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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第3章 〜やーーっとカイロキシア ちょっぴりイェンシダス????〜
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第73話〜証明〜

【エリナス サラサヴァティ】

エリナス王都の壮麗な宮殿。

サラサヴァティの中心にそびえるこの宮殿は、

数百年にわたりエリナス王家の象徴として存在し続けてきた。

その王宮の広間では、女王カタリーナ・ベタンクールが王座に座し、前にひざまずくフェルマルタ王子を見つめていた。

広間の壁に飾られた紋章、天井に施された荘厳な彫刻、そして整然と並ぶ御賢侯たちの姿が、この場がただの再会の場ではなく、国の行く末を決定づける重大な場であることを示している。

フェルマルタは王座の前で深々と頭を下げた。


「母上、私は無事に戻りました。」


その声は力強くもありながら、長い旅路の疲れが滲んでいる。

彼の衣服は旅の埃を被り、傷跡がこれまでの道のりの険しさを物語っていた。

カタリーナ女王は、しばらく息子を見つめた後、静かに頷いた。


「よく戻った、フェルマルタ。」


彼女の声には冷静な響きがあったが、内心では安堵が広がっていた。

王子が無事に帰還したことは、エリナスにとっても吉報だ。

何より、女王にとっては最愛の息子が無事に戻ったという事実そのものが、何にも代えがたい喜びだった。


「私が無事に帰還できたのは、ここにいるみなさんのお陰です。」


フェルマルタの視線は、背後に控える者たちへと向けられた。

そこには、カテリーナとマレーらが並んでいた。


「お前の言う通り、皆にも感謝せねばなるまい。」


一行はカタリーナの謝意に黙礼で返す。


「それで、向こうでは何があったのだ?」


カタリーナがフェルマルタへ問う。


「護衛係の中に私と同じ異能者が紛れており、その者がファビアン王を殺害しました。」

「なんと…。

 その者は正規の護衛係なのか!?」

「いえ、恐らく違います。

 彼は見慣れない顔でした。」


フェルマルタは首を横に振った。


「大慌てで逃げるように宮殿を出ましたが、そこから先は襲撃に次ぐ襲撃でした。

 いずれもカイロキシアの手の者ではありません。

 最初の襲撃で護衛は全滅し、命からがら修道院へ向かいましたが、そこでも待ち伏せに会いました。

 冒険組合や帝国の方々がいなかったら私はここにはいないでしょう。」

「そうか…。

 …、其方らには大きな借りができてしまったようだな。」


再び、カタリーナはフェルマルタの背後を見遣る。

ただ、女王の視線は1人を捉えていた。


「しかしなぜ、帝国がこのような真似を?」


カテリーナは、女王の視線を真正面から受け止める。

この旅で何度も受けてきた、値踏みするような眼差し。


「王子を守れる力を持つ者が近くにいた。

 であるならば、その力を以って王子を守るのは当然の務めです。」

「答えになっておらぬな。」

「もちろん、王子を守ることが我々の利益になるからです。」

「利益とは…?」

「危機に瀕してるのはエリナス王国だけではない。

 シャウラッド、カイロキシアでも国家規模の被害が出ている。

 この国と王子を襲ったのは、他国でも暗躍している何者かであると考えています。

 この推測が合っているのであれば、間違いなく、”この世界”が危ない。

 そんな時に我々は今までのように自国最優先で行動するわけには参りません。

 協力が不可欠です。

