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早々

43

 

「やっぱ魔導船は速いね。普通の帆船じゃこうはいかなかったんでしょ?」


「倍以上違うかなぁ」


わう


「わたしも風で動かせるよっ」


「なっちゃんには今度見せてもらうね」


「うん」


 なっちゃんは出来ることが増えたせいか積極的になって来たな。子供らしくていいね。

俺達はイチルア王国の貿易港であるマレシラへ到着していた。

アレゾルアからは内海しか通らないので安全らしい。

安全と言うのは深い所が少なく大きな海の魔物が生息していない事とイチルアは海軍が強いので海賊などもいないからだ。

貿易港と言うだけあって船が多い。


「あの国旗はどこの船?」


「あれはギルサ王国やね、あっちの国旗はエズペト王国や。トレコ帝国も来とるな」


「内海に接している国って多いんだね」


「陸路より安全やから海運に力を入れとる国は多いで」


「肌の色や髪の色が微妙に違うね」


「国をまたいで活動している商人もいるからなぁ」


 黒っぽい髪や赤銅色の肌をした人たちも見受けられる。

服装も目新しい物がある。

ダボッとして肌に密着させない服や、ターバンを巻いている人などがいた。

変わった槍を持っている冒険者もいるね。

十文字槍みたいなやつだ。

これは米とかもあるやもしれん。楽しみだ。

今までの港以上の賑わいですな。


「いろんな人がいるから活発な売買がされているね」


「珍品は高い値で売れるから、ウハウハやろね」


「あの辺は露店だらけだね、見て行こうぜ」


「行こう行こう」


わう


「ええけど、暗くなる前に宿を取りに行くんよ?」


「おう」


 なっちゃんもキョロキョロして興奮気味だ。俺も人の事は言えないけどさ。かっちゃんに釘を刺される。


 俺達は露店を見て回る。

掘り出し物はないかなー。

俺に声を掛けて来たヤツにあったのはそうしていた時だった。


「あんたら冒険者か?」


「ん?そうだけど」


「ならギルド活動料を払いな。一人銀貨一枚だ」


「あ?なんだそれ」


 冒険者っぽいヤツら6人組の男のうちの一人がそう言ってきた。


「なんだここは初めてかよ。イチルアのギルドで仕事がしたけりゃ金を払う決まりになってるんだよ」


 ニヤニヤしながら髭面を歪ませて言う。


「かっちゃん、そんなのあるの?」


「あるわけないやろ。アホらし」


 かっちゃんは呆れた顔で言う。


「あるわけないそうだが?なんか勘違いしてんじゃないのか」


「ウダウダ行ってねーで黙って払えばいいんだよっ!」


「タカリか」


「アホやね」


 相手にしていられないので横を通り過ぎる。


「てめぇ!」


 俺達の行く手を遮る6人組。

野次馬も集まって来た。暇人多いな。


「なんだケンカでもしてーのか?てめぇらだけでやってろよ」


「なんだとっ!」


「ここにおわす御方を、どなたと心得る。ランク1にもっとも近いとされるカッツォ様であるぞ、控えおろう!」


 虎の威を借りちゃうぜ。アホの相手はしてらんない。

効果はあったようで動揺しているアホども。

ケットシーに絡むのが間違いなんだよ。

なんか仲間内で小声で相談してやがる。

横にいるかっちゃんにジト目で見られているが気にしない。


「お前ら、どこのもんだ名乗って行けよ」


「いや……俺らは」


「言えよ当然冒険者ギルドの職員なんだろうな?」


「うるせぇっ!」


 髭面を先頭に野次馬達を掻き分けて逃げていった。ケンカかとワクワクしていた野次馬の皆さんも興味を失ったのか散っていく。


「これはあれかな?なんたら言うクランがやってる事かね」


「オクタが言っとったヤツらか」


わぅ

わふ


 見ろミナモですら呆れてるじゃないか。

弱そうなヤツらだったし蹴散らしても良かったが、クランとかに出て来られても面倒だ。

周りを見ると一緒の船に乗って来た冒険者達にも同じような事をしているヤツらがいるな。

墓場ダンジョンにでも行けばいいのに。

俺は理不尽な事が嫌いなのでイライラしてるようだ。

なっちゃんを怖がらせちゃったかな?と見てみたら、ギャフンと言わせればいいのに、とか言ってたよ。

ギャフンて、あんた……。

以外と血の気多いのね、逆に頭が冷えたよ。


「さっさとココを離れたほうがええかもな」


「申し訳ない」


「ええんや、アホの相手はせんでええ」


「ああいうヤツらはしつこいからな。いっそ町もすぐに出ようか?」


「それもアリやね。この時間やと馬車は動かんやろから、馬を買っていくかやな」


「馬かー、大きい体につぶらな瞳で可愛いよね」


「そうやね。気性の落ち着いたええ子が多いんよ」


「いくらくらいするの?」


「普通の馬なら金貨5枚、ワイルドホースなら倍って所やね」


「ワイルドホースってテイマーがいないと扱えないんじゃないの?」


「騎乗用に大人しい子が調教されてるから、一般人でも扱えるで」


