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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第2.5章 〜閑話休題〜
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第55話〜閑話休題その壱〜

【エリナス ファミリオ魔術大学校】

「事件も解決してしまいましたね。」


セシル先生がポツリと言った。

室内には2人だけだ。


「しちゃいましたね…。

あ、いや、して良かったんですよ!

だけど、その、何て言うか…。」


解決しちゃったんだよ。

俺がこの場にいる理由がなくなったんだよ。

どうしてくれんだよ。


「あっという間でしたね。」


窓の外を見ている彼女の声は心なしか、小さかった。


「ホント、短かったです。

でも、偉い人達の会議に臨席できたり、魔法の道具の発表に立ち会えたり、ドラゴンに乗れたりと貴重な体験ばかりでした。」


笑いながら答えると、同じようにセシル先生も笑った。


「タツロー、私はこの後どうすれば良いのでしょうか?」


小首を傾げるなよ、セシル先生!!

俺だって分からねぇよ!!

ただただ帰りたかねぇよ!!


「セシル先生にはやりたいことはないんですか?」

「やりたいことですか…。」

「旅に出てみるとか、魔法の修行をするとか、色々と選択肢がありますし、先生の場合、そのどれもが面白そうで羨ましいです。」


うーん。と言いながら拳を顎に当てるセシル先生。

その様子ですら、ご飯何杯もイケる。


「そうですね…。

 強いていうなら、旅をしたいですね。」


旅かぁ、旅ですかぁ…。

ぴっ、ぴかちゅー!!!!

俺も一緒に旅がしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!

私の頭はオーバーヒート寸前です。


「あ、師匠。」


セシル先生の一声によって脳が急速冷凍される。

振り返ると“野暮用”で抜けていたミネルバが部屋に戻ってきていた。


「タツローや。

 お前さんは勉強は好きかね?」


何をいきなり…。


「ま、まぁ。」

「はっきり言いなさい。

 好きか嫌いか?」

「この世界に関することなら興味がありますから、勉強するのは好きです。」

「そうかそうか。

 なら良かった。」


何がだよ…?


「ここの校長と交渉してきた。

 暫くここに滞在するぞ。

 ここは勉強するのにうってつけだからな。」


ふぇ、、、???

滞在?

stay?

ここに暫くいるの??

(゜.゜)

えーーーーーー!!!!!!!

マジかぁぁぁ!!!!!!!!

ケツからロケット燃料を噴出するかと思った。

いや嘘、脱糞。(失言)


「暫くって、いつまでですか…?」

「分からんよ。

 暫くゆったりと過ごそうと思う。」


え、じゃあまだ帰らなくて良いの!?


「それではまだタツローはここに残るんですか!?」


セシル先生の問いにミネルバは頷いた。


「そうだよ。

 セシルちゃんはどうするかい?」

「私も残ります!!」


回答にタイムレスはなかった。

ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!

私、嬉しいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

脳内再生し続けます!!!!


「決まりだね。

 もしコーネリウスの使いが来ても帰るように言おうかねぇ。

 アタシらには移動手段があるからねぇ。」


そうっすね、ドラゴンですよね。


「それじゃあ、戻ってきたら早速始めようかね。」


ミネルバはまた部屋を出て行った。


「良かったですね、タツロー!!

 師匠の言った通り、ここは学問を修める者には最高の場所ですよ。」

「そうみたいですね。

 僕も早く建築物とか歴史的遺産を見たいです。」

「その時は私が案内しますよ!!」


アハハハハハハハハハ、幸せです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


【サビキア トエリテス ドゥヨーモ広場】

「シゲル!!

 今日のオススメだよ、買ってかないかい!!」


適度に日焼けした健康美女は、ここ数日ですっかり常連になった異世界の健児に声をかけた。


「悪いな、マリア。

 今日は買い物じゃないんだ。」


斎宮は並んで歩く男を指差した。


「誰だい、その色白の殿方は?」

「俺の仕事仲間だ。

 これからトマス商会に行くんだよ。」


行き先を告げられたマリアは頰を膨らませた。


「シゲルもトマスの店に行っちゃうのかい?」

「ち、違うよ!!

