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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
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第25話〜流儀〜

【クラッジ ~ ルヴェン航路】


「うぅぅ…。」


目を開けると船室の天井が広がっていた。


「大丈夫ですか!?」

「…、セシル先生? どうして ここに…?」

「フレアーさんから頼まれたんです。

容体は安定してるけど側についてて欲しいって。」


思い出した。

酔っ払って倒れたんだ。

そうか、フレアーさんが発見してくれたのか。

後でお礼言わないとな。


「お二人にはご迷惑お掛けしました。

自己管理ができないんじゃ お酒飲む資格無いですね…。」

「気にしてちゃダメですよ。誰にだって失敗はありますから。」

「そう言ってもらえると助かります。」

「次は私と一緒にお酒飲みましょうね!

そしたら酔っ払う前に止めてあげますから。」

「是非ともお願いします。」


あぁ、なんて良い女性なんだ…。

幸せ。

これ、まさか、リア充ってやつ?

最高かよ。

でも僕は知っている。

あまーい(主観)二人の時間を邪魔するやつが再来するのがお約束ということを。


「失礼致します。夕食のご用意ができました。」


ほら来た。

コイツは魔法か何かで僕のことを見張ってんじゃねーか?っつーくらいピンポイントに行動しやがる。


「おや、タツロー殿、気分はいかがですか?」

「お陰様で問題ないです。セシル先生から聞きました。先ほどは本当にありがとうございました。」

「タツロー殿に何かあっては一大事ですからね。」


割れ物注意ってか?


「以後 気を付けます。」

「それでは参りましょうか。」


僕らは食堂へと向かった。


【サビキア トエリテス 御用邸】

国王と会見した大広間は食事会場に様変わりしていた。

中は日莎両国の外交関係者がほとんどを占める。


「諸君も知っての通り、今宵は我が国とニホン国にとって記念すべき日となろう。

 ニホン国の使節団の方々、異世界からはるばるサビキアへよくぞ参ってくれた。

 余はサビキア国王として両国の益々の繁栄を心から願う。

 それでは晩餐を楽しんでくれ。」


コーネリウスの音頭で晩餐会が始まった。

今回、メインテーブルにはコーネリウスと井上の両名だけが座っていた。

五十嵐は議会議員や将校と同じテーブルに着く。

他のテーブルと同様、自己紹介が始まる。


「ロイド・グレンバーギ・バンデンハーク伯爵だ。お見知り置きを。」


隣の男性が手を伸ばして来た。


「日本より参りました、五十嵐と申します。」


その手を握って自己紹介で返す。


「バンデンハーク伯爵、抜け駆けはズルいですぞ。

 ニホンのお方、……、エガラスィ殿、だったか?

