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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第3章 〜やーーっとカイロキシア ちょっぴりイェンシダス????〜
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第66話〜弱者のアイデア〜

【大峡谷 ハーデスの根城】

「ウォーロック・リュートだと…!!!!」


ロディは男の言ったことが信じられなかった。


「大昔に死んでいるって?

 正解だな。」


男はそう言って笑う。


「仮に貴方が本物のリュートだとして、どうやって何のために我々に接触を?」

「今の私はご覧の通り”霊体”だ。

 あの世でのんびりとしていたところ、ハーデスに呼び戻されてしまったんだよ。

 こんな芸当はハーデスにしかできない。

 彼は冥府の神の名に恥じない男だよ、全く。

 しかし、実を言うと、何で君たちに稽古を付けるのかは私にも分かりかねる。」


ウォーロックの発言に2人も困惑する。


「役者が揃ってないって言ってただろう?

 私も同じことを言われた。

 ハーデスがわざわざ死後の世界から私を探し出し、こうして霊体として現界させている理由は分からない。

 だが、これから俺が連れてくる魔導師に稽古を付けてくれと頼まれたのは事実だ。」


そう言ってウォーロックはロディの方へ腕を伸ばした。


「まずはお手並拝見だ。」


次の瞬間、ロディは後方へ吹き飛んだ。


「な…。」


これにはセシルもびっくりである。

ロディがやられたこともそうなのだが、問題は別にあった。


「今のは、魔法…?」

「そうだ。」


セシルの問いかけにウォーロックが答える。


「でも、発動兆候が見当たらなかった…。」


セシルが言っているのは魔法陣のことである。


「古式魔法か…。」


飛ばされた状態で推理していたロディが予測を述べる。


「正解。

 君たちからすれば古式魔法と言うそうだが、以前は”原点魔法”と呼ばれていた。

 そして、我々の時代には単に”魔法”とね。」


立ち上がったばかりのロディだが、今度は宙に浮いてしまった。


「確かに、後世の魔法と呼ばれるものも素晴らしい。

 魔導十二師の活躍はまさに称賛に値する。」


ロディは宙に浮いたまま何もできない。


「ここは神の根城と言えど魔法は行使できる。

 どうした、反撃してみろ。」


ウォーロックの挑発にロディは何もできない。

言葉を発することもできない。


「無詠唱も叶わないか。

 当然だな。」


ウォーロックはロディを子供のように弄んでいる。


「どうやって…。」

「どうやって彼を拘束しているのか知りたいか?」


ウォーロックの言葉にセシルがゆっくりと肯く。


「彼に行っていることは2つ。

 1つ目は外側から抑圧。

 2つ目は内側での抑圧。

 体の内外で魔力による圧を加えている。」

「魔力による圧?」

「聞くよりも体験してみた方が早い。」


ウォーロックがそう言うなり、セシルは自身の体が急に硬直したのを感じ取った。

何もできない。

詠唱はおろか、体内の魔力を感じることさえもできない。

どうやっても魔法の発動は不可能に感じられた。


「指一本動かせんだろう。」


そう言うとウォーロックはロディを地面に下ろした。

同時にセシルも自身の体が元に戻ったのを感じた。


「ほら、攻撃してこい。」


ウォーロックがロディへと指を動かす。


「遠慮なく。」


そう言うとロディはウォーロックの足元に魔法陣を展開した。

魔法が発動し、ウォーロックは漆黒の直方体の中に閉じ込められる。

直ぐにロディが開いていた右手を固く閉じる。

手に連動するかのように直方体は押しつぶされた。

直方体だったものが今や紙のように薄くなっている。


「凄い…。」


セシルの感想など無視し、ロディは締めにかかる。

紙のような長方形の闇が1点に収束し、消えた。


「安心した。

 当代の会長も歴代に劣らぬ実力のようだな。」


ロディの目と鼻の先の空間がよじれ、開き、闇が広がる。

中から出てきたのはもちろんウォーロックだ。


