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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
4/75

第3話〜作戦概要〜

ーー

【日本 東京 市ヶ谷】

ーー

定刻通り始まった外地派遣団の関係会議は1時間以上が経過していた。

今は国防軍による外地派遣の段取りについて話し合いが行われている。


「現地占領なんて可能なのですか?

 外交のプロとして意見を言わせてもらえれば、こういったことは体裁が重要です。」


作戦概要を聞いていた井上は疑問を投げかけた。


「能力ということに関して言えば問題ありません。

 ただ、ご指摘の体裁という点で言うと…。」


若手将校が辰巳の方を向く。


「その点に関しては現地調査の前線拠点設営ということで内閣は押し通す。」


辰巳は手元の資料に目を通しながら答える。


「分かりました。

 では、我々はいつから現地入りでしょうか?」

「予定は2週間後だ。

 軍の働きによっちゃ予定より早くも遅くもなる。

 まぁ、お膳立ても考えると本格的な接触開始はもっと先だろうけどな。」

「それまでは現地で研修ということですか。」

「そういうこった。

 ま、宜しく頼むよ。」


二人のやりとりが一区切りついたところで進行役の将校が話を進める。


「むらさめが先行して魔法陣進入後、おおすみが続きます。

 現在、海上に敵勢力は確認されておりませんが、存在した場合はむらさめによって目標の排除を行います。

 引き続いて友軍の上陸支援を開始。

 支援後、機動団によって上陸地点を確保して橋頭堡の設営を開始します。

 橋頭堡設営完了後、いずもを派遣し、本隊が合流。

 陸上に本部が設置されるまではいずもに臨時本部を設置します。」

「外地方面隊本部が正式に設置され、周辺の状況が把握できたところでお前さん達を送り込む。」


辰巳が将校の説明に付け加えた。


「我々は向こうでは誰の指示に従えば良いのでしょうか?

 現地ではそう言った点も組織横断的な協力が必要だと考えられますが…。」


井上が辰巳に問う。


「現地指揮官には佃陸将を充てる。

 君らの仕事が始まるまで、もしくは有事の際には彼の指示に従ってくれ。

 仕事が始まってから平時の間は東京にいる君たちの上司だな。」


辰巳が言い終わると、一人の老年の軍人が立ち上がる。


「この度、現地指揮官を拝命いたしました佃晴信(つくだはるのぶ)陸将です。」


佃は井上に向かって頭を下げた。

井上も一礼で返す。


「他に何か質問はありますか?」


将校が室内を見渡した。


「これを聞くのはどうかと思いますが、あの魔法陣が消えるといった想定は何かあるのでしょうか?」


井上は出席者全員に対して、ある意味で一番難しい問いかけを行った。


「佃陸将を始めとした現地の判断に任せる。

 そうなった場合、こちらからの救出は不可能だ。

 派遣される者達は皆覚悟を決めている。」


辰巳がそう言い放つと、


「そうですか…。

 分かりました。」


井上は肩を落とした。


「どした?

 怖気づいたか?」


辰巳がおちょくるように聞く。


「まさか。

 そうなった場合、現地勢力との交渉は私が引き受けますよ。」


井上は鼻で笑った。

彼の態度を咎めるものはいない。


「その際の護衛は私が引き受けましょう。」


代わりに佃がニヤリとしながら井上を見る。

その様子を見ながら、


「それでは、この辺でお開きにしたいと思います。」


進行役の将校が会議の終了を告げると、辰巳が皆を呼び止めた。


「おし、じゃ、最後に一言。

 諸君、いよいよあちらさんにお邪魔する時がやってきた。

 各自気を引き締めてことに当たるように!!

 以上、解散!!」


あとは2日後の国防軍先遣隊の派遣を控えるのみとなった。




ーー

【異世界】

ーー

目を開けるとそこは…、

『小屋?

 違う、揺れてる?

 地震?

 いや、車か?

 ここはどこだ?

 うっ…。

 頭痛がする…。

 確か、赤レンガにいて、船が現れて…。』


「お、気がついたか!?」


『誰だコイツ?』


「いやぁ〜、良かった良かった。

 体調悪くない?」


『まず名乗れよ、お前誰だよ?』


「頭が少し痛みますけど、それ以外は大丈夫です…。」

「うん、それなら問題ないな。」


『日本人?だよな…。』


「ん?

