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料理

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 翌日の夕方に次の町であるナパリへ入ることができた。

ここも港町だが城壁が一つあるだけでした。

農業も盛んなようで町の周辺は小麦畑が広がっていました。

馬を14頭売らなくてはいけないので、俺だけ先に町へ入り馬車を扱っている店に行きます。

門番の兵士がいい人で、丁寧に馬車の店を教えてくれました。

町の中ではなく城壁外に馬車の店はあるようです。

みんなで馬を連れて移動します。


 城壁沿いに少し進むと牧場がありました。

ここのようです。牧場が馬車の店を運営しているのですね。

かなり広いです。

店に入る。


「こんにちわー」


「いらっしゃい」


「馬を売りたいのですが、買取はしていますか?」


「売るだけでなく買取もしてるよ」


 店のカウンターにいた坊主頭のイカツイおじさんが対応してくれた。

イカツイのは見た目だけで言葉は丁寧です。

15頭のうち1頭は俺の馬にしたので14頭を売る。


「表に14頭連れて生きています。見ていただけますか?」


「けっこういるな。よし行こう」


 表に出ておじさんに馬達を見てもらう。


「ふむ。歳がいってる馬はいないし健康そうだ。14頭で白金貨4枚でどうだ?」


「オッチャン、この子ら若くてこれからずっと働けるで?もうちょい出してんか?」


「ぬ。確かに若い子らだが……ケットシーのあんたに言われたらなぁ。確か馬とも話せるんだよな」


「そうや。従順で働き者やで、この子ら」


「わかったわかった。白金貨5枚で買うよ」


 まいったなぁという感じでかっちゃんと話すおじさん。

そして一頭当たり銀貨2枚ほどの上乗せだ。

相場や商売の経験も俺には足りないから感心してしまう。

かっちゃんがおじさんからお金を受け取り、馬達を引き渡している。

一頭残した子はメスだが一番足回りが頑丈そうな子である。かっちゃんが馬達と話して一番賢い子だとも言っていた。

バクシンオーより小さいが普通の馬としては大きい。

この子も鹿毛で額に楓の葉っぱのような形で白くなっていたのでカエデと言う名前にした。

馬達を売ったおかげで資金が倍以上になった。武器を買って減った分以上の収入だ。


 なっちゃんとバルナバ、アドーレは一緒になって柵から牧場を眺めていた。楽しそうだ。


 俺達は再び門へ向かい町へ入る。町へ入るの時に税金として銀貨1枚づつを徴集されましたね。

国が変われば政治も変わるものだと思いつつ支払いました。


 規模はマレシラと同じか少し大きい町ですが、商人はマレシラほどいないように見受けられます。

中継地っぽいから仕方ないのかな。貿易港と比べるのが間違いか。

ここも夏で暑いが人の肌は白い人が多い。そのせいか美人度だ更に高い気がする。男もイケメンが多いね……。


 門の側にギルドがあるのは他と変わらないようです。

夕方なのでギルドは賑わっています。仕事を終えた人達でしょうね。

かっちゃんと相談してイチルアでは冒険者ギルドの仕事をしないと決めたのでスルーします。


 牧場のおじさんにゴンタ達も同じ部屋で泊まれる宿はないか聞いておいた。

残念ながら一緒に泊まれる宿はないと言われた。

かわりに料理が美味しい宿を教えてくれたよ。

話を聞いた感じではパスタがあるようだ。久しぶりだな。

魚介のパスタがお勧めらしい。期待が高まるね!

