都市サヒラ
9
2夜過ごした。
そして森を抜けると、そこは一面の草原でした。
遠くに人工物らしきものが見えます。
あれがサヒラでしょうか?
あと10kmってとこでしょうか。
天気もよく昼前なので、よく見えます。
「あれがサヒラやでー」
「やはりあれがサヒラか!」
わうー
「ここらの森は冒険者か、都市に依頼された樵が護衛を連れて少しずつ人の領域増やしてんねん」
「確かに、そこらじゅう掘り返したような跡があるね。木があったのか」
「せや、建材にも燃料にも使えるしな。視界も、よーなるし力いれとるで。やから人の行き来で道もできとるっちゅうわけや」
「本当だ」
わう
道に向かいながら話も続ける。
草原には魔物は見当たらない。
農作業をしているのか人影も遠くに見えます。
うちの田舎を思い出すね!
ちなみに雪国でした。
食べ物はほとんど家で作っていたよ。
なんだかすごく昔の出来事に感じる。
「周りの草は家畜の餌として重宝しとる」
「家畜もいるのか。無駄がないねー」
「都市の周りは農地が多いんよ。安全のために第三防壁も作っとったな」
「今なお進化してる都市か。人も増えてるって事かな」
「せや、領域が増えて安全が確保されていると伝わったら人も集まりだしよったで」
「だれでも受け入れてもらえるの?」
「家を買うなり借りるなりした後で、税金を納めれば市民証はもらえるな」
「へー」
「市民証もギルドカードと同じ作りや、ラインないけどな。ほとんどの国で利用されとるんと違うかな。称号欄に国名と都市名が入っとったはずや」
「なるほど」
わう
道に着いた。
少し轍があったりする土の道だ。
歩くぜ。
馬車襲撃のテンプレはなかったな。ひひひ。
魔物が多すぎて外には迂闊に住めないから、盗賊なんてやってらんないそうだ。
某盗賊ハンター様のようにお宝はいただけませんねー。
歩く。
第三防壁まで来た。
簡素な木で囲ってある。まだ柵っていったほうがいいな4Mはあるけど。
石造りの本格的な城壁は端から順に作っているそうだ。
道と防壁がぶつかる所に衛兵がいる。
あー、どきどきするな。
ここまで来る間に農民も観察した。
見た目は地球と同じだった。
髪の色は茶髪やくすんだ金色が多かったね。
瞳は茶色に見えた。
踝までの皮靴を履いて綿だろうかズボンとシャツの姿の人が多かった。
色はベージュだった。たまに茶色かな。
カッツォに聞いたら、俺の髪と瞳は茶色がかった黒との事。染めてないんだけどなぁ。
「身分証明書を」
がっしりした衛兵が声を掛けてくる。
となりに槍を持った衛兵もいる。
「はいな」
カッツォがギルドカードを差し出す。
「おぉ、冒険者ギルドのランク2か!」
「はいな」
「そっちの人も出してくれ」
「こいつはこれから冒険者ギルドでカード作るつもりなんよ」
「そうか、なら銀貨1枚だ」
カッツォが立て替えて払ってくれる。
1日滞在許可証を貰う。
ちゃんと書いてあること読めるね。
言語補正バンザイ。
明日までにギルド証もって衛兵に見せないといけないのか。
「犬はこのまま都市に入れますか?」
「ふむ。躾はできているのか?」
「ゴンタお座り」
ぺたん
「ゴンタお手」
ささっ
ぺた
「おかわり」
ささっ
ぺた
「ふむ大丈夫そうだな。よし首輪を付けておけ。銀貨1枚だ」