 どうかしたかい?」

「あ、いや、その…。

 どちら様ですか?」

「あ!

 そっかそっか、自己紹介まだだったね。

 日本国国防海軍特別警備隊所属、斎宮茂二等海尉であります!」


『軍人か。

 なるほど、強そうなわけだ。

 …、ん?』


「エ!?

 特別警備隊!?」

「はい。

 今はこんなんですが…。

 ですが安心してください、絶対に助け出しますから。」


『おうよ!!

 期待してますよ、軍人さ〜ん。』


「僕は(あららぎ)龍郎(たつろう)と言います。」

「タツロウか、よろしくな!」

「こちらこそよろしくお願いします。」


ペコリと頭を下げ、龍郎は周囲を見渡した。


「ところで、どうしてこんな状況に?」


龍郎の質問に斎宮は質問で返す。


「君はどこまで覚えてる?」


龍郎は頭痛に抗いながら記憶を辿った。


「夕方、赤レンガにいて、そしたら船が現れて砲撃を受けて、それで…。」

「我々が出動した時には恐らく君はもう捕虜になっていたんだろう。

 我々の任務は敵船の制圧だった。

 そこで君が捕虜になっていたのを発見したんだ。

 比較的簡単な任務のはずだった。

 なのに…。」


斎宮はあの瞬間を思い出していた。


「あと一歩のところで視界が光で包まれて、気が付いたらこの世界にいた。

 船には僕と君の二人だけ。

 仲間も敵もいなくなっていた。

 目の前からは敵船が迫ってきていて到底一人じゃ敵わない。

 かといって捕虜になって装備を奪われるわけにもいかない。

 俺一人だったら海に飛び込んだが、君も一緒だった。

 一か八か無抵抗で降伏に賭けたよ。

 今の所は成功かな…?」

「そんなことが…。」


『おい、冗談じゃねーぞ!

 捕虜だと!?

 それって高確率で殺されるやつでねーかよ!!!』


「途中寝ちゃったから正確ではないけど、今はこれに乗せられてから、かれこれ1日近く経ったかなぁ。」


『ずいぶん経ったな。

 暇じゃなかったか、おい。』


「行き先は…?」

「分からないけど、基地か本国、僕らを幽閉する場所がある所じゃないかなぁ。」


『あ、はい。

 なんか分かります。

 地下で、暗くて、ジメジメしてて、明りは年季入ったロウソクで、ネズミとかいるんですよね!!(泣)』


「ずっーと外を見てたんだけど、海岸からはほとんど平地っぽい。

 街とか村の類も川の近くにそこそこのしか確認できなかった。」

「つまり…?」

「脱走した場合、かなり苦労する。」


『オイオイ、手荒い真似は勘弁だぜ、兄貴ぃ…。』


そこから同じような風景を眺めつつもう4時間ほど揺られた頃だった。

徐に馬車が停止する。


「ん?」


斎宮が外の様子を見る。

彼が格子窓に顔を近付けたのと、外からファンファーレが聞こえてきたのは同じタイミングだった。


「何だ!?」


ファンファーレの音とともに車列は再び動き出した。

音楽が徐々に大きくなっていく。


「街?」


龍郎達は大きな街に着いたようだった。


「外が賑やかになってきたな。」


斎宮が外の様子を窺う。

龍郎も反対の格子窓から外の景色を見ている。


「うわぁ…。」


格子窓から辛うじて見えた街並みからはその街の豊かさが見て取れた。

比較的、平らに舗装された道。

所狭しと並ぶ商店。

建物は木造と煉瓦造りのようだ。

そして、街を埋めるように道行く沢山の人々。


「この街は今までの街とかとは比べものにならない大きさだな。」


ずっと起きていた斎宮がそう漏らす。

外からは何やら歓声のような声も聞こえた。


「この車列を敬ってるのか?」

「みたいですね。

 斎宮さんはこの車列の人たちを見たんでしたよね?

