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魔女が剣を握ったら…  作者: 豚肉の加工品
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世界最強 一人目 2

昔に使われていた訓練場は、今やただの広い広場となっている。

訓練場として使うのは悠太くらいなものでその他の人らは近づきすらもしない。

雑に修理されたフィールドに生い茂る雑草を片付けた記憶は懐かしい。

中に入ると観客席があるがとても人が座れるものではないくらいに崩壊していた(・・・・・・)

「さぁ、貴方の力を存分に見せて貰いましょうか」

悠太は返事を返さない。

無言のまま空を見ている。

そのだだっ広い空間の真中には二人の姿があった。

何やら殺伐とした雰囲気を出しながら、向かい合っている二人の姿のからは闘志と殺意が見える。

「さぁ……、始めましょう?悠太さん。待ちきれませんよ、もう」

体を震わせ、この戦いに興奮を覚えている様子だった。

笑う表情は強者の顔つき。

イリ―の周りからはバチバチと魔力が音を鳴らしている。

「戦うのは構わないけど、一つ条件をつけえていい?」

やっと言葉を返したと思うと少し悠太の様子がおかしいことに気づく。

(雰囲気が変わった……)

「ここであったことはまだ内緒にしててね?」


とても静かだ。


悠太も肩幅に足を開き、心を落ち着ける。

相手は世界最強だ。

慢心はしない。

強くなるために努力はしてきたつもり、でも〝この時〟のためじゃない。

世界最強と戦う時のためにこの力を使えるようにしたわけじゃない。

この力は契約者テスターとして生きるために培ってきた力だ。

だけどこの力、

「どこまで通用するか………」

小さく呟いて目の前の強敵を見据える。

イリーはいつの間にか黄金に輝く剣幅広い宝剣を手にしている。

(これが聖剣……)

口角が上がり、目つきが鋭くなっていく。


「戦いましょう?悠太さん」


狂気的な笑みと共に一気に魔力が爆発した。

金色の魔力がイリーを包み、激しく荒ぶるとイリーは悠太の方に腕を伸ばし指を鳴らす。

悠太の目の前で予兆もなく閃光が起こる。

「隙ありです」

耳元でイリーの声がした瞬間に、視界が真っ白になった。

「閃光ね………」

視界を潰し、更に光の速さでの奇襲。

悠太の片腕には魔法陣が展開されている。

気配で分かる。もう既に目の前であの黄金の宝剣を振り上げている…………

文字通り雷鳴の如くの速度だ。

微かに聞こえる風を斬る音。

空間移動テレポーテーション

その声と共に轟音が鳴り響き、旧訓練場は大きく揺れた。

所々がかけているフィールドに世界最強の一撃が入り、跡形もなく吹き飛んだ。

大地が焼け、大きなクレーターが出来た場所に悠太の姿はなかった。

「………加減がしにくいのがネックですよね。これ」

自らの聖剣を眺めながら呟く。

悠太のいたはずの場所は跡形もなく消し飛び、地面を何層か削り取られている。

だが悠太が死んだ気配はなく、ここにいる気配もない。

「もう終わりのようですね」

訓練場はイリー一人だけの声が響いた。

確かに今の一撃を生身で受けたら人間なんて跡形もなくなってしまうだろう。

本当に死んだ気配すらも残らない。

悠太の吐息の一つも聞こえないほど静かな空間と化した訓練場は、もはや戦いの終了の合図だったと思ってしまったイリーは本当に一瞬だけ気を抜いた。

それが悠太にとってどれだけ好機チャンスか……イリーはまだ知らないのだ。

イリーの真後ろには衝撃で完全に崩れた旧闘技場の一部が見える。

その光景に歪な境界線が広がった。

境界線は裂け黄金の剣を持った悠太(・・・・・・・・・・)がイリーに振り下ろす。

「融合剣術=無間むけん

ふと後ろから悠太の声がし、イリーは思わず振り返ると

真横から黄金に輝く宝剣が迫っていた。

「………は、ははっ!!」

思わずな奇襲により横っ飛びで避けるイリー。

イリーは悠太の姿を見て興奮してしまった。

空間移動テレポーテーション!だから私は気が付かなかったんですね!!」

あの先手必勝が綺麗に決まった直後に、空から雷撃を纏った剣撃を放ったのに無傷……

これほどまでに嬉しい誤算はないッ!!