これもカッツォに払ってもらう。
すみませんのぅ。
受け取って、ゴンタに付ける。鉄のプレートがついてるけど皮の首輪だ。
「いっていいぞ」
「どもです」
第三防壁の中も、ほとんど農地だった。
ちらほら家や作業小屋らしきものはあるが。
大きな建物もあった。家畜小屋らしい。
人は第2防壁に近づくにつれて人も増えてきた。
なんだか女は美形が多いな。
スマートなのに出るとこは出てるし。ひひひ。
いいじゃん見るくらい勘弁してつかぁさい。
男は…どうでもいいか……。ただガチムチが多いとだけいっとく。
「あの第2防壁を超えたら住宅街と商店街や」
「やっとかー」
「感無量か?にひひ」
「おう、なんだか長かったぜ!」
「いろいろ経験できてよかったやん。生きてるし」
「そうだな。生きていてこそだな」
「せやでー。あのナイトバイパーやオーガとの戦いで、それは感じたやろ?」
「うむ、あれは死んだかもって思ったさ」
わう
「おかげで黄色魔石と緑魔石も手に入ったやん。あれらだけで金貨6枚分にはなっとるで」
「えーっと……金貨1枚でだいたい十万円ってとこだっけか」
「わからんけども。飯だけなら600回食べれるで。他のこまい魔石を合わせればさらに倍ってとこやな」
「しばらく生活に問題はないってこったな?」
「そういうこっちゃ」
わうー
「素材は錬成で加工した物が多いからダメかな」
「せやなー怪しすぎるで。加工していないオーガの骨あたりは売れるやろうけどな」
「良かった」
歩きながら話をして第2防壁に着いた。
石造りの防壁だ。
高さは……5mはあるね。
厚みもそうとうありそうだ。
「身分証明書を出しなさい」
髭面のおっさん衛兵が声を掛けてくる。
他にも5人ほど姿が見える。
「はいな」
「はい」
提出する。
「よし通っていいぞ。滞在証明書の人は正式な身分証明書を明日までに提出すること。いいな」
「はい。わかりました」
証明書を、それぞれ返してもらって先に進む。
「よーこそサヒラへや」
「おう!」
わう
俺達の冒険はこれからだっ!
ひひひ
城壁をくぐった先は大通りがあった。
幅20mくらいあるだろうか、広い道だ。
12時くらいなので、結構人がいる。
馬車は見えないな。
大通りに面して店が立ち並んでいる。
活気に溢れている。
良かった。初めて来た町が寂れていたら、しょんぼりしちゃうとこだったよ。
この世界の標準にしてしまうからなぁ。
ついきょろきょろしてしまうー。
傍から見たら、おのぼりさん丸出しなんだろうね。いいんだ間違ってないもの。
「見て回るんは後や。優先順位つけてくでー。冒険者ギルドからや」
「おう」
わう
「って言ってもすぐそこの大きな建物やけどな」
「目の前じゃん!」
「基本的に冒険者は町の外に用があるからなぁ。いざってときもすぐ出れるよう門の近くにあることが多いで」
「なるほど。ごもっともだな」
「建物の向うに訓練場もあるし敷地結構広いで」
「他の建物はせいぜい2階立てなのに、冒険者ギルドは3階建てだ!城を除けば最大級なんじゃないか」
「せや。冒険者ギルドではギルド員用の宿と酒場に武器防具、消耗品の店まで経営しとるから、この大きさや」
わうー
ゴンタも見上げてる。
ちょっとしたデパートみたいだねぇ。
面白そう!