「闇の魔法か。

 ラッドフォードは元気にしているか?」

「相変わらず、変な屋敷に籠もって不眠生活だ。」


ロディは言い終わらぬうちにウォーロックの頭上に魔法を発動した。


「楔は結構。

 どうせ効かない。」


ウォーロックは魔法陣を破壊する。


「…、やるなぁ。」


ウォーロックの背後には小さな魔法陣が展開されている。

そこから発射された光の矢が彼の背中を貫かんとしていたのだ。


「生憎だが、どんなに小さな魔法陣でも魔法陣が展開された時点で、ツチを使役した時点で分かる。」


矢はウォーロックの背中に当たっているように見えるが、触れているだけであった。


「素晴らしい。

 君は歴代で一番なくらい魔法の扱いが洗練されている。

 今の時代の魔導師で君に敵う者はいないのではないかな。」


ウォーロックの褒め言葉は本心なのだが、ロディはどうも素直に受け取れない。


「だが、やはり、ツチを使役する魔法様式は致命的な欠点がある。」


2人はウォーロックの言葉を待った。


「魔法の発動兆候がバレバレだ。」


ウォーロックは残念そうに言う。


「魔力そのものを操らずにツチなんて媒介させるからこうなるんだ。

 あれが事象改変するにはどうしても痕跡が残る。

 魔法陣の出現もそうだが、何よりも、奴らは騒めき過ぎる。」

「騒めき?」


ロディが尋ねる。


「そうだ。

 私もツチの姿をはっきりと確認したことはないから、あれが声なのか、羽音か何かなのかは不明だ。

 しかし、確かに聞こえるんだ。

 ツチを使役した際に起こる騒めきがな。

 それも、ご丁寧に、魔法が発動される場所から。」


これにはロディもビックリであった。


「それじゃあ、貴方に言わせると、現代魔法は全て発動前に察知できると?」

「その通りだ。」

「今のも全て?」

「分かっていた。

 避けることも、全ての魔法の発動を潰すことも可能だった。」


これにはロディも自尊心をズタズタにされてしまった。


「じゃあ、その原点魔法を扱えれば、今の時代なら戦いに負けることはないってことですか?」


ロディに代わってセシルが質問をする。


「過信してはいけない。

 だが、戦いをいくらか優位に進めることはできるだろう。」

「貴方が直々に原点魔法の手ほどきしてくださると?」

「そうだよ、スパドモア君。

 神の頼みとあっては断れない。」


そう言うとウォーロックはその場で胡座をかいた。


「君たちも同じように。」


2人も言われた通りにする。


「先は長い。

 さあ、始めよう。」


【カイロキシア 宮都】

「殿下、ここは一旦帝国へ帰郷するのは如何でしょうか?」


カテリーナたちは宮都で途方に暮れていた。

彼女たちはカイロキシアにてファビアンと会談を行う予定であった。

直ぐにエリナスから宮都へ向けて移動を開始したものの、国境で長らく足止めを受けていたのだ。


「だが、このまま手ぶらでは帰るに帰れないだろう。」


カテリーナはフィアンツへそう溢す。

彼女たちは宮都の宿で今後の計画を練っていた。


「しかし、こんな状況なのにいつまでもここに滞在しているのは我々にも彼らにも迷惑な気がします。」


フィアンツが言っているのは彼らを警備しているカイロキシア国軍についてだ。

数は減ったものの、今もカイロキシア国軍が直々に彼らを警備をしてくれている。

しかし、市内はそれどころではない。

彼らも本当は国王暗殺の犯人捜索に加わりたいに違いないのだろう。


「しかしなぁ…。」

「殿下、特務機関のヴェロニカが参っております。」


エヴァノラがやって来て用件を伝える。


「ヴェロニカが…?」

「彼女はここにいるのか?」


カテリーナとフィアンツがともに疑問を口にした。


「はい。

 お通ししても宜しいでしょうか?」

「構わない。」


エヴァノラが引っ込むと、入れ替わるようにヴェロニカが姿を現した。


「時間がないので簡単に済ませるわね。

 フェルマルタは冒険組合にいる。

 そして、彼の命を狙う謎の集団も冒険組合に集まりつつあるわ。」

「おいおいおい、フェルマルタが冒険組合にいるからって我々にどうしろと言うんだ?」


フィアンツがヴェロニカの真意を問うた。


