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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
18/75

第17話〜謁見〜

ーー

【帝国 帝都 皇城 皇帝執務室】

ーー


「父上!!

 あれは一体なんですか!?」


カテリーナはノックもせずにドアを勢い良く開けた。


「礼儀がなっておらんぞ。」


手元の書類にサインをしながら皇帝が口を開く。


「条約交渉をしに出かけたと思ったらサビキアへの襲撃が起こり、いざ帰ってきてみたら大学校が封鎖され多くの魔導師が追放されています。

 それに聞いたところによると、非常事態宣言まで出されたようですね。

 父上は一体どうなされたのですか!?」


皇帝の執務机に両手を叩きつけながらカテリーナは言う。


「サビキアの一件は済まなかった。

 だが、軍部の強引な計画とはいえ水龍を殺せたのは帝国にとって大変大きなことだった。

 それに条約と水龍、片一方だけではダメだったのだ。

 両方同時に行われなければな。

 分かってくれ。」

「此度の件はどのように申されるのですか?」


カテリーナは皇帝の目を見て話す。


「サビキアの報復攻撃を受け、其方が連れ帰った捕虜達が逃げ出した。」


書類にサインする手を止めて皇帝もカテリーナの目を見て話す。


「報復攻撃!?

 早速戦争ですか!?」

「違う。

 こちらから新たに手を出さなければ何も起こらない。」


焦るカテリーナをいたって冷静に説き伏せる。


「それと大学校の封鎖には何の関係が……、まさか学校関係者が脱走の手助けを?」

「その疑いが強い。」

「そんな…。」

「我が住まいの城下が敵の攻撃にさらされ、依然として敵の脅威が存在しているかもしれず、遠方には異世界の敵が鎮座している。

 民衆の混乱を抑えるためにも事態の早期解決が必要なのだ。

 だが、それには元老院では遅すぎるのだ。」

「だから非常事態宣言を?」

「そうだ。」


皇帝の説明に納得したのか、カテリーナは出口へ向かった。

その背を呼び止める皇帝。


「カテリーナ、其方の騎士団は信頼できる者達か?」

「勿論です。

 どうしてそのようなことを?」

「それなら良い。

 今後は誰が信頼できるか分からないからな。」


一礼して退出するカテリーナ。

そこにはドアが閉まりつつある隙間から娘の背中を見守る父の姿があった。




ーー

【帝国 ブニーク 国防軍前線基地】

ーー


「司令、外に帝国の使者だと名乗る者達がやってきています。」

「なに!?」


佃は手元の書類から顔を上げた。


「本物か?」

「地元民によると本物のようです。」

「通すんだ。

 それと五十嵐二尉を呼んでくれ。」

「分かりました。」


上坂は部屋を後にした。

数分後、先にやってきたのは五十嵐二尉だった。


「失礼します。」

「そこにいてくれ。

 間もなく来る。」


佃の言う通り廊下に複数の足音が響いた。


「失礼致します。

 帝国側使者の方々をお連れしました。」


上坂が男2人を従えて現れた。


「よく来てくださいました。

 どうぞ。」


佃が身振りで席を勧め、五十嵐が佃の通訳をする。

使者2人はソファに腰を下ろした。


「初めまして。

 私が基地司令の佃晴信陸将です。」


五十嵐の通訳の後、2人も自己紹介を行う。


「帝国交渉団代表のミハイル・ミストラル・ナボコフ伯爵です。」

「交渉団副使のグリゴリー・ボーラ・ニーツィン伯爵です。」

「それで、お二方は本日はどのようなご用件でこちらまで?」


佃が茶を飲みながら尋ねる。


「貴国と何らかの関わりを持ちたいと考えています。」


ミハイルの言葉を五十嵐が通訳する。


「関わりと言いますと?」