 どんな方々でしたか?」

「基本は軍人風の奴らばっかだったよ。

 一人、将官クラスみたいな男がいたな。

 それと、軍人とは違う美女が一人。

 後、よく分からない魔法使いとか学者みたいな集団もいた気がするな。」

「色々と突っ込みどころ満載ですが、いずれにせよ、上級国民っぽいですね。」


龍郎の言葉に斎宮は首肯した。


「だろうな。

 この街が彼らの本拠地だとすると、向かう先は城のような場所か?」

「恐らくそうですね。

 ほら。」


そう言って龍郎は自分の側の格子窓の外を指さした。

斎宮はそちら側へ移動する。

窓から見えたのは大きな城壁のようなものと沢山の警備兵だった。


「ヨーロッパにだってこんなの無いですよ、きっと。」


龍郎は外の景色を見ながら言う。

車列は坂道へと差し掛かる。


「もし収監でもされようものなら、どうやって脱出しますか…?」


龍郎が不安げに漏らす。


「諦めちゃダメだ、龍郎君!!

 敵に捕まって、仮に拷問を受けたとしても、心を強く持つんだ。

 大丈夫だ。

 僕が付いている!!」


斎宮のフォローには感謝するが、やはり一抹の不安と恐怖感は拭えない龍郎であった。



ーー

【帝国 帝都】

ーー

「カテリーナ皇女が帰還なされたぞー!!!」


帝都の門兵が遠くから迫る車列を見るなり鐘を鳴らして叫んだ。

鐘の音を聞いた薔薇騎士団の面々が通りの宿の中から急いで現れる。


「もう帰ってきたのか!?