 私はクラレンス・エドラダワー・ビーヘル侯爵だ。」

「お目にかかれて光栄です、侯爵。自分は、い・が・ら・しと申します。」

「イガラシ、其方は文官かね?」

「いえ、自分は軍人です。」

「そうかそうか。なら話が合うではないか。」

「こちらはグレゴリー・アードモア・エッシャー侯爵です。

 今は退役していらしゃいますが、当時は一騎当千の強者だったとか。」


ロイドが横からパーソナルデータを教えてくれた。


「本当ですか! 是非とも侯爵の武勇伝をお聞かせ願いたいものです。」


どこの世界にも社交辞令を真に受ける奴がいる。


「グワーーーーハッハッハッハッハ!! よかろう。イガラシのため、今宵は儂の英雄伝を披露しようぞ。」


周囲の議員は『またか』の顔をした。


「ハハハハハハハ…。ありがとうございます……。」

「それでは英雄伝の始まりじゃあ!!!!」


以下略。


【クラッジ ~ ルヴェン航路】

さっきとは違って、食堂内は机が並べられてフルコースの用意ができていた。

各々が席に着く。


「タツロー殿、心配致しましたぞ。大丈夫ですかな?」


ヤコブが僕を見て声をかけて来た。


「もうピンピンしてます。ご心配おかけしました。」

「未成年で飲酒とは…。不良めぇ。」

「斎宮さん、ここは異世界ですよ。日本の法律は通じません。」

「へっ、面白くねーの。まぁ、酔っ払って倒れてるようじゃ まだまだ だな。」

「凹んでるんですから そこはツッコまないでください。」


話している合間に皿が運ばれてくる。


「食事を始める前に船長より航行の現状を伝えていただきます。」


フレアーに紹介されてウィリーが登場。


「タツロー以外は初めましてですね。僕が船長のウィリーです。

 えー、早速ですが、現在この船は航路の中間地点に近い場所を航行しています。

 航路に障害物は確認されておらず、フレアーさんのお墨付きもいただけましたので、

 予定通り明日の早朝にはルヴェンに到着です。

 どうぞ、夕食後も ゆったりと船旅をお楽しみください。」

「どうもありがとう船長。それでは、夕食の時間と致しましょう。」


夕食は前菜からメイン、デザートまで大変美味しゅうございました。

ただ、なんか、昼間食ったサンド以外、こっち来てからフルコースしか食ってねぇ気がするんすよ。

これはこれで飽きますよね。


「タツロー殿、少々お時間よろしいでしょうか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。」

「それでは外で。」


紅茶を飲みながら各自で食後の団欒をしていたところ、フレアーに呼ばれた。

彼の後について食堂の外へ出る。

夜風が涼しい。


「貴方にお話ししなければならないことがあります。」


オイオイオイオイオイ、これって告白か!?

やめてくれよ、ゲイじゃねぇっつーの。


「…、何ですか?」

「タツロー殿は決して酔っ払って倒れた訳ではございません。」

「そうなの?」

「貴方は狙われています。」

「…、え、ちょ、ちょっと待ってください。狙われてるって誰から?」

「不明です。しかし、貴方が意識を無くした後、敵は貴方を誘拐しようと試みました。」

「姿を見たんですか?」

「はい。犯人は貴方に酒を出した男です。」

「アイツ…。やっぱり何か盛られたのか。」

「素性は分かりませんが腕利きの魔導師でした。」

「それで?」

「奴は逃亡しました。私の不手際です。」

「そいつのことはどうでも良い。…、それにしても、よく誘拐現場に出くわしましたね。」


フレアーの表情が こわばった。

2人とも言葉を発しなかった。

風で草が擦れる音と船が川を下る音が聞こえる。


「…私は、貴方を、タツロー殿を守ることが任務です。」

「知っての通り、僕の世界には魔法ってのは無いんだ。

 だからさ、この世界で魔法に出会った時は感動したよ。

 だって、物語の世界にしか存在しないものが現に目の前に存在してるんだもん。

 その力、スゲー羨ましいよ。僕はどうやったって使えないって言われたんだ。

 ショックだったよ。目の前で存在しているのにどうにもできないんだから。

 セシル先生の母校に行った時も、僕だって学びたいと思ったさ!!

 でもね、残念ながら魔法に対する憧れは薄れたよ。…、どうせ魔法だろ。

 魔法で僕のことを常に見張ってる。」

「私は…。」

「なあ、…。」

「私は!!、任務のためなら手段は問いません。

 ご存知でしょうが、この世界には魔法というものが存在します。

 それは使う者次第で善の力にも悪の力にもなる危険な存在です。

 我々は常に、どこから襲ってくるか分からない その危険な存在に備えています。

 ましてや護衛が任務なら、対象を守り抜くために常に対象自体をも監視する必要が生じます。

 タツロー殿がお望みの護衛方法は、一流以下の者が選択する方法です。

 私は超一流です。対象が知覚できない脅威からも無事に守りきらなければなりません。

 タツロー殿を死守しろと言われれば、私は喜んで命を投げ出します。

 タツロー殿が私の護衛方法をどのように思われようと、私の流儀は変わりません。

 繰り返し申しますが、私の任務は貴方を脅威からお守りすることです。」


フレアーは一礼してその場を後にした。

僕は食堂に戻った。


「あれ?どこ行ってたんですか、タツロー?」

「ちょっと夜風に当たりに。」

「お前、影薄いなぁー。全然気が付かなかったよ。」


ほどなくしてその場は解散となり、僕も自室に向かった。


「具合が悪くなったら遠慮せず呼んでくださいね。」

「ありがとうございます。」


セシル先生に『おやすみ』と言って部屋に入り、寝支度を済ませてベッドに入る。


「魔法、か…。」


悶々とした気分は当分の間、晴れそうになかった。

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