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猫さん?

4


休憩とステータス考察した後、再び出発。

もくもくと歩く。歩く。

ステータスとかスキルとかゲームっぽいよね。

神様とかが作った仕組みなんだろうか?

神様いるのか……。

俺らがこっちに来たのも神様の仕業?

とか考えながら歩く。


ゴンタは木や草の匂いをくんくんしながら先を進んでくれている。

たまに狼の鳴き声みたいのに反応してるが問題なさそう。


「あと1時間くらい歩いたら昼飯にしよー」


わうー


ご飯と聞いて嬉しそうだ。

やる気が溢れている。

歩く。


わうう


ゴンタが警戒の唸り声をあげた。

俺も風呂敷を下ろしバックパックを背負い直し警戒する。


「なんやーあんちゃんら襲わんといてー」


わう


なんか気の抜けた声を掛けられた。

木の陰から声の主が出て来た。


長靴を履いた4頭身くらいで薄茶色の猫が立って歩いている!?

執事が着ているような服に羽帽子もかぶっている。

そういや言葉も通じている……。

テンプレの言語能力だろうか……。


お互い警戒して距離を取ったまま話し始める。


「あんちゃんらこんなところで何しとるん?」


「いや、こっちもそれがいいたい」


わう


「うちは旅の途中やんな」


「一人でかい?」


「そうや、あんちゃんらは?」


「俺たちは……」


どうしたもんかなと考えながら話す。

言葉が通じて話しかけてくる相手だし、ここは警戒を緩めて対応するか。


「俺たちは異世界から落ちて来て、訳解らんながらも生きていこうと足掻いている2人だよ」


わう


「異世界…。異世界ってあれか違う理で動いてる別の場所ってやつやな?」


「すげーなあんた、話し通じてる」


わう


「そういう人らが居たってのは聞いたことがあるやんな」


「俺たち以外にも居たのか……」


わぅ


「普通の人族と犬に見える」


こっちにも人いるんだな。

希望が持てるな。


「あなたは話しも通じるし時間があるのならいろいろ聞きたい事があるんだが、いいだろうか?」


猫さんは少し考えてるようだったが了解してくれた。


「ちょうど昼飯にするとこだったんだ、一緒に食べながら話しをしよう」


「おーそらええね」


わうー


装備を置いて火を起こし、また肉の串焼きを作る。

相手の味覚もわからないので一応薄目の味付けにしておく。


「肉と木苺くらいしかないけど大丈夫かい?」


「だいじょぶだいじょぶ」


猫さんが荷物を置きながら手をひらひらさせながら軽く返事をしてくる。

こちらが警戒を緩めたのが解ったのか距離も近い。

といっても4mくらい離れているけど。

ゴンタは俺の側で座っている。


「俺の名前はサトウ・トシオ、この子はゴンタっていいます、よろしくです」


わう


「こらご丁寧に、あんがとさん。うちはカッツォ・ブーシー言います」


ぶふっ

カッツォ・ブーシー……かつおぶしじゃねーか!猫さん大好きかよ!