「両国の敵を牽制するための関わりです。」

「それは外交的な関わりにとどまらないという認識で良いですかな?」

「結構です。」


ミハイルは頷きながら答える。


「ご存知でしょうが我々も簡単に頷く訳にはいきません。

 我が国が貴方達と関わりを持つ利益は何ですか?」

「こちらには捕虜がいます。

 その者達をお返しするのはどうでしょうか?」


少し間が空いて五十嵐が通訳する。

佃も目付きが変わった。


「捕虜は何人いますか?」

「男が2人、片方は若くもう片方は大人です。」

「我が国は自国民の安全に特に気を使います。

 彼らは無事ですか?」

「勿論です。

 こちらでも特別な待遇で扱っています。」


それを聞くと少し安心した佃であった。


「先程の関わりについてですが、両国の敵とは具体的にどのような?」

「我が隣国のサビキア王国です。」


グリゴリーが答えた。


「帝国とサビキアは長きに渡って緊張状態が続いており、いつ何時奴らが貴方達を襲ってくるかもしれません。」

「サビキアもまた海上戦力を持ち、海からの攻撃も考えられます。」


ミハイルがグリゴリーの説明に補足する。


「分かりました。

 いずれにせよ私には権限がありませんのでこの場での回答は致しかねます。

 今日のこの内容は私の方から本国へ伝えておきますので後日また。

 お泊りの場所は?」

「ブニークの街に宿を取っています。」

「それなら安心です。

 出口までお送りしましょう。」


一行はそのまま基地の入り口へと向かった。

国防軍の警戒の中、外には馬車が5台と交渉団のメンバーと思しき人達が夕方の太陽の光に照らされながら待っていた。


「佃将軍、良いお返事を期待しております。」


馬車に乗り込む前、ミハイルが手を差し出した。


「両国が友好な関係を築けるように頑張りましょう。」


佃もその手を握り返しながら言った。

こうして帝国と日本の外交交渉が始動した。



ーー

【サビキア王国 王都 王宮】

ーー


「さあ着きました。

 国王がお待ちですよ。」


フレアーに促されて僕らは馬車から降りた。

国境を越えてから数時間が経過し、時刻は既に夕方に近い。

フレアーの話だと特殊な馬と魔法の力で普通の馬車より速度は出てるそうなのだがそれでもこの時間だ。


「格好はこのままで?」


斎宮さんがフレアーに尋ねた。

確かに僕らの服装は城で着替えたままで麻か何かのこれといって礼服といった物ではなかった。


「皆様のお召し物はご用意させていただいております。」


フレアーは僕らを王宮の中に案内しながらそう言った。

水色の水晶でできた王宮は夕焼けに照らされ、とても美しかった。

両脇に一列に並んだメイド達が王宮正面の馬車寄せから大広間に入った僕らを出迎える。


「異世界の方々、待っておったぞ。」


目の前の階段から男性が降りてきた。

手を振りながらこちらへ向かってくる。


「ヤコブ卿、お出迎えありがとうございます。

 こちらがアララギ氏とイツキ氏、こちらはセシル導師です。」


フレアーが男に一礼して僕らの紹介をした。


「私はヤコブ・クライヌリッシュ・ドリーセン侯爵だ。

 普段は議員を務めている。

 君達の王宮内でのお世話係だと思ってくれて構わないよ。

 よろしくね。」


陽気なノリの小太りのおじさんが僕らに手を差し出す。


「日本からやってきました、蘭龍郎です。」

「同じく斎宮茂です。」

「ミネルバ派上級魔導師セシル・ザバニヤ・オルコットです。」

「ミネルバ派の上級魔導師かい!?

 そりゃ珍しい。

 お目にかかれて光栄だよ。」


ヤコブはセシル先生の手をブンブン振る。


「ヤコブ卿。」


フレアーが指摘する。


「あぁ、スマンスマン。

 さ、二階へ。

 お着替えの時間ですぞ。」


ヤコブ、フレアー、僕ら、メイド軍団の順で進んでいく。


「王宮は広いでしょう?

