都市ラマ
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「大きい都市だね」
「ここより大きい都市は3つしかないで。ここは50万も人がおるって言われとるんよ。」
「それはすごいねぇ。しかし大きいのに圧迫感がないね」
「城壁が無いから圧迫感もないんやろ」
「なるほど」
俺達はイチルア王国の首都ラマへ着いていた。馬達の足が速いのでしがみついているだけで着いてしまったよ。
ほとんどが石造りの家に見えるな。
屋根や看板が着色されており華やかだ。今までの町では見かけなかったね。
魔物が少なく脅威とならないから人に余裕があり文化も発達している都市なのかも知れない。
屋台の食べ物も菓子類がチラホラ見受けられる。食を楽しめる環境なんだな。
「俺達はここの都市で調べものをするから、しばらく滞在するけど、バルナバ達は先へ進むのかい?」
「ここまで来れば勝手知ったる所だしな。危険も少ないから先に行こうかな」
「そうね。家へのおみやげを買ってから行きましょ?」
「判った」
「じゃあ、ここでお別れだな」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうね」
バルナバ達は手を振って町へ紛れていった。
俺は怪しい二人組だと警戒を緩めなかったんだが、あっさりした別れになった。
なんか理由を付けて着いてくるかと思ったよ、すまぬ。
「あっさり行ったね」
「そうやね。何かあるかと思ったけど、本当に道中の不安があっただけみたいやね」
わう
「ゴンタもそう思うか。そやね強さを隠していた感じはなかったね」
わう
彼らを見送ってから、かっちゃんと話す。かっちゃんも気にしてたんだな。
「さて、宿に行こう」
「はいな」
馬を降りて手綱を引き大通りを進む。
バルナバ達はラマの事も知っており宿を紹介してもらってある。
ゴンタ達には馬達の警護もしてもらいたいので厩舎付きの宿にした。
一階は酒場になっている宿でした。
そこでは商人や護衛らしき人達が早い夕飯を食べていた。かなりの人数だったから部屋はないかもと思いましたが、無事部屋を取れました。
ゴンタ達に馬達を気にかけてやってくれと頼んで部屋へ行く。
「今日は図書館での調べものには時間が足りないね。明日からにしよう」
「そやね。ここも魚が美味しそうやったから楽しみや」
「パスタ食べたい」
「おう。イチルアでの食事は外れた事ないもんな、楽しみだ」
「甘い物の屋台もあったねー」
「そうやね。一緒に食べてみような」
「食べるー」
食事の事で盛り上がる俺達。
「ラマでやることの確認をしておこうか?」
「はいな」
「するー」
「ヨシツネやヒミコに該当する歴史関係と召喚魔法、転移魔法に付いて図書館で調べる」
「あとは食材と調味料やろ?にひひ」
「うん。そして貴族と、なんたら言うクランやギルド関係に注意」
「オクタが言ってたやつやな。あと賊の残党も来るかも知れんからな」
「そうだね、逃げていたヤツらがいたとはねぇ……」
「馬を見張ってたんかな。気が付かんかったわ」
「魔物ではなく人が襲ってくるとは思わなかったよ」
「サヒラとかの辺境は人が争っている場合やないからな。環境が違うんや」
「うん。それは思ったね」
「大きな脅威があってこそ人は纏まれるんや」
「安全ってなんなのか考えさせられる話だねぇ」
「トシが人を倒すのに躊躇せんかったんで安心したわ。無理かも知れんな思てたんよ」
「あの人数でヤル気でこられたからね。逃げられるなら逃げたかったよ。でも生きるという事を諦めるつもりはなかった」
「何が正解って事もないけど、あれでええと思うで」
「うん。ありがとう」
さすがに、かっちゃんだ。俺が気にしていたのは解っていたようでフォローしてくれているんだろう。
俺も長生きできれば同じように言えるのかな?うーん、無理かも。
かっちゃんは人が出来ているね、この場合は猫が出来ていると言うべきか?
「賊達の半分は冒険者カードを持っていたけど、どうするべき?」
「あー、難しい所やなぁ……」
かっちゃんは短い腕を組み、眉間にしわを寄せて困った風に言う。
そんな仕草も可愛らしい。
冒険者達が賊となって旅人を襲っているとギルドに報告すべきか?