横っ飛びからの空中への跳躍、コンマの速度で悠太の目の前に姿を現すイリー。

「体術と魔法の複合術ですか?」

「いや、どちらかというと剣術と魔法かな」

悠太は思いっきりイリーに切りかかるが、イリーは片腕で受け流し悠太の体が流れた一瞬の隙をつき、

「それは私の聖剣ですね……複製魔法ですか?」

「そうだよ、かなりの劣化版だけどね」

悠太の持つ黄金の宝剣を魔法で消し飛ばした。

「まだまだ」

悠太の背中からは円を描くように剣が無限に出現した。

黄金の翼のようにも見えるその剣の数。

「複製魔法の応用ですか。しかもかなり巧妙に複製されていますね」

複製魔法は同じものを創れば創るほど、質が徐々に落ちていくものだ。

全く同じように創るのにもかなりの想像力が必要なのに、それを一瞬では数え切れない程に複製する。

相当な魔力量だ。

「後は、その剣がどこから出来たのか……ですね?」

「その前に、少し勘違いしてるみたいだね」

悠太の姿が一瞬にして消える。

無音で何かとてつもない存在が迫って来る感覚がイリーには伝わった。

(これは、空間魔法……)

空間魔法も複製魔法も、本来学生が使えるはずの魔法を使う悠太を見て背筋が震え冷や汗が垂れる。

悠太の存在がこの旧訓練場から消える。

代わりに何もないところから黄金の宝剣こと〈聖剣 ゼウス〉の複製版がまるでマシンガンのように飛んでくる。

それを本物の〈聖剣 ゼウス〉で撃ち落としている間に考える。

確かにこの世の中では「契約者テスター」が一番強い。

それで魔法も使えたら更に強い。

これは当たり前の事。

百人いたら百人が頷くほどに絶対的な真実。

だが、その事実を覆すほどの魔力を持っていたらどうだろうか?

今まではそんな人間はいなかった、というよりもいなくて当然だ。

何故なら人間には神や悪魔が宿るから……

(相手が魔女なら話は別なのですけどね)

契約者テスターではないが、魔法が最強。

そんなある意味常軌を逸脱している存在は魔女くらい。

神に対抗することが出来るのは悪魔、悪魔に対抗することが出来るのは神。

そしてどちらにも対抗していたのは————魔女だ。

だが、この考えはすぐに捨ててしまう。

何故なら魔女は字の如く、女性だからだ。

(ならこれは?)

自分の今の状況を冷静に見つめる。

撃ち落としても撃ち落としても飛んでくる無数の剣。

空間魔法というのは魔法の中で最も危険な魔法だ。

自分を異次元に飛ばし、異次元から元の次元に戻る魔法……これが本来の空間魔法。

空間移動というのは異次元の中に入り、時が止まった世界を歩み、時が動いている世界に戻って来ることによって移動する高等魔法技術の一つだ。

発動するだけでもかなりの魔力を使うのに、加えて複製魔法だ。

これは相手の魔力形状を完全に読み取り、同じモノを作り出す魔法。

そして聖剣を複製と来た。

これはまるで、

大昔に魔女が神や悪魔に対抗するために使っていた魔法のようだ………

精密に精密を重ねたある意味異次元な技術を平然とやってのける人間なんて、誰がどう見てもおかしいことは間違いない。

空間魔法によっての移動、体術と魔法の融合、聖剣の複製……

「これが……『異端児』!!」

戦っている最中にも関わらず、ここまで思考したのはいつ振りだろうか……

昔から戦うことは好きだったが、今の戦いはまた格別だ。

真横からの突然の襲撃、一本の剣を弾き返す。

(ここまで自分に余裕がないとは……)

