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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
第1章 〜まずは帝国、そん次サビキア、たまーに日本〜
15/75

第14話〜真夜中の騒乱〜

ーー

【帝国 帝都 皇城】

ーー


「やはり魔法で施錠されてますね…。」


龍郎達のいる部屋のドアを調べた団員がグレイへ報告した。


「ったく、魔法でも何でも施錠は禁止されてるはずだろうが。」


グレイが悪態をつく。


「しょうがねーなぁ…。

 アヴィス、開けろ。」


扉の前にいた他の団員達がアヴィスのためにスペースを作る。


「向こうには魔導師が1人ついてる。

 気を引き締めていけ。」


グレイが小さな声で扉の前にいるアヴィスと団員達に対して言った。

周囲の空気が張り詰める。

アヴィスが慎重に片手を扉にかざす。


「修理費用は我々ではありませんよね…?」


アヴィスがグレイを振り返って尋ねた。


「冗談言ってないで早くやれ。」

「分かりました。」


悪戯な笑みを浮かべながらアヴィスはかざした手に魔力を集中させていく。

木製の扉が上部からみるみる内に“砂”と化す。

扉の上半分が砂となって床に落ち、室内が見えようかとしたその時、


「…ッ!!

 伏せろ!!」


アヴィスが叫ぶ。

青白い月明かりに照らされる廊下にオレンジの色が加わる。

続いて爆音が響く。

幸い廊下の敷物が多少焦げたくらいで人的被害は出なかった。


「マルセル侯の命により貴様らの身柄は我々フェンリル騎士団が預からせていただく、抵抗せずに今すぐ出てこい!!」


グレイが室内へ向けて呼びかける。

しかし応答はない。


「警告はしたぞ!!」


グレイは待機している団員達に顎で突入を指示した。

入り口の両脇から魔法で援護射撃のアシストを受けつつ、盾で身構えた団員達が部屋へ侵入する。


「来ないでくださぁーーーーーーい!!!!!!」


セシルが一際デカい火球を部屋の入り口方面へぶっ放した。

火球は盾を粉砕し、団員達を廊下まで吹き飛ばす。


「今です!!」


掛け声と同時に龍郎達は廊下に向かって走り出した。


「どけどけ!!

 コイツらがどうなっても良いのか!!」


斎宮がセバスチャンの首に刃物を当て、龍郎は拘束されていると思しきデュノアの姿を騎士団に見せる。


「お前ら、絶対に道を開けるな!!」


だが、龍郎達の予想に反しグレイは道を開けようとしない。

いきなり試合終了かと焦った二人だったが、


「余所見しないでくださぁーーーーーい!!!」


セシルがグレイに向けて水球をぶつける。


「隊長ぉぉぉ!!!!!」


その場にいた団員達の気がグレイへと向けられた。


「どいてもらいますよ!!!」


その隙をついて続け様に進路を塞ぐ団員達へ水球をお見舞いする。


「走って!!」


龍郎達は再び走り出した。


「何やってる!?

 急いで追いますよ!!」


アヴィスが数名の団員達と追跡を開始する。

彼らの背中を後押しするかのような怒号が夜更けの廊下に響く。


「タダじゃ済まさんぞォォォォォォォ!!!!!!!!!!」



ーー

【帝国 帝都 皇城】

ーー


「次はどっちだ?」


斎宮がセバスチャンに尋ねる。


「突き当たりを右です。」


懐中電灯代わりの蝋燭を持った手で指し示す。


「そこを抜けたらもう城外です。」


先ほどの拘束スタイルから解放されたデュノアが補足する。

一行は最後の曲がり角を右折した。

確かに曲がった先は城外への通路だった。

現に50m程度先には月明かりに照らされた外の景色が見えている。

しかし、一向にはその手前に陣取る騎士団の面々も視界に入ってしまった。


「マジかよ…。」


龍郎は思わず声を漏らす。

セシルが一行の前へ出て魔法の発動態勢に入った。

セシルが放った火球と騎士団が放った飛翔体がぶつかる。

飛翔体の一部がこちらまで飛んできた。


「土?」


飛翔体を手に取った龍郎が呟く。

その間にもセシルの火球と騎士団の土の塊がぶつかり、またも相殺される。


「向こうは泥を打ち出してて、火球とぶつかる時にその水分が蒸発してるんだと思う。」


斎宮が龍郎に説明する。

なおも魔法の撃ち合いは続いていた。

セシルによって魔法式が刻まれた魔法陣が複数展開され、それぞれから火球が発射される。

騎士団も応戦するが防ぎきれない。

何発かが命中し陣形が崩れた。

すかさず間合いを詰めて次弾を発射するセシル。

防御しきれない騎士団。

セシルは間合いをさらに詰めながら火球を撃ち込んでいく。

火球に当たった者は一人また一人と戦闘不能に追い込まれる。

セシルの勝ちを確信した龍郎であったが、


「セシルさんは何か策があるのか?」


セシルがグングン間合いを詰めているのを見ながら斎宮が言う。


「え?