後から戦闘があったとバレたら問題かな?伝えないと俺達が一方的に襲ったと受け取られるかも知れない。
しかしイチルアの冒険者ギルドも強い力を持ったクランに牛耳られていたらヤバイ。
俺もどうしたらいいのか判断できない。
なっちゃんはかっちゃんが座っている椅子の裏で、かっちゃんの尻尾を右へ左へと追っている、呑気か!かっちゃんも複雑そうな表情なのに余裕だな。
「ギルドが信用できない?」
「それもあるんやけど、うちら以外にも奴らにちょっかい出されてたモンもおるし、日常的にやってたんやろう。それがギルドへ話が行ってないとも思えんのよ」
なるほど。俺はオクタに注意されてクランとギルドの関係を疑っていたが、かっちゃんは違う所を見ていたんだな。
金を払った冒険者もいるだろうし、その人たちがギルドへ苦情を入れたってのはありそうだ。
「調べものが終わっって、いつでも動けるよになったら、うちがランク2の立場を利用してギルドマスターかサブギルドマスターに会ってみるわ」
「ふむ。そうだね、かっちゃんには面倒を掛けるけど、それで頼むよ」
「うちも十分関係者やし、問題あらへん」
「そっか」
「そろそろパスタ食べに行こうよー」
なっちゃんが我慢できずに俺達に言ってきた。
「夕飯食べに行こうや」
「あいよ」
「行こー」
なっちゃんに手を引かれ階下の酒場へ降りる。
夕飯時なので店は混雑していた。
表の椅子の座って席が空くのを待った。
道行く人達の様子を見ながらだったので待つのも苦にならなかった。
待っている間に騎乗した兵……騎士団かな?が20名ほどで武装して門の方へ行たのが気になる。
かっちゃんも何だろって顔をしている。
また賊でも出たのかね。
「私は魚介の塩パスター」
「うちも同じのにするでー」
「俺は燻製肉の塩パスタとサラダに豆のトマトスープとワインにしよう」
「うちもワイン頼むわ」
「葡萄ジュース」
あ、となりの席にチーズっぽいものがかかったパスタを食べている人がいる!
「かっちゃん、あれってチーズかな?」
「牛の乳からできるやつやね。ちょっとくせがあるで」
「おー」
「メニューにもあったで?パスタで使うか、そのままツマミにしてるようやな」
「盛り合わせか。これも頼んでみよう」
忙しそうに動き回っている店員さんを捕まえて注文した。
乳製品も初めて見たかも。食生活に幅がでるねっ!嬉しいぞ。
注文した品がそろったところで食べ始めた。
気になるチーズから食べました。
少し硬いけどチーズで間違いない。ワインとも中々の相性だ。
かっちゃんもなっちゃんも試していた。
かっちゃんは食べたことがあるのだろう、特に反応は無かった。
なっちゃんは……いまいちと言った様子です。そのままだと食べづらいかもね。
どれも当たりでした。
チーズも買い物リストに入れることは決定です。
「盗賊が出たってさ」
「マジかよ。どこの街道に出たんだ?」
「判らんが騎士団が動いていたぞ」
「明日出る予定なのにまいったな」
「護衛が……」
奥の席で騎士団の話が出て、周りの席にも伝わり話題になっていった。
商人が多いので、この手の話題には敏感なようだ。
「盗賊だってさ」
「さっきの騎士団の話やろか」
「国に睨まれちゃいかんよね」
「せやなぁ」
「でも騎士団が動いてくれるんだね」
「なんや意外そうやな」
「オクタが貴族について行ってたから騎士団も似たようなものかなと思ってた」
「そか」
しばらく周りに耳を傾けて情報収集をした。
新しい情報は入ってこなかったがワインとチーズは堪能できました。
部屋へ戻り日課の錬成上げをしながら、かっちゃん達と雑談をした。
甘い物の話しが中心でした。地球にあったお菓子の話しにえらく喰いついてきた。砂糖やハチミツ、メープルシロップあたりが安く手に入ったら何か作る約束もさせられました。複雑なのは無理ですよ?パンケーキ辺りならできそうかな。
あ、卵を見ていないな、ここらの食材店に期待だ。
明日から本と睨めっこだ。頑張ろう。
ゴンタ達と、なっちゃんは暇になってしまうな。どうしよう。
辺境であれば森で魔物を相手にしていてもらうんだけどなぁ。
ここではそうもいかない。
厩舎でおとなしくしていてもらうかね……。
あまり長くはラマに居られないな。
広い庭付きの拠点が欲しい!普通の家なら買えるだけの蓄えも出来たが、ここでは冒険者として生計を立てられなそうだ。錬成で食べていくか……。安全といえばここは良い条件なんだろうね。
近いうちに、かっちゃん達も含めて相談してみよう。