 王子を救ったことで我々の誠意を示せるのであれば、どうか、お力添えを願いたい。」

「この世界、とな…?」


カテリーナは静かに頷いた。


「随分と立派な話ではないか。」


女王の表情が僅かに硬くなる。


「帝国皇女よ、其方の話が本当であれば、由々しき事態だ。

 だが、国際的な協力を謳うにしては、貴国はカイロキシアへ軍を進めているではないか。

 これはどう説明できる?」


カテリーナにとって、この件はまさに痛いところを突かれた。

本国、父の思惑がわからないからだ。


「それは…。

 恥ずかしながら、帝国首脳部の思惑は不明です。」

「話にならんな。」

「母上、よろしいでしょうか?」


カテリーナに助け舟を出したのはフェルマルタだった。


「確かに、帝国がカイロキシアへ軍を進めていることは遺憾ですが、私は彼女の意見に同意します。

 私を襲った者は相当な手練でした。

 我が国の護衛魔導師が手も足も出なかったのです。

 そんな彼らは、明確な目的意識を持って我々へ攻撃を仕掛けているように感じました。

 この世界の危機、と言うのは、あながち間違いではないのかも知れません。」

「お前もそのようなことを言うのか…。」


意外なところからの援護射撃に女王は困惑する。

女王は御賢侯たちへと視線を移した。

イルデフォンソが口を開く。


「お二方の話は全くの作り話とは言えないかと。」

「……、ほう。」


女王はゆっくりと椅子の肘掛けに手を置く。

その言葉を最後に、広間は静寂に包まれた。

決断に要した時間はどれほどだっただろうか。


「……、どうすれば良い?」


女王がカテリーナへ聞く。


「まずは我が帝国と魔導協会との仲介を頼みたい。

 世界協力の前に、帝国は問題を抱え過ぎている。」

「其方の父は直ぐにでも皇位を継承すべきだな。

 よかろう。」


カタリーナはイルデフォンソへ目配せする。


「直ちに協会へ連絡を。」



【エリナス 大峡谷 ハーデスの根城】

ロディとセシルは、ウォーロックの前で額に汗を浮かべながら立っていた。

彼らが身に纏う修行着は身体中の汗を吸い込み、重さが増していく。

2人の目の前には、拳大の果物が静かに転がっていた。

ここは、ウォーロックが修行用に用意したツチのいない空間。


「クソ……。」


何度も試みているが、まったく動かせる気配がない。


「2人とも、焦るな。

 君たちはまだ無意識に『ツチを使役しよう』と考えている。

 それが邪魔になっているのだ。」


彼らの後ろで腕を組みながら修行を見守るウォーロック。

かれこれ何時間も、転がったままの果物と疲弊していく人間の背中を見続けていた。


「現代魔法はツチの使役に魔力を費やすことで発動していた。

 だが、この世の理を司る”理力”とは本来、”何者の媒介も必要ない力”だ。

 ただ押し込めばいい。」


ウォーロックは手を掲げると、目の前の果物がスッと宙に浮いた。


「水が流れるように力を流し込む。

 それが理力を扱う鍵だ。」


ロディは息を整え、もう一度試みる。


「……、流し込む……。」


そう意識しながら、果物に向けて魔力を伝えようとする。

頭では理解している。

だが、いざ実行しようとすると、果物は微動だにしない。

ツチのいない空間では、これまでの魔法の知識や技術はまったく通用しなかった。

ロディは両手をかざし、果物に向かって魔力を流し込もうとする。

しかし、果物は微動だにせず、ロディの魔力はあっという間に枯渇した。

セシルはロディよりも先に座り込んでいた。

ツチの力を借りず、自らの魔力だけで物体へ干渉するというのが、ここまで難しいとは思ってもみなかった。


