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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第2章 〜やっぱり帝国、次にシャウラッド、たまーーに日本〜
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第50話〜開戦〜

【帝国 ブニーク 市街地】

「全敵兵力が作戦エリアに入った。

 敵陣地はブニーク市街地より4kmの地点だ。」

「了解。

これより作戦をフェーズ2に移行する。

作戦エリアから離脱し、任務を続行しろ。」

「了解。

こちらの心配は無用だ。

始めてくれ。 」


今の無線は戦闘配置についている全兵員に聞こえている。


「まだ撃つなよ。」


市街地の建物屋上にて前方を監視している兵員が告げる。

市街地内では榴弾砲、自走高射機関砲、迫撃砲、戦車がその瞬間を待つ。


【帝国 ブニーク 市街地近辺 諸藩連合軍本営】

「先頭の部隊は間も無く市街地に入ります。」


天幕内で作戦地図を眺めていたパブロフへライムが報告した。


「哨戒用に竜騎兵を3騎低空で飛ばすんだ。」

「伝えます。」

「くれぐれも目立たないように頼むぞ。

 大事な作戦だ。」

「ご安心を。」


ライムはそう言って外へ出ようとした。


「ご苦労。

 他の者達はどんな様子だ?」


パブロフがライムを見送ろうとする。


「全員出撃準備を始めていますよ。」


2人が天幕の外へ出た時だった。

時刻は夜も深い筈なのに、辺りには光が満ちた。


「何だあれは!?」


パブロフが手で目を覆いながら叫んだ。

だが、直ぐにそんな疑問はどうでもよくなる。

爆発音と叫び声が彼の耳に届いたのだ。


「敵襲!!」


ライムが咄嗟に叫んだ。

直後、彼らの近くでも爆発が起きた。


「クソッ!!!

 ライム、避難するぞ!!

 …、!?

 嘘だろ!!

 死ぬんじゃない!!!」


倒れている部下の脈を確認する。

部下は爆発の衝撃で気を失っていた。


「将軍!!」


難を逃れたカシヤノフがパブロフの元へ駆け寄る。


「被害は!?」

「前線の被害は確認できませんが甚大だと考えられます。」

「無事ですか!!!」


3人の元へ竜騎兵が降下してきた。


「フライヤ!!

 報告しろ!!」

「前線は敵の魔法で壊滅状態です。」

「敵はどこから撃ってきているんだ!?」


パブロフはライムを龍の背中に乗せつつフライヤへと尋ねた。


「市街地からです。」

「こちらの行動が読まれていただと!?」

「反撃しますか?」

「全竜騎兵を飛ばすんだ!!

 空から魔法を撃ち込めば敵も少しは怯むだろう。」

「直ぐにお見舞いしてやりますよ!!

