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馬上

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「じゃあ、行ってくる」


「家と店は頼んだでー」


「いってきまーす」


わう

わふ


「店はお任せください。いってらっしゃいませ」


「いってらっしゃーい」


 俺達はビアンカとデイジーに見送られて家を出た。

今日は良い天気になりそうです。

馬達を引いて東門へ歩きます。

ゴンタとミナモは外に出ることができるので嬉しそうだ。

馬達も早く行こうと逆に引っ張ります。


 門を出た俺達一行は、早速馬に乗り街道を北へ走ります。

俺が何の指示もしなくてもカエデは走ります。

まぁ気の済むまで走らせてやろう。

野宿で一泊、途中の村で一泊したらエルフの森との境へ着くそうです。


 俺は手綱を握り足で馬体を抑えてはいるものの、ボケーっと流れゆく景色を見ています。

既に田園地帯を抜けて左に平原、右に森がある街道を爆進している。

かっちゃんとなっちゃんは魔法の訓練を実践しているようです。

楽しそうだなぁ。

魔法か……羨ましいぞ。

かっちゃんは氷の魔法を使いこなしている。

なっちゃんは手の平を上に向けて水球を作ってはいるものの、氷には出来ていないようだ。

アイスキャンディー目当てで頑張っている。

ゴンタとミナモは森の中を走っている。

見えないけど、気が膨れ上がるときがあるから狩りをしながら進んでいるのだろう。

放っておいてもいいな。

俺達が休憩に入るとゴンタとミナモは様子を見に戻ってくる。

水を出してやり、ゴンタ達と馬達に飲ませてやる。

なんだか懐かしいかも。

ここの所はずっと町での暮らしだったからな。

俺はどっちの生活も好きなんだが、ゴンタ達は当然、外の生活が好きだよな。

何とかしてやりたいな……町の外に屋敷でも作ろうかね。

店はそのまま営業して用があるときだけ行くとかでいいかなぁ。

それもアリだな。


「世界樹って職業の追加ができるんだよね?」


 再び馬上の人となった俺達は話しながら街道を行く。


「そうや。うちやなっちゃんの職業追加のためでもあるんよ」


「なっちゃんは何の職業もないんだっけ?」


「そうなんよ。これだけの魔力と魔法が使えるのになぁ」


「魔法使いになるのー」


「職業に就けば身に付くスキルもあるから無駄にはならんで」


「なるほど」


 なっちゃんはエルフらしく大量の魔力を持っている。魔法も問題なく使えているが無職であったか……。


「世界樹はエルフ領の中心にあるんだよね?どうやってそこまで行くの?」


「エルフ領は六つの地域と隣接しているんよ。それぞれの地域に窓口を置いて世界樹まで案内をしてくれるで」


「へー。思ってたより閉鎖的でもないのかな?」


「んー。閉鎖的っちゃ閉鎖的やけど、昔から職業追加に関しては協力してくれるんよ」


「そっかー」


「エルフの森の側に小屋があるから直ぐ判るで」


「勝手にエルフの森に入ると迷わされちゃうんだよね?」


「そうや。木の魔法か闇の魔法やとも言われとるな」


「魔法にも色々あるんだねぇ」


「エルフが一番の魔法文明やな。研究も盛んに行われとるっちゅう話や」


「人族の魔法文明が発達している国はどこなの?」


「イグルス帝国やろなぁ。あそこも閉鎖的な国やから独自の魔法研究が進んでるって聞いたわ」


「知らない国だ。どんな国なの?」


「大きな島国やな。海軍が強いで。あと賢者がおるっちゅうのも有名やな。賢者アーロンゆうてな火と風と闇の魔法が使える人族で一番の魔法使いやろな」


「賢者!会って話でも聞いてみたいね」


「偏屈者らしいで」


「それは面倒そうかも」


「まぁ機会があったら会ってみたいのぅ」


 色々な国を旅しているかっちゃんから話を聞いてワクワクした俺となっちゃんであった。

まだまだ見知らぬ国や人が大勢いるようです。

そこに住んでいる人や文化、食べ物に思いを馳せます。


 すれ違う人もおらずのんびりした旅です。

そして一日目は野宿でした。

天気も良いので苦にはなりません。

馬達の食事は苦さを食べてもらうだけなので楽です。

