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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第3章 〜やーーっとカイロキシア ちょっぴりイェンシダス????〜
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第69話〜カイロキシア共和国建国〜

不定期投稿で申し訳ありません…。

これから数日は短期的に投稿していきたいと思います。

【日本 永田町】

国家安全保障会議に臨んだ閣僚は総理の答えを待っていた。

今回の出席者は4名。

総理、官房長官、外務・防衛両大臣と通常の四大臣会合の形を採っていた。


「難しいですね。」


総理を除く閣僚の意見表明が行われてから、丸5分。

ようやく口を開いた南郷の一言目がこれだ。


「難しいと言いますと?」


辰巳が南郷の意図を問う。


「軍事的にも政治的にもこの作戦は有意義なものでしょう。

 それは私にも分かります。

 ですが、国会の事前承認なしでこのような作戦を実施することには不安があります。」


南郷たちは佃から要請を受けた現地敵航空基地攻撃作戦について審議していた。


「総理のお気持ちは十分理解できます。

 が、懸念事項が国会だけであるならばこの作戦は実施すべきだと考えます。」


官房長官の三浦が改めて賛意を示した。


「俺も官房長官に同意だ。

 総理、この前も話したが、国会は我々与党が過半数を握っています。

 私も、こうした機会を活かさない手はないと考えます。」

「お二方、少し冷静になって考えてください。

 我々は国会と国民だけを相手にしているのではありません。

 今回の我が国の行動が諸外国に与える影響もお忘れなきようにお願いします。」


強硬的な二人に外務大臣の安藤が釘を刺す。

ちなみに、安藤は反意を表明していた。


「作戦の実施には大義が必要ですね。

 作戦を実施せざるを得ない事情があったと。」


南郷は安藤の意見に乗った。


「総理、発言をお許しいただけるでしょうか?」


陪席していた山野統幕長が手を挙げる。


「勿論です。

 何か意見があれば聞かせてください。」

「ありがとうございます。」


南郷の許可を得た山野は立ち上がって意見を述べる。


「総理が仰った”大義”についてでございますが、1つ案がございます。」


一旦、山野はここで発言を切った。

閣僚らを見渡して否定的な反応が無いか確かめてから話を続ける。


「兼ねてから我が国は敵の魔法攻撃による被害が多数報告されています。

 勿論、こうした魔法攻撃の中には敵の航空部隊からの攻撃も含まれています。」


山野がそう言うと、辰巳が心得た顔をした。

他の者たちも辰巳から数秒遅れて、それぞれ山野の真意が掴めたようだった。


「今回の作戦の大義としては、これ以上の損害を防ぐための予防及びこれまでの襲撃に対する報復という路線ではいかがでしょうか?