「私ではあの中に入れないのよ。

 でも、貴女たちが行けば多少は道が開けるかもしれないと思ってね。」

「それはつまり、妾を囮に使うということか?」


ヴェロニカは頷いた。


「そんなこと断じて許されない!!!」


フィアンツはカテリーナとヴェロニカの間に割って入った。


「落ち着くんだフィアンツ副官。

 アタシは誰にも負けない。

 殿下のことは責任を持ってお守りする。」


ヴェロニカの熱にフィアンツは思わずカテリーナを振り返る。


「其方に1つ聞きたい。

 フェルマルタ王子を保護してどうするのだ?

 エリナスへ送り届けるのか?

 それとも、まさか帝国へ連れて行くのか?」

「そのどちらでもないわ。

 王子の保護は冒険組合が遂行する。

 アタシは王子を狙っている奴らを殺したいの。」


ヴェロニカの真意に一同は驚く。


「王子を狙っている奴らというのは?」

「敵の素性は分からない。

 だけど、恐らく、この数ヶ月帝国にちょっかいを出している奴らに違いないわ。」

「其方がそこまで言うなら、分かった。」

「殿下!!!!!」


カテリーナの決心にフィアンツが異議を申し立てる。


「安心しろ、フィアンツ。

 ヴェロニカは必ず守ってくれる。」


カテリーナの目配せにヴェロニカは首肯する。


「時間がないわ。

 急いで冒険組合に。」


一同は組合へと向かった。


【日本 横浜 新港基地】

「間も無くコンタクト・ポイントを通過します。」


無線を通してオペレーターの声が加賀へと届く。


「大臣、本当に老師を引き渡して良いのですか?」


加賀は水面を見ながら呟く。


「仕方ねぇだろ。

 その代わりに我々は敵の突破方法を知ることができるんだ。」


辰巳も同じく水面を見ながら答える。


「ほら、おいでなすったぞ。」


コンタクト・ポイントからゆっくりと海軍の船が姿を現す。

船はゆっくりとこちらへ向かってくる。


「あの中に魔導師がワンサカ乗っているのか。」

「ええ。

 ですが、この世界では彼らはただの人です。」


加賀は船をしっかりと見据えて答える。

船が接岸し、中から艦長の沢柳が降りてきた。


「これはこれは。

 沢柳艦長自ら御足労いただけるとは。」


加賀が沢柳を労った。


「司令と大臣にお出迎えしていただけるとあれば私も自ら出向きますよ。」


沢柳は辰巳と加賀と交互に握手した。


「護衛艦おおすみ、只今到着しました。

 魔導協会の魔導師50名も一緒です。」

「ご苦労。」


辰巳は沢柳の報告を受け取る。


「緊急物資の補給が完了次第、直ちに出航せよ。」


沢柳が敬礼で応える。

なお、緊急物資とは魔法障壁破壊に必要な資機材のことだ。


「それじゃあ、魔導師諸君を連れてきてくれ。」


辰巳に言われた沢柳は下士官に命じて協会の魔導師を下船させる。

先頭にいた2人の魔導師が辰巳らに近づいてくる。


「私は魔導協会外交部左級次席のハリー・ピゴットだ。」


辰巳は外務省の通訳を通してハリーの自己紹介を受ける。


「私は日本国の担当大臣の辰巳義信だ。

 君が今回の協会側の代表だな?」

「そうです。

 私が全権代表を務めます。」


ハリーは辰巳の手を握る。


「他の代表員も紹介させてください。」


握手をしながらハリーは告げる。

後には女性が1人控えていた。


「こちらは術式担当部のアイリーン・オールコック左級次席です。」


ハリーの紹介でアイリーンは前に出る。


「初めまして、タツミさん。

 私は魔法障壁の件で会長より随行を命じられました。」


差し出された手を握りつつ、辰巳は彼女がキーパーソンだと悟った。

魔法障壁を無力化する方法を伝授するために彼女は来たのだ。

そうであるならば、日本にとっての価値は彼女の方が高い。


「オールコックさん。

 こちらこそ、お会いできて光栄です。

 あとで我々の技術担当者にもご挨拶させます。」


辰巳の言葉にアイリーンも肯く。


一行は桟橋から基地内を移動し、基地の入り口でマイクロバス2台へと分散乗車した。


「まずは皆さんを宿舎の方へとご案内致します。」


加賀がハリーへと告げる。(加賀の言葉を通訳が訳して彼らへと伝える。)