 将軍はコイツらと一緒に後方へ避難してください。」


フライヤは部下の騎兵を残して空へと戻った。


「よし。

 我々も避難するぞ。」


パブロフが龍に跨ろうとした時だった。

視界の奥に捉えていた兵士の胸が撃ち抜かれ、兵士は絶命した。


「そこまで来てるぞ!!!」


パブロフが警告を発した時には付近の騎兵やカシヤノフの頭部に穴が開けられていた。


「将軍!!」


まだ生きている兵士達がパブロフを囲んで盾になるも、次々と死んでいった。

自分が跨ろうとしていた龍も頭部を撃ち抜かれて屍となっていた。

天幕や木々の陰から姿を現した緑の服を着た者達。


「貴様らぁぁぁぁ!!!!!!」


パブロフは剣を抜いた。

乾いた音とともに額に衝撃が走る。

パブロフは視界が遠のくのを感じた。


【帝国 ブニーク沖】

既にパイロット達はコックピットに入ってその瞬間を待っていた。


「敵航空部隊の出撃を確認。

 前線部隊からこれらの排除要請を受領。

直ちにこれらを撃墜せよ。」


耳から入ってくるオペレーターの声。

彼らは鼓動の高鳴りを感じていたに違いない。


「了解。

イーグル1、出撃する。」


成田宙三等空佐の操縦桿を握る手は汗ばんでいた。

見知った誘導員が彼の機体に指示を出そうと位置に着く。

成田にとって同僚の次のアクションはとても長かった。

誘導員は腰を落とし、片腕を前方へ突き出す。


「お先に失礼。」


僚機よりも一足早く空を舞えることの嬉しさがつい口から溢れる。

成田は機体をゆっくりと発進させた。


「待ってなベイビー。

直ぐに俺も続くよ。」


僚機の松山三等空佐からの返事は早かった。


「イーグル1、離陸(テイクオフ)!」


ブニーク沖合に停泊した“いずも”から最初のF-35Bが離陸した。

空中で旋回し、速度を上げながら目標へと向かう。


「イーグル1、置いていくなよ。」


前線基地を越えたところで松山が追い付いた。


「あれだ。

既に上空からの攻撃が始まっているぞ。」


数十m先の空から地上へ閃光が放たれているのが確認できた。


「ベース、こちらイーグル1。

 前方に敵航空部隊を発見。

 直ちに撃墜を開始する。」

「イーグル1、こちらイーグル2。

 右の集団は任せろ。

…、射撃(ファイア)!!」


初撃の機銃掃射で敵竜騎兵隊の大部分が地上へと吸い込まれた。

残った竜騎兵に同乗していた魔導師達は直ぐに障壁を展開して次の機銃掃射を防ぐ。


「ベース、機銃では敵のシールドを突破できない。

対空ミサイルの使用許可を求む。」

「ダブルウィング、対空ミサイルの使用を許可する。

敵を全滅させるんだ。」

「了解。

使用兵装を対空ミサイルに切り替える。」


成田は対空ミサイルを発射した。

獲物をロックオンしたミサイルが羊へ向かっていく。


「イーグル1からベース。

敵のシールドに阻まれた。

繰り返す。

ミサイルが防がれた。」

「ベースからイーグル1。

了解した。

直ちに対応を考える。

ダブルウィングは敵の攻撃に注意して帰投せよ。」


【帝国 ブニーク 市街地】

「総員退避!!」


兵員達は上空からの魔法攻撃から身を守ろうと建物の中や物陰に身を隠す。

警告から数秒で炎やら氷やらエネルギー球やらが落ちてきた。


「被害報告!!」

「負傷4名。

装備は無事です。」


幸い、今のところ車両や兵器に損害は出ていない。


「高射機関砲用意!!

撃ち落とせ!!」


竜騎兵用に設置された高射機関砲が一斉に火を吹いた。

夜空にビーム砲の如き光の筋が刻まれる。

光の餌食になった騎兵が1騎、また1騎と地に黙した。


「残存兵多数確認。

やはりシールドに防がれてしまいます。」

「ヘリコプター隊に航空支援を要請。

空と地上から弾丸の雨を浴びせてやるんだ!!」

「対地攻撃、来ます!!」


再び物陰に隠れてやり過ごす。

だが、今回の攻撃は上からだけではなかった。


「そこから離れろ!!」


急に足元に浮かび上がった魔法陣を見て兵員が注意を促す。

魔法陣は車両を含めた兵装にも展開していた。

兵員が安全確保を完了させるまで敵は待ってくれない。

魔法が発動し、魔法陣を起点として爆発が起きた。


「大丈夫か!?」


市街地内の建物を指揮所にしていたことで難を逃れた赤城二等陸佐は飛び出した。

兵装は全て大破しており、爆発地点の近くにいた兵員の息はなかった。


「息がある者を運ぶんだ!!」


二次被害を防ぐため、兵員は迅速な対処を余儀なくされた。

同時に基地への被害報告も行われる。


「兵装は全て大破!!

 死傷者多数!!