 仕事なんだ。

 買い物はマリアの店でしかしないから安心してくれよ。」

「嬉しい事を言ってくれるね。

 待ってるからね、必ず来てよ!!」


マリアの店を後にした2人はトマス商店トエリテス支店へと向かった。


「良い女だな。」


道中、隣を歩く岩倉がニヤけながら斎宮を肘で突く。


「茶化さないでくださいよ、岩倉さん…。」

「悪い奴らに目をつけられるなよ。

 真っ先に人質になりそうだからな。」

「この世界に来て何人の恨みを買っているか分かったもんじゃないですよ。」

「そうかそうか。

 せいぜい気を付けてくれ。

 …、それで、トマスって男はどんな奴なんだ?」


2人はコリコ坂に差し掛かっていた。

ペースを落としてゆっくりと坂道を歩く。


「恐ろしいってイメージは無かったですよ。

 狡猾そうな人だなぁっていう印象はありましたけど。」

「狡猾な武器商人か。

 面白いな。

 俺も会いたかった。」

「今回の件も驚きはしなかったですね。

 彼をよく知らないっていうのはありますが…。

 あ、ヤコブさん!!」


店の前には待ち合わせていたヤコブがいた。


「迷われなくて良かったです。

 こちらがトマスの店…、彼の生家です。」


ヤコブの後ろには巨大なレンガ造りの倉庫のような店が立っていた。


「支配人含め、従業員は全てそのままです。

 何なりとお申し付けください。」


ヤコブに続いて店に入ると、支配人が出迎えに来た。


「いらっしゃいませ。

 当店の支配人を務めさせていただいております、フリートウッドと申します。

 ヤコブ様より陛下からの話は既に聞いております。

 ニホン政府の要望には可能な限り応えるべく努力させていただきます。」


フリートウッドは丁寧にお辞儀をした。


「立ち話もなんですから奥へ行きましょうか。」


斎宮は全員を商談スペースへと誘導した。

全員が着席したのを確認して話を再開する。


「この店は今後どうなる?」


切り出したのは岩倉だ。


「閉鎖か?新たな代表が就任か?」

「サビキア王国の支配下に入ります。」


ヤコブが声を潜めて言った。


「決定事項か?」


岩倉の確認にヤコブは頷いた。


「国が自前で軍備を生産、管理するわけか。」


岩倉は考える仕草をした。


「規模は縮小せずにこのままですか?」

「はい。

 国営になると言っても、収入の行き先が変わるだけですがね。」


斎宮の質問にヤコブが答える。


「サビキア政府からしてみたら今回の件は幸運だったな。

 取り敢えず店ごと接収してしまえば商品はもちろんのこと、情報や金まで手に入る。」

「それは考えすぎですよ。

 我々も一報が入って来た時は蜂の巣を突いたような騒ぎでしたから。」


ヤコブは笑う仕草をしながら岩倉の推測を否定した。


「だと良いが。」


岩倉も笑みを浮かべた。


「僕らが今日来たのは、サビキア側の代表であるトマスさんが不在でも我が国はこれまで決定した通商案を履行するということをお伝えするためです。」


斎宮がヤコブへ言う。


「お気遣い感謝します。

 とてもじゃないが今はまだ王都にニホンの方々を招待できる状況ではなくて…。」

「状況が状況だ。

 一先ず物質的なやり取りは先送りで結構。

 そこでだ。」


岩倉がヤコブに顔を近づけた。


「物質ではない物で取引してもらいたい。」

「情報や権利ですか?」


ヤコブは岩倉の目を覗き込む。


「情報だ。

 権利は国王陛下から既に与えられている。」

「今欲しいのは優秀な魔法研究者についての情報だ。」

「“今”と言うと、今後も何かあるんですね?」

「ああ。

 しっかりと礼はする。」

「これは非公式ですか?」


岩倉は首肯した。


「公式に私達がここに来たという記録は存在しない。」


ヤコブは意味をしっかりと吸いとった。


「こちらが知らせた情報も、そちらが知らせてくれた情報も発表前の物。

 …、分かりました。

 研究者の捜索範囲は?」

「この世界全てだ。」


岩倉が即答する。

難題だろうが、妥協はしないし、させないと言っていた。


「最低でも3~4日ください。

 受け渡し場所はここ。

 日時は追って御用邸まで使いを送ります。」

「結構だ。」


岩倉は席を立った。


「俺の要件は済んだ。

 先に戻っている。」

「分かりました。」


岩倉はそのまま店を後にした。


「シゲル殿、何かご用件が?」


何だろう?という顔をしたヤコブが聞く。


「はい。

 実は上官から命令があって…。

 この国の軍制を調査せよ、とのことで。」

「シゲル殿は軍人ですからね。

 分かりました。

 我が軍の将校を手配しましょう。

 御用邸に派遣致します。」

「ありがとうございます。」


ヤコブは気にするなと首を振った。


「それでは僕はこれで失礼します。」


トマス商会を後にした斎宮はその足でドゥヨーモ広場へ向かった。

目的は当然…。


「この果物をいただけますか?」

「1個だけかい?

もっと持ってきな!!」


マリアは籠に果物を幾つか入れて斎宮へ手渡した。


「昨日と同じように今夜は仕事かい?」


美女の問い掛けに斎宮は困り笑顔を見せる。


「今日の仕事は終わったよ。

  …、それでなんだけどさ、実は、今夜一緒に食事でもどうかなぁと思って…。」


日焼けした頬に赤みが増したのは夕焼けによるものか、はたまた…。


「ア、アタシとかい…?」

「ああ。

 どこか美味しい店とか知ってるかな?」

「こ、この辺りの店はどこも同じような味さ!!

 どこに行ったって変わらないよ!!」


マリアは意識的に斎宮と目を合わせようとしなかった。

そのため、彼がどんな顔をしているのかも分からなかった。


「じゃあ…、あそこの店はどうかな?」


マリアは斎宮の指の先を追う。

彼女の露店の右斜め前にある店だ。

こちらの世界風に言えば、賑やかなバルだ。

店から溢れるように通りでも働き終わった人々が樽をテーブル代わりに飲食を楽しんでいた。

静かな店とは対極的だが、雰囲気は悪くはない。


「良いよ。」


マリアの返事を聞いて斎宮は満足そうだった。


「それじゃあ、店の片付けを手伝うよ。」

長らく空いてしまいましたね…。

決して止めたわけではありませんからね!!

きちんと、年末に向けて後1、2話書けたら良いなぁとも思っていますので待っててくださいね。

それでは!

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