「最初は何もできなくて当然だ。」


ウォーロックは2人を見ながら言う。


「魔力が切れたな。

 休憩にしよう。

 2人とも湯に浸かってこい。」


2人は頷き、ウォーロックが用意した特設修行場を出た。

外から見ると漆黒のこじんまりとした大きさの長方体だが、中は制限を感じない広さだった。


「ハーデス謹製の温泉か…。」


2人の目の前には、これまたこじんまりとした湯の泉が設えられている。


「生命の湯にちょっと細工したって仰っていましたけど、不思議なお湯ですよね。」

「全くだ。

 神の所業に一々驚いていてはキリがないということだろうな。」


ロディもセシルも修行着のまま温泉に入る。

理由は明かされていないが、これもウォーロックの指示だ。


「少し熱いかと思う湯加減だが、いい加減慣れてきたな。」

「でも、本当に不思議なお湯です。

 浸かると、体の芯から温もりが広がって、不思議と魔力が回復していくように感じます。」

「実際に回復してるんだろう。

 速度が異常だがな。」


ロディはお湯を手で掬ってみるが、湯に特に変わった点はない。


「何が待ち受けているのかは分からないが、これを繰り返すしかない……。

 大人しく湯に浸かって、早く修行を再開しよう。」

「それはそうですが、流石に回復するのが遅くなっている気がします。」


セシルの指摘はロディも感じていたところであった。

既に修行と入浴の繰り返しを何周かしている2人だが、明らかに入浴時間が長くなっていた。


「神の湯といえど、人間の体には限界があるということか…。」


焦っていないと言えば、嘘になる。

世界でも最高峰の能力を持っている自負があったが、いとも簡単にねじ伏せられた。

修行とは言うものの、その域に達する道は実際に険しいと思い知った。

自分らがどれほどここに滞在しているのかも、もはや分からなくなっている。

外界の様子も分からず、それも焦りを増幅させていた。


「神の所業に人間がついていけないのは、それもまた道理か…。」


ロディは自分に言い聞かせた。


「まさか自分が神様と行動を共にするなんて思ってもいませんでした。」


ロディへの相槌なのか、セシルが肩まで湯に浸かりながら呟く。


「それはそうだ。

 私も予想だにしていなかったよ。」


そう言ってロディは、この空間に聳え立つ大階段の遥か上を見る。

ハーデスが龍朗の亡骸を抱えて向かった神殿だ。


「タツローのことも修行が始まってから何も聞かされていませんし、全て上手くいくんですかね…。」


2人はただひたすらに修行をさせられている。

龍朗がどうなったのかも、分からない。


「彼のことは私も心配だよ。

 だけど、我々は我々に与えられた課題に向き合うしかない。」


セシルは小さく頷いた。



【帝国 ブニーク 国防軍前線基地 作戦司令室】

室内の戦術モニターに表示された帝国軍の竜騎兵航空部隊基地。

その座標は、広大な山岳地帯に囲まれた盆地の中央に位置していた。


「ターゲットは、帝国軍竜騎兵航空基地。

 我が軍が発見した、帝国の航空戦力の中核拠点だ。」


作戦指揮官である国防空軍の栗原一佐が、集まったパイロットたちに説明を始める。


「今回の作戦目標は、敵航空戦力の無力化、および新型EMP弾の実証試験となる。

 相手側には防空レーダーやこちらの世界にあるような防空・対空兵器皆無だが、魔導師による防御障壁がある。

 どうやらEMP兵器がその障壁の突破に有効らしい。

 そのため、まず”むらさめ”によるミサイルで敵基地の外縁部を攻撃し、敵に障壁を展開させる。

 続いて、EMPによる無効化実験を行い、効果が認められれば、最後に戦闘機による爆撃で基地を破壊する。」