「ほほー。ウナイさんとこのワイルドホースもいい子だったしなぁ」


 モラテコから移動に使った馬車を思い出す。


「どうしよか?」


「俺は馬に乗ったことないよ?かっちゃんは?」


「うちは乗れるけど普通の乗馬やないからなぁ。直接馬に話して動いてもらうんよ」


「ああ、楽そうね」


「トシはゴンタ達と走っても馬に着いてこれるやろ?なっちゃんとうちが馬なら移動速度は上がるで」


「そうだね、そうしようか。休憩のときとかでいいから、俺も馬に乗せてよ。乗馬してみたい」


「ええで、頼んだるわ」


「よし、買いに行こう。そして慌ただしいけど町も出ちゃおう」


「はいな」


わう

わふ


「はーい」


 ゴンタ達は町が好きではないので嬉しそうだ。


 馬車を出している店へ行き、馬の購入がしたい旨を伝えた。

最悪の事態でも3人が乗れるワイルドホースを買った。

鹿毛で若いらしいオスだ体高は2mを近い乗るのが大変そう。

足もぶっとく丈夫そうです。

餌はテキトーに草を食べさせておけばいいらしい。

水と塩はいるけども。

値段は白金貨1枚でした。

乗馬道具一式は半額にしてくれた。

錬成しようと思ったが仕組みがうろ覚えだったので、やめておいた。

陰で馬に装備させる革袋を2つ作って装備させた。

食料や水を分散させておく。

タウロスハンマーと新しい盾も持っててもらうか。

鞘に入ったミスリルのブロードソードと大型ナイフだけあればいいだろう。


 ワイルドホースに乗るのは、かっちゃんとなっちゃんだ。

かっちゃんを抱えるようになっちゃんが乗る。

なんだか微笑ましい絵面ですな。

かっちゃんにワイルドホースにも名前を付けてやれと言われたので、バクシンオーと名付けておいた。

なっちゃんは早々に、バクちゃんと愛称で呼んでいる。

ゴンタとバクシンオーは、なにやらお互い興味深そうに匂いを嗅ぎあっている、ケンカにはならなそうで良かった。


「建物の陰からこっちを伺っているヤツらがいるね。さっきのヤツらかな」


「めんどいのぅ」


 出発の準備をしていたら気配に気づいた。

馬で振り切るか。


「かっちゃんは、なっちゃんに馬の乗り方を教えてやってよ。俺は走るからさ」


「はいな」


 少し暗くなってきたが港町を出て海沿いの街道を東へ進む。

道は整備されているようで、デコボコは少なく轍も浅い。


 後ろでなにやら騒いでいたヤツらがいた。

人数も増えていたかも。髭面もいたように思う、俺達に絡んで来たヤツらっぽい。


 あばよ、アホども。


 なんとかバクシンオーには着いていける。俺も人外っぽいね、そう思いながら街道を爆走する。

途中でゴンタ達とバクシンオーの競争みたいになってしまい、少し離されてしまう。

盾を持っていたら着いていくのは無理だったかも。

かっちゃんが窘めてくれたようで、少しペースが落ちた。

良かった、彼らの全力にはとてもじゃないが着いていけないよ……。


「今んとこ後ろからの追撃はなさそうやね」


「うん、食材とか楽しみにしていたのにアイツラめ」


「たしかにマレシアは香辛料の類が豊富やったはず」


「おのれー髭面めー」


「この国ではギルドの仕事せんようにしよか?」


「そうだね、蓄えもあるし」


「次の町へ着いたら美味しい物食べようや」


「お菓子がいい!」


「おう!食うよーがっつり食うよー」


「にひひ」


わう


「ゴンタは肉がええゆうとるで」


「おう、菓子も肉もがっつり行くぞ」


わうー


「おー」


 少し速度が落ちたので話す余裕も出た。この国は美味しい物が多いらしいので楽しみだ。


 そして街道を進む俺達の前に魔物は現れなかった。

森や山も見えるが穏やかなものである。

魔物がほぼ駆逐されているってのは本当かもしれない。


 バクシンオーの足は速いので、結構な距離を移動できたと思う。

完全に暗くなってしまう前に森へ入り野営の準備に取り掛かった。

夜も暑いので火はいらないかな、光のマジックアイテムもカビーノ達がくれたのでそれを使う。

木の器をゴンタ、ミナモ、バクシンオーに出してやり水を入れる。たくさんお飲みー。

それからバクシンオーの汗を拭う用のタオルっぽいものを錬成し、なっちゃんと一緒に拭ってやる。

ちゃんと馬具もはずしてやったよ。

なっちゃんは何でも楽しそうにやるなぁ、俺もなんだか嬉しくなる。

俺達もパンとジャーキーを食べた。野菜は買っておきたかったな、くそぅ。

そして俺とかっちゃんは少しだけワインを飲んだ。アレゾルアでカビーノ達との宴会の残り物だ。渋みがけっこう強いが、酒といえばエールばっかりだったので新鮮味がある。そういや葡萄は見てないがあるんだな。


 魔物がいないなら寝ずの番はいらないか。もっともゴンタがいるから元々必要ないかも。

ダンジョンでは気が抜けなくてきつかったな。

夜とはいえ大空の下ってのはいいもんだ。

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