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移動

6


わう


ゴンタに起こされた。

鼻をぐいぐい

お腹がくすぐったいよゴンタ。

なでなで


7時か。

それなりに眠れたようだ。


「おはよーゴンタ」


わう


「お腹減ったのか?」


わう


「ちっとまってなー、用意すっから」


わう


「おはよーさん」


「おはよーカッツォ」


わう


「朝飯の用意すっから待っててくれ」


「うちはサハギンいらんからな」


わぅ


「あいよ。ジャーキーと木苺な。木苺は朝で無くなるなぁ」


「今日は移動すんのやろ?」


「おう」


「なら少し森の中を移動して、食べ物を探しながら進もうや」


「了解」


わう


サハギンの肉は少し白っぽいが普通の肉に見えるな。

サーモンに近いかも。

さて火を起こすか。


ざしゅしゅしゅっ


火種をおがくずで大きくする。

紙もどきを薪に突っ込んで、焚火を作る。

塩をサハギンの肉に振っておく。

魚っぽいとも聞いたので胡椒は振らないで様子見。

まずかったら胡椒でごまかす。


まだ焼けそうにないから、海にいって錬成水で顔を洗うか。

海に向かって歩き出したら、ゴンタもカッツォも付いてきた。


「おらー顔と手洗えー、水も飲めー」


「ありがとさん」


わう


ばしゃばしゃ


きょうもいい天気になりそうだ。


焚火に戻る。

肉の裏表を返す。

もうちょいかな。


肉を見て、昨夜の事を思い出す。

狼に続いてサハギンを殺した、暗くて戦いの実感は薄かったが殴った手ごたえと蹴った感触はしっかりあった。

殺すということには、やはり忌避感がある。

その一方で生きている事も実感できている自分がいた。

慣れていい物でもない気がするが、こういう感情には向き合っていこうと思う。

いつか答えが見つかるだろうか……。


「上手に焼けましたー。カッツォにはジャーキーと木苺ね」


皿に盛って渡す。


「ありがとさん」


「ゴンタと俺にはサハギーンの肉ー」


わうー


ゴンタの前にも皿を並べる。


「いただきます」


「いただきます」


わう


どれどれ。

もぐもぐ


ふむ、不味い。

筋が多いとは思っていたが、肉の部分も何やら繊維っぽい。

そして脂身が少なく、ほとんど旨みがない。

胡椒さん出番ですよ!?