入って来た門は南門で、宿は北門のほうにあるらしいので中央通りを馬を引きながら向かう。

町の中で馬に乗って移動していいのは領主か騎士団だけとの事。

中央通りの先には館と城の中間くらいの建物があった。領主の住まいらしい。

この世界に来て初めて城っぽいのを見た。3階建てくらいの石造りで頑丈そうな戦闘用の城に見えた。

城の周りは堀があり跳ね橋で中へ向かうようだ。

俺達は城を眺めながら堀に沿って北門の宿へ向かった。


 春風亭と言う宿に入ることが出来ました。

石と木で作られた落ち着いた感じの宿です。一階は酒場兼食堂ですね。すでに食事をしている人達でいっぱいです。牧場のおじさんが言ってたように人気の店だね。

馬小屋もあり馬達とゴンタ達に入ってもらいます。

ゴンタ達の夕飯は俺が出しますが、馬達の食事は宿にお願いしました。

俺達で一部屋、バルナバ達で一部屋取りました。

荷物を置いた後酒場で集合して夕飯を一緒に食べます。


 10分ほど待たされましたがテーブルに着くことができた。

周りを見るとパスタと焼き魚、サラダにエールかワインはみんな注文している模様。

俺達もマネするか。

店員さんがメニューを持ってきてくれた時に、とりあえずエールを4人分と葡萄ジュースを1人分頼んだ。


「パスタは魚介で塩かトマトが美味いって牧場のおじさんが言ってたよね。周りもそれっぽい」


「うちは魚介パスタの塩と焼き魚にするでー!」


「俺は魚介パスタのトマトにするよ。焼き魚とサラダも注文しよっと」


「私もトシちゃんと同じにするー」


「あらいいわね。私はそれで焼き魚を無しにしようかしら」


「俺は肉だな。燻製肉のニンニクパスタとボアステーキにしよう」


 みんなの注文が決まったのでエールを持ってきてくれた店員さんに頼む。


「それじゃ、乾杯!」


「「「「乾杯」」」」


 俺は一気にエールを飲み干す。くはぁっ!冷えてないが美味い。

サヒラやアレゾルアで飲んだエールより雑味が少なくていい。

麦自体が違うものかも知れないな。

ワインにも期待できそう。

かっちゃんとなっちゃんは両手で素焼きのカップを持って、ちびちび飲んでいる。


「お、来た!待ってました」


 店員さんが料理を並べていく。

木の器と木のフォークで食べるようです。陶器は発達していないのか、こっちに来てまだ見ていない。

土を素焼きにしたカップくらいだ。

釉薬や登り窯の知識はおぼろげにしか覚えていない。残念。


「ワインもくれ」


「うちもワイン欲しい」


「俺達の分も入れて4つ頼むよ」


「はい」


 忙しそうにしている店員さんにワインも注文する。


「いただきます」


 早速サラダから食べ始める。

レタスっぽい葉っぱに玉葱と燻製肉は散らしてある。そしてオリーブオイルかな?いい香りだ。

油に塩が混ぜてあり美味い。単純だがオリーブオイルが野菜の味を引き立ててくれている。玉葱の辛みもいいアクセントだ。

魚介のパスタは貝と白身魚が入っておりトマトを潰して和えてある。そのうえにハーブが散らしてあって彩も華やかだ。

一口分……と思ったが大口な一口になってしまった。

酸味が程よく貝と魚から良い出汁も効いていて美味しい。これもオリーブオイルを使っているね。

日本で似たようなパスタを食べた事があるが、数段上のような気がする。麺自体はそれほどでもないが、魚介の味わいが濃くてトマトとも馴染んでいる。

量も2人分近くあったが、あっという間に食べてしまった。

かっちゃん達も満足そうな表情で麺を啜っている。

味覚は大差ないんだな。少し嬉しくなった。

焼き魚は鱈だろうか塩だけだが十分美味い。

イチルア王国は料理が美味しいという話は本当でした。

嫌な事がすっ飛んで行きます。

追加注文のワインも飲みます。赤ワインですね。

アルコール分が少ない気もしますが美味しいです。渋みも旨みです。

油が落とされていくようだ。

バルナバが食べていたニンニクパスタも美味そうでしたね。機会があったら頼んでみよう。


「あー、美味かった」


「やな。これは当たりやで」


「美味しいのー」


「私達の国の食べ物が喜んでもらえて嬉しいわ」


「そうだな。この味はよそでは出せないよな!」


 アドーレとバルナバは鼻高々であった。そういうだけの料理だったので文句はない。

かっちゃんとなっちゃんも大満足といった表情をしている。俺もそうなんだろうね。

