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魔女が剣を握ったら…  作者: 豚肉の加工品
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魔剣憑き 3

現実世界とあの世の狭間。

正真正銘の異世界。

秒針は止まり、無駄な存在は弾き出され、そこに必要なものだけがその世界に残る。そして虚無とも言える空間には闇を纏う少女とを青年がいた。


「君は『何者』かな?」


悠太は問うが返答はない。

ただ静かに魔剣を構えた。


「一般区域にも目覚める可能性があるなんて君と初めて出会ったときにちゃんと確認しとけば良かったよ…………」


相手に応じて悠太もイリ―の魔力から複製した〈聖剣 ゼウス〉に似た剣を手に握った。


『貴様……ただの人間、か?』


聞いたことのある声からは驚愕を含めた声音。


「……そうだよ」


『ならおかしいな、貴様からは何も感じないことくらい初めから気が付いている』


「ははは、だから最初から戦闘態勢でもなかったし気が付かれもしなかったのかな?」


『…………それは魔法だな?なるほどな。貴様も、我を否定しに来たのか…?』


「否定?」


『人の子に我が力を与えるのは普通ではないのか…?それを普通にしたのはそちら側だろう、にも関わらずただの人の子が化け物になると人間はこうも情を失う』


体の震えを誤魔化すために体を抱くことはの姿に胸が痛くなる。

魔剣には悪魔が宿り、聖剣には神が宿る。

魔力を持った者たちが最初に教わる基礎事項の一つ。

一般区域で守られている区民はその基礎事項の一つすらも理解していない。それは元々戦うために生まれ育ってはいないからだ。


(なるほど……)


こういったケースはよくあることだ。

魔力のない者から聖剣または魔剣に目覚める者はこの世界にはあまりない。

だからこそ、この琴乃葉ことはという少女は自らの家族から迫害じみたことをされてしまったのだろう。

そのことを両親が気づくと、「魔力がない私たちから、どうして普通ではない子が産まれるのか?」と疑問が生まれ、不安に思い、感じたことのないような得体の知れない恐怖に迫られる圧迫感が押し寄せてくる。

その焦燥感から来るのが自身の保身。


「弱者は得体の知れない恐怖とは戦えない…………僕の師匠の言葉」


『あぁ……その通りだ。自分を守るためならば家族すらも切り捨てる、人間というものは蓋を開ければ残酷で非常で醜い存在しかいない』


一般区域と魔導区域は本来相容れない存在。

本来なら起こりえないことが、琴乃葉ことはという少女に降りかかってしまった。


(親が娘に関心がなく病弱な体で独りきり……)


そして、何らかの原因で完全に目を覚ました悪魔が彼女の心を汲み取って表側に出て来てしまった。


「琴乃葉ちゃんに変わって貰うことは出来るかな?」


魔剣、聖剣とは本来自在に操れる。

まずはこの事実を琴乃葉自身に伝え、理解してもらわない内は埒が明かないことを知っているため表側に出ている悪魔に頼む。

だが、


『それは出来ない』


強い拒否反応……

断固として普通の人間には会わせる気がないことを全面に出す。


『貴様のような何もない空洞にも似た存在には、何を話しても無駄なことは我にでも分かる』


「確かに悪魔や神とは縁のない男だけどね」


『なら、失せろ。貴様には要はない。我が要があるとすれば同じような存在だ』


イリーの威圧とは全く異なる圧力。

これが魔剣に宿る悪魔本来の殺意。

だが、ここでは何が何でも退けない理由があった。

初めて普通に話してくれる一般区域に住む人が、家族のことで自分自身のことで悩み苦しんでいるのだ。


「そうもいかない」


悠太の魔力が徐々に高まる。


「僕は空っぽだけど君が思っている以上に普通じゃないんだ……」


黄金の宝剣が何本も何本も何本も何本も悠太の周りを囲むように生成されていく。


「琴乃葉ちゃん。聞こえてなくてもいいんだ、今からの僕を見ていて欲しい」


例え相手が神と対等な存在でも——————引く理由にはならない。


「絶対に助けてみせるから……」


空間魔法を周りにいくつも作り出す。

そこからは黄金の宝剣が無数に複製される。


『戯言を…人間風情が我を鎮められると思っているのか?』


そう簡単にはいかないと無理やりねじ伏せるような力…………


神魔開放エビルノヴァ


「え?」


それの力によって空間魔法は一瞬にして食い破られる。


『馬鹿にするのも大概にしろ人間、人間如きの〝魔〟が神と対等な神魔()に通用すると思ったのか?』


魔剣に対抗する手段は限られている。

聖属性の付与エンチャント、光属性の付与エンチャントを持つ攻撃。あとは聖剣で対抗するしかない。

だからこその聖剣の模倣での対抗……が、対抗する力が違いすぎた。

相手は人の体を借りているとは言え神魔。


「…………」


『怖気づいたか?なら話は早い——————死ね』


一瞬


悠太の目の前には既に禍々しい大剣が迫っていた。



だが、悠太は聖剣よりも効果の薄い付与エンチャントした攻撃しか放てない。

ならどうするかと考えた時期が会った。

答えに辿り着くまでには相当な時間がかかったが、おかげで対抗することが出来るうる可能性を秘めた力を手に入れる事が出来た。

上代悠太にだけ許された『異端児』とも称された反則的な魔力量に、そこから生まれた能力アビリティによって新たな魔法を創り出した。

それは、


「《破邪聖天トゥルーズソウル》」


魔法と魔法の融合。


聖属性と光属性は似たようで違うも存在だ。

聖属性は浄化する光、光属性は滅する光だ。

なら、二つを掛け合わせたら〝魔〟に対抗することの出来るだがを持つのではないかと考えた。

まだ未完成体だが体、武器に宿すことなら出来る。


『その輝き……!!』


体を覆う魔力によって振るった大剣は弾かれ、体を大きく仰け反らせた。


悠太の周りにある黄金の宝剣には、とてつもない魔力量が付与エンチャントされ一振りでもしたら簡単に折れてしまいそうだ。

が、相手も悪魔。

何をされるか分からない現状での正突破は無謀に近い。

油断はせず、悠太の異常なまでの魔力量で攻撃手段を増やすため空間魔法を展開している。


「生憎と僕は諦めが悪くてね……」


魔を完全消滅させるためだけに、悠太によって編み出された魔法。

黄金は更に輝き、その輝きは悠太のことを照らし続ける。

まるで本物の神が降り立ったような、そんな感じだった……







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