「どないしました?」


「すみません、ちょっと咳がでました。昨日こっちの世界に落ちてきた所が海だったんです。いきなり水泳でした、濡れたのがよくなかったのかもしれません。」


「あんじょーせなあかんでぇ」


「はい。ちなみにあなたは猫の獣人なのでしょうか?」


「あーちゃうでーケットシーや。まぁ彼らとも仲良うさせてっもらっとりま」


「そうでしたか。俺達の世界では獣人も妖精もいないのです」


「ほーそうなんか、人族だけか」


「そうですね、話したり物を使える生物といえば人間くらいです」


わぅ


「あんさんも話せるやんね?」


わう


「ゴンタの言うことが解るのですか?」


「もちろんや、うちらが話せない相手なんぞ魔物か魔獣くらいや」


「それは楽しそうで便利そうだ。それじゃ昼飯盛り付けるのでゴンタと話していてくださいね」


「はいな」


わう


ああ、やはり魔物や魔獣がいるのだな。

狼もそうだったんだろうな。


こっそり用意した追加の皿も並べて焼肉と木苺を盛り、水のはいった木のコップも並べる。

さて初対面の相手だし俺が配っても困るだろうな……。


「カッツォ・ブーシーさん、お好きな器をお取りください」


「気ぃきかせてもろたね」


「いえいえ」


「それじゃ、お言葉に甘えて」


カッツォ・ブーシーさんは皿とコップを持って、さっきよりは近い所に座る。

俺とゴンタもそれぞれの前に配膳する。ゴンタには水を飲み皿に移す。

座って声を掛ける。


「食べましょう。いただきます」


わう


「いただきますか、ええ言葉やな。いただきます」


食材にも作った人にも感謝するってのを理解してくれたようだ。

頭の回転の早い人だな。猫さんだけど。


もぐもぐ

ああ、肉はいいな。なんか身になってるって感じがする。

もぐもぐ

水もごきゅごきゅ

塩コショウだけのシンプルな料理だが肉はこれで十分だ。

あと調味料って素晴らしい。


「胡椒も使ってるやん、うまいなー」


わう


「ゴンタと探索して見つけたんですよ。運が良かった。落っこちてきたけども」


わぅ


「運がええのか悪いのか難しいとこやね」


お互い笑いとばす。

もぐもぐ

ごきゅごきゅ

ごっつぉさん。


「カッツォ・ブーシーさんって男ですか?女ですか?年齢もまったく解りません」


「カッツォでええよ」


「じゃあ俺の事もトシオかトシあたりで呼んでください」


「トシでいこか。話し方も普通でええよ」


固い話し方が普通じゃないってばれてーら。

まぁ、ありがたい。


「ばれてたか。初対面なんで恰好付けてた」


「にひひ。ばればれや」


わう


「なんだよーゴンタまでー」


「なんや解っとるやん。ゴンタの言うこと」


わう


「ああ、そんな気がしただけ」


「さよか。ちなみにさっきの質問やが、うちはメスで100歳をいくつか超えたとこや」


「そっかー」


わうー


「なんやねん、こんな時どんな顔したらええか解らんみたいな顔は」


「だってさーケットシーは初めて見たからメスって判断できないし、人間は80くらいで死ぬし」


わう


「ほんまに異世界の住人やったんや」


「ん?」


「ケットシーは皆、旅人ばっかや。辺境の村でも1度くらいは見たことあるもんや。あとこっちの人族の寿命は100歳を超えるで」


「まじで!?」


「まじや。そうはいっても赤ん坊の頃によう死ぬし魔物にも襲われてもよう死ぬしな」


「むぅ」


わぅ


「そういうトシの歳は20歳超えたあたりやろ?」


「だじゃれかよ。39歳だよ」


「んーこっちの人族とは違うんかなー?どう見てもそんな歳には見えへん」


「俺の世界では童顔な人が多いって国で生まれたからね」


「ほほー、そんな事もあるんやね」


「にひひ、あるんだよ」


皆食べ終わったので、食器を海水で洗い流してから乾かしておく。


「カッツォ、この世界の事教えて欲しい。人のいるとこの話や魔物の話とかなんでもいいからさ」


わう


「どっから話したらええもんかな。うーん、まずこの世界は世界神が作ったといわれるキノーガルドって世界や」


「神様いるの!?」


「なんや、あんたんとこはおらへんかったんか」


「うーん、だれも会ったことはないんじゃないかな」


「神託とかなかったん?」


「お話の上でならあるんだろうけど、俺の周りでは聞いたことないな。カッツォは聞けるの?」


「だれでもってわけにはいかんやろ。使徒や巫女は聞けるで」


「神の仕える人ってこと?」


「せやで。変わった力が使えたり神様の声が聞こえるらしいで」


「そういう人はいっぱいいるの?」


「1神に付き使徒が1人、巫女が1人いるっていう話やな」


「え!?神様ってたくさんいるの!?」


「そらーいるがな、世界神の他にも戦闘神や学問神、鍛冶神に商売神など有名なとこだけでも13神は間違いなくいるで」


「すげーな…」


わぅ


「他にもバッキン教国って国で崇められとる救済神や、山の神様、海の神様、川の神様などたくさんいるみたいや」


「俺達の世界では地震や津波は山の神様や海の神様が怒って起こしているって、昔は言われていたな」


「なるほど、よくわからない現象は神様のせいにしとけってとこか。どうやって現象が起きているか判明したっちゅうところやな」


「すごい、よくわかったな。昔と違ってそのあたりは解明されているよ。ケットシーってのは全員、頭の回転が早いのかい?」


「うーん、だいたい好奇心が強くて未知のものを求めて旅にでちゃうような種族やね。うちは中でも頭のできがええやろ」


わう


「なんもわからん俺達がカッツォに会えたのは幸運ってとこだな。ひひひ」


「せやで。もっと感謝してもええんやで?にひひ」


わうー


なんだか結構打ち解けてきてるんじゃないかな。


「で話し戻すけど、世界神がこの世界作ったんや。生き物もな。」


「ふむ。ステータスとかもそうなのかな?」


「せやね。ってステータスの事知ってたんかい」


「俺達の世界にはファンタジー小説っていう架空の話があって、そこにはステータスとか魔法とかケットシーやエルフとかが出てくる」


「なんでいないもんわかんねん!」


「そういわれてもなぁ……。想像力豊かなやつが書いたとしか…」


わぅ


「いやいや豊すぎるやろ。無理ありすぎや」


「そういわれればそうだな」


「だれかがそっちに伝えたとしか考えられへん」


「む、もしかしてこっちに落ちてきた人が無事に元の世界に帰れた……?とか」


「それかこっちのもんがそっちの世界に迷い込んだか、そっちにも神様がおるけど秘密にされとるとか」


「確定はできないけど可能性として全てありそうだ」


「おもろい!」


「ああ、俺も張本人じゃなけりゃ興味惹かれるぜ」


わう


「うちの好奇心にビンビンきとるでー!」


「お、おう。俺達の手助けしてくれれば、その好奇心は満たされるかもな。帰り方も俺達の目標の一つだからな」


わう


「ええでー。うちはこの大森林の奥になにがあるか見て回っていたんやけど、いまんとこ気になるもんはなかったしな。協力したるわ」


「ああ、頼むよ。こっちの事は解らん事ばかりだし、助かる」


わうー


「まかしとき!キノーガルドマスターにしたるわ!」」


「お、おう」


わぅ


こっちの世界の案内人ゲット。

最初にあった人がこいつで良かった。

今の状況じゃ、どんな人にでも頼らないと先に進めないからな。


「さっきの話で一番気になる所は魔法なんですけど、あるんですか?魔法」


「なんや微妙なしゃべり方しおって。あるでー魔法ごっつあるでー」


わうー


「すげー!魔法は本当にあったんだ!」


わうー


「そっちには話しの中にしかないんやったな。よっしゃ見せたろ」


「わー」


拍手ぱちぱち


「土の精霊よ守りの壁を作りたまえ!アースウォール!」


カッツォの詠唱とともに、カッツォの1mくらい先に土の壁が出来上がった!