後で案内してもらおっと。
「さっそくいくでー」
「おう」
わう
「ゴンタも一緒で大丈夫?」
「問題なしや。むしろ連中のほうがガサツで不潔やさかいな、それにほんなんでビビるようなやつもおらへんやろ。ゴンタはええこやし、大丈夫」
わうー
「おう」
カッツォを先頭に建物に入る。
どきどきだ。
絡まれたりするんだろうか。
カッツォみたいな強い人ばっかりだったら、やばいな。
早く冒険者ギルドの人らの力量を確かめてみたいもんだ。
カウンターが6つほどある。
あつは案内カウンターらしい。
3つはクエスト受付で、残りの2つはクエスト終了報告の受付か。
絡まれたりーなんてことはなく、クエスト終了報告カウンターに2組のパーティがいるだけだった。
カッツォは案内カウンターへ向かっている。
髪の長い金髪の綺麗なねーちゃんが受付だ。
さすが企業の顔。
胸も、ぼーーんと出てる。うひょー。
歳はよくわからんが20ちょいってとこか。
「いらっしゃいませ。本日のご用件はなんでしょうか?」
綺麗なねーちゃんが笑顔で声を掛けてくる。
「ギルド員登録を頼みたいんやけど、どこで登録すんの?」
「あちらの扉の向こうに登録カウンターがあります」
「ありがとさん」
「ありがとう」
わう
ねーちゃんは、ゴンタを見てちょっと驚いたようだ。その後ゴンタに手を振っている。
むむ、ゴンタは可愛いもんな。
きぃ。
羨ましくなんてないんだからネ。
3人で扉の奥に向かう。
登録カウンターは3つあった。
でも1人しか座ってないね。
金髪を肩まで伸ばしているねーちゃんだ。
さっきのねーちゃんほどではないが、こちらも綺麗な人だ。
「登録頼んます」
「はい。こちらにご記入ください」
ほほー。
品質はいまいちだが紙だ。
わりと技術あるんだな。
羊皮紙じゃないのか。ちょっとびっくりだ。
そして、文字は読めても書けませぬー。
「カッツォ先生、代筆よろ」
「読めても書けないんやっけか。なんぎやな」
「はいー」
「えっと、名前だけでええかトシオっと」
名前だけ書いて受付嬢に渡す。
「トシオ様ですね。ギルド規約はご存知ですか?」
「うちが教えたから大丈夫や」
「はい解りました。省略させていただきますね。」
そう受付嬢が言っている間に、受付嬢の後ろに青年が2人来た。
なんだろ、これだけのことになんか問題あったのかな。
まだ何もしていないはず……。
「これから簡単な質問をしていきますので、回答願います」
「は、はい」
なんもしてないのにキョドッてしまうー。
「トシオ様は、この都市にとって不利益になる事をしますか?」
なんじゃそら。
「いいえ」
「トシオ様は、犯罪者以外の人を殺した事がありますか?」
「いいえ」
「冒険者のギルド員として行動できますか?」
「はい」
受付嬢が後ろの青年の顔を見る。
青年は頷いている。
「手続きを進めさせていただきますね」
むぅ。なんだったんだろ?
無言でカッツォを伺う。
(後ろのあんちゃんは真偽官や。嘘を見破れる)
俺の耳に口を寄せて小声で教えてくれる。
うそ発見器かよ。
そんなスキルがあんのか。
(なんだよー、教えといてくれよー。挙動不審になっちゃったじゃんか)
(にひひ)
「こちらの水晶に手を乗せてください」
「はい」
ブゥゥーン
音とともに水晶がぼんやりと光る。
「あら?登録済みですね。ヨシツネ様?」
「えっ!?違いますよ?トシオです」
ヨシツネと聞いてある人物を思いうかべつつ答える。
受付嬢が青年を伺う。
また頷いている。
「えーっと……変ですね。どうなっているんでしょう……」
青年達と相談を始めた。
これってあれだよね。魔力がないせいだよな。
たぶんあの人も魔力がなかったんだろう。
同一視されたかな。
カッツォを見る。
カッツォは苦笑いをしている。
そしてゴンタは欠伸をしている。飽きたんだね?
そしてカッツォは俺を見る。
魔力に関する事だな。
俺達の間で事前に決めてたからな。
俺は黙って頷く。
「あー、ちょっとええか?」
「はい」
「ちょっとギルド幹部も呼んでどっか個室使わせてもらえん?」
「……解りました。上司も呼んできます」
こちらになんらかの事情があると察したのか、すんなり了承してもらえた。
3階の個室に案内された。
「こちらにお掛けになってお待ちください」
受付嬢の勧めで座って待つ。
ゴンタはソファーの横で伏せている。
なんか目も瞑って、お休みモードっぽい。
可愛いなゴンタ。なんて思いつつ待った。
面倒事早く終わらせて町を見たいな。
ふー