「この世界は天にも届くような建物ばかりだな。」

「海に橋がかかっている…。」

「籠が馬なしで移動しているぞ!!」


加賀のアナウンスは聞き流された。

それよりも、協会の魔導師たちは外の景色を食い入るように眺めている。

地方合同庁舎には基地を出て数分で到着した。


「さぁ、着きました。

 ここが皆さんの宿舎です。」


外には国防軍の下士官たちと外務省の通訳官が待っていた。


「彼らの指示に従って行動してください。」


加賀の指示でゾロゾロと魔導師たちがバスを降りていく。


「お二方はこのままお待ちください。

 お荷物だけ宿舎へと運ばせます。」


そう言って加賀はハリーとアイリーンをバスの中に待たせた。

2人は荷物を下士官に預ける。

他の荷物同様、彼らは金属探知機やX線探知機で荷物を調べてから宿舎へと運び入れた。

事前の取り決めで武器や金属類の持ち込みを禁止していたおかげで違反者は確認されていない。


「これからあの建物へと移動します。」


2人の荷物が問題ないと分かると、加賀は新港基地の本部ビルを指さした。

バスが移動する。


「あの建物でハリーさんには老師とお会いしていただきます。

 アイリーンさんもご一緒できますが、どうしますか?」

「私は結構です。」

「分かりました。

 それでは、アイリーンさんには我々の技術担当者にお会いしていただきます。」

「彼らに魔法の知識はあるのですか?」


アイリーンの質問に加賀は顔をしかめる。


「一先ず、拘束している老師たちから簡単な指導は受けさせてある。

 だが、それがどの程度の知識なのかは不明だ。」

「グリンダ老師が指導しているのであれば恐らく大丈夫です。

 それでは、到着次第、取り掛かりたいと思います。」


加賀の説明にアイリーンは満足した様子だった。

バスは新港基地のゲートへと着いた。


「あの人が持っているあれは何ですか?」


アイリーンが門番の持っていた小銃を指差す。


「あれはこの世界の武器です。

 銃と言って、飛び道具の一種です。」


加賀がとても簡単に設営する。


「飛び道具…。

 弓矢には見えないな。

 どのようなものなのか…。」


ハリーも興味深そうに見ている。

ゲートが開き、バスが中に入る。

バスはビルの正面で停車した。


「それでは、私たちはハリーさんを連れて老師に会いに行きます。

 アイリーンさんは彼らと一緒に行動をお願いします。」


ビルの前には国防軍の技術担当者らと通訳官が整列していた。

辰巳と加賀はハリーを連れて病棟へと向かう。


「私は国防軍高等技術開発局の小柴俊英です。」

「私は術式担当部のアイリーン・オールコック左級次席です。」


自己紹介を終えて沈黙のまま3秒が経過した。


「私は技術屋でして、挨拶とかは苦手なんです。

 さ、早速参りましょう。」


苦笑いをするアイリーンを小柴がエスコートして、ビル内のブリーフィングルームへと移動する。


【新港基地 病棟】

グリンダは病棟のロビーのいた。

既に退院の準備は終えている。


「グリンダ老師、私は魔導協会外交部左級次席のハリー・ピゴットです。」

「グリンダ・ポリニヤ・チェーホフじゃ。」


2人の挨拶が終わると加賀が今後の段取りを述べる。


「特に手続きはありません。

 2人にはこのまま船に乗ってもらい帰還していただくことも可能ですが、どうしますか?」

「我々はそれで構わない。」


ハリーが答える。


「あの少年は?」


老師が加賀へと尋ねる。


「蘭君のことでしょうか?

