔王との戦いに挑んだのだ。


「小賢しい人間共がァ!!<オーバーロード・ヘル・フレイム>ッ!!」


 たった一人で六人を圧倒する絶対的な闇の存在……魔族の王、【魔王ラバナ】。

 鮮血で濡れた様な色の紅い髪に、頭部には二本の角。目は紅く不気味に光り、黒い鎧のような皮膚で全身を包んでいる。その禍々しい邪気は、並の人間ならば恐怖で逃げ出してしまう所だろう。

 だが、俺は、俺達は戦い抜いた。


「まだだ!行くぞ!!お前ら!!」

「「ああ!」」


 俺の掛け声に、全員が返事をした。

「ふふっ」と、俺は思わず笑みを溢す。俺には、頼れる仲間がいると再確認できた気がしたからだ。

 そうだ、戦いは……まだ終わらない。

 魔王の『支配』か勇者が手にする『平和』か、それは、俺達に託されている。

 だが、仲間がいるか。そのお蔭か、不思議と負ける気はしなかった。


 ……と、いうような感じで、戦いは熾烈を極めた。

 魔王を倒す、それが俺の人生の宿命であり運命。いわば、最後の戦い。

 しかし、この戦いは、俺にとっては終わりではなく始まりに過ぎなかった。

 だが、あと一歩、魔王を追い詰めた時にそれは起きた。


「クッ!我が……我が人間如きに……!」

「よし……!終わりだ、魔王!!」


 悔しそうに歯を食いしばり、必死になって、跪いた身体を起こそうとする魔王を前に俺は、ゆっくりと歩み寄る。

 アロンカリバ―を握りしめて、遂に最後の戦いを終えるんだという高揚感と達成感を抑えながら、剣を振りかざした。


「すまねぇなー……エーレン。」


 アルドが背後に立ち、ボソリと呟く。

 すると、背後から胸辺りにかけて激痛が走った。

 見覚えのある剣が俺の目に映った。これは、仲間の一人である剣士アルドが持っている剣に間違いない。それが、背中から貫通し、胸から飛び出ているのだ。

 何故?どうして?俺達は、信頼できる仲間じゃなかったのか?……と、様々な困惑が頭を満たした。


「いやー……お前とは合わなくてなぁ……。他の奴らもそうだってよ。なぁ?」


 アルドは、笑いながら俺に刺さった剣を抜いた。

 痛みなんていうのは、何度も味わってきたし、慣れていたハズだが……。そんな今までの痛みより、全然痛いのは何故だろうか。

 裏切られたという心の痛みが、そうさせているのだろうか。


「……グッゥ……ア、アルド……テメ……!!カタリーナ、か、回復を……!」

「エーレン。すまないが、承服しかねる。」

「……は、は?」


 俺は、そのまま倒れこんでしまう。今の俺の心境は、どう表現するべきなのだろうか、強いて言うなら、痛い。身体も心も。

 俺達勇者パーティは、共に強くなり、共に仲間を想い、迫りくる魔王の幹部を打ち倒し、ここまで来たハズだろう?どうして、こんな事をするんだ?


「やりすぎー流石に……エーレンかわいそだよー!まぁ、あたいは伝説の剣さえ貰えりゃ問題ないけどー」

「お……い……!エリル、俺の……剣をどうする、つもりだ……?」


 そういうと、エリルは俺の剣を拾い上げ、まじまじと見つめた。


「んー?売るに決まってんじゃんかー?……うひょー!いい剣ってレベルじゃないね!さっすが伝説!こいつは値が張るよ~!」

「はぁ、君達……まだ決着は着いてないだろう、一体何をしているんだ?さっさと済ませようじゃないか……。この『封印の宝珠』で、ワシが研究の為に“魔王の力”を貰う約束だったろう?」


 熟練の老魔術師、アンドレアスが魔王に近寄る。

 腰に掛けた袋の中に手を入れ、中から透明な球体を取り出した。

 透き通る程に綺麗な水晶『封印の宝珠』。どんな力であっても封印してしまうというエルフ族に伝わる伝説の道具だ。

 魔王を倒し、力を封印した後に、エルフ族の民に返還する約束のハズだったのだが……。


「はいはい、分かってますって……。慌てんなよじーさん。」


 アルドが欠伸を零して、魔王に近寄る。

 魔王の紅蓮の髪を掴んで、顔を自分の方へ強引に向けた。


「な!人……間ッ!!」


 魔王ラバナは、抵抗しようにも、もう体力も魔力も無いのだろう。

 ただ、アルドを睨むことしか出来なかった。


「わりぃなー……魔王さんよー?ちょっと、力貰うぜ?おーい、じーさん!やってくれ!」


 そう言うと、アンドレアスは右手に持った『封印の宝珠』を天高くにかざし、奇妙な言葉の羅列をぶつぶつと口ずさむ。


「や、め……!どうする……つもりだ!」


 俺は、途切れそうな意識の中で、何とか力を振り絞り、アンドレアスの足を掴む。

 しかし、何の意味もない。アンドレアスはただ無視して、詠唱の様な言葉を紡ぎ続ける。


「エーレン、アンタもしつこいね!もう仕方ないなぁ…はい!」


 エリルがおもむろに袋の中から取り出したのは、ポーションだった。

 それを俺の目の前に置いたのだ。これは、まさかのドッキリ展開か?