「うん、不味い」


わぅ……


もぐもぐ


「もうサハギンは食べない」


わぅ


「やろなー。うちはここでも異世界補正とやらが掛るんかとおもっとったんやけどなぁ。にひひ」


もぐもぐ


口直しに木苺だ。

酸っぱさで上書きせねば。

ゴンタも肉を食べきってから木苺を食べている。


「自分で倒した魔物の肉を食べると、強度が上がる事があるで」


ステータスを見る。

本当だ45になってる。


「おぉ、昨夜44だったのが45になってるよ。サハギン食べたかいがあったよ」


わう


「あがったんか。うちくらいの強度やと強いやつの肉じゃないと上がらんのよ」


「そっか」


わう


「サハギンの魔石を、さっき見たら青い魔石だったよ。狼と同じだ」


「小遣いにはなるやろ」


「いやいや、俺達の財布は空っぽよ?普通にありがたい」


わう


「さよか。そういやオーラユーザーの職業は付いたん?」


「ああ、昨夜には付いてたよ。気功術1と体術3だった」


わう


「良かったやん。やっぱ自動取得になるんねぇ……」


「おう。がんがん職業集めるよ、こういうのは燃えるぜ。上級ってのは今ある職業に上書きされる感じ?」


「そうや。オーラユーザーだったら上書きされてオーラマスターに置き換わるんよ」


「なるほど。そういうのは職業が増えたとは言わないんだよな?」


「あくまでステータスに出てくる数って事になっとる」


「そうか」


わう


皿を洗い乾かしておく。


「ちょっと涼しいうちに体術と気の訓練するよ。移動は2時間後辺りからでー」


「はいな」


わうー


柔軟体操をゆっくり時間を掛けてやった。

意識すると結構使ってない筋肉や可動域が解るもんだな。

そして昨日教わった、気の集中を始める。

ゴンタも横でやっているな。そっちを見なくても気が高まっているのが解る。

気配を読むってのはこういう事か。

さらに目を閉じるとより伝わってくる。

カッツォは何にもしてなさそう寝てるなこれは。

集めた気を体中に回していく。

なんか修行っぽい。

……



「トシーそろそろ移動せんかー?」


はっ

集中しすぎたか。

2時間以上すぎてる。


「すまんすまん。集中しすぎたよ」


「気にせんでええ。それだけ集中できるんはたいしたもんや。なぁゴンタ」


わぅ


「いやいや、ゴンタも頑張ってたで?」


わう


ゴンタは途中で飽きたらしい。

まだ子供を抜けきってなさそうだし、仕方ないよね。


「それじゃ出発の準備するよ」


「うちの水筒にも水補充したってー」


「あいよー」


水を補充してから、荷物をまとめる。

食事の分減ったとはいえ余り重さは変わってないかな。


「ちっとトイレいってくる」


「はいな」


わう


お手製紙と棍棒を持って森に入る。

用を足す。

うぅ……。

葉っぱよりマシなんだろうけど、ひどい使用感だ。

日本はいい国だったんだな。

これは今後改造が必要だな。

海で手を洗ってから戻る。


「お待たせー。それじゃ出発しようか」


「はいな」


わう


荷物を装備し、出発する。

今日は海沿いではなく少し森に入って行く。

ゴンタが先頭で警戒しながら進む。


話しながら歩いて行く。

ゴンタと2人だけだと、俺が延々独り言言ってるみたいだったからなぁ…。

大森林の生態系や食べられる植物の話を聞きながら進む。

