表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
36/75

第35話〜第1章 完〜

【トエリテス南西部 コリコ坂】

場所はトエリテス、時は横浜でテロがあった頃。

場所についてもっと細かく言うと、ドゥヨーモ広場を中心に、御用邸とは真反対の方角にあるコリコ坂。

家具屋、服屋、宝飾店を始め、この坂には様々な専門店が軒を連ねる。

勿論、サビキア随一の総合商社であるトマス商会も支店を構えている。

というか、今でこそ本店は王都だが、トマス商会のルーツはこの地なのだ。

昔話をすると、彼の祖父がこの場所で開いた“マーティン商店”なる食料品店がトマス商会の大元だ。

最初は船でトエリテスに運ばれてくる生鮮食品を細々と販売していたのだが、トマスの父親が経営拡大を行なう。

港から入って来る品は内陸部で大ヒットし、マーティン商店はサビキア各地に支店を出すに至った。

やがて彼の父は各支店に現地の特産品を入手させ、それを各地で販売。

ローウェル一族はさらに富を蓄える事になった。

ちなみに、トマスはこの時期に“商い”というものに接し始める。

父のお陰で豪商となったローウェル家は王都に本店を開き、貴族達の御用商人としての活動も開始した。

この時に貴族達とマーティン商店の窓口役となったのが何を隠そうトマスである。

有力貴族達との人脈を着々と広げ、マーティン商店は名実共に政商となった。

ここでいよいよ店主のバトンがトマスにやって来る。

大人しく商売をしていれば一生遊んで暮らせたのだが、彼は積極的に新事業へと手を伸ばした。

そう、軍需産業である。(それまでサビキア軍はギルドから武器を仕入れていた。)

しかも原料確保、製造、流通の一切を自社で行おうとしたのだ。

これまでのノウハウを駆使すれば原料確保と流通は問題ない。

悩みのタネは製造だったが、既存品を伝統工芸の職人に模倣させる事で どうにかパスした。

エラい初期コストを投じた甲斐あって製品供給ルートは完成。

品質は勿論、完全自社管理なので卸価格もギルドの半額以下という凄まじい成果を生んだ。

サビキア軍は直ぐ様 取引先をマーティン商店へと変更。

この件でギルドと多少揉めたが、ギルドにも製品を超低価格で供給する契約を交わして解決した。

暴利を貪ったトマスだったが、ここで嬉しい誤算が発生する。

サビキア国内の貴族や他の国内外の豪商から、私兵用装備の注文が数多く来たのだ。

予想外の事態にマーティン商店の軍需部門はパンク寸前。

止むを得ず、トマスは軍需部門の独立を決定した。

これが現在の“トマス商会”である。

近頃はトマス商会の方に組み込まれつつあるが、姉妹店としてマーティン商店は今でも営業中だ。

…、話を戻そう。

旧マーティン商店1号店、現トマス商会トエリテス支店にヤコブは来ていた。


「いらっしゃいませ。

 ヤコブ様、本日はどのようなご用件で?」

「買い物じゃないんだが、トマスに会いに来たんだ。」


店に入るや直ぐに声を掛けてきた支配人に要件を告げる。


「代表はこちらにはお見えになっておりませんが…。

 お約束でもございましたか?」

「約束はしてないんだ。

 先日 王都で会った時にトエリテスに向かうと言ってたんだが晩餐会でも姿を見かけなくてね。

 急用で入れ違いにでもなったのかな…。」


トマスがいないと分かるとヤコブは礼を言って店を出ようとした。


「ドックの方は行かれましたか?

 もしかすると、こちらに顔を出していないだけでドックにはいらっしゃるかもしれません。」

「ドックの方にも行ってみたが、しばらく顔は出してないって言われたんだ。」

「そうですか…。」

「こことドックの他にトマスがいそうな場所はあるか?」

「思い当たりませんね。

 初代の墓所は王都にありますし…。

 わざわざトエリテスまで足を運んだのなら、ここかドックには顔をお見せになる筈ですからね…。」

「まあ、別に約束してた訳じゃなくて勝手に押しかけただけだから気にしないでくれ。

 迷惑かけたな。」

「とんでもございません。

 こちらこそ、ご期待に添えず申し訳ございません。」


支配人に見送られてヤコブは店を後にした。


【シャウラッド パロマノーヴァ】

「これ程までとは…。」


フェムカの前には焼き殺したばかりの“死徒”と、奴らに襲われた魔導協会の魔導師が転がっていた。

助けるつもりはさらさら無いので魔導師の方も間も無く生き絶えるだろう。


「お前ごときが1人で行動するからだ。

 なぜ逃げなかった?」


魔導師はもはや言葉も発せられない。

彼がこの魔導師を今直ぐに焼き払わないのは、せめてもの情けだ。

これ以上の苦痛を味わう事の無いようにと。


「アァァ…。」「ウォォ…。」


夜の帳から無数の人影が現れる。

無論、全て死徒だ。


「キリが無いな。」


瞬時に全てを灰にする。


「魔道協会は何をしているんだ?」


1人、愚痴をこぼすフェムカ。


「お前の雇い主も無能だな。」


足元に目をやると、魔導師は息絶えていた。


「逝ったか…。」


フェムカは ため息を漏らす。


「現世には戻って来るなよ。

 あの世の方が生き易いに決まってる。」


魔導師の死体に炎を灯す。

炎は魔導師を灰に変えた。


「この状況での生存は絶望的だな…。」


遠くの方角へ耳を澄ます。

散発的に聞こえてくる戦闘音。


「お前らでは敵わんよ。

 早く逃げろ…。」


フェムカは戦闘音とは別の方角へ歩き出した。


【シャウラッド コルカソンヌ 城門】

「こちらは帝国皇女カテリーナ・ルマエル・ゲルト殿下の馬車である!!