 彼なら再びあちらの世界へと向かいました。」

「そうか。

 それは良かったわい。」


そう言うと老師は首飾りを外した。


「これをニーナ殿下にお会いしたらこれを渡してもらいたい。」


オカリナのような首飾りを手渡された加賀は困惑する。


「これは一体?」

「なぁに、ただの首飾りだ。

 彼女が欲しがっておったからの。」

「分かりました。

 今度殿下がいらっしゃった際には責任を持ってお渡しします。」

「宜しく頼んじゃぞ。」


グリンダはそれだけ言うとエレベーターの方へと歩き出した。


【新港基地 ブリーフィングルーム】

到着早々、アイリーンは小柴たちに向けて魔法障壁のメカニズムについて説明を行なっていた。


「そもそも魔法障壁は単なる壁ではありません。

 使役されたツチが事情改変を行い、耐衝撃性、耐熱性、無電導性など、ありとあらゆる耐性を高めた魔力の壁と言えます。

 ですが、魔法障壁を破壊する方法は意外と簡単です。

 1つ目は魔法障壁の耐久度を上回る力で攻撃すること。」


アイリーンがそう言った瞬間、室内の空気は重くなった。

それができるのなら彼女を呼んでいないのだ。

無論、彼女もそんなことは分かっている。


「ですが、貴方たちはこれができない。

 となると、2つ目として魔導師に焦点を当てた破壊方法となります。」

「術者を狙うのか?」


参加者の1人が質問を投げる。


「術者を直接戦闘不能にするのも手ですが、ここでは術者の魔力が尽きるまで魔法障壁を展開させておくことを意味します。」

「それは我が軍が先の戦闘で行った手法だな。」


小柴が手元のデータを見ながら答える。


「しかし、これも現実的な策とは言えない。

 そこで3つ目です。

 これは一番難しいですけどね。」


そう言うとアイリーンはひと呼吸置いた。


「振動で障壁を破壊する方法です。

 普通の魔法障壁に吸収能力はありませんから、高周波の何らかの攻撃を加えて共振させれば破壊することは可能です。」


部屋が騒つく。


「原理は至ってシンプルだな。

 他の固体と変わらんのか。」

「ですが問題があります。」


小柴の隣にいた部下が問題提起する。


「ああ。

 そんな兵器は音響兵器しかないが、量産も小型化もできてないぞ…。」


部下の意見に小柴も同調する。


「何やらお話しになっているところ申し訳ありませんが、もう一点。

 反射障壁についてもお話しします。」


アイリーンは彼らをよそに話を進める。


「反射障壁は敵の攻撃を吸収して射出することが可能です。

 この場合、先程のような高周波での攻撃も無意味です。」

「別の対策が必要ってことか…。」


小柴が独り言を言う。


「大抵の場合、魔導師は反射障壁を展開された場合は吸収をした場合に相手へ危険が伴う魔法を発動するのが定石です。

 毒を吸収する者はいませんからね。

 もしくは、先程のように障壁を破壊できる高威力の攻撃か、術者を狙い撃つという方法に限られます。

 貴方たちに現実的なのは定石の戦い方となりますが…。」

「相手に危険が伴うというのは毒物を撒くってのとは違うんですよね?」

「はい。

 何らかの魔法攻撃の類でなければ通用しません。」


これには参加者一同宙を仰いだ。


「どうしますか、小柴さん?」

「ミサイルや機関銃もダメ、毒ガスとかもダメ。

 ってことは生物兵器も論外。

 放射線兵器はどうだ?」

「それも異世界人の体内サンプルを分析した結果、効かないことが判明しています。」


小柴のアイデアはあっさりと却下された。


「音響兵器もダメ。

 となると…。」


小柴らは脳内で候補を絞り込んでいく。

すると…。


「…、電磁波…。」


後ろの方の席に座っていた誰かが呟いた。


「電磁波!!!!!!!!!」


この言葉が他の参加者にも伝染していく。


「いけるかもしれない!!!!」


先程とは対照的に、会議室のおじさん達は急に色めき立った。

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