 予定ではもう数日滞在する筈ではなかったのか!?」

「まるで殿下が帰ってきたのが嬉しくないみたいですね、フィアンツ副長。」


先に通りに出ていた少女が後から出てきた大柄な男をおちょくった。


「揚げ足を取るのは止めないか、オリヴィア。

 私はただ、殿下に何かあったのかもしれないと危惧しただけだ。」


薔薇騎士団副官のフィアンツ・ズィーコフは、同じく薔薇騎士団下級騎士のオリヴィア・メジコヴァを窘めた。

この娘は歳の割に機転が利き、腕も立つのだが、年相応の軽率な振る舞いのせいでいつまでも上席に就けないでいる。


「副長、楽器隊の用意が間に合いません…。」


門の側から走って報告に来たのは、薔薇騎士団中級騎士のマルク・モストヴォイだ。

彼は皇女の”お友達枠”で騎士団に籍を置いている本来なら武芸と縁のない男だ。

彼の生家であるモストヴォイ公爵家は帝国の中でも指折りの家系で、カテリーナとは幼馴染の関係だ。

彼自身も齢20歳にして既に男爵の爵位持ち。

帝国では25歳から成人として扱われるため、彼は未成年にして爵位を保有していることになる。


「間に合いませんじゃ困るんだ、マルク。

 直ぐに陛下の馬車を止めて時間稼ぎをしてこい!!」


しかし、爵位も騎士団の中では無意味だ。

団長を務める皇女に次ぐ階級は副官のフィアンツ(宮廷仕え上級騎士)である。

騎士団において、マルクの地位はフィアンツに遠く及ばない。


「はい…。」


上官の指令を全うすべく、マルクは幼馴染の乗る馬車へと向かう。


「マルクさんって、凄い人ですよね。」


その様子を見ていたオリヴィアが言う。


「普通、貴族の人なら逆ギレしてもおかしくないと思うんですけど、あの人が副長に対して怒っているのは一度も見たことありません。」

「あぁ。

 アイツは立派だよ。

 騎士団に入った日から、自分の爵位は忘れて精進しますって言った通りに過ごしている。」

「精進している割にはアタシより弱いですけどね。」

「お前はそういう軽率な言動を正さないか!!」


フィアンツの拳骨が炸裂する。


「痛ーーーーい!!!」


オリヴィアは頭を押さえながらフィアンツを睨む。


「お前も殿下をお迎えする準備をしてこい!!!」


フィアンツは少しも意に介していない様子だ。

彼はさっさと馬に跨った。


「我々が天下の馬車を先導せねばならん。

 痛がっている暇があるなら早く支度をしろ!!」


彼の言う通り、皇女の車列を城まで先導するのは彼ら薔薇騎士団の栄誉ある役目だ。

帝都に集う沢山の人々を前に、優雅さを備えつつも勇ましく馬を操るのは高度な乗馬の能力を要する。

副官のフィアンツとともに馬車を先導する役目を担っている点でもオリヴィアの能力は証明できるだろう。


「副長、マルクが車列を引き止めているお陰で楽器隊の準備が間に合ったぞ。」


中級騎士のキーラ・シェルバコヴァが馬を走らせて来た。

馬上では彼女のトレードマークである豊満な胸元とウェーブした金髪が揺れる。

彼女は車列の後方でマルクとともに殿を務める。

ちなみに、彼女も”お友達枠”だ。

親は伯爵の爵位持ちで、彼女自身は周囲から伯爵令嬢と呼ばれている。


「よし。

 それでは位置に付け。」


支度を終わらせたオリヴィアも愛馬に跨っている。


「キーラ、君が位置に付いたら扉を開けるんだ。」

「分かりました。」


キーラは再び門へと馬を走らせた。

程なくして楽器隊の演奏が始まり、門が開く。


「いよいよだぞ。」


フィアンツは斜め後ろに控えるオリヴィアへと笑みを向けた。

緊張しているのか、彼女は頷きだけで返す。

皇女の馬車が門を潜ると、群衆の興奮はピークに達した。

周囲からは歓声が相次ぐ。

車列先頭の皇女が乗る馬車のスピードに合わせてフィアンツらは先導していく。

彼は後ろを振り返りはしないが、沿道に立つ群衆が馬車へ手を振るのを見ると、どうやら皇女も窓から手を振っているようだ。


「フィアンツ副官!!!!」


有難いことに、群衆のお目当ては何も皇女だけではない。

騎士団それぞれにもファンは付いている。

一番人気はキーラだが、フィアンツもそれなりに人気があるもので、今もこうして黄色い声援を浴びせられている。

高揚感と気恥ずかしさを感じながらもフィアンツは前を向いて黙々と責務を果たす。


『美しい眺めだ。』


フィアンツは進行方向の上を見る。

車列は緩やかな坂道に差し掛かっていた。

商業エリアより少しだけ小高いその場所に見えるのは荘厳な皇城だ。

東西南北に位置する天を刺さんとする4つの小塔と万物の侵入を拒むような巨壁にグルりと囲まれた土色の城。

決して煌びやかではないが、地味な色がかえって権力と荘厳さを醸し出している。

車列は既に城の敷地内へ入っているが、正面玄関まではまだ距離があった。

もう沿道の民衆はいない。


「もう慣れたか?」


フィアンツは後ろを振り返り、オリヴィアに先導の感想を尋ねる。


「全く慣れませんよ!!!!!」


彼女は年相応の高い声を出す。


「それは安心した。」


そう言ってフィアンツは声を抑えて静かに笑った。

沿道の民衆こそいないが、警備兵はそこかしこにいるからだ。


「いつ見ても、お城は大きいですね。」


副官に釣られてオリヴィアも雑談を始める。


「我が帝国の象徴だからな。

 貧相な城では民が困る。」

「まるで皇帝陛下のような物言いですね。」

「そういう風に何度も上官をおちょくるんじゃない。

 私はこの城が好きなんだ。」


いつしか車列は城を見上げる位置にまで来ていた。


『ひょっとして、この城は既に天まで届いているのではないか?』


フィアンツは子供の頃、この城を見る度にそう思った。

実を言うと、今でもそう思う時がある。

今がまさにそうだ。


「副長、着きましたよ。」


余所見をしていた上官にオリヴィアが教える。


「ご苦労様です!!」


城の正面玄関近くには親衛隊が待ち構えていた。

薔薇騎士団の役目はここまでで、城内の移動は親衛隊が引き継ぐ。


「ご苦労。

 薔薇騎士団副官のフィアンツ・ズィーコフだ。

 皇女殿下の車列を先導して参った。」


フィアンツは馬上から形式的な引き継ぎを行う。


「了解しました。

 これより先、親衛隊がその任を引き継ぎます。」


両者は敬礼をして踵を返す。

フィアンツの後をオリヴィアが追う。


「殿下、ご無事で何よりです。

 後は親衛隊に引き継ぎ、我々は宿舎へ帰還します。」


馬車から出て来た皇女へフィアンツは告げた。


「ご苦労であった。

 ゆっくり休め。」


カテリーナは労いの言葉をかけて城内へと移動する。

車列から離れてその様子を確認し、フィアンツらは宿舎へと戻って行った。

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