 どちらにせよ、生かしてくれる事には間違いない。


「なんだ……よ!」


 俺は、そのポーションを手に取り、一気に飲み干す。

 ポーションは、色よってはどんな深い傷でも治してしまうと言われている。

 緑、赤、青、多種多様な色のポーションがある。

 おれが今飲んだのは、青色のポーションだ。効力は大回復、貫通した傷だって治す事ができる万能薬だが、ちょっと高い。それをくれるという事は、ドッキリか何かに違いない。


「…………あ、れ?!」


 何故か、身体が動かなくなった。

 電撃でも浴びたかのような痺れだ。全身が麻痺して動けない。

 だが、大したことは無い。この程度なら何度も経験している。


「それは、痺れ薬……。色がブルーポーションと同じですから、見分けが付きにくいですからね。エリルさんも中々酷いことを成されますね。」

「にししっ!ま、バカなエーレンは間違いなく飲むと思ってさー!」

「おいおい、遊ぶなよ……ったく……。」


 こんな奴らを仲間だと今の今まで信頼していた俺も馬鹿だ。


「許せねえ……!アルド!アンドレアス!カタリーナ!エリル!」

「え、嘘ー!?た、立ち上がった!?」


 エリルは驚嘆の表情で、俺を見た。まぁ、当然と言えば当然だろうか、あれくらいの麻痺で俺が何時間も硬直する訳ねぇだろ。


「エリンの名の下に救済を――<キュア>……ッ!!」


 応急処置に程度にしかならないが、俺の胸の傷を塞ぐ。

 大分出血した。このままだと間違いなく、死ぬ。

 その前に逃げる……のは、多分無理だろうな。こいつらの強さは、俺が保証している。


「やるしか……ねぇか……。」


 やれやれ、運命とは良く分からないな、まさか仲間と戦う羽目になるとは……。

 俺は、腰の鞘から剣を抜こうとしたのだが、


「あ、取られたんだっけー……?」


 しまった。エリルが俺の剣を持っているんだった。

 正直な話、俺は魔法が苦手だ。初等魔法しか使いこなせない。

 剣術一筋で来たのが仇になったか……。どうするか、考えている暇なんてない。


「ったく、しつけーなー!エーレン!?」


 アルドが振り返り、掴んでいた魔王ラバナの髪を離して、苛立ちながら再び俺の方へ向かって走って来る。

 このままだと多分死ぬ。俺は、覚悟を決めた。


「やるしかねぇ!我が肉体、我が呼び掛けに応え加速せよ――〈ブースト〉!」


 身体能力向上系魔法〈ブースト〉。

 神経や筋肉の機能を向上させ、動きを速くする補助バフ魔法だ。例え、アルドと対等に戦えても、控えが三人もいては歯が立たない。

 この傷で、しかも武器も無い。あまりにも分が悪すぎる。

 もう、これは脳内選択肢に委ねるしかない……。


【たたかう】

【にげる】←


 まぁ、そうだよね。


「逃げる!」


 俺は、出口に向かって走りだす。

 〈ブースト〉のお蔭で俊足で走る事が可能だ。

 これで、追いつかれる事は流石に……、


「おせぇよ、エーレン!」

「なっ?!は、はええッ!?」


 アルドが俺を抜かして、俺の二、三メートル先で止まった。


補助バフ魔法を掛けられるのはお前だけじゃない事ぐらい分かんだろ?こちとら中等魔法までなら無詠唱で発動できる有能な僧侶プリースト様がいるんだぜ?」

「カタリーナか……!」


 迂闊だった。カタリーナは回復から補助魔法まで使いこなす僧侶プリーストだ。


「そういうこっ……たッ!」

「うがぁッ!?」


 俺の腹部に重い蹴りが一発入り、数メートル後ろに吹っ飛ばされる。

 塞いでいた胸の傷口が開き、再び血が溢流する。

 この威力、間違いなく〈ブースト〉だけじゃない。他にも、色々な補助バフ魔法が掛かっているに違いない。

 クソッ、痛い、痛すぎる……。どうすればいい?やばい、力がもう入らない。

 無慈悲にも、苦しんでいる俺の方に目掛けて、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる足音が聞こえる。


