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タダで読むのが丁度良い物語  作者: 聖域の守護者
序章 〜未知との遭遇〜
1/73

第0話〜コンタクト〜

娯楽・暇つぶしに何でも良いから読ませろ!!

という貪欲な勇者へ捧げる。

20××年。

世界は3度目の世界大戦を経験した。

しかし、”大戦”と言っても、大国が参戦した通常戦力による局地戦が行われただけで、かつてのような総力戦も熱核戦争も発生していない。

そのため、世界規模で見ても戦後復興が不可能な地域は確認されておらず、復興までは時間の問題であった。

また、各国では既に講和条約が調印・発効されており、日本でも同様にWW3は終わったものとして扱われていた。



ーー

【日本 横浜】

ーー


人類史上初となる異世界との接触が行われた“その日”。

高校最後の夏のある日、赤レンガ沿いのベンチに腰を下ろし、蘭龍郎(あららぎたつろう)は海を眺めていた。

いつもと同じ夕焼け空と海。

本当ならいつものように夜になり、何事もなくまた朝が来るはずだった。

しかし、そんな無意識の思いを打ち砕くかの如く、後に“コンタクト”と呼ばれるその時はやってきた。

突如として海上に緑の閃光が走り、直後、空中に魔法陣がひとりでに描かれ、漆黒の船団が姿を現した。


「え、何あれ?」

「何かのサプライズ・イベントか?」

「ヤバくない…?」


その場に居合わせた者たちは船団を前にし、立ち尽くす者、ケータイで写真・動画撮影をする者、慌てて逃げる者など様々だった。

船団はゆっくりとこちらへ向かって進んでくる。


「どんどん近付いて来るぞ…。」

「逃げた方が良いんじゃないか…。」


周囲の何人かは異変に気付き、その場から立ち去り始めた。

不安を覚えた龍郎も小走りで彼らに続く。

直後、その異変が決定的になった。

腹に響く発射音とともに船団からの艦砲射撃が行われたのであった。

無差別に発射されたであろうその一撃は市民を殺傷するには強力過ぎた。


「お、おい…。」


轟音の発生源を振り返った蘭はその光景に絶句した。

その一撃は何十人もの生命を一瞬で消し去った。

人だけではない。

開国当初より横浜の歴史を見届けた赤レンガ倉庫もただの瓦礫と化した。


「に、逃げろっー!!!!」

「助けてくれぇぇ!!!!!!!!!!」


叫び、泣き、必死に逃げ惑う市民。

追い討ちをかけるように第二波を撃ち出す漆黒の船団。

龍郎が最後に見たものは、まさに砲撃の瞬間だった。


「クッ…。」


着弾の衝撃で彼は意識を失った。

船団からの艦砲射撃が止んだ後、もはやそこには瓦礫しかなかった。


「さっさと進めっ!!!!」

「押すなよ!!!!」

「皆さん、落ち着いてください!!!!!!!!」


パニック状態の民衆は、解放された付近のシェルター(戦後、有事の際の緊急避難所として都市部を中心に順次設置されている)に向かって殺到した。

駆けつけた警察は避難誘導と並行して非常線を張り、防衛ライン構築に取り掛かった。


「報告します。

 敵の予想上陸地点は2街区及び大桟橋と考えられます。」


リアルタイムで敵の動きを確認し、県警は相手の上陸地点を予測していた。


「既に1街区及び6街区の封鎖は完了しています!!

 また、3街区方面は税関前と開港広場前に非常線の設置が完了しました!!

 しかし、10〜15街区方面は汽車道の封鎖が完了したのみで、避難誘導と非常線の設置はともに完了していません!!」


現場からの報告を受けたオペレーターが叫ぶ。

それに伴い、現地の状況がスクリーンの地図上にアイコンで反映された。


「県知事から治安出動要請が出ました!!

 これを受けてノースドック(戦後、米国の日本国内米軍施設返還政策の一環で国防軍[戦時中に憲法を改正、自衛隊から国防軍へ名称が変更された]施設に。)より海軍、横浜駐屯地より陸軍が直ちに出動する予定です!!」


この事態が国防軍にしか対処できないということは誰の目にも明らかだ。


「満杯になったシェルターはすぐにロック!!!

