海からのモノ
5
わうう
気功術の力を知り興奮してしまい、すぐには眠れなかった俺にゴンタの警戒の唸り声が届いた。
「起きんかい、海からなんか来よんで」
「おう」
カッツォからも声がかかる、2人とも反応早いな。
俺なんて眠ってすらいなかったのに……。
棍棒を右手に持つ。
しかし真っ暗でほとんど見えないぞ。まずいな。
「暗くて何も見えないぞ」
「火を絶やすからや。うちやゴンタは問題あらへん。なんとか対応し」
わう
ぐぬぬ
海の方から波以外でなにか引きずるような音が聞こえる。
「サハギンやな。かったい魚の骨槍で攻撃してきよる。たまに水の魔法使ってくるやつもおるから気ぃつけや」
わう
「了解」
槍を相手に棍棒じゃ不利だな。どうすんべ。
視界も悪いし、まずは回避することからだな。
「7体おる。ゴンタ突っ込んで攪乱しつつ端のやつから倒してまい」
わう
「土の精霊よ我が敵に岩の槍を与えたまえ!アースランス!」
ドスッ
ギャギャッ
カッツォの魔法が敵に炸裂したようだ。
わう
ギャッ
見えないけどゴンタも奮戦中らしい。
そんな俺は警戒しつつも、なんもできていない。
少しは目が慣れてきたが輪郭がどうにかってとこだ。
ざざっざざっ
砂の上の音が俺に向かってきている。
「トシ1体向かったで」
「おう」
やばい、どきどきする。
見えないってのは恐怖を増長させるな。
見えないが殺気というか存在が感じられる。
ザシュッ
ザザッ
斜め後ろに飛び退く。
回避に成功した。
攻撃なんて見えてないよ……。
おっかなくなったから下がっただけだ。
足場も悪いし迂闊には突っ込むまい。
だがどうしたもんか。
その時海のほうでぼんやり光ったものに気付いた。
あれ……ゴンタだよな犬の輪郭でぼんやり光っている。
あぁ!気功術か!
それがあったな。
気功術は攻撃だけでなく治癒もでき、さらには生き物の気も感じ取ることができる。
見えないならば、気配を感じてやればよい!
距離を取りつつ気配を読む。
サハギンの体を覆うようにぼんやり光が感じられる。
そこかっ!
あとは体の動きで槍の軌道を予測だ。
ざざっざざっ
来たな。
ザシュッ
ササッ
槍を避けることに成功、棍棒でぶん殴る。
ドガッ
ギャッ
上から叩き付けたので、サハギンは倒れた。
すかさず止めの安全靴キックをお見舞いする。
ボゴッ
ゴフッ
蹴った後、一応距離を取って相手を伺う。
……倒せたようだ。
2人のほうはどうだ?
「倒せたようやな」
わう
「えぇ、わかってましたー。2人のほうが多く相手にしても早く倒せるってー」
「なんや、気にしとったんか。にひひ」
わうー
「ゴンタは優しいなぁ。トシ気功術使うの遅すぎや。ちゃんと教えたやろー索敵もできるんゆうのを」
わう
「うー。ゴンタが気功術を使うまですっかり頭から抜け落ちてたよ」
わう
「実践は何より勉強になったやろ。ゴンタは相手をさっさとかたずけてトシの援護ができるよぅしとったで」
「そっかー、ありがとなゴンタ。カッツォも」
わうー
「ええ経験したのはいいが、こいつらの始末どうしたもんかな」
カッツォがサハギンを指す。
「こいつら食える?」
「肉と魚の悪いとこ集めた感じやな。食べられんこともないが他に食べる物あるならいらんな」
わぅ
「そうか、でも食べてみたいから魔石と少しの肉取って、穴掘って埋めちゃおう」
「そうしよか。骨槍も微妙やし鱗とか牙も使えるもんやあらへん」
わう
「ゴンタはサハギンをここに集めてくれる?カッツォは魔法で穴掘りよろしく」
「はいな」
わう
2人に頼んだ後、俺が倒したサハギンから処理していく。
「錬成」
魔石を取り出す。
ゴンタが集めてきてくれるまで、食べるための串を作っておく。
刺して置くだけで今は食べないけどね。
炉辺焼きのように串焼きを焚火の所に並べて地面に刺して置く。
ゴンタが持ってきてくれるサハギンを処理していく。
処理済みをカッツォが掘ってくれた穴に入れる。
全ての処理が終わった。
「寝よか」
カッツォが欠伸混じりに告げる。
「あいよー。おやすみなさい」
わう
「ステータスも変わっとるやろうから確認してから眠りー。おやすみ」
そうかそれがあったな。
声を出さずにステータスを呼び出す。
これも心の声だけで大丈夫だったよ。
都合いいねっ。
<サトウ・トシオ>
・44
・ポーター・バーバリアン・グラップラー・オーラユーザー
・錬成1
・ポーター
スキル運搬2体術3
・バーバリアン
スキル棒術2体術3内臓強化1
・グラップラー
スキル格闘2体術3
・オーラユーザー
スキル気功術1体術3
・錬成1
このレベルでは非生物が対象。
分離と結合が可能で結果として素材が出来る。
おぉ!強度が6上がってる。
確かに落ちてきたばっかの時より、力ある気がする。
そしてオーラユーザーって職業が増えてる!嬉しい。
気功術1かー。1でもあの威力訓練頑張ろう……。
ああ結局、職業の自動取得も謎のままだったな。
普通は師匠とかに付いて師匠が実力ありと認めたら、汝をソーサラーとして認めるとか承認の儀があるらしいな。
そうするとスキルの条件を満たしていれば、その職業になれるとか。
俺には師匠なぞいらぬってことか。
がははは
すみません、ゴンタ先生、カッツォ先生。
なーんて夢だかよくわからない状態で眠りに落ちていたようだ……。
Zzz。