 私には移動が大変で。」


お腹を叩きながらガハハと笑って自虐ネタを繰り出すヤコブ。

苦笑いのフレアーと僕ら、眉一つ変えないメイド軍団。

直線の廊下を数分進むとT字路にぶつかった。

目の前にはドアがある。


「着きましたぞ。

 ささ、どうぞ。」


メイド2人がドアを開ける。

中は大試着室の様相を呈していた。

衣装がずらりと並び、スタイリストも準備していた。

試着室も人数分以上設置してあった。

どうやら右が男性物で左が女性物のようだ。


「わぁ…、スゴイですね…。」


セシル先生は目を丸くする。


「謁見まで時間がありませんぞ。

 直ぐに始めてくだされ。」


ヤコブの合図でスタイリスト達が僕ら3人にそれぞれ合う服を見繕い始めた。


「私共は外でお待ちしております。」


フレアーとヤコブはそう言って退出した。

1時間ちょっと経ったのだろうか。

全身フルコーディネートされた僕らは部屋の外で待っていたヤコブと合流した。


「見違えましたぞ。

 特にセシル嬢、大変お美しい。」


ヤコブの言う通り水色のドレスを着たセシル先生はシンデレラのようだった。


「ありがとうございます。」


照れているセシル先生も可愛いな。


「何ニヤニヤしてんだタツロー?」

「ニヤニヤなんてしてませんよ。」

「嘘つけぇ。」

「自分こそニヤニヤしてるじゃないですかぁ。」

「君達見てるのが面白くて。」

「全く…。」

「それではお三方、いよいよ国王と謁見ですぞ。」

「あれ?

 フレアーさんは?」


僕は歩きながらヤコブの背中に問いかけた。


「彼も自分の支度をしに行きましたよ。」


ヤコブは顔だけ振り返って答えた。


「これから皆様を謁見の間へとご案内致します。

 恐らく謁見自体は数分で終了すると思われますが、皆様には引き続き晩餐会にも出席していただきます。」


着替えていた部屋の外側をぐるりと半分まで回ったところで大階段が現れた。


「大変ですが登りますよ。」


幅広く真っ白な階段だった。

見ているだけならそのシンプルな階段も芸術的な美しさがあるのだが、これを登らなければならない。

僕らは100段以上はあろうかというその階段を登り始めた。


「キツイですね…。」


半分を超えたところで口から零れる。


「まだまだぁ。」

「シゲルさんは軍人なだけあってお元気ですね。」

「私からすれば3人ともお元気ですよ…。」


階段を登り始めてから初めてヤコブが口を開く。

その後は全員黙々と頂上まで登り続けた。


「この先です。」


階段を登りきった先には廊下が伸びていた。

廊下は暗かった。


「外が見えるのかぁ。」


アーチ天井の廊下の側面には柱だけで窓や壁の類はなかった。

あると言えばそれぞれの柱の前の甲冑の置物くらいだ。


「先代まではここも覆われていたのですが現国王が開放的にせよとのことで。」

「危なくねえか?」

「特に強力な魔法結界が張ってあります。」

「よくお分かりになりましたね。

 いやはや、上級魔導師は伊達じゃないな。」


セシル先生を褒めたヤコブの口調は本当に驚いたようだった。


「では参りましょう。」


ヤコブが廊下に足を踏み入れると手前から順に柱に備え付けてある燭台に炎が灯った。


「フレアーからお聞きになったかもしれませんが、先日の攻撃まではそれは素晴らしい夜景が広がっていたのですよ…。」


外の景色を見ながらヤコブが残念そうに言う。

廊下の端に着くと、


「何用だ?」


豪勢な扉の前にいる衛兵が問いかけてきた。


「お勤めご苦労。

 国王陛下の命で貴賓の方々をお連れ致した。

 扉を開けよ。」


衛兵が傍に退くと扉はひとりでにゆっくりと開き始めた。

今までのは全て魔法だろうか?


「いよいよだ。

 緊張なされぬよう。」


ヤコブはそう言ってウィンクした。

ヤコブの後に続いて部屋に入る。

当初予想した重々しい雰囲気は無かった。

部屋の側面にはフレアーとあの雷男が立っていた。

他には人はいない。

室内には赤い絨毯が敷き詰められ、調度品も床から2〜3段程度高くなった位置にある玉座だけだった。

そしてその玉座に収まるのが…。


「陛下、こちらが異世界より来たる者達でございます。」

「長旅ご苦労であった。

 其方達の事はリックとフレアーから聞いておる。」


フレアーと雷男が頭を下げた。

という事はあの雷男はリックというのか…。


「特にその方、まだ若いな。」


え?僕?