会議室に静かな緊張が走る。

初撃を敢えて外して敵にアピールすると言っているのだから当然だろう。

戦闘機部隊の速水二尉が質問を投げかけた。


「EMP弾が敵のバリアにどの程度の効果を発揮するか、確実なデータはあるんですか?」

「ない。

 EMPは電子機器に影響を与える兵器だが、敵の魔導師が展開する障壁にも干渉する可能性があるとされている。

 少なくとも、理論上は障壁の持続時間を短縮し、一時的に無効化できると予測されている。」

「なるほど……。

 要するに、やってみないと分からないってことですね。」


速水は小さく笑みを浮かべる。


「科学と魔法のぶつかり合いってわけか。」


栗原は頷くと、作戦の概要を続けた。


「まず我が軍の”むらさめ”が対地ミサイルで攻撃を加え、敵に障壁を展開させる。

 その後、F-2がEMP弾を投下し、障壁を無効化。

 F-35Bが基地の指揮施設などを精密爆撃、出撃してくる敵航空兵力も撃墜し、完全に機能を停止させる。」

「敵戦力は?」

「推定50機。

 彼らは戦闘機ではなく、飛竜に跨った航空兵たちだ。

 戦闘機と比べれば速度は遅いが、機動力は高く、さらに魔導師が防御障壁を展開しながら攻撃を加えてくる。

 できれば敵が上がってくる前に叩きたい。

 舐めてかかると墜とされるぞ。」


パイロットたちの顔が引き締まる。


「ブリーフは以上だ。

 作戦開始は1時間後。

 解散。」



【帝国 ブニーク沖 護衛艦むらさめCIC】

「無人偵察機からの映像、感度良好。

 現地の天候も問題ありません。」


オペレーターからの報告を受けて、むらさめ艦長はモニターへ顔を向ける。


「こちら、むらさめ艦長より作戦司令官。

 状況確認が終了。

 作戦開始の最終許可を求める。」

「作戦司令部、栗原だ。

 許可する。

 ワルキューレ作戦、開始。

 繰り返す、ワルキューレ作戦を開始する。」


指揮官のGOサインを受けて、むらさめが第一段階の攻撃を始める。


「目標、敵航空基地外縁。

 数、15。

 艦対地ミサイル、発射!!!」


【帝国 ブニーク 国防軍前線基地 滑走路】

前線基地の滑走路では、パイロットの速水が頭上に広がる遮るもの無いどこまでも続く青空を、F-2の機内から見上げていた。


「管制からフォックス1へ。

 作戦は予定通り開始された。

 間も無く頭上をミサイルの御一行様が通過する。」


それから数秒も経たないうちに、15本のミサイルが敵基地目掛けて飛んでいく。


「頼むから初撃でKOされるなよ…。」

 

彼に今この瞬間できるのは、きちんと障壁を張ってくれるように祈るだけだ。

速水は愛機の操縦桿を撫でた。


【帝国 竜騎兵航空基地】

帝国軍の竜騎兵たちは、各班に別れて日の出と共に日課の訓練飛行を行っていた。

空へ上がる班もいれば、逆に一旦地上に戻る班もいる。

こうした上下入り乱れる中を飛ぶ訓練も、また空戦時を想定したものの一環だ。


「もう一度周回飛行したら我々は降りるぞ!!」


班長が部下へ指示を出す。

だが、班員は後ろの何かに気を取られている様子だった。


「お前たち、きちんと話を聞いているのか!?」


班長が部下を叱りながら後ろを振り返る。

そこには見たことのない何かがこちらへ目掛けて高速で空を飛んでいた。


「何だあれ?」


見たところ、生き物ではない。


「お前は下へ警告しろ!!!」

 残りは障壁を展開!!!」


だが、班長の指示よりもその何かの方が速かった。

むらさめの放ったミサイルは、基地の周囲へ降り注いだ。

爆音と爆風が上空の彼らを襲う。


「各自、制御しろ!!!