 尤も、敵の魔法障壁を無力化する実験という目的は伏せますが。」

「良い案じゃないですか。」


辰巳は山野の意見を直ぐに受け入れた。


「私も引き続いて同意見です。

 …、安藤さんは如何でしょうか?」


三浦は安藤を見る。

官房長官の質問に外相はため息をついて応じた。


「そういう口実なら我々外務省としても何とか諸外国に説明できそうですが…。」


安藤はそう言って、額に手を当てた。

彼はこれ以上は触れてくれるなと全身で表している。


「外務省も大丈夫という事なら、現場にはGOサインを出す方向で動きます。

 国会への対応ですが、細かいことは党にお願いしましょう。」


南郷は室内を見回してそう締め括った。



【エリナス ファミリオ魔術大学校 副会長室】

「本来ならもっと丁重に老師をお迎えしたかったのだが…。

 ご覧の状況だ。」


ランドロスは室内へと手を振る。

ファミリオには先の襲撃の影響が至る所に残っていた。

この部屋も例外ではなく、扉は吹き飛んだままだ。


「儂は構わぬよ。

 それよりも、ここに呼んだ理由を聞かせてもらえはせぬか?」


老師はファミリオに到着後、既に丸一日強が経過していた。


「そうだな。

 さっさと本題に入ろう。」


グリンダにそう言うと、彼は部屋の隅を見る。

視線の先にいるのはグリンダをここまで連れてきたハリーだ。


「君もそのまま話を聞いてくれ。」

「畏まりました。」


ハリーは一礼して応える。


「ここに出頭してもらったのは外でもない。

 向こうの世界について老師が知っていることを全て教えてもらうためだ。」

「予想はしておりましたが、はてさて…。

 何から話せば宜しいですかのぉ…?」


老師はそう言って腰を下ろす。

室内に椅子などは無いが、彼は固めた空気の上に座った。


「彼の国の国力。

 簡単に言えば、魔導協会は彼の国に対抗可能かどうか?」

「この世界にいる限りは我々が有利であろう。

 しかし、彼の国の世界だと我々はただの人間に過ぎぬ。」

「彼の世界では魔法が使えぬということか?」


ランドロスの問いに老師は首肯した。


「彼の世界にはそもそもツチが存在しておらぬようだ。

 どう足掻いても、あちらの世界で魔法の行使は不可能じゃ。

 そうそう、技術力という点でも彼の国はこちらの世界とは桁違いじゃった。」

「彼の世界を制することは不可能か…。

 先程、この世界にいる限りは我々が有利だと言っていたが、それはどの程度だ?」

「どのような戦闘にも勝利はできる。

 だが、こちらの犠牲も少なくないと覚悟するのじゃな。」

「敵の技術力の高さが魔法の有無を補完するということか?」

「そうじゃ。」


ここまでの報告を聞いて、ランドロスは宙を仰いだ。


「他に何か敵の弱点になりそうな要素はあったか?」

「強いて言えば、彼の世界にはヒト種以外の種族は見当たらなかったのぉ。

 もしかすると、人狼やミノタウロスといった戦闘員や龍の類は効果的かも知れぬ。

 じゃが、それくらいじゃ。」

「いずれにせよ、それは魔導協会の枠を超える内容だ。

 やはり我々だけで彼の世界を制するのは不可能か…。」


ランドロスは宙を仰いだまま呟いた。


「其方は彼の世界を征服しようとなさっておるのか?」


目の前の男の様子を見たグリンダは一抹の不安を覚える。


「ありとあらゆる事態を想定しているだけだ。」


老師の問いにランドロスは答えを濁した。

数秒の沈黙を経て、ランドロスは視線を再び老師へと戻す。


「敵のことは理解した。

 次は彼の世界へ扉を開いた時のことを聞かせてもらおうか。」


老師は彼の眼光の鋭さが幾分増したのを感じ取った。


「老師、貴方が無事でいられているのはこの件の唯一の術者だからだ。

 本来であれば魔導の禁忌を犯した術師など即刻身柄を拘束されている。」

「その点は心得ておる。

 儂とて、今更、命乞いなどせぬ。」


ランドロスは今直ぐに老師をどうこうする意図はないようで、グリンダの決意は無視して彼はそのまま話を続けた。


「超級魔導師と言われている貴方なら、自分の魔法系統の禁忌を修めていても何ら不思議はない。

 それに、この際その魔法を行使したことはどうでも良い。

 問題はそこでなく、どうして扉を閉じられないかだ。」

「それは、未だに分からぬ…。」

「いいや、原因は分かっている筈だ。

 少なくとも、心当たりくらいはあるだろう?

 貴方には十分すぎるほど考える時間があった。」

「…、有り得ぬ。」


ランドロスの予測に対し、グリンダは強い否定を口にした。


「有り得ない?

 と言うことは、貴方も私と同じ予測を抱いているのだな?」


ランドロスの気迫は部屋の隅でやりとりを見守っているハリーにも重圧が伝わってくる程であった。


「…。」


老師は返答をせず、沈黙を選んだ。


「あぁ、そうか。

 貴方は無神論者だったな。」


黙り込むグリンダに対してランドロスは話の確信を突いた。


「貴方に良いことを教えよう。

 つい先日、私はこの両の眼で神を目撃した。」


グリンダは驚きの表情と共に顔を上げた。


「私だけではない。

 その日ここにいた大勢の群衆が神の姿を見ている。」

「そ、その神とは?」

「冥府を司どる神。

 ハーデスだ。」

「何ということじゃ…。」


グリンダはその場にへたり込んでしまった。

今度は空気の塊ではなく、文字通り床にだ。


「ハーデスは、何のためにここへ…?」

「彼の世界から来た男の亡骸を引き取りに来た。」

「タ、タツロー氏か!?

 彼は、彼は命を落としたのか…!?」


グリンダは今度は立ち上がり、ランドロスの机を掴んだ。


「落ち着け。

 貴方が彼と面識があることは驚いたな…。

 ハーデスは彼を救うために来たと言っていた。」

「冥府の神が彼を救うじゃと!?