真上に魔法陣、五本の剣をギリギリのところで躱す。

躱した直後足元を空間移動テレポーテーション中の悠太に抄われ重心がずれたところに剣が現れる。

それを自らの聖剣で弾き飛ばした瞬間、懐に剣を構えた悠太が現れ胸部に掌打をくらう。

「少しは分かってきたかな?僕のこと」

「この剣の大量生成は……魔法じゃなくて、能力アビリティ……?」

そう、この答えしか出て来なかった。

実際に何百と剣を作り出す魔力なんて、〝日本に住んでいる全ての人間の魔力を喰らっても足りない〟だろう。

故にこの答えだ。

今度は悠太が一瞬で目の前に現れる。

「正解」

とても静かで滑らかで繊細で精密な魔法の使い方だ。

悠太の姿がそこにいることに気づくのが少し遅れてしまうほどに。

が、イリーの体は反射的に〈聖剣 ゼウス〉を悠太に目掛けて振り下ろす。

あくまで反射的に、よって剣は空を斬ることになった。

だが流石聖剣と言ったところか、その剣が地面に衝突すると空から雷撃が落ちる。

「僕はね、魔剣も聖剣にも目覚めていないけどね」

背後から姿を現す悠太。

呼吸を整える隙も与えてくれない。

「ならッ!!」

イリ―は遠心力を利用し背後の気配を薙ぎ払う。

「どうして能力アビリティを宿しているんですか!」

薙ぎ払う剣も空を斬る。

「………イリー達、契約者テスターでいうと聖剣や魔剣に目覚めた時の副産物なたら、僕の場合は魔法を創った時の副産物かな」

両隣から気配がすると思いきや、空間の裂け目から複製された黄金の宝剣が姿を現す。

イリ―はそれを飛んで避けるが、それを失敗だと悟る。

自分の周りは防御障壁で囲まれる。

「ハハハ……何故悠太さんが『異端児』と呼ばれるか本当の意味で分かってきました」

これが規格外という意味。

これが異端と呼ばれる所以。

(まるで、大昔の魔女が本から出て来たみたいです……)

魔力の圧だけで障壁を割り、障壁は粉々になり消え去る。

空中にいる状態で体制を整えようとすると周りには数十本の宝剣が現れた。

イリーは思わず笑みを浮かべてしまう。

あぁ……心地いい

思い出すかの様にアメリカにいた時のころを思い出す。

自分の聖剣が顕現リアライズされたとき。

相手は本気で向かってこず、受ける被害を最小に抑えるため軽い攻撃を受けすぐさま降参を選ぶ。

それからずっとそうだ。

一回だけ、自分の聖剣がどのくらい凄いのか調べたことがあった。

大昔の戦争時、広範囲の戦力を完全に消滅させた雷の剣。

その使い手はこう呼ばれていた。


壊滅王カイゼル〉と……


どうでもいいと思った。

変な名前を付けられるよりも先に本当にしたことがあった。

それは本気の相手と戦うこと。

大体の戦いは降参。

そんなつまらないものはもう見たくなかった。

だから日本に来た。

自分の知らないことが知れる他に、本当の闘いがしてみたかった。

ここの学園長に悠太の写真を見せてもらい、わざわざアメリカから来た。

理由は単純。

聖剣も魔剣も使えない人間が、魔剣か聖剣目覚めた人物しかなれない契約者テスターになったからだ。

この人は強いと思った、自分の道を歩いていたから。

上代悠太という人間と会うために、戦うために、知るために。

だから日本に来た。

そして……



「た……楽しい…ッ」

ここまで戦いが面白いものだと今、感じている最中だ。

イリ―も負けじと雷撃を全ての剣にぶつける。

周りには轟雷が降り、宝剣が全て消滅する。

突然、悠太が先程持っていた黄金の宝剣がイリ―を囲むように地面に〝何本も突き刺さる〟

(こんなモノッ……!?)