「は、はい。」

「タツロー氏はまだ学徒だそうです、陛下。」

「人間、幾つになろうとも学徒に変わりはない。」


国王は笑っていた。

ヤコブも失礼致しましたと言って笑っていた。


「シゲルよ、其方は軍人だと聞くが相違無いな。」

「はい、その通りです。」

「帝国の艦隊をことごとく打ち破った其方達の軍隊を一度見てみたいものだなぁ。」

「是非とも。」

「セシル導師、この度はリック達が大変迷惑をかけた。

 其方の働き、しかと見届けさせてもらったぞ。」

「陛下にそう言ってもらえるとは大変光栄でございます。」


セシル先生は深々と頭を下げた。


「これを其方に言うべきでは無いと申す者もいたが、余は伝えるべきだと思う。

 其方達がここへ来る前に帝国ではコートが襲撃を受け、多くの魔導師が捕まった。」

「…っ!!、そんな…。」

「悪いのはモルトだ。

 あいつは其方がコートで教壇に立っていると言ったそうだ。

 事実を少しづつ歪めるのが得意な男だよ。」

「捕まった人達は?」

「全員生きている。

 彼らを殺さない程度にはまだ正気らしい。」


リックが答えた。


「リック、済まんが続きを。」


リックは国王から話を引き継いだ。


「奴は我々と君を持ち出して議会に非常事態宣言発令の承認を取り付けた。

 今まさに帝都は要塞だ。

 街への出入りが制限されて中は軍隊がウロウロしている。

 正直、我々でも今の帝都から彼らを救い出すのは無理だ。」

「セシル導師、聞いての通りだ。

 しかし、余の責任として彼らは必ず救い出す。」


国王の威厳を見た気がした。


「さて、この話は一旦終わりにするとしよう。

 お待ちかねの夕食の時間だ。」


国王はそう言って玉座を立った。


「案内しよう。」


国王はリックとフレアーを伴って廊下へと出た。


「さ、行きますよ。」


ヤコブに促されて僕らは国王と一緒に晩餐会場まで向かうことになった。

大階段を降りてからは待ち構えていたメイド軍団が合流した。


「ここのメイド達は上玉揃いでしょ?」


リックが話しかけてきた。


「へ?」


先程からじっくり見る機会が無かったため言われて初めてメイド達をまじまじと見る。

確かに皆様お美しい。

こっちの世界だったら即スカウトされてしまうようなレベルだった。


「ホントだ…。」

「だろ!!

 そんでな、大半は身売りされてた娘を陛下が連れ帰ったんだぜ。

 泣けるよなぁ。」


リックが目頭を抑える。


「聞こえてるぞ。

 昔の話をして何になるんだ?」

「陛下の行いは万人が真似できる物ではありません。」


ヤコブが言う。


「そうは言うが貴様も一人娘の父親として気持ちは分かるだろう?」

「ですが私は引き取った後の事まで気が回りませんよ。」

「違いない。」


親父2人の笑い声が廊下に響く。

僕らは1Fから中庭に出た。


「ここはレネの庭だ。」


ん?

レネ?