 そこを退けぇぇぇい!!!」


馬車引きが衛兵隊に向かって叫ぶ。


「今は何人足りともこの城門を通す訳にはいかない!!」

「皇女殿下がこんな夜更けに来るなど考えられるか!!」


衛兵達は剣を抜いた。


「ヤメェェイ!!!!!」


声の主はカテリーナだ。

彼女は馬車から降りて衛兵隊に歩み寄っていく。


「どうか無礼を許して欲しい。

 訳あって このような事態になってしまった。

 妾が皇女カテリーナだと言う証拠に、この書簡を直ぐに大君へと渡して欲しい。」


カテリーナは近くにいた衛兵に皇帝から預かった書簡を渡した。

衛兵は書簡の外見を確認する。


「隊長、見てください。

 封は帝国皇室の印です。」


部下から手渡された書簡の封を隊長も自ら確認する。


「確かに。

 申し遅れた、私はコルカソンヌ衛兵隊隊長のグスマンだ。

 貴方達が帝国の使者だと言う事は認めよう。

 しかし、それがアマリア様に取り継ぐ理由にはならない。」


グスマンは相手を品定めするような目つきでカテリーナを見る。


「妾は両国の関係について大君と非常に重要な話がある。」

「申し訳ないが通す訳にはいかない。」


グスマンは頑としてカテリーナ達を通そうとはしなかった。


「時間が無いんだ。」

「お引き取り願う。」

「力づくで通る事だって可能なんだぞ。」

「あまり事を荒立てるな。

 特に今は。

 我々だけで対処できないとなるとお互いに厄介な事になる。」

「今は?」

「おやおや。

 帝国の皇女殿下がこのような時間、このような場所で何をしておられるのですか?」


声は城壁の上から聞こえた。

カテリーナが声の方向へ顔を上げる。


「少々お待ちくださいね。」


ふざけた声だが、性別は男だろう。

男は縄も何も使わずに身一つで低速降下してきた。


「魔導師か。」

「左様にございます。」


目の前に降りてきて分かった。

声だけでなく身なりもふざけている。

男は青い背広に山高帽を被り、顔には道化師の仮面をつけていた。


「関所を強行突破したかと思えば、正規の国境を無視して不法入国。

 挙句、こんな時間に大君へ取り継げですって?

 無茶が過ぎますよ。」

「貴様に話は無い。」

「皇女殿下の方が無くても、私は立場上 話さざるを得ないんですよ。」

「少しでも動いたら安全の保証は出来ません。」


エヴァノラは魔法式を展開していた。

フィアンツも後ろで剣に手を掛けている。


「嫌だなぁ。

 ここで殺り合う気は無いですよ。

 言ったでしょ、“お話”がしたいだけだって。」

「話だと?」

「大君が殿下達にお会いになられます。

 ただ、条件が1つ。」


男は人差し指を立てた。


「何だ?」

「まずは僕とお話してください。」


仮面の所為で男の心情が掴めない。


「分かった。」

「交渉成立です。

 それではこちらへどうぞ。」

「待ってくれ!!

 中に入れる訳には行かない!!」

「これは君が どうこう出来る問題じゃない。

 開けるんだ。」


グスマンは仕方なく命令通り部下に門を開けさせた。


「それじゃ、行きましょう。」


男は中へと歩き出す。


「あ、そうだ。

 もう魔法式は消させてもらいますね。」


エヴァノラが展開していた魔道式に重なるように別の魔道式が展開される。

物が割れるような音と共に双方の魔法式が消えた。


「何ボケっとしてるんですか。

 馬車も入って良いですから急いでください。」


言われるがまま、カテリーナ達はコルカソンヌへと足を踏み入れた。


【新港基地 ブリッジ】

場所は横浜、時は今。

現在時刻は午前5時。

龍郎達は既に“いず”へ乗船している。

ブリッジには龍郎の両親と外務省の木戸、複数の基地関係者が見送りに来ていた。

船はブリッジを離れ、コンタクト・ポイント(政府により“魔法陣”の呼称が変更され、外国メディアもこの名称を使用。)へと向かう。

龍郎はギリギリまでブリッジを見ていようと外にいた。


「これよりコンタクト・ポイントを通過する。

 総員、直ちに船内へ移動せよ。」


アナウンスが聞こえる中、横浜の景色をしかと目に焼き付け、龍郎は船内へと入った。

徐々に視界の光が増していく。

この前同様、光が一瞬だけ強まる。

目を閉じていても微かに眩しさを感じる。


「コンタクト・ポイント通過完了、各自状況報告。」


アナウンスが聞こえた後、龍郎は外に出た。

セシルも続いて外に出る。


「戻って来ましたね。」


セシルが龍郎の顔を覗く。

龍郎はセシルの目を見て頷いて返す。


「始まりますよ。」


視線を再び前へ向けた龍郎が言う。


「何が始まるんですか?」


セシルが問う。

龍郎は笑った。


「冒険記の第二章です。」


光のトンネルを抜けると、そこはパンゲアだった。

気がつけば、1章書くのにダラダラと約1年間…。(汗)

これと言って文才も無い自分の作品を読んでくださる方がいるのは何とも言えない気持ちですね。

感謝感謝です。

今後の課題は次話をサクサク投稿する事ですね。

予定では10章までは膨らまない筈。(多分)

このような感じですが、2章からも宜しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