 あの調子で撃ち込んでいけば……。

 あっ!」


騎士団とてバカではない。

セシルが撃ち合いに夢中になってる間、壁に沿って両方からジリジリと団員達が迫って来ていた。

勿論、セシルは気付いていない。


「なぜ何も対策しないんだ?」


斎宮は苛立ちと不安が混ざった様子で戦況を見守る。


「恐らくセシルさんに視野狭窄の魔法が影響しているかと…。」


セバスチャンが状況分析を述べる。


「セシルさん、敵が来てます!!」


龍郎が叫ぶが聞こえている様子はない。


「そんな程度では効き目はありません。

 もっと物理的、精神的に直接作用するものでなくては…。」


セバスチャンが龍郎へアドバイスする。


「んなこと言ったって…。」


龍郎は何か手が無いか辺りを見回した。

その間にも敵は距離を詰めてくる。

いつの間にかまた激しい魔法の撃ち合いが始まっていた。


「一か八かだ。」


龍郎は床に落ちていた土の塊を5、6個拾って次々とセシルに向かって投げ始めた。


「なんと!?」

「へ!?」


セバスチャンとデュノアが驚きの声を上げる。

幾つか背中に当たるも効き目なし。

それでも構わず投げ続ける龍郎。

後もう数mで間合いに入ってしまう距離まで来たところでようやく頭にヒット。


「キャっ!?」


前のめりになるも踏みとどまるセシル。


「今だ!!」


同じタイミングで踏み込んできた騎士団。


「エ!?、エ!?、エ!?、ヤバイッ…!!」


龍郎のお陰で色々と危険を感じ取ったセシルは魔法で後ろへ跳躍する。


「すいません…。

 お怪我ありませんかセシル先生?」


着地したセシルへ龍郎が駆け寄った。


「大丈夫です。

 視野狭窄ですか…。

 助かりました。」


エヘヘと笑いながら頭の後ろを掻くセシル。


「お二方、まだ終わってない。

 というか悪くなってる。」


一行の後ろを指差す斎宮の先にはアヴィス達が迫ってきていた。


「挟まれましたな…。」


セバスチャンが苦しい表情で呟く。


「どうすれば良い…。」


斎宮が険しい顔で考える。

しかし何も浮かばない。

前方の敵も態勢立て直しに取り掛かっていた。

一秒一秒と時間がなくなっていく。

そんな中、アヴィス達を見て顔に笑みを浮かべる女性が一人。


「セシル嬢、提案がございます。」


デュノアが前へ出た。


「え、何ですか?」


セシルが少し訝しげに聞く。


「私をアヴィス殿の方へ飛ばしてください。」

「へ?」

「ん?」

「はい?」

「なんと!?」


四者四様の反応だった。


「あの方は私に好意を抱いているようですので絶対にお嬢達の追跡よりも私の方を選びます。」


聞きようによってはとんでもない話だが、一先ず話の内容は信じることにした。

しかしだ、


「危なくないか…。」


斎宮が指摘した。


「それはあの方がどれくらい私に好意を抱いているかにかかってます。」


デュノアはキッパリと言い切った。


「信じられるんですか!?」


龍郎の声が思わず大きくなってしまう。


「女ってそーゆーもんですよねぇ…。」


何やらセシルがデュノアに同調する。

驚きを隠せない男性陣を横目に、


「分かりました。

 なるべく加減しますから安心してくださいね。」


セシルが魔法発動を開始した。


「おい、ホントにやるのか!?」


斎宮がセシルに抗議したが無意味だった。


「他の手が思い浮かびません!!」


確かにそうだった。

だから斎宮は反論できなかった。


「行きます!!!」


宣言と同時にセシルがデュノアをアヴィス達の方へ吹っ飛ばす。


「見てる暇なんてありませんよ!!

 僕らもいかないと!!」


龍郎が促す。

セシルが城外方面の騎士団員に対して大きな火球を放つ。


「総員退避!!」


号令と共に回避する団員達。

しかし、火球は彼らの頭上に行き、そこで静止した。


「どうなってんだ?」


上を見上げる団員達。


「問題ありません、そのまま走ってください!!」


止まろうとした龍郎達にそう指示するセシル。

セシルの言う通り火球にはきちんと仕掛けがあった。

火球は団員達の頭上で弾け、彼らに火の粉が降り注ぐ。

これで進行方向の障害物は一掃された。

火の粉にパニクる騎士団の合間を縫って城外へ出る一行。

龍郎は城外へ出てすぐに来た道を振り返る。

そこにはデュノアをスライディングキャッチするアヴィスの姿があった。

アヴィスを心配して駆け寄る他の騎士団員達。

思わず顔を(ほころ)ばせた。

一時的に追ってから逃れることができそうだ。

龍郎はそう思い、また夜の闇の中を走り出した。

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