「王妃です。」


顔に出ていたのだろう、ヤコブが教えてくれた。

ビオトープがあったり、盛り土をして小さな丘が作ってあったりと中庭は手入れが行き届いており居心地が良かった。

中庭の先にはツタが茂った壁があった。

窓からは中の光が漏れ出ている。


「ここが晩餐会場だ。」


国王は笑顔で指差した。

入り口は例えるなら森のレストランとでも言おうか。

洒落乙だ。

中庭の頭上には先ほどの廊下(渡り廊下だった。)が見える。


「謁見の間の下ですか?」


ヤコブに聞く。


「ご名答。

 レネ王妃がご自身のお庭を見てもらいたくてこちらに移されたのです。」

「王妃は本当に優しくお美しい方ですよ。」


フレアーが言う。


「皆の者、入るぞ。」


国王が言うと晩餐会場の扉がファンファーレと共に開く。


「コーネリウス国王陛下のご到着です。」


衛兵が高らかに宣言する。

そー言えば、名前聞いてなかったな。

コーネリウスって言うんだ…。

コーネリウスは出席者に笑顔で手を振りながら席へと向かう。


「ドリーセン侯爵並びに主賓3名のご到着です。」

「私の後に続いて。」


ヤコブがコーネリウスと同じように入る。

僕らも取り敢えず手を振りながら入る。

中はとても広く、25mくらいはあろうかという長机が横に5つ並んでいて、さながらテレビで見るような晩餐会場だった。


「スゲーなぁ…。」

「緊張しますね…。」


斎宮さんとセシル先生が後ろで話している。

コーネリウスは当然だが、ヤコブも同じく前へ前へと進んで行く。

おい、まさか…。

そのまさかだった。

最前列、他の全出席者達と向かい合う席だった。

右端に1人、左端に綺麗な女性が2人座っている。

空気的に誰かが王妃だ。

右と左どっちだ?

どっちだ?

残った方はヤコブの奥さんだろうか。

とすると左にもう1人いるあの若い娘はどちらかの子供?

という事はワンチャン…。

そんな事を考えていたらヤコブは右の女性の隣へ、コーネリウスはその隣の席へ移動する。

左が王妃か!!

という事はあの娘は!!!

ん?

コーネリウスよ、あなた真ん中じゃね?

そこ、僕らの席じゃね?


「喜べ、今日の主役は其方達だぞ。」


ありゃ?

真ん中!?

ちょいちょいちょい。

公開処刑か?おい。


「そのまま座って。」


ヤコブさんヨォ、座れってか?

マジかよ…。

ヤコブに促されるまま僕ら3人は腰を下ろした。

ワンテンポ遅れてコーネリウスも腰を下ろす。

その後に出席者全員が腰を下ろす。


「いつもなら説教を少々垂れるのだが今日は時間が押していてな。

 幸運だぞ。」


直ぐに料理が運ばれてくるとコーネリウスが言った。

料理は肉料理、前菜、スープといったフルコースでどれもこちらの世界と大差なかった。

まぁ、食べ慣れてないから分からんけども…。

食事の最中、コーネリウスから後継についての話をされた。


「余には子供が2人いてな、アルドとニーナだ。

 アルドは訳あってこの場にはおらんが、ニーナはそこの端に座っておる。」


コーネリウスが指差した先には先ほどの女の子がいた。

やっぱり…。

あれが姫であっちが王妃か。


「どうだ、そこらの者より数段優れているだろう?」

「は、はい。

 確かに僕の周りにはあのような女性はいません。」

「あの子ももう世間に羽ばたいて良い歳なんだ。

 国はアルドがいるから安泰だし、余は何も特定のどこかの家へ嫁げとも思っておらんのだ。」


王家と言うと政略結婚とかでドロドロしてんのかと思ったけど、ここはそうじゃないのかぁ…。

ん?

コーネリウスはまだ何か言いたげな顔をしている。

僕は顔に「?」の表情を浮かべてしまった。


「察しが悪い男は出世できぬぞ、タツローよ。」


コーネリウスは笑って言った。

え?どゆこと?

一転、コーネリウスが真面目な顔になる。


「其方に頼みがある。

 其方の祖国にニーナを連れて行ってくれぬか?」

「へ?」


とんでもないことを頼まれてしまった…。



ーー

【日本 市ヶ谷 防衛省 大臣室】

ーー


「話は分かった。

 今から交渉チームを派遣する。

 受け入れ態勢は整えといてくれ。」


電話を切った辰巳はすぐに別の番号にかける。

深夜帯だったが1コールで繋がった。


「敵さんの方から交渉団を寄越してきたそうだ。

 悪いが今直ぐに出発してくれ。」


井上に電話を終えた辰巳はため息をついた。


「こりゃ、また帰れねーな…。」

「総理には?」


秘書に問われた辰巳が答える。


「俺が直接伝えるよ。

 安藤君も呼ばなくちゃならないからな。」


その後も“防衛大臣”としてではなく“外地問題担当対策大臣”として辰巳は関係者に連絡を続けた。

幸い不在の者はおらず20分程で電話をかけ終わった辰巳は総理官邸へと急いだ。

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