 落ちるなよ!!!」


班長は叫ぶが、彼の声が届いたものはいないだろう。

各々、驚いた翼竜に振り落とされぬように何とか対処しているものの、残念ながら全員とはいかない。

他の班でも何名かが落下していく。



【帝国 ブニーク 国防軍前線基地 滑走路】

「フォックス1、ミサイルの着弾を確認した。

 作戦第二段階を開始する。

 離陸許可、発進せよ。」


待ちに待った言葉だ。

速水はF-2を青空へ解き放つ。

真っ直ぐに目標地点へと向かっていく。

この世界は制限空域も何も考えなくて良い。

速水にとって、この瞬間は何にも変え難い至福のひとときとなっていた。


「速水、栗原だ。

 敵の障壁を確認した。

 作戦を続行する。

 EMPをお見舞いしてやれ。」

「フォックス1、了解。」


ミサイル着弾地点から何本もの黒煙が上がっている。

目標への弾頭発射は速水にとって何ら難しい作戦ではなかった。


「EMP発射。

 作戦空域より離脱。」


EMP弾を発射した速水は機体を基地へと反転させる。

万が一、巻き込まれたらひとたまりもないからだ。

後ろを振り返る時間もない。

ただ真っ直ぐ爆心地から離れる。


「フォックス1より、作戦司令部。

 当機は作戦空域より離脱完了。」

「ご苦労。

 超高高度偵察機から敵の障壁が消えたと報告が入った。

 作戦目的は予定通り達成されたぞ。」


速水にとってこれ以上ない褒美の言葉だった。


「管制より、フォックス1。

 間も無く、いずもより上がったF-35Bとコンタクトです。」

「タイガー2より、フォックス1。

 ここからは我々が引き継ぐ。」


前方から接近してくるF-35へ、速水は機体の両翼を上下に揺らして答える。


「よろしく頼んだ。」


すれ違い様、速水はF-35を操る後輩パイロットたちへ思いを馳せた。


世代交代(バトンタッチ)か…。」


あっという間に距離が離れていく編隊を振り返り、速水は基地への帰りを急ぐ。


【帝国 竜騎兵航空基地】

基地の上空では、先ほどまで展開されていたはずの防御障壁が、嘘のように消え失せていた。

魔導師たちは戸惑い、詠唱を再開しようとするが、術式が安定しない。


「……障壁が、再展開できない……?」


一人の魔導師が呻くように呟いた瞬間、空が裂けた。

雲の隙間から、鋭い角度で降下してくる灰色の機影。

轟音と圧倒的な存在感を放ちながら、F-35Bの5機編隊が侵入してくる。


「タイガー2、侵入完了。

 敵防御反応、ほぼ無し。」

「タイガー3、敵航空兵、離陸動作を確認。

 だが統制が取れていない。」


編隊長が即座に判断を下す。


「予定通りだ。

 優先目標は指揮施設、次に格納庫。

 逃げる奴は追うな、飛ばせる前に叩く。」


F-35Bのウェポンベイが開く。

内部に収められた精密誘導爆弾が、静かに姿を現す。


「タイガー編隊、リリース。」


次の瞬間、地上に閃光が咲いた。

最初に吹き飛んだのは、基地中央の指揮塔だった。

石造りの建物は一瞬耐えたかに見えたが、内部から破壊され、粉塵を噴き上げながら崩れ落ちる。

続いて、滑走路沿いに並ぶ格納庫や隊舎が次々と炎に包まれる。


「竜を出せ!! 今すぐだ!!」


叫ぶ声はあちこちから聞こえるが、混乱の中で命令は伝わらない。

竜たちは怯え、暴れ、乗り手を拒むものも多い。

そこへ、低空をかすめるようにF-35Bが通過する。

機関砲の短い咆哮。

竜の翼が引き裂かれ、地面へと叩き落とされていく。


「魔法だ!! 魔法で迎撃しろ!!」


だが、魔導師たちの放つ防御術式は不安定なままだ。

EMPによる影響は、想定以上に深刻だった。

術式構成そのものが崩れ、詠唱が途中で途切れる。

魔力はある。

だが、それを制御する“何か”が機能していない。


「敵航空戦力、無力化確認。

 離陸に成功した機体はゼロ。」

「地上目標、残存なし。」

編隊長は一瞬だけ、モニターに映る炎上する基地を見下ろす。

「……これで終わりだ。」

「タイガー編隊、作戦終了。

 帰投する。」


【帝国 ブニーク沖 護衛艦むらさめ CIC】

モニターに映る映像が、完全な沈黙を示していた。

「敵航空基地、完全沈黙を確認。

 熱源反応、消失。」


オペレーターの報告に、艦長は静かに頷く。


「作戦司令部へ。

 こちら、むらさめ。

 ワルキューレ作戦、全工程完了。」


少し間を置いて、通信が返ってくる。


「司令部、栗原だ。

 確認した。

 全機、無事を確認。

 ……よくやった。」


【帝国 ブニーク 国防軍前線基地 作戦司令室】

作戦モニターに映る、赤から黒へ変わる敵アイコン。

栗原は深く息を吐いた。

彼の脳裏には、次の戦場の光景が既に浮かび始めていた。

魔法にはEMPが効く。

それはつまり、


「科学が魔法に勝利した。」


作戦司令室に、誰も言葉を発しない静寂が落ちた。

1年以上空いてしまいましたが、しっかりと完結させていきます。

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