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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
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第5話〜滞在目処〜

ーー

【帝国 帝都 皇城 地下牢】

ーー

「はぁ〜…。

 やっぱりジメジメしますね。」

「だね。」


『だね。じゃねーよ、どーすんだよ…!!』


僕らは帝都に到着後、誰がどう見ても王様とかが住んでそうなデカイ城に連れてこられて、そのまま地下の牢屋にご招待…。

体感的に丸1日は入ってると思われる。

只今、斎宮氏と牢獄トークの真っ最中だ。


「しっかし、こんな城がある世界があるんですね。」

「ホントだよね。

 囚われの身じゃないのなら隅々まで見て回るのに…。」

「斎宮さん、実はこの扉ぶっ壊して脱走できるんじゃないですか?」

「無茶言わないでよ。それは無理だって…。」


『なんだよ、できないのかよ…。』


「これからどうしましょうかね。」

「う〜ん…、ダメだ、頭が働かない。

 やっぱ長時間何も食べないとお腹減るね。」


『え?

 腹ペコ??

 あのぉ、僕はそんな精神状態じゃないんですけど…。』


「いやぁ、僕はあまり減ってないです…。」

「そっかぁ。

 でも、何か食べ物が出てきたらなるべく食べた方が良いよ。」

「努力します。」


『んなこと分かっとるわ!!!!』


斎宮兄貴との生活が心配された牢屋暮らしも、これ以上長引くことなく終わりが来た。

獄中トークが一区切りついた時、投獄から約1日後。


「出ろ!!!」


何て言われているのか分からないが、衛兵らは牢屋の鍵を開けてくれた。


「出られるんですかね?」

「みたいだけど…。」


再び手錠をかけられ、僕らは昨日やって来た方向とは逆へと進んだ。

こちらにも階段がある。

だが、もう一方よりも距離が長い。

2階分くらいは上ったんじゃないだろうか?

息も切れてきた頃、ようやく階段の頂上に着いた。

昨日と同じように扉がある。

衛兵は扉を開けた。


「お、城内か。」


斎宮の兄貴が呟いた。

そこは廊下のような場所だった。

石造りのそこに窓は見当たらず、とても暗い。

辛うじて向こう側からの光が入って薄らと照らされているくらいだ。

僕らが出たことを確認すると衛兵は扉の鍵を閉めた。

見たところ、ここは廊下の端に当たるようだ。


「付いて来い!!」


衛兵が何やら言葉を発し、身振りで付いて来るように示す。

カツン、カツンと我々の足音が周囲に響く。

廊下の端は左折していた。

曲がった先も廊下だったが、こちらにはガラス窓が設けられており光が差し込んでいる。

その廊下に面した壁に扉が1つ。

それとステンドグラスのようなものが扉の左右に2つ。

僕らは城内のとある部屋に通された。

牢屋とは比べものにできないくらい小綺麗な部屋だ。

シンプルだが高そうな椅子が4脚。

彫り物が施された机が1脚。

床には赤い絨毯が敷き詰められていた。


「応接室とかですかね…?」

「日本基準じゃ貴賓室って言っても通じそうだけどね。」


僕らは椅子には座らず、扉の横に立った。


「おい、手を出せ。」


衛兵に何かを言われたが分からない。

すると、彼は僕らの手を取って錠の鍵を外した。


「え、外してくれるの?」


兄貴は思わずそう聞いてしまった。

勿論、相手からの返答はない。

そのまま衛兵は後ろに下がる。

部屋には僕らを連れてきた衛兵の他に男女が2人いた。

女性(お姉様系でメイド服みたいなの着用。美人で巨乳、ショートカット。)が何かを言ってきたが当然意味は分からない。

2人してキョトンとしていると男(お爺ちゃん執事)が僕らを隣の部屋へと案内する。


「うわぁ、学校みたい。」


案内された部屋には黒板のようなものと2人分の机が用意されていた。

この部屋には窓がなかったが、天井のシャンデリアの光が室内を見守っていた。

お爺ちゃん執事に身振りで座るように促され、僕らは席に着く。

同時に、お姉様メイドが扉を開けた。


「え?」

「おぉ?」


入ってきたのは、つば広のとんがり帽子を被って黒いマントを身に付けた明らかに魔法使いっぽい格好をした小さな女の子だった。

お爺ちゃん執事が女の子へ何かを伝える。

コクリと頷いた後、女の子はこちらへ近づいてきた。


『え?

 え?

 え?

 何何何???』


僕の額に彼女は自分の額をくっつけてきた。


『ちょ、お嬢ちゃん、僕はそーゆー趣味は…。』


なんて思っていると、


「ん?」


『なんだ?

 何かが頭に出入りしてる…。』


そんな感覚を味わいながらそのまま数分が経過した。

女の子が離れる。


『なんで笑ってんだ?』


教壇に戻った女の子は僕らの顔を見てからニヤリとして、


「初めまして。

 私は今日から貴方達の教師を務めます、セシル・ザバニヤ・オルコットです。」

「あ、はい。

 よろしくお願いしま…。ン?

 っえええええ!!!!!!!」


恥ずかしながら、僕は椅子から落ちた。


「日本人ですか!?」


斎宮が尋ねる。

セシルは笑いながら首を横に振る。


「魔法の力です。

 タツローさんの知識を使わせていただきました。」

「ちょ、僕、名乗ったっけ??」

「この世界には貴方達の世界と違って魔法が存在します。

 その中でも私はミネルバ系という派閥の魔法使いでして、対象の脳をイジることが得意なんです。

 なので、今はタツロウさんの脳内に存在する知識を共有させていただきました。」

「ハハハ…。

 魔法って便利ね…。」


もう笑うしかない。

兄貴はまだ口をパクパクさせている。


「先ほども申し上げましたが、私は教師として今日から貴方達にパンゲア語及びパンゲア大陸に関する知識をお教え致します。」

「そりゃまたどして?」

「皇帝陛下のご命令です。

 なぜ陛下がそのように仰ったのかまでは分かりませんが…。」

「あぁ、なるほど。

 やっぱ皇帝とかいるのね…。」

「いずれ謁見できる時が来るかもしれませんね。」


そん時は緊張で喉がカラカラだろうよ。


「我々の待遇はどうなりますか…?」


パクパク状態から回復した兄貴が聞いた。


「城外へ出ることの禁止など幾つか制約はありますが、少なくとも教育期間中は地下牢に閉じ込められることはありません。」

「それは良かった。」


斎宮の兄貴はホっとした表情を浮かべた。

彼もああ見えて牢屋暮らしは嫌だっただろう。

無論、僕も同感だ。


「他に何か質問は?」

「あのぉ〜、非常に聞きにくいことなんですけど、先生は何歳ですか…?」


セシルの見た目は中学生かそこらだ。

これはアニメファンタジック展開だ。

聞かない訳にはいかないだろう。

聞かなければ国に帰って殺される。


「驚きませんか?」


『キタァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

 over100!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 KTKR !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』


「こちらと貴方達の世界とで1年に若干のズレがありますけど、大体…、60歳です…。」


セシルは照れながら教えてくれた。

しかし、僕の予想とは違って少しガックリしてしまった。


「なんだぁ、若いじゃないですか…。」


あくまで僕はover100と比較すると。と言ったつもりだったが、


「本当ですか!?

 タツローさんは優しいですね!!」


セシルは上機嫌だった。

この日から僕と兄貴は勉強漬けの毎日となる。

一方この時、日本では国防軍の作戦開始まで3日を切っていた…。

勿論、僕らはこれを知る由もない。

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