「うぉぉぉぉ!すげぇ!まじ魔法!」


わうー


近くに行って壁を見た。厚さ2mくらいで高さ4mくらい、幅も4mくらいの土の壁が出来ていた。


「軽くもんや。どないや」


「すごいっす!カッツォ先生まじ先生」


わう


「意味は解らんが褒められているようやな。にひひ」


「魔法って精霊の力で発動してるの?」


「せや、力ある言葉とともに結果を想像して精霊に魔力を渡すんが一般的や」


「力ある言葉ってのはさっきの詠唱だよね。精霊に魔力を渡すってのはどういう事?」


「魔力はどんな生物でも持っとる力や、魔力単体ではできる事は多くないねん。ある程度魔力を持っとれば身に精霊を宿し魔力を精霊に与える事によって魔法って現象を引き起こせるんや」


「カッツォ先生!俺にも精霊を宿せるのでしょうか?」


わう


「んー、たぶん無理」


「無理なの!?なんで!?」


わうー


「あんたら魔力少なすぎんねん。っていうかありえへん魔力がまったく感じられへん……。そんな生物が存在するなんて異世界ってすごいんやなー」


「なんですと…夢も希望もありゃしねぇ……」


わぅ……


「あんたらの世界には魔法も魔力もないんやったな。それなら仕方ないんと違う?」


「そうなんだけどさぁ、ファンタジー小説では異世界でとてつもない魔力を手に入れて俺つえええってすんのが常識だったんだよ……」


「なんやそれ、その常識はどないやねん」


「ちなみに魔力で出来る事ってどんな事?」


「多ければ精霊を宿して、地水火風それぞれの属性魔法が使えるんや。あと種族特有の魔法やギフト魔法も魔力が多いもんが持ってたりすんのや」


「種族特有の魔法やギフト魔法って何?」


「ケットシーでいえば結界魔法が種族魔法やね。その種族ならだいたい使える魔法や。個人くらいしか覆えんけど害になると思っとるもん全て防いでくれる、だからケットシーは一人でも旅にでれるんや。ギフト魔法はステータスの職業のしたに出てくる魔法の事や。空間魔法や浄化魔法なんかがそれやな」


「結界魔法!なにそれすごい!」


わうー


「しゃーないやっちゃなー。我を害する物をはじき給え!ブレーコフ!」



結界魔法か!?一瞬カッツォの周囲が歪んで見えた。



「うちに近寄ってみぃ」


「おう」


わう


ぬ、見えない壁があるな。まじ魔法!

