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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
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第31話〜戦支度〜

【帝国 皇城 元老院 議場】

「イゾーリダ将軍、軍の編成状況を述べよ。」


議長に指名されたパブロフが壇上に立つ。


「既に9割方は編成が完了しており、先遣隊がガンディアにて待機しております。」

「ザラブ議員、発言を許可します。」


議長が手を挙げていた男を指名する。


「先遣隊の指揮官は誰だね?」

「ダフコワ伯爵です。」

「という事は先遣隊の主力は竜騎兵隊かね?」

「左様です。

 竜騎兵隊を主力とした魔導部隊との混成部隊です。」

「ザラブ議員、もう良いですか?」

「結構だ。」

「イゾーリダ将軍、続けて下さい。」

「帝国北西部に位置する諸藩の兵がラトスクにいる海軍と合流次第、総勢1万5千の兵で進軍を開始します。

 尚、先遣隊は既に斥候を放っており、敵の情報を収集していると報告を受けております。

 本隊が作戦地域に到着後はブニーク近郊に本営を設置、前線基地としてブニーク市街地を接収します。

 作戦時間は夜間、竜騎兵隊による波状奇襲攻撃を皮切りに我が軍は攻撃開始。

 先ずは魔導部隊に敵防御設備を破壊させます。

 敵長射程兵器及び防空兵器の無力化を確認後、魔導部隊による合図で本隊が前進。

 本隊の損害を最小限に抑えるべく魔導部隊が各種援護を陸海空から引き続き実施。

 敵の激しい抵抗が予想されますが、我が軍はそれを上回る物量と戦術で敵を消し去ります。」


パブロフが議場を見渡す。

誰も口を挟む気配はない。

パブロフは後ろを振り返る。


「陛下、首尾良く事は進んでおります。」


頭を下げたパブロフにゲルトが拍手を贈る。

パラパラと議場の議員も皇帝と同じように拍手をしだす。


「良くやった。」

「もったいないお言葉です。」

「ラトスクの海軍とはいつ合流できる?」

「明日の正午までには。

 合流が確認されれば煙突通信によって情報が伝えられる予定です。」

「そうか。

 明日の出陣式を楽しみにしている。」


【ブニーク 国防軍前線基地】

「司令、帝国側が本格的に活動を始めました。」


駆け足で上坂が佃の元へやって来たのは日付が変わる少し前だった。


「差し迫った事態か?」

「ブニーク市街地から約50kmの場所に位置するガンディアという街に先遣隊と思しき部隊が駐留しています。」


上坂は行商人が撮影した写真を佃に手渡した。


「これは…、ドラゴンか?」

「はい。アイガーブルーと言う種類のようで、体長3〜5m程の小型種です。」

「部隊の規模は?」

「行商人の話だと、中隊規模と考えられます。

 ただ、その部隊というのが、この竜騎兵を主力とした魔導師との混成部隊のようでして…。」

「戦ってみないと分からないのか…。」

「はい。」

「これらの情報は帝都からの報告には無かったが…。」

「こちらから確認したところ、帝都ではドラゴン自体は勿論、関連施設も確認出来ないとの事です。

 魔導師も含め、恐らく先遣隊の移動には細心の注意を払ったものと考えられます。」

「ドラゴン部隊について行商人達は他に何か知らないのか?」

「正確な場所は不明ですが、帝都より北西及び南東両方面に向かって高度を下げる騎兵を見た者が複数名いました。」

「となると、施設は複数箇所か…。

 所属部隊の性質を考えると上空からでも発見しやすい筈だ。

 朝イチで基地の捜索を開始させろ。

 それとは別に基地防衛のための哨戒機を増やすぞ。

 日本には私から連絡をしておく。」


【湲惠国境 エリナス側関所】

エヴァノラが眠らせた衛兵を詰所に放り込んだカテリーナ達は、夜の闇の中でただ立っていた。


「エヴァノラはまだか。」


関所の前に突っ立ってから、かれこれ十数分が経つ。


「何か策があるのでしょう。」


フィアンツがカテリーナをなだめる。


「カイロキシアで合流した時も、色々準備してて遅れたって言ってましたからね。」


隣にいるオリヴィアも口を揃える。


「妾は急いでいるんだ。

 それにこの状況はマズいだろ!!」


関所にいた衛兵は全員スヤスヤと眠っている。

いくら関所の閉門時間帯とはいえ、誰も来ないとは限らない。

カテリーナは一刻も早くこの場を去りたかった。


「殿下、馬車がやって来ます。」


見張り番のローランが彼女に警告する。


「隠れろ!!」


カテリーナ達は詰所の中に隠れた。

やってきた馬車は関所前でターンして止まる。


「殿下?」


中から出て来たエヴァノラが闇の中に語りかける。


「なんだ、其方か…。」


カテリーナ達が詰所から出る。


「坂の下で衛兵達に捕まっておりまして…。

 さぁ、これでシャウラッド国境まで参りましょう。」


カテリーナ達は馬車に乗り込んだ。


「国境までどのくらい掛かる?」


走り始めた車内でフィアンツがエヴァノラに尋ねる。


「今日の日の入りには着けるかと。」

「早すぎないか!?」

「目指すのは正規の国境ではありません。

 あそこだと ここからの距離も入国後のコルカソンヌとの距離も遠いですから。」

「安全なんだろうな?」

「ご安心ください、殿下。

 案内役は信頼の置ける男です。」

「ただの馬車引きじゃないのか。」


カテリーナの言葉が聞こえたのか、馬車はさらに速度を上げて闇の中を駆け抜けた。

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