 航空支援はまだですか!?」


兵員は無線に怒鳴りつけた。


「既に出撃した。

 迎えの車も向かっているから頑張るんだ。」


返ってくる声は冷静だ。

先程支援要請を出したヘリの音が聞こえたのは生存者の搬送作業の途中だった。

作戦エリア到着と同時にAH-1ヘリ5機の機関砲が竜騎兵へ弾をぶち込んでいく。

初めは障壁で防がれていたが、毎分約700発を5機から食らっては帝国の魔導部隊も消耗が激しい。


「敵のシールドが破壊された。

 このまま撃ち続けるんだ。」


障壁を展開している魔導師の限界を超えてしまい、気絶した魔導師が騎兵から落下する。

盾を失った騎兵も機関砲の餌食になった。


「敵残存数7。」


ヘリコプターのパイロットが現状を司令所へ報告する。


「リベレ1to5、対戦車ミサイルの使用を許可する。」

「了解。

 目標に向けて対戦車ミサイルを使用する。」


全機から一斉にミサイルが発射された。

3騎が地獄の火に飲まれ、自由落下する。

煙が晴れて敵の損害を把握するまで次の攻撃は行われない。


「回避行動を取れ!!」


それが敵の攻撃チャンスにもなった。

爆発後の煙から火球が放たれる。

火球は1機のローターへ直撃し、戦線を離脱させた。


「こちらリベレ2、基地まで航続不能。

 不時着する。」


爆発炎上は免れたものの、乗員は多少の怪我は覚悟しなければならないだろう。


「第二撃、撃てぃ!!」


再びミサイルが騎兵へ向かっていく。

今度は全て防がれた。

3回目の発射を行おうとした時、唐突に2騎の龍から騎兵と魔導師が崩れ落ちた。


【帝国 ブニーク 諸藩連合軍本営】

「仕留めたかぁ…。

 聖牛(せいご)には敵わないな。」


出雲はスコープを覗きながら相方の腕を称賛した。


「河内さんや美作さんだって当ててますよ。」


褒められた本人である大隅聖牛はあまり嬉しくなさそうだ。


「残りは2騎ですね。

 …、こちらアルデバラン。

 右の騎兵を狙う。」


次の標的へ狙いを定めながら大隅は無線に喋りかけた。


「こちらアンドロメダ。

 右の魔導師を狙う。」

「こちらプレアデス。

 左の魔導師は任せろ。」

「こちらレグルス。

 残った騎兵を殺ります。」


出雲はM4カービンを空へ向けた。


「撃て。」


合図と同時に4人は引き金を引く。

直ぐさま残りの騎兵も無力化され、敵航空部隊は全滅した。


「レグルスからカノープスへ。

 敵航空部隊の全滅を確認。

 司令所への報告を求む。」

「こちらカノープス。

 了解した。

 作戦エリア内の敵残存兵力は確認されない。

 我々も撤収する。」


【帝国 ブニーク 国防軍前線基地】

会議室を利用した作戦司令所には基地にいる佃以下外地方面隊の幹部が揃っていた。


「…、我が軍の損害は以上です。」


室内には重い空気が立ち込めていた。

人と装備双方に想定よりも多くの犠牲が出てしまったのだ。


「直ぐに本国へ連絡するんだ。

 魔法のシールドを破壊する方法を急ぎ調べて欲しい。」


佃が命じた。

魔導師の障壁魔法に苦しめられた国防軍にとって、その攻略は最優先課題であった。


「全兵帰還は済んでいるな?」

「はい。」

「特戦群と深部探査隊には引き続き任務を続けてもらう。

 他の者は全員明日は休ませろ。

 明後日から市街地の復旧を開始する。

 …、以上だ。」


今回の戦いも国防軍が勝利を収めた。

だが、犠牲は前回とは比べものにならなかった。

核兵器を除いた通常兵器のみで戦った初陣は国防軍にとって手痛いものだったと判断せざるを得ない。

帝国は諸藩連合軍のほとんどを失ったが、国防軍もしばらく大規模戦闘は難しい状態である。

この件を受け、日本政府は早急に対魔導師戦の研究を始めることになった。

帝国も自身の戦力の欠落がパンゲアに与える影響を考えているだろう。

この戦いは先の戦いよりも強い衝撃を持って世界を駆け巡った。

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