ゴンタもはじかれてる。


「どやっ、すごいやろ」


「すげーっす、カッツォ先生天才!」


わうー


「ほめすぎやがな」


カッツォが身をくねくねして照れてる。猫さんかわええ。


「種族魔法ってのは、どの種族も持っているの?」


「いいやケットシー以外で持っているのが解っているのは、エルフの草木魔法とセイレーンの歌唱魔法、ラミアの石化魔法ぐらいやね」


「なんか聞くだけでわくわくしてくるな」


わう


「話を戻すけど魔力が少ないもんは手に魔力を集中させてウォーターランスとかを相殺あたりがせいいいっぱいやろね」


「ほう、魔力防御ですか。魔力をそのまま飛ばして攻撃とかはできないの?」


「体内にある魔力はオド、体外にある魔力はマナっていうんやけど、魔力を外に出そう思てもマナになって散ってしまうねん。精霊に具現化してもらうしかないやろなぁ」


「ふむむ。具現化して普通ではありえない現象を引き起こすってのが魔の法則って事ですか?」


「トシ理解早いなぁ。そうそれこそが魔法って事や」


「ちなみに精霊を宿している人って何人に1人くらいいるもの?」


「ケットシーやエルフなんかは全員が宿しとるな。人族やと、うーん1000人に1人くらいやろか。2属性持ちは10000人に1人くらいやね」


「2属性?」


「水と火、地と風はそれぞれ反属性で一緒に持てへんねん」


「なるほど。光属性や闇属性ってのもあったり?」


「それもファンタジー小説いうのんからか?あたりや。基本4属性以外に光と闇の2属性もあるんや、これも反属性やね」


「ってことは種族魔法やギフト魔法を除くと3属性持ちが最大保持数?」


「そうや。3属性持ちとなると、今の時代にはおらへんのと違うかな」


「ほー」


わう


「そんなん持ってんのは勇者か魔王くらいやろ」


「いるの!?勇者や魔王!?」


「昔はいたみたいやね」


「とってもファンタジー」


わう


「今は魔物や魔獣はおっても魔王はいてへん」


「そっか。良かった」


わう


「魔物や魔獣も魔法使ってくるの?」


「使ってくるやつらもおるね」


「うへ、厄介な」


わぅ


「知能がある程度ないと攻撃魔法は使ってきぃひん」


「使ってくるようなやつらは、頭もまわるかもってことね待ち伏せとか罠とか」


わぅ


「わかっとるやないの」


「こわいねぇ……」


わぅ……


「魔法に対して俺達は防御すらできないんだな」


「そやね」


わぅ


「きっちり回避していくしかないか、広範囲に渡る攻撃魔法とかってあるの?」


「あるね」


わぅ


「うへ、そいつぁ厳しー」


「そのうちいいことあるやろ」


「ひっ、てきとー」


わうー


「しゃーないやろ。どないせぇっちゅうねん」


「体を鍛えて、魔物を倒して肉体的にだけでも強くなっとかないといかんのぅ」


わう


「お、それは解ってるんか」


「ああ、こっち来てすぐステータスに気付いたからな」


「ファンタジー小説ってのは侮れんね……」


わぅ……


「ステータスの職業の下にあるのがギフト魔法なのか?そこに書いてあるんだけど、魔力なくても使えるんですが……?」


「ほぅ!トシもギフト持ちか。そこはギフトが書かれているが、それは魔法とはかぎらへん」


「そっか」


わう


「神様から授けられた特殊な能力がギフトと呼ばれてんねん。それは同じ能力は少人数しか持ってへん。ものによっては1人だけやな」


「ふむふむ、なるほど。ユニークかレアかってとこか。でカッツォが持っているギフトは何かってのは聞いてもいい事?」


「ギフトについては、あんまり言いふらさん方がええで厄介ごとの種やし。うちのはレアやけど解っても対処難しいやろし、あんたらにはええか教えたる」


「おぉ」


わう


「危機察知4や」


「おー!なんかとても便利そうな響き」


わうー


「聞いた通りやね。自分の身に危険が迫ると警告の鐘が頭の中に聞こえるねん。便利やでー」


「こんな世界じゃ、素晴らしい能力だねぇ」


わう

わうわう


「ほー、ゴンタもギフト持ちなんか!異世界人ってのはすごいんやねぇ」


「おー!持ってましたかゴンタ先生」


わう


「また先生かいな……あんたの立ち位置はどこやねん」


「まぁいいじゃん。でゴンタのギフトってなに?」


わうわう


「ほほぅ!ゴンタは遠吠え3やって」


「遠吠え?犬だし当たり前じゃないの?」


わうわう