 残った避難誘導と非常線の設置は敵が上陸する前に急いで終わらせろ!!」


戦場と化した新港地区を目と鼻の先に捉えた県警本部の対策室では各種伝達が怒号となって飛び交っていた。

そんな対策室へまたしても悪い知らせが舞い込んできた。


「2街区に敵勢力が上陸を開始しました。

 主力と思われる集団は3街区へ侵攻しています。

 残りは10〜15街区方面へ進行中。」

「3街区方面には機動隊とSATの展開が完了しています。

 国防軍が到着するまでは持ち堪えられるでしょう。」


オペレーターの報告を受けて、副本部長が本部長へと告げる。


「10〜15街区、万国橋と国際橋に非常線の設置が完了しました。」

「付近のシェルターが全てロックされたことを確認。

 作戦範囲内には県警及び敵勢力のみです。」

「県庁を中心に3街区方面へ主力部隊を展開するよう陸軍へ伝達。」


本部長が指示を飛ばす。

指示が飛ばされた後、対策室の面々は偵察ヘリから送られてくる現地映像に目を向けた。

敵勢力が今もなお上陸を続けている2街区、ノースドックから駆けつけている護衛艦、みなとみらいエリアへ進入している陸軍の車両部隊、そして前線の警察部隊の様子が映っている。

映像からでも分かる。

前線では異世界武装集団VS神奈川県警の戦いの火蓋が切って落とされていた。


「これは訓練ではない!!!

 ありったけ弾をぶち込め!!!!

 これ以上、敵を近付けるな!!!」


県警側は敵に対して容赦無く弾を撃ち込んで死体の山を築いていく。

敵後方の弓矢部隊による攻撃で数名が負傷しただけで、剣と盾しか持たず鎧も着ていない敵との戦いは県警側の超優勢だった。

映像を見ていた対策室の面々は、事態の終息まであと1時間もかからないだろうと感じていた。

そしてその予測はテレビを見ている一般市民も同じであった。


「ご覧ください、こちらが現在の横浜の様子です。

 私たちは今、飛行禁止区域ギリギリの場所にいますが、ここからでも現場の様子を確認することができます。

 まだ詳しい情報は入ってきておりませんが、現在、新港地区には国防軍が到着し、警察から任務を引き継いで敵勢力の鎮圧を行っている模様です。

 そして、海上には大きな黒いガレオン船が多数確認できます。

 先ほど、国防軍より付近の海上を航行中の全船舶、そして沿岸部のドック及び工場に対しても避難指示が出されました。

 恐らく、国防海軍はミサイル攻撃を行うものと考えられます。

 時刻は間もなく午後6時30分になろうかとしており、作戦が難航する夜間までには事態を収拾させたい考えだと思われます。

 引き続き現場から映像をお届けいたします。」


国防軍到着後、午後7時をもって指揮権が完全に国防軍へ移行したことで県警本部の対策室には国防軍が前線本部を設置。

前線でも国防軍と入れ替わるように警察部隊は撤退を開始した。


「大桟橋制圧完了。」


前線の部隊からは次々と敵の制圧報告が上がって来る。


「こちら本部。

 捕縛者がいる場合には山下公園に待機している輸送機へ連行しろ。

 上がサンプルをご所望だ。」


会敵した当初、人間に混じって行軍していた地球上の生物ではない敵の姿に驚きを隠せなかったのは警察も国防軍も同じだった。


「おい見てみろ、ワニ人間がいるぞ。」

「あっちにはワーウルフだ。」

「こんなものが本当にいただなんて…。」


フィクションの世界でしか見たことのないような生き物を前に、興奮を覚える者と嫌悪感を示す者とに反応が分かれた。


「こいつらはどうするんだ?」

「本部が山下公園に待機中の輸送機まで運べってさ。」


捕縛された地球外生命体は厳重な監視の下、輸送機へと連行されていった。

そのころ、3街区に展開した国防軍も速やかに敵勢力を無力化し、2街区の敵橋頭堡も目前だった。

敗北間近の敵勢力は守りに入る他、手立てがなかった。


「提督、もう持ちません!!

 せめて艦隊だけでも無傷で撤退を!!」


甲板では水夫達と指揮官との今後の進退を決める議論が行われていた。


「貴様らは私に祖国へ逃げ帰れというのか!?

 そんなこと皇帝陛下がお許しになるわけないだろう!!!」


提督は弱腰の水夫達を一喝したが、状況が状況なだけに彼らも上官に対して黙ってはいない。


「ですが提督、ここで負け戦をして艦隊を全滅させては帝国の国益に反します!!」


水夫達から発せられた言葉に提督は耳を疑った。


「国益だと…?

 異世界の地で仲間を見捨て、祖国へ逃げ帰る。

 それに見合う戦果は、今、あるのか?

 敵地で果てんとしている同胞達の命よりも、己が可愛い貴様らの命に、国を利するだけの価値があるのか?」


凄みを利かせた歴戦の指揮官の詰問に水夫達の中には後退った者もいた。


「帝国の力の一角を担うこの艦隊を無傷で帰還させる、それだけでも指揮官としては誇るべきことです。

 それに我々には捕虜がいる。

 そして陛下に伝えるのです。

 この世界のことを、我々だけではとても征服できないことを!!

 提督もお気付きのはずです、これだけの戦力じゃ何もできないことを!!

 だから、今は退くのです!!