ゴンタとミナモも森で狩りをして食べてもらいます。

俺、かっちゃん、なっちゃんはビアンカに焼いてもらった柔らかいパンにジャーキー、レタス、チーズを挟んだ食事でした。

簡単でも美味しいです。でもマヨネーズがあったらもう少し美味しくなったろうな。

食後に軽く雑談をしました。氷の魔法についての話が多かったです。

氷の魔法はギフト魔法だと思われていたようで、氷の魔法で有名な魔法の使い手『湖の魔女』という人の名前も出てきました。


 それから夜は早く寝ました。代わりに明日は早朝からの移動です。



「おはよう」


「おはよーさん」


「おはよー」


わう

わふ


 次の日は朝も早くから行動開始です。

またもや簡単サンドイッチの朝食を食べて出発です。

ゴンタ、ミナモ、馬体がご機嫌ですね。

俺を乗せながらも気持ちよく走っています。


 道中で魔物の気配もありましたが、空を飛んでいて降りてくる様子はありませんでした。

鳥の魔物でしたね。大きくはなさそうでした。

森には魔物ではなさそうですが獣はいるようです。

ゴンタ達が狩りをした時に出した気配で逃げているのは判りました。

狩られた獣以外は大逃げです。


 かっちゃんとなっちゃんは魔法の訓練をしながらの移動です。

俺も気功術と『錬成』の訓練をしながら移動します。

希少な素材か新しい機能で『錬成』をすると良い気がします。

早く5に上がらないかな。楽しみです。

ドラゴンの鱗を自分に組み込んだりとか、蛇を尻尾のようにしてキメラっぽいのとか妄想してしまいました。

いくら強くなりたいといっても、それはないと考え直しました。

俺とドラゴンを融合できたら、意識が二つあり乗っ取られたりとかもあるんだろうか?なんて事も考えたりしました。

妄想は楽しいです。

教室でテロリストと一人戦うくらいの妄想です。

ニヤニヤしててキモイとかっちゃんに言われるまで妄想してました。

ちょっと傷つきましたとも。


 夕方前に今日泊まる村へ着くことが出来ました。

小さな村ですね。家の数は百も無いでしょう。

堀に柵で覆われた村です。

村の近くの街道沿いには農地がありました。

既に収穫は終わっていましたね。

宿は一件だけでした。

のんびりおっとりした宿のおじさんとおばさんが経営しているようです。

村の人も似たようなもので、全体的にのんびりした村です。

心休まる村ですが、のんびりしすぎて心配になってきますね。

門の所に居た衛兵はそれなりに強そうでしたが、《闘族》や他の盗賊に狙われないか心配です。

ここの名物だという、葡萄パンと山菜パスタを食べました。

どちらも美味しかったです。ただ山菜の灰汁はもう少し取ったほうがいいとは思いました。

赤ワインが美味しかったです。名物ではなさそうですが、これが一番気に入りました。

かっちゃんも気に入ってましたね。

宿の人や村の人は、この味に慣れているのか当たり前のように呑んでいますが、これをバッキンに持っていけば人気商品になるのではないだろうか?

葡萄畑もあったし、ここで作っていると思われる。

自分達で消費する分しか作っていないのかも……俺は村の大きさを思い直して勝手に納得します。

帰りにお土産として買えるなら買っていこうと決めた。


 宿の部屋は大きくありませんでしたが清潔感はあります。

掃除が行き届いていますね。シーツも綺麗に洗ってあります。

ベッドは固めでしたがよく眠れそうです。


「明日はエルフ領だね!楽しみだ」


「そうやね。うちも久しぶりや」


「そっか。エルフ領に食堂とかあるかなぁ」


「エルフの生活には関われんよ。世界樹の管理小屋くらいしか見た覚えがないで」


「むぅ。残念」


「あとエルフ領での暴力沙汰は厳禁やで?生えている薬草なんかにも手を出したらアカン」


「おぉ、そんな決まりがあるのか」


「木を傷つけたりも止めといた方がええな」


「大人しく案内の人にくっついているよ……」


 エルフの掟かな。なんとなくイメージは合う。

エルフの食事には興味があったんだけどなぁ。独自の食材や調理法がありそうなのに、残念無念。


 明日はエルフ領か……期待に胸を膨らませながら寝ます。

お休みなさい。


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