「なんでも、瘴気を払う力がある声を出せるらしいで」


わうわう


「下級不死者を成仏させ、中級不死者も追い払えるやと!?すごいやん!あと格下の生物を威嚇で恐慌状態にできるやてー!」


「なにそれ…どこの主人公だよ……。いや大事な仲間だからいい

「威嚇は全方位やし味方にも影響がでそう?やってさ」


「なるほど。使いどころ考えないとだねぇ」


わう


「でもすごいぞゴンタ先生。戦闘はお任せだね!」


わぅ


「それはどうだろう言うてるで」


「すみません、あっしも頑張りやす」


わう


「あんたらおもろいなぁ、これからが楽しみになってきたでー」


「俺もだぜ!」


わうー


おらもわくわくしてきたぞ。


わうわう


「トシのギフトをうちに教えないのかやって」


「カッツォならいいか。錬成1ってのが書いてある。非生物の分離と合成で素材が作れる」


「試したんやろ?何ができるん?」


「海水から水と塩が作れた。あと倒した狼みたいなのから毛皮の風呂敷とジャーキーが作れたね」


「……なんやそれ」


「って言われてもなー」


わう


「トシのギフトすごすぎるやん!すごすぎてイカサマくさいでぇ!」


「そういわれるとそうかも。戦闘の役には立たなそうだけど」


「それを差し引いてもすごいで!どっかの都市に入れたら一生暮らしていけるで!」


わう


「そうなんだろうけど今の俺達には、やる事が多くて一つ所には籠ってらんねぇ」


わう


「なるほど。今は錬成1やけど数字が上がればできることが増えるはずやで」


「この数字は最大いくつ?」


「他のギフトでは過去に5まで確認されとる」


「5段階か。カッツォすごいじゃん!」


「100年も生きとるしな、外にも出とるし上がる要素はばっちりや」


わう


「使えば使うほど数字があがるって事か」


「せやね。うちのは意識せんでも上がるしな。あんたらのギフトはそうもいかんやろけど」


わぅ


「確かに。俺達のはパッシブじゃなくてアクティブだもんな」


「1が初級者、2が中級者、3が上級者、4が達人級、5で世界級って言われとるな」


「ほほー。ゴンタの遠吠えは向うの世界からの引継ぎで数字が高いんだろうな」


わう


「犬は吠えるもんやしな。ってゴンタは犬なんやろか…。そもそも普通に会話が成り立つし、ギフト持っとるし……」


わうわう


「職業やのうて種族っぽいのが書いてあるやって」


わうわう


「オーバードッグ……超人ならぬ超犬かいな!よーわからんがすごいんやね」


わう


異世界言語補正には突っ込まない。

突っ込んでなるものか。


「ゴンタは職業ないのか……ニーいやなんでもなかよ」


わう


ゴンタにジッと見られた。



「ゴンタ先生!名前の下の数字はいくつ?」


わう


「71やってさ、肉体強度だけで71なんてすごいなぁ」


わうわう


「えっ!?昨日こっちに来た時は62だった?なんでマッドウルフ2匹倒したくらいで9も数字あがるん!?」


「俺は33だったのが1匹倒して38になったよ…完全にゴンタに負けてる……」


「いやいや33からマッドウルフ1匹で38までなんて上がらへんから!?」


「そういわれましても…ねぇゴンタさん」


わぅ


「あんなぁ30くらいやとマッドウルフ5匹倒して1上がるかってとこやでホンマ」


「ふむ。まぁ俺達はこっちの普通には当てはまらないんだろう。上がりやすい性質なのか、1からスタートにボーナス掛ってるとかなんだろうね」


「そんな冷静に……それもファンタジー小説かいな…うちも読んでみたなったわ」


わぅ


「カッツォの数字を聞いても?」


「ええよ。112や」


「高いな」


わう


「そんなに強そうに見えないぞ」


わう


「ああ、それはなぁ魔力も加味されてんねん。うちの場合の数字はほとんどが魔力値やねん」


「なるほど。それなら納得だ」


わう


「人類で一番高い数字ってどのくらい?」


「どこまで人類と見做すかにもよるけど、エルフで400近い数字を聞いた事があるねぇ」


「エルフの魔力ってのはすごそうね」


「ケットシーも高いんだが、エルフは桁違いやね」


わう


「ちなみにドラゴンの大人で5000前後や」


「ドラゴンいるの!?」


わう


「いるね。山からは滅多に降りてきぃひんから大丈夫や」


「戦うかどうかは別として見てみたい!」


わうー


「機会があったらねぇ」


うぉードラゴンいるのかー!