 提督!!」


水夫の一人が叫びに近い嘆願を行った。

だが、頑として提督は首を縦には振らなかった。


「この艦隊の指揮官は私だ!!

 帝国軍人として、祖国へと逃げ帰ることは断じて許さん!!

 ここで死ぬのが怖いというのなら、この老兵の屍を越えてゆけぃぃ!!!」


確かに本来ならこれで衝動的な反乱騒動は解決したであろう。

本来ならば。

戦況は、当初の優勢から超劣勢に変わり敵は目前に。

すぐそこにある陣へと向かわねば自らの命の保証はない。

幸い、船上の敵は一人の老兵と取り巻き数人だけだった。

彼らは、選択するのに時間を要さなかった。


「交渉決裂だ。

 俺はここでは死にたくない。」


一人が剣を構え、フラフラと前へ進み出る。


「お前、何をしている!?」


制止しようとした上官の腹部には男の持っていた剣がねじ込まれていた。


「反逆者め…!!」


一言、上官は崩れるように後ろへ倒れた。

それが双方にとって合図だった。


「………………クソッ、あの老兵を殺せぇぇぇぇ!!!!!」

「提督をお守りしろ!!!」


あろうことか、敵地にて同士討ちが始まってしまった。

しかし、数の論理を前にして最後まで職務を全うできたものは少なかった。


「本部、敵船が後退を開始。

 繰り返す、敵船が後退を開始。」


現場からの連絡を受けて本部には緊張が走った。


「SBUはまだ制圧できてないのか?」

「α、状況を報告しろ。」

「最後の1隻を片付けてる最中です!」

「何としてでも撤退前に終わらせろ。」

「了解。」


部隊との通信が終わると、本部には不満の声が挙がった。

「やはり一隻だけ制圧して他の船はミサイルで片付けるべきだった。」

「敵の戦力が知れてるとはいえ無理にSBUを送り込む必要はなかったんじゃないか? 

 何のために避難指示を出したんだ。」


制服組から噴出する不満を涼しい顔で受け止めながら、


「官邸は全艦無傷で無力化を望んでいます。

 それに、我々に作戦能力があるからこそ命令が下されたんです。」


彼らとは対照的な出で立ちの男が答える。

それに対し制服組も再度不満をぶつける。


「背広組の貴方に何が分かる?

 官邸の意向だからと言って直前になって作戦を変更されたんじゃ我々の存在意義に関わる。」

「いい加減にしろ。

 作戦中だ。」


戦前、旧自衛隊において作戦立案などに対する制服組の発言力が背広組と同等に引き上げられたことで世論の注目が高まった。

その後に発生したアジア地域紛争では、これが功を奏し内部での作業は円滑に進んだ。

しかし、戦中、憲法改正における過程の中で、与野党合意の条件として文民統制強化が盛り込まれた。

これによって現在、国防軍は法的に旧自衛隊よりも動ける組織となったが、同時に文民による内部監視がより厳しい組織となった。


「本部より待機中のむらさめへ。

 目標制圧に手こずっている、敵船の進路を妨害しろ。」

「了解。」


当初、ミサイルによる目標破壊を計画していた国防軍だったが、急遽官邸より全艦無傷で確保せよとの命令が通達され、背広組の力で強引にもSBUによる敵船制圧作戦が立案されたのだった。

そんな制圧部隊を率いる斎宮茂(いつきしげる)二等海尉は現在、敵船甲板にて水夫達と対峙していた。


「こちらαリーダー、敵は人質を取っています。」


報告を聞いた本部には各方面への指示が飛び交った。


「本部からαリーダーへ、敵指揮官は確認できるか?」

「指揮官と思しき男は死んでいます。」


斎宮の報告とほとんど同じくしてモニターに上空からの映像が映し出された。

そこには周囲に転がる数人の死体と、人質を取ってSBUと対峙する水夫達がいた。

むらさめの進路妨害のお陰で今の所、船は停止している。


「制圧可能か?」

「可能です。」

「やれ。」


一瞬だった。

本部モニターを見ていた面々は開いた口が塞がらなかった。

上空からの映像は何も無い海上の一点を映し出していた。

モニター越しでも眩しい程の緑の閃光が走ったかと思ったら、消えたのだ。

もうすぐで決着が着くはずだった事件の舞台が。

残っていたのは、夜の闇に浮かぶ生存者のいなくなった漆黒の船団と、我々を自らの世界に誘うかのように不気味に赤く光る魔法陣だけだった。

こんなお話があれば良いなぁと思いつつ自己満足で書いてます。

趣味の一環として暇を見つけながらの執筆ですので各話の投稿スパンがバラバラかつ大幅遅延する可能性有りですがご容赦ください。

ミリタリー系の描写もあくまで「それらしい感じ」止まりですが雰囲気だけでも味わっていただけると幸いです。

m(_ _)m

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