「わりぃな、エーレン!」

「何で……こんな……事をッ……!グハァッ!!」


 アルドは、背中の傷口を踏み潰した。

 一回、二回、三回……何度も、何度も、何度も……俺の傷口を踏み潰す。


「何で、かって~?いいことを教えてやんよ!!俺達は、お前を利用していたんだ!お前はちと真面目過ぎたんだなーこれが……全員の性に合わなかったんだわ。勇者の力を使って金儲けなんていくらでも出来たハズだろ!!?」


 何度も、何度も、何度も、何度も……怒声と同時に背中に激痛が走る。

 他の仲間は?詠唱を続けているアンドレアス以外の全員は、ただ見ているだけだ。


「じゃあ何故、気に食わないのに一緒に旅を続けたかって?そりゃあ、魔王の存在は俺らにも邪魔だったからだ!魔王を倒して、勇者の仲間として称賛を浴びれば、評価はうなぎ登りで魔王もいない!一石二鳥で、裏の仕事もしやすくなる!更に旅の途中で、勇者は旅の途中に死んだって事にしとけば、無事帰還した俺達が晴れて勇者になれるっつー落ちなワケ……よッ!」


 そう言いながら、何度も、何度も、何度も、俺の背中を踏む。

 既に痛みの感覚は無くなり、意識が徐々に無くなっていく。


 これが……俺の人生なのか?最終的に利用され、裏切られ、殺されて……。

 いいのか、それで?ここで死んでもいいのか?俺が……ここで、こんな奴らに?


 いや、まだだ。勇者の皮を被ったコイツらクズどもを放置するなんていうのは、何というか……あれだ。


「はぁ……はぁ……。ま、エーレンの活躍あってこその魔王討伐だからな、ちゃんと名誉ある戦死をしたと伝えておくから安心しろ?な、カタリーナ?」

「その意見には賛成です。……神の導きのあらんことを勇者エーレン……」


 消えゆく意識の中で……俺は、誓った。


「ま!あたいは反対したんだよ〜殺さない方がいいってね!だから恨まないでね、エーレン?」


 勇者の役目だとか、宿命だとか、仲間だとか、パーティだとか、そんなものはもう辞めて、全部ここで終わりにする。

 人生の宿命である魔王は倒した。ならば、ここからは、俺の俺だけの人生を始めようじゃないか。


「……必ず、復……讐して……やる」


 そして、エーレン=アーダルベルトは意識を失った。


 ――◆――


 三年半前、世界に平和が訪れた。

 誰の支配もなく、平和で自由な世界が再び訪れたのだ。

 皆が彼らの生還を歓迎し、祝った。皆が彼らに感謝をし、涙を流した。

 世界に平穏もたらし、称えられたのは五人の勇者達だ。またの名を『四英雄しえいゆう』と呼んでいた。


 その勇者は、この五人である。


【剣の勇者】――アルド=ガードロフ。

【魔術の勇者】――アンドレアス=ベーベル。

【治癒の勇者】――カタリーナ=ベルハルト。

【商人の勇者】――エリル=クラウス。


 そう、何かがおかしいだろう。

 このクズ達が“勇者”なんて肩書きを貰っている所と最初に魔王討伐の旅に出たハズの男が、生還した勇者メンバーに入っていない事。


剣士ナイトのクズ】――アルド=ガードロフ。

魔術師ウィザードのクズ】――アンドレアス=ベーベル。

僧侶プリーストのクズ】――カタリーナ=ベルハルト。

【商人のクズ】――エリル=クラウス。

【棄てられ勇者】――エーレン=アーダルベルト。


「俺なら、間違いなくこうする」


 エリドニア大陸、マルベス地方に王都エーレンフリートという国がある。その国の領内に、冒険者と商人

 の街『セオレム』という街があり、更にその街の中心には、人々の集まる大きな広場があった。

 夕方、薄暗くなってきた頃、広場に建てられた『四英雄しえいゆう』の石像を睨んで、深く被ったフードで顔を隠し、ブツブツと文句を垂れる男が居た。

 はい、そうです。“元”勇者のエーレン=アーダルベルトこの人です。


 裏切られボロボロになった俺が、どうして生きてるのか、自分でも不思議でならない。

 確か、意識を失ってから一度、奇跡的に目が覚め、辺りを見回したが誰も居なかった。


 いつ死んでもおかしくない状態の中で、いざという時の為に一枚だけ、ふところに薬草を入れている事を思い出した。

 それは、青ポーションの原材料の薬草だ。そのまま食べても問題ないが、かなり苦く、食べるに適してない……が、ちゃんと効力はある。

 俺は、躊躇せずに薬草を食べたが、死ぬかと思うくらいに不味かった。傷は完治まではいかなかったが、何とか脱出できたという訳だ。


 それから、俺は身柄を隠すため、今は『魔術師ウィザード』に転職して、細々と『冒険者』をやってお金を稼いでいる。

 魔術師ウィザードの装備であるローブには、大きなフードが付いており、いつもそれを深く被って、常に顔を隠して、素性をばれない様に努力している。


 ちなみに、その『冒険者』……っていうのは、誰かが依頼した仕事をこなして、その対価としてお金をもらうという至極明瞭なシステムで、それをこなす者達を総称して冒険者と呼んでいる。その依頼内容は、モンスター討伐や素材採取や店の手伝いや土木工事などといったお手伝いのような仕事など、様々だ。