どきどき

わくわく

楽しみだ。


ステータス考察も終わった事だし、俺の錬成をカッツォにも見てもらっとくか。


「さてステータス考察も終わったし、俺の錬成見るかい?」


「見るでー、ごっつ見るでー」


わう


連れ立って海に歩いて行く。

14時か。

まだ暑い時間帯だな。

空は青くて雲も近い。

夏だねぇ。


「錬成」


「おぉ!」


わう


「ほれ自分で舐めて確認してみ?」


カッツォの手に塩を乗せる。

ぺろ


「ホンマに塩や」


「だろ?」


わう


「次は水出すよ。錬成」


手の平を下にして手の平側から蛇口の如く水を垂れ流す。

ゴンタが水を飲んでいる。

喉乾いていたか。

カッツォも空いた手で飲んでいる。


「水やね」


「うむ。水だ」


わう


「なんや驚くのに疲れたで……」


「今後の俺達の役に立つんだからいいじゃん」


わう


「木陰に戻って今後の行動を決めようかね」


「はいよ」


わう


昨日作っていなかった、にがりも将来のために作っておく。

豆富くいたいよね?ひひひ

海って素晴らしい。

さすが母上様。

お元気ですか。

なんちて。


「俺達は町とか人のいるとこ目指して移動してたんだ」


「ふむ。あっちから来たんやね」


わう


俺達が来た方向をカッツォが指し示す。


「おう。てきとーに海沿いを進んでた」


「ついっとったなぁ。うちが出てきた都市に向かっとるで」


わう


「ここからどのくらい距離ありそう?」


「せやな……うちが都市でてから10日くらい歩いてんで」


「あー、1日って24時間であってる?」


「あってるで。ちなみに30日で1月、12月で1年や」


「おぉ、俺達んとこと同じっぽいな」


「学問神の月とか名前もあるんやけど、普通は1月とか2月で通っとるね」


「そか。ここまでの間に危ない所とかあった?」


「問題無しや。大したことあらへん」


わう


「それじゃー、3人でその都市……名前なんてーの?」


「アヘルカ連合国のサヒラって都市や」


「連合国?」


「3つの都市国家が同盟を結んで出来た国やねん。それぞれの結びつきは強くないねんけど、魔物の多いこの大森林に対抗して同盟しとるんよ」


「ここ大森林っていうのか。海と森しか見てないからなー」


「さよか。森の奥に行くと魔物がわんさかおるで」


「トレント?とマッドウルフ、それから沖合にいた大きな蛇くらいしか魔物っぽいのは見ていないな」


「大きな蛇かぁ、シーポイズンかなぁ」


「名前からしてやばそうだな」


わう


「素早い動きと艶やかで強靭な鱗、そして強烈な毒を持った危険な大蛇や」


「うへー」


わぅ


「陸地には産卵と子育て以外では近寄ってきぃひんから大丈夫」


「そっか。良かった」


わう


「そのサヒラって都市を目指そうと思う」


わう


「ええんちゃう?案内したるで」


「頼むよ。都市には冒険ギルドとかあんの?」


「よーしっとるな。どの国にいっても町以上にはだいたいギルドがあるでー」


「生活費稼いだり、身分証明書を作れるのかな?」


「できるでー。ホンマあんたんとこのファンタジー小説ってのはすごいな」


わう


「案外、俺達のとこから来た人が創設してたりしてな。ひひひ」


「そうかもしれんな」


「短期目標はサヒラって都市にいくこと。冒険者登録をすること。都市の見物と、旨い物探しかな」


わうー


「うちも冒険者登録しとるで。これがギルドカードや」


カッツォが銀色のカードを差し出してきた。

鉄かな?それに橙色のラインが入っている。

名前しか書いていないが、ちゃんと読めるな……。言語補正あるね、俺。


「名前しか書いてないよ?」


わぅ


「これもマジックアイテムやねん。登録時に個人の魔力を登録できて、その人かギルドの権限持った担当者しか見れへんねん」


「おー!マジックアイテム!すごい技術っぽい」


わう


「そやな。昔の人が作ったらしいんやけど、今のもんでは情報増やしたりとかいじれんみたいや」


「ほー。って登録に魔力いるんじゃ、登録できないのでは…」


わぅ


「あー、どうなんやろな。試してみぃひんと解らんのとちゃうかな?」


「そっか。出たとこ勝負でいこう」


わう


「そのカードには名前以外も情報載ってるの?」


「ほぼステータスと同じやね。ギルドランクと称号が加わっとるね」


「ギルドランクかぁ。称号ってのもなんだかそそる」


わう


「ギルドランクはクエストをこなしていけば上がるもんで、ランク8の白ラインから始まってランク0の金ラインで終いや」


「ほほー。カッツォの橙色はランクいくつなの?」


「2やでー。すごいやろ。2っていえばパーティでワイバーン辺りの討伐が可能や」


「ワイバーン!ワイバーンの強度はいくつなの?」


「たしか1000前後やったな」


「…パーティって何人くらいなのさ?10人とか?」


「6人前後ってのが多いんや」


わう


「それで1000のやつが倒せるのか……すげーな」


わう-


「例えば、うちの強度が112でも武器やスキル、ギフト次第で400くらいはなんとかなりそうや」


「そういうもんか。なるほどね」


わう


「強度400くらいって、どんな魔物なの?」


「うちが倒した相手だとオーガロードってやつかねぇ」


「すごい力持ちで頑丈なやつ?」


「それも知っとるんか。その通りや。オーガの統率者で魔法は使ってこないんやけど再生に近い回復力も持っとる厄介なやつや」


「そんなやつをどうやって仕留めたんだか……」


わぅ……


「接近戦は危なすぎるし、うちは出来んから遠距離から魔法で倒したんや。うちは土と水の2属性持ちやから、沼作ってから猛毒の粉混ぜ込んではめたったんや」


「ひぃ。こわ」


わぅ


「それでも、はめてから2時間はもがいとったな。出来ればもうやりあいたくはないねぇ……他のオーガもいたらああは、いかんかったやろね」


「なんで統率者が単独で居たの?」


「オーガの集落に討伐隊が向かったんやけど、ロードだけは仕留め損なったんよ。はぐれていたとこに遭遇してなぁ、若かったしつい1人のまま戦ってもうたんよ」


「へー」


わうー


「ランク2ともなれば、そんなに人数いないんでしょ?」


「10万人都市に10人はいるやろね。サヒラは辺境で2万人しかいーひんけど大森林って、手ごわい相手がいるから10人くらいはランク2もいたねぇ」


「へー。ランク2だと良い生活できるのかな?」


「ランク2ともなれば大きな国にいっても男爵待遇で、国の貴族のちょっかいもほとんどないやね。そこそこの家を買えて常駐の人も雇えてまうくらいの稼ぎは出るんよ」


「おぉ!なんかすごいね。カッツォ様」


わう


「殴んで……。そんなんに拘っとったら、こんなとこに来てへん」


「それもそうか。称号ってのは、どんなん?」


「話戻るんか……。まぁええわ。ワイバーンをソロで倒したとかダンジョンをパーティで踏破したとかやね。ランクが低くてもワイバーンキラーって称号持ってれば大物討伐に参加出来たりするんよ」