キノコは毒ありが多いそうだ。

結構見かけるのに残念。


時折ゴンタが反応するが、襲撃はない。

山菜も見つかったが、調理道具がないので断念。

カッツォも持ってきていないようだ。パーティや護衛などで馬がいないような場合は持ち歩いたりしないとの事。そりゃそうか。

鍋くらい持っててもいいんじゃない?っていったら、それのために調味料や食器まで増えるから無しとの返事。むぅ。

旅の間は干し肉や果物食べるくらいなんだと。

辺りに生えてる木は地球でもありそうな感じ。

見つかる果物は色や大きさが微妙に違うが、概ね同じ物っぽい。

あけび、琵琶、木苺が見つかった。季節とかあんまり関係なさそうだな。

味は人の改良が入っていないので、酸味が強かったり、苦みがあったりするが肉だけよりいい。

しっかり収穫していく。


「3日分くらい収穫できたし、海沿いに戻ろか?」


「おう、楽しかったけど開けたとこのが歩いていて楽だ。戻ろう」


わう


海へ向かって進む。


海が見えた。

なんだろうね?この海だーって感じは。無性に叫びたくなる。海が見えただけでわくわくするなぁ。ずっと海の側で生活してたのにさ。

不思議なり。


「もう少し進んだら昼飯にしよう」


「はいな」


わうー


尻尾ぶんぶん

やはり飯と聞くと反応いいな。


「魔物に襲われなかったね」


「森の浅い場所には、余りでてこんようやな。こっち来るまでにゴブリンやマッドボアとかに襲われたで。全部で……13回」


わうー


「1日1回以上かよ……。きついぞそれ」


「うちは自分で来とるからな。なんてことあらへん」


わぅ


「やっぱゴブリンいるのか。ボアって猪だっけか?」


「それも知ってるんか。ゴブリンは緑色した子鬼やね。集団で棒とか持って襲ってくるねん。ボアはそのまんまや」


わう


「ゴブリンキングもいる?」


「いるねぇ。あれが出たらランク1と討伐対か騎士団総出でくらいでないと倒せんやろな」


わう


「そんなに強いのか。騎士団とか言われても強さの想像ができないけども」


わう


「ゴブリンキング単体で強度300前後、魔法を使ってくる場合もあるな。とにかくゴブリンを多数率いてるんで数も厄介なんよ。最低でも200は率いて来よんねん多ければ1000超えた例もあるな。ゴブリン単体は村人でも倒せるんやけど、3体以上でかかって来よる。騎士団については領主や国が抱え取る屈強な兵士達やね。あれは騎士の職業持っとるか騎士団の試験みたいの突破できれば入団できるらしいな。強さで言えば強度で40以上スキルで剣術2以上とかやろな目安は、ピンキリやけど。騎士団長ともなれば強度で80はいっとるんと違うやろか」


「うへ。1000とかしゃれにならなそう……。あと俺って騎士くらい強いって事か!」


わうわうー


「トシなら騎士相手でも、そこそこ戦えるやろね。武器スキルや武器自体をなんとかせなきついやろけど」


「そうか」


わう


「トシの戦い方をサハギンの時見てたけどな、まさにバーバリアンって感じで吹き出しそうやったでホンマ」


「仕方ないだろ。棍棒と蹴りくらいしか手段ないんだからさー」


わう


「毛皮の服着てたら辺境の蛮族になれるでぇ。にひひ」


「もうちっとカッコイイやつでたのんます……」


わぅ


話しながら歩いて、大きな木の側で昼飯を取る事にした。

荷物を置いて準備に取り掛かる。今回は出すだけだけどな!