商人っぽい人達がテーブル待ちをしていたので部屋へ戻った。

風呂もあったので入りに行った。

旅の間は布で拭うだけだから嬉しい。

浴槽は小さかったが人がいなかったので問題ない。

風呂場に石鹸があるわけではなかったので、今度買っておいて持参しよう。

頭からお湯を掛けて気づいたが髪も結構伸びてきているな。かっちゃんに頼んで切ってもらおうかな。なっちゃんも切りたがるかもだが……。

酒も入っていたのでいい気分で部屋に戻った。

かっちゃんとなっちゃんも風呂から戻っていなかった。


 錬成上げでもしてるか。

鉄、布と順番にやっていく。

鉄で馬に着ける鞄の金具を作っていく。皮だけだとイマイチ使い勝手が悪かったので気になっていたからな。

布では何を作ろうかな?頭防具が狼ってのもなんだから改良するかね。

ナイトバイパーの皮は火にも水にも強く斬撃にも強い代物なので、これを基本とする。

テンガロンハットみたいな帽子にしよう。色はベージュしかないけど黒で太陽の光を吸収しまくって暑くなるよりいいか。

つばの部分もナイトバイパーの皮を基礎にして布で覆っていく。

後頭部にもナイトバイパーの皮を垂らして守る。

中々の出来栄え。

胴鎧はむき出しのナイトバイパーの皮鎧だから、こっちも改良するか。性能的には殴られたりの衝撃は通っていまうがいい防具である。

チョッキ風に皮鎧を布で覆っていく。まぁ少しは見れる格好になったかな。

足元はカーゴパンツに安全靴で脛当てをナイトバイパーの皮で別に作ってある。

これはいじらなくていいな。

これらの防具の他に腰の後ろに大型のナイフ、左の腰にミスリルのブロードソードと鞘、右の腰に巾着サイズのマジックバッグが装備される。左手にアダマンタイトのシールドで完成。

蛮族からカウボーイっぽくなった気がする。


 一人ファッションショーをしていたら、かっちゃん達が風呂から帰って来た。


「防具整えたんやね」


「前の方が暴れん坊っぽくて良かったー」


「えぇぇっ!?」


 かっちゃんは好意的だが、なっちゃんにはダメ出しされたよ……。

なっちゃんのセンスは判らん。エルフが特別なのか!?

なっちゃんに狼帽子をせがまれたのでサイズ調整をして作ったやった。

すごく喜ばれたが複雑な気分。

腰回りも毛皮で覆うようにしてやった。やけくそである。

更に喜ばれた。

蛮族の称号はなっちゃんに譲ったよ。

町にいる間はエルフの耳を飛行帽で隠していたので、狼帽子でも構わない。

美人さんは何を着ても様になるね。

ワイルドな美女が出来上がった。

タウロスハンマーも持たせたいな。

そういやなっちゃんは魔法が使えるようになったけど、杖とか持たなくていいのかな?聞いてみよう。


「かっちゃん、なっちゃんは魔法が使えるようになったけど杖とか持たなくてもいいの?」


「杖かぁ。あった方がマナからオドへの変換量が増えるけど、エルフは魔法を使っても簡単にはオドが減らんからなぁ」


「なるほど。あんまり意味がないのか」


「そうやねん。いい杖があったら装備させるけど、急ぐ必要はあらへん」


「そうか」


 エルフは規格外らしい。


「明日には首都のラマに着くんだよね?」


「そうやで」


「図書館で歴史や魔法に関して調べたいね」


「ラマならいい情報があるかもな。昔から栄えとるとこやし」


「その後はバッキン教国行きでいいかな?」


「そやね。イチルア王国には長居せんほうがええやろ」


「料理が気になるけど、調味料と材料を買えばいいか」


「そこは任せるで」


「武器やマジックアイテムはココで売ったほうがいいかな?」


「んー」


 かっちゃんは少し考え込んだ。


「ラマでマジックアイテムの鑑定だけして売買はバッキン教国にしたほうがええかもな」


「理由を聞いても?」


「うちらの足取りが賊に追われるかもしれんからな。なるべく情報は出さん方がええやろ思てな」


「解った。マジックアイテムの鑑定だけにしておこうか」


「はいな」


 賊か……あの場から逃げたヤツがいたとはな。厄介の種を逃がしてしまったね。

なんたら言うクランと貴族に注意か。貴族なんて早々出会う機会もないだろうが、クランのほうは関わってきそうだな。

心構えだけでもしておくか。


 首都ラマでさっさと調べものを済ませたいものです。

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