「そういうもんか。能力に補正が掛ったりとかじゃないのか」


「そらそやろ。単なる追加情報や。使徒や巫女の加護じゃあるまいしー」


わう


「神様の加護とかあんの!?」


「あるねぇ。巫女の知り合いが1人いるんやけど、ステータスのギフトんとこに旅行神の加護があるっつってたわ。戦闘系っぽくないのに強かったし他にギフトも持ってたしな」


「カッツォがそういうんだから、使徒とか巫女を怒らせちゃいかんのぅ」


わうー


「せやでーこわいでー、登録なんてしてへんやろけどランク1に該当しててもおかしくないやろな」


「そんなのが最低でも26人はいるのか……」


わぅ


「世界神には使徒も巫女もおらんから、24人やね」


「そうなのか。ランク0は何人いるの?」


「今はランク0って5人しかおらんのよ。ランク1でも30人くらいやね」


「ふむふむ。ランク0だとドラゴンとか相手に出来ちゃったり?」


「ソロでは勝てないかもしれんけど、まともな戦いになるらしいで……想像もでけへんけど」


「人外だね……」


わぅ


「人外やね……」


なんだか3人で遠くを見つめてしまったよ。

すごい世界があったもんだ。


「長期の目標についてなんだけど、俺達のいた世界……地球って所なんだけど、そこと行き来する方法を探すことかな」


わう


「おもろいやん。手伝ったるわ。カッツォさんにまかしとき」


「おう。解るまではキノーガルドの観光と衣食住の充実させたいな」


「観光て呑気か!」


「いいじゃん。俺達も好奇心ってのはあるし、風呂に入って美味しい物食べたいよ」


わうー


「風呂か…トシんとこも風呂文化あるんやね」


「あるぜー。一般家庭にも風呂はあるし温泉や蒸し風呂といった施設も充実してた」


「ほー、家に風呂あるんかい。たいしたもんやな。こっちは町に公衆浴場ですらないとこ多いで。毎日入っとるのは水が豊かなとこか王侯貴族の一部くらいやで」


「それはいけませんな。なければ作らないとな。先の話だろうけども」


「せやな。まぁ目標はあったほうがええな」


わう


「そうだ。職業やスキルについても聞きたかったんだ。昨日こっちに落ちてきて、わりとすぐにステータスに気が付いたんだけど、その時職業はポーターだけだったんだ。今朝マッドウルフっての?狼と戦って倒した後でステータスを見たら、バーバリアンとグラップラーってのが増えてたんだよ。このへんの仕組みを教えてくだされ」


わう


「そうそう増えるもんでもないんやけどなぁ……あんたらに常識求めてもしゃーないか。あっ!?やっぱあんたおかしいで?職業ってのはな既に同じ職業を持ってる人から承認してもらわんとなれへんはずやのに……なんで勝手に職業に就いとるんや……」


「さぁ?」


わぅ


「まぁおいとこか……。職業にはスキルってのが付随してるんは解る?」


「おう、詳細を観たら書いてあったね。体術3とかだろ?」


「そうや。そのスキルにも基礎スキルと関連スキルって2つに分類される事が多いねん。例えばうちの場合やとレンジャーって職業持っとるんやけど弓術3索敵3森林行動3ってスキルがあるんよ。レンジャーはに成るためには弓術3と索敵2が必要やねん、これが基礎スキルってやつや。レンジャーになった時に森林行動2がでてきたんやけど今はあがって3になっとる、これが関連スキルやな。付随するスキルは上がりやすくなっとる。職業に就かんとスキルは確認でけんけど隠しスキルとしてもっとる事はようある事や」


「ほほー。バーバリアンは棒術2体術3内臓強化1って書いてあったんだが、内臓強化1が関連スキルなのかな?」


「そうやったはず。腐りかけだろうが食べ過ぎだろうが体の負担が減るやつやったかな」


「おー、こんな生活ならありがたいな。逆なのかもしれんね、あんな狼の肉みたいなの食べたから付いたのかも」


わう


「そこはなんともいえんけど、今後はばりばりあがるで」


「グラップラーは格闘2と体術3ってスキルがあったんだけど、これって同じスキルじゃないの?」


「体術は体をうまく使いこなしてるかどうかやな。生活してれば自然と上がるわな。普通の村人でも死ぬまでには3はいってるんとちゃうかな」


「なるほどねぇ。俺が持ってる職業3つ全てに付いてたから大事なスキルなんだろうな。先に意識して上げたほうが良さげ」


わう


「ええとこに気がついたやん。戦闘職でもそれを解ってへんやつらはぎょーさんおるでー」


わうー


「せやでーゴンタも意識して細かく体の制御訓練したほうがええよ」


わう


「ちなみに職業を持てる数とか制限あるの?」


「意識して増やした人がおったけど7つ職業持てた言ってたで。スキルが上がりにくくなるとかはなかったようや」


「面白そう!職業収集してぇ」


「うちは今4つ持っとるでー。1つは全然使ってへんけどな」


「さすがカッツォ先生。魔法は使えないけど興味あるから魔法職だけでも教えてー」


「まぁええやろ。ソーサラー地魔法3水魔法3魔力操作4消費魔力半減2や」


「うぉ!かっけぇ!ソーサラーとか」


わう


「地魔法しか使えんかったらメイジや。2属性持ちやからソーサラーでメイジの上位職や」


「いいなー魔法いいなー。一度でいいから使ってみたかったよ…」


わぅ


「少しでも魔力あればマジックアイテムで使えたのになぁ」


ぐぬぬ

無念なり。

しょんぼりだよ。


「どんなマジックアイテムなの?」


「魔法の杖やね。頭んとこに精霊石っていう宝石がついとって魔力を流すと決まった魔法が発動すんねん」


「便利なもんがあるんだな。精霊石ってこういうやつ?」


狼からでた青い石をカッツォに見せる。


「あーちゃうちゃうこれは魔石やね。これは砕いて魔法の薬に使ったり、火を起こすマジックアイテムとかの燃料になるねん。ギルドで買いとってくれるで」


「おー。やっぱそういうものだったか」


「精霊石は宝石と同じように地中に埋まっとんねん。宝石より見つかりづらいもんや」


「へー。この魔石は価値どんなもん?」


「魔石にもランクがあってな、魔法を使う強いやつほどいいもんだすんよ。色はランクの高い順で赤橙色黄色緑水色青紫の7種類やね。紫の魔石で銅貨1枚、青の魔石だからそれは銅貨7枚やな」