先に手洗って、ゴンタに水飲ませるか。


「手洗いに行くぞー。水だすからおいでー」


「はいな」


わう


熱くなった砂の上を歩いて海に行く。


ざぱぱぱぱー


わう


ひひひ、飲め飲めー。

ゴンタが離れた後で手と顔を洗う。

汗かいてたしな。

そういや風呂は無理でも拭うくらいはしたいな。

今夜でいいか。


ジャーキーと取ってきた果物で昼飯。

ゴンタにはジャーキー大目に出してあげる。

むう、鍋があれば塩コショウあるしジャーキーで出汁とって簡単なスープくらい作れるのになぁ。無念。

あー琵琶は肉の後に食べると口の中がさっぱり拭われる感じがするな。なかなか良いなこれ。

食休みに入る。


「出発は1時間後ね」


「その時計ってのは、すごいな欲しいぞ」


わう


「1個しかないからダメー。俺達のいた世界じゃ珍しくない物だよー」


「いってみたい」


わう


「機会があったらな」


俺は木に寄りかかって休む。

少し昼寝しようかな。

ゴンタは遊んでるな。

カッツォも昼寝か。


海をぼんやり眺める。

なんだか遠い所に来たんだなぁ。

それでも今の状況を見ると、不幸中の幸いかなとも思う。

息苦しい日本にいたときよりも、生きているって感じがする。

こんなのも悪くない。


海風に顔を撫でられながら目を瞑る。


ん…。

軽く寝てたようだ。

ゴンタは波打ち際で波と戯れてる。

カッツォは寝てるな。鼻提灯出すくらい頑張ってほしいものだ。

時計を見る15時少し前か。

そろそろ出発かな。


起き上がって、ゴンタの所へ行く。


わう


俺に気が付いて近寄って来る。


「もうすぐ出発するぞー。遊んでたのかい?楽しかった?」


わうわう


「それは良かった。戻ろうか」


わう


ゴンタと荷物の所へ戻る。

日差しはまだきつい。


「ゴンタ、カッツォを起こしてあげてー」


わう


任せろ!といわんばかりに尻尾を振る。ゴンタはカッツォと仲いいな。やはり話せるのも大きいか。

荷物を装備していく。


「ふぅあああ、ゴンタあんがとさん」


わう


「おはよーカッツォいこうか」


「はいな」


カッツォはリュック1つだけなので身軽だ。すぐ準備が整う。

3人で海沿いを歩き出す。


「10日くらいで都市に着くんだっけ?このまま海沿いでいけるのかい?」


「1回だけ岸壁と岩礁地帯があるから、そこだけ森やな」


「都市は海沿い?」


「せや、森の開拓はよーすすまんから、都市は大概海っぺりにあるでー」


「判りやすくていいな」


わう


「俺達は身分証明書とかないけど都市に入れるの?城壁あるんだよね?」


「入るだけなら、銀貨1枚か物納で1日限定の滞在証明書もらえるで」


「おー。ゴンタも入れる?」


「衛兵に確認されるけど入れるはずや。テイマーもおるからな、指示した行動の試験っぽいのがあったはずや」


「なるほど。なら大丈夫だなゴンタ賢いし」


わうー


なでなで

ゴンタの頭を撫でる。


「テイマーか。魔物を使役できるのか……」


「スキル持ちかギフト持ちが使役できるな。ごろごろおるっちゅうほどやないけどな」


「どんなのが使役されてた?」


「グラスウルフやワイルドホース、スラッシュバード辺りをよー見たな。珍しいとこやとグランドリザートやウインドホークとかやな」


「なんか名前だけだけど、わくわくしてくるな!会いたいな」


わう


「グラスウルフは草原にいて群れで狩りをして生きとる狼やな。ワイルドホースはごっつい馬や、頑丈で体力ありや。スラッシュバードは小鳥みたいなもんやが、爪と嘴が鋭うてすれ違った時に切られたりするな。グランドリザードは馬くらいでかいトカゲでわりと温厚や。ウインドホークは風魔法使うやつで飛んでるし速いから厄介やで」


「おー」


わうわう


「大丈夫やでーゴンタ、おまえさんのほうが強いしかわいいでー。どんと構えとき」


わう


「ゴンタごめんなー。知らないものに興味があっただけなんだよ。他意はないんだ」


わう


なでなで


話しながらだと、こんなに荷物持って歩いていても苦にならんもんだな。

体力も間違いなく上がっている。

都市に行くのが楽しみだぞ。

ゴンタも一緒に行けるのかー。

あ……。


「ゴンタも都市に入れるのはいいけど、宿はどうなんだろう?」


「ふむ。グラスウルフは馬小屋がある宿で見たことあるなぁ」


わぅ……


「むぅ。離れなきゃダメか……」


「子犬ならまだしも成犬の大きさだし抱えていくわけにもいかんやろ」


わぅ


「お金余分に出してもダメかなぁ?」


「……大概の宿は1階が酒場になってたり食べ物扱うから無理やな、食事も個人の部屋でできるようなランクの高い宿ならいけるかもしれんな」


「おぉ!それを探して頼んでみよう!」


わうわう


「せやな。探してみような」


なでなで

カッツォがゴンタを撫でる。

そのもふもふは俺んだぞぅ。なんちて。

大事な仲間だもんな。仲間仲間なーかーまー。

決して俺が心細いからではない。


かなり歩いた。

夕方に野営地を決める。

ちなみに着くまでに、狼4匹が襲ってきたよ。

なんだかカッツォ先生がいるだけで、すごい安心感。

俺も前線で頑張ったよ。

うまく気は使えなかったけど楽勝でした。

肉は食べきれないし持ちきれないので、今夜と明日の焼肉用以外は涙をのんで埋めました。南無。毛皮と魔石はごっつぁんです。


夜、焚火を囲んで焼肉パーリー。

サハギンと違ってうまい!

寝る前にまた訓練をしてから水浴びをした、ちゃんと服も洗って着替えたよ。洗剤ないけどな……。


昨夜の教訓はあるけど、焚火は放置して眠った。

ゴンタに警戒は任せちゃってるな。

いずれ俺も身に付けて見せるから、勘弁な。

暗闇でも気を使えば戦えるだろう。


お休みなさい。

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