〈聖剣 ゼウス〉を地面に突き立て轟雷で周りに突き刺さる模造品を吹き飛ばそうとしたが轟雷は地面に突き刺さる剣に吸収されイリーの力が一時的に消滅した。

(この剣はフェイク!?)

悠太の狙いが自分の魔力の質の分析と解析、そして吸収だと気が付いた。

それに気づくと同時に足元から剣が生えるように出現する。

イリーはその攻撃を避けるため空中に飛んだ。

魔法解放フルパージ……」

突如、イリーの目の前に悠太が出現する。

悠太の片方の瞳が金色に輝き、黄金の剣は形を変え雷を喰らい成長しているようだった。

「これが僕の能力アビリティ、『生成クリエーション』の力」

まだまだ〈聖剣 ゼウス〉に似た聖剣が生成される。

イリ―はその本気の悠太の姿に見とれてしまった。

「そして、相手の全てを解析しコピーすることの出来る自作の魔法。『根源生成クリエイティブアナライズ』」

今イリ―の目の前に映るのは黄金の宝剣を片手に自分に振りかぶる悠太の姿だった。

その宝剣には雷が宿っている。

きっと力を利用されているのだろう。

(強い……)

悠太が宝剣を振り終える瞬間まで見ていたかった。

きっと綺麗に寸で止め、手を差し伸べてくれるなんて思っていたら……

悠太は観客席に向かって、今吸収し溜めていたイリーの雷を本気で放つ。

観客席がゴッソリ吹き飛び……旧訓練場に向こうの景色を眺められるくらいの大きな穴が開いた。

「淳さん、昴さん。ストーキングは良くないですよ」

二人の女性が土煙から現れる。

「これは酷い仕打ちだなぁ~、悠太」

「そうですよ。いきなり攻撃してくるなんて」

静かな暴風に身を包んだ二人が現れた。

悠太は深く溜息が漏れた。

この二人、近藤淳と昴は双子の姉妹で悠太の兄弟子に当たる人物であり〝姉〟でもある。

「なんでここにいるの?何て言わないでよ?悠太」

「そこの女子も含めて、校則違反で一週間自宅謹慎ですからね?」

観客席から二人は浮遊魔法によって悠太の隣に飛んでくる。

悠太はイリーを見て目と目が合い、視線で謝る。

するとイリーが立ち上がり、悠太の所へ近づきながら

「学園長のとこに行きましょう。悠太のことに関しては私から学園長に話しますので」










その後、学園に帰りイリーが学園長に言ったところ簡単に許しが出た。

学園長の判断に淳と昴は猛烈に抗議したが、

「悠太くんがイリーちゃんの子守してるからね~、仕方ないんじゃない?」

こんな適当な回答で二人は黙りこんでしまった。

チラッと二人はイリーと表情を見てみると、悠太の方を向いて微笑んでいる姿が見えた……

まるで恋をした乙女のような顔つきは先程まで大暴れしていた世界最強の一人の冷徹な笑みとはまるで別人だった。

「そうだ悠太くん。君だけ少し残ってね」

学園長に直々に呼び出しをくらうと皆は素早く学園長室から出ていく。

「イリーちゃんも、これは悠太くんとの秘密だからちょっと席を外してくれない?」

「嫌です。悠太の秘密なら私も知る権利があります」

「…………ならいいや。悠太くんも反対はしてなさそうだしね」

学園長は悠太に一つの写真を渡した。

「これが、今回の依頼」

その写真に写っているのは一人の女の子だった。

「え?」

「一般の人が急に目覚めちゃうと暴走しちゃうんだよ。それで、魔剣憑きなんて呼ばれてるよ」

「この子は……」

「自覚がないから普通に学校にいるんじゃない?」

「……わかりました。では、僕は授業に戻ります」

初めて魔剣憑きという言葉を耳にしたと同時に、悠太は—————写真に写る彼女のことを知っていた。


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