「貨幣価値も解らぬ……」


「そやったな。通貨の下から鉄貨1枚で果物が買えるくらい、鉄貨10枚で銅貨1枚食堂で1食いけるな。銅貨10枚で銀貨1枚いい宿に1泊できる銀貨10枚で金貨1枚普通の4人家族が1月暮らせるかな。金貨10枚で白金貨1枚金持ちしか使わんかな。白金貨10枚で天光貨1枚大きな商家か国関係、魔法使いくらいしか持ってないやろな」


鉄貨で100円銅貨で1000円ってとこか解りやすくていいな。


「天光貨を魔法使いが持ってるってのは?」


「特殊な金属で魔力をため込む性質を持っとるんよ。天光貨から魔力を補充できるから金持ちの魔法使いは持っとるやろうな。これが現物」


ぶふっ

青味がかった銀色の硬貨を見せてくれた。


「持ってるのか……」


「当たり前やん、うちくらいなら余裕やで家とかもっとらんから、なおさら金かからんしな」


「おみそれいたしました」


わうー


「都市で家買うなら天光貨がいるのかな?」


「どこの都市かや、都市の内部の場所によっても大きく変わるけど、普通の家で天光貨があればおつりはくるやろうな」


「そのくらいかー」


「なんや買うつもりなんか?」


「まぁそのうちね」


わう


風呂も作りたい。美味しいもんも作るぞ。

もちろんゴンタも一緒に住める家さ。

奥さんや子供もいれば理想的な一家に見えるんだろうけどねぇ……。


俺達は夜になるまでカッツォ先生に多くの話を聞いた。

魔物の活動が頻繁で多くの人は城壁に囲まれた都市で暮らしている。

人族が多く権力を持っている。

獣人は種族単位で隠れ里に住んでいる。

都市の収容人数には限りがあって城壁外に貧民街がある場合が多い。

獣人なども都市で生活していることはあるが多くの獣人は、そうした貧民街で暮らしている。

農業地は都市の周辺にあり、兵士も駐屯している。

魔物の肉で食べられる物が多いため食料にはわりと余裕がある。

国も形成されているが国内の都市間移動にも危険が伴う。

国同士で争う余裕はほとんどないらしい。

海は危険で、内海と一部海域以外は船の運航がされていない。

冒険者は護衛や討伐で稼げる。

ランクを上げ国に仕える人も多い。

武器や防具の需要が多いため、技術力もあること。

マジックアイテムは人々の生活に必須で、科学技術の類はほとんど発達していない。

薬師も需要が多いので喜ばれる。

治癒魔法はあるが使える人が多くはない。

気の力で外傷を塞げる。


「えっ、気ですか?」


「気功術っていってな、不死者にも効果ありや」


「なにそれすごい」


わうー


「生きているやつならだれでも使える可能性はあるで。なんせ生命力が元やといわれとるしな」


「ほほー。カッツォ先生も気功術使えますか?」


「使えるで。攻撃力を上げるのに使ったり、治癒に使ったり便利やで。うちは武器よー使わへんから攻撃には出番ないけどなぁ」


「ぜひご教授願いたく……」


わぅ……


俺はとゴンタは土下座をして教えを乞う。


「あんたら何しとん……」


「これはDO・GE・ZAといいまして、我が国で最大級のお願いの時に使います」


わぅ


「なんや嘘くさいけどええわ。一緒に行動するんやから、そんなんせんでも教えたるがな……」


「ははー」


わう


「まずは腹の下辺りに力を込めてー、力を感じたら手に移動させてー」


カッツォ先生が木を殴った。

バコッ

うへ……木の幹に拳の跡が付いてるよ。


「すごいっす。木の幹に拳の跡が付いてるっす!」


わうー


「とまぁ、こんなもんや」


カッツォ先生の尻尾が揺れてる。

ドヤッって感じじゃな。


「ほんで、こういう感じのが治癒や」


カッツォ先生がそれぞれの手で俺達2人に触れてきた。


「うほっ、なんだか温かい感じがします。これが気功術ですか!」


わうー


「そうや、本来なら傷口にこうやって気功の手を近づけると相手の気がうちの気に反応して活発に動くんよ」


「ほほー。それで体内から修復が始まるんですか」


わう


「怪我人が死にかけやと相手の気つかうんは危ないんで、うちの気流し込むんやけどね」


「違う気が入ってきても問題ないの?」


「問題はあるんやけど、治療に関してはたいしたことあらへん」


「ほー」


「この気功術と魔力をうまく混ぜ合わせると少しくらい離れていても治癒を飛ばせるんや」


「それが治癒魔法?」


わうー


「これも魔力の状態が変わっとるとはいえ、マナに戻るのがあるんはしゃーない。あんまり効率はよーないけど、助かる場面はあるからなぁ」


「そうですねぇ」


わう


ゲームみたいにヒールとか飛ばせたらいいよね。


「さっき感じた気を自分で出せるか試してみ?」


「はいカッツォ先生!」


わう


腹の下