 多くの冒険者は、モンスターの討伐や素材採取などの依頼を受ける事が多いが、戦う事が苦手な冒険者は、工事や店の手伝いなどの仕事をこなしている。

 俺は未だに魔法が全然ダメだ。だからこそ、唯一使える剣術で下級モンスターをひたすら狩ったりして、“ある目標”の為に三年前からお金を貯め続けていた。


「あー、そろそろ時間だな」


 夕暮れの紫色の空を眺めて、俺は呟いた。

 街は、暗くなるにつれて当然のように人数も減ってくる。だが、夜にしか開いてない店だって沢山ある。

 酒場や宿屋、むふふな店にいやーんな店など様々だ。夜は、昼とまた違った一面が見れるのが、この街の特徴でもあるのだ。


 その中の一つ、俺が行くのは、奴隷売買の取引が盛んに行われる酒場だ。

 店内は、鹿や熊の剥製が壁に飾られており、ちょっと高そうな絵もいくつか掛けられている。更に会員制この店は、入店する際に、会員証の提示を外に立っているクッソ怖い筋肉モリモリな屈強な男に求められる。最近では、奴隷売買もグレーゾーンになってやりずらくなっており、こうして、ばれない様に会員制にしているらしい。


 それでも、そこには毎晩多くの人が集まる。無論、皆が奴隷の売買の為にだ。

 俺はここで大事な取引がある。その取引の為に俺は、金を貯めてきた。

 店の前に立つ男に会員証を提示し、俺は店内に意気揚々を入店する。


「あら、きたわね。勇者様❤」

「その呼び方は止せと言ったろ?ほらよ」


 俺は、端の方で座っている女性口調オカマの奴隷商人に、硬貨の入った袋を置いて椅子に座った。

 こいつは、【奴隷商人】――エリニア。俺が探していたものを扱っている男だ。

 エリニアには、俺の顔を見た瞬間に勇者エーレンだとバレた。しかし、俺が勇者だという理由だけでお気に入り顧客リストに登録された。

 更に俺が欲しがっている商品は、かなーり扱いに困っているらしく、買い手を探していたため、迅速で話が着き、割引もしてくれた。


「約束通り、100万サーク入っているハズだ」

「ふーん、やるじゃない!本当に持ってくるなんて~!アタシ感激~!」


 エリニアは、硬貨の入った袋を開けて、右手を袋の上に置いて、目を瞑った。


「じゃ、数えさせて貰うわね。<サーク・トレース>~!」


 商人特有のスキル、<サーク・トレース>。まぁ、単純におサークを完璧に、そして迅速に数えるっていうスキルだ。これを使った詐欺も少なくないのが現状だがな。


「どうだ、足りるか?」

「完ペキ!パーペキ!魅力的~!!よっ!丁度100万サーク頂くわね❤」

「よっしゃ、きたーっ……!」


 安堵のため息を着いて、小さくガッツポーズ。

 ようやくここまで来れたな……っていう感じだ。三年半、捜し続けた手掛かりとようやく対面できる


「それじゃ、明日の朝にまたここに集合ね?いいかしら?」

「あぁ、分かった」


 ある日、『魔王が死んだ』というニュースは、瞬く間に世界に拡がった。

 同時に『勇者も死んだ』と言われ、その際に伝説の剣『アロンカリバ―』を火口に落として失ったという、あまりにも都合のいい情報も流れた。


 だが真実は、両者とも死んでなんていなかった。


 嘘偽りの情報、その情報源は、帰還した『四英雄』と呼ばれる勇者達によって作られたものだ。

 しかし、皆は勇者達の発言を疑う事は……一切無かった。

 当然と言えば、当然である。世界を救った英雄が嘘をつくわけがない。悪が吐く真実よりも正義の吐く偽りこそが、皆にとっては真実であると、俺は深く思った。

 だからこそ、始めようじゃないか、


「でもまさか、奴隷の“魔王”を買ってくれる人が勇者様なんて~……、何か皮肉~!」

「仕方ねぇんだよ、魔王の手も借りたい事だってあるんだよ」


 魔王と始める復讐劇を――……。

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