 何のために!?」

「目的は知らん。

 だが、ハーデスは誰かに頼まれたという口調だったな。」


グリンダの顔には更に驚きが加わった。


「ハーデスを、神を動かせる者がいるじゃと!?」

「これは短絡的な考えかもしれないが、神を動かせるのは同じく神なのではないか?」


ランドロスの推測を聞いたグリンダはよろよろと後ずさる。


「話が逸れてしまったな。

 老師、貴方が発動した魔法、現在それを行使しているのは神なのではないか?」

「何ということじゃ…。」

「老師、残念ながら神は実在する。

 その事実を受け入れた上で、貴方の推測をお聞かせ願おうか。」

「それには及ばん。

 じゃとしたら、こんな芸当ができるのは神しかおらぬ。」


グリンダの答えにランドロスは満足した表情を浮かべた。


「ありがとう、老師。

 であるならば、急を要する事態だな。」


ランドロスは隅に控えるハリーを見遣る。


「至急、各国に協力の要請を。

 冒険組合にも連絡をしてくれ。

 それと、魔導協会会長に代わり、有事態勢への移行を宣言する。」

「畏まりました。」


ランドロスの指示を受けたハリーは足早に部屋を後にした。


「そう言えば、ロディはどうしたのじゃ?」

「ハーデスと共にどこかへ旅立った。」


それを聞いたグリンダは目を丸くした。


「一体、どうなっておるんじゃ…。」

「我々の予想を超えて事態が推移しているということだ。」


そう言うとランドロスは自席から立ち上がり、部屋の外へと歩き出した。


「どこへ行くのじゃ?」

「魔導協会理事への緊急伝達だ。

 直ぐに迎えを寄越すので老師はこのままここに居てくれ。」


それだけ言ってランドロスは部屋の外へと姿を消した。



【カイロキシア 宮都】

未だに黒煙を上げる深縹宮を背に、静寂の中で群衆は一人の男を見つめていた。

空はまるで王宮から登る黒煙がその橙を侵食しているかのようだった。

そんな中で男が静かにゆっくりと言葉を紡いでいく。


「過日、我々は歴史を成した。

 先代の王に代わり、この国を正しい道へと導いたのだ。」


男の言葉に賛同する声が飛ぶ。


「今宵、我々は歴史に新たな物語を書き記す。」


男は群衆を端々まで見る。

群衆は沈黙で男の視線に応えた。


「今ここに、我々はカイロキシア共和国の建国を宣言する!」


辺りは天まで届くような歓声に包まれた。


「これより、我が国の指導部結成作業を開始する。

 民衆よ、人民殿へと進むのだ!!」


そう言って男は深縹宮を指差した。

群衆は雄叫びと共に新たに人民殿と呼ばれる元宮殿へと歩みを進めた。


「何だここは…。」

「王族はこんな広い場所に住んでいたのか…。」

「ここは今から国民の物だ!!」


宮殿に初めて足を踏み入れた民衆は思い思いの感想を口にしていた。


「待っていたぞ。」

「宗祖…、ではありませんでしたね。

 エシュラ。」


群衆に紛れるように近づいてきたのは、つい先日までプライミッツ教の宗祖として振る舞っていた男だった。

だが、顔も姿もまるで違う。


「おい、2度と宗祖なんて呼び方で呼ぶなよ。

 今はお前たちの支援者なんだから。」


二人は小声でヒソヒソとやり取りする。


「ふふふ。

 分かっています。

 これが無事に終わらないと貴方は殺されてしまいますからね。」

「っけ。

 嫌味なやろうだよ、全く!!」

「まぁまぁ、そうカリカリしないで。」


男はそう言って広間の大階段へと登る。


「みんな、聞いてくれ!!

 ここにいる男はエシュラという。

 彼は我々の偉業が無事に達成されるように協力してくれていた男だ!」


男の紹介に広間では歓声がこだました。


「彼には我が国の指導部選定作業にも協力してもらう。」


そう言って男はエシュラを階段上に引き揚げた。


「紹介に預かったエシュラだ。

 みんな、良くぞ革命を成し遂げてくれた。

 これから指導部の結成に入るが、私から人選について1つ提案がある。」


群衆は黙って彼の話を聞いている。


「それぞれの通りをここへ向かって進む際に君たちをまとめた者たちがいた筈だ。」


エシュラの言葉に皆がそれぞれの該当者の方を見遣る。


「彼らに指導部を構成する財政団、義勇団、外政団、内政団を任せたいと思う。

 無論、指導部は彼らの全会一致制だ。」


民衆はエシュラの提案に納得の表情を浮かべている。


「よし。

 異論はないようだな。

 では、既に一人はこの場にいるから、残る三人の勇者はこちらに。」


エシュラの呼び掛けに従って残りの三人が姿を現した。


「本日から我が国は彼らを代表として、我々全員による統治が行われる!!」


民衆は本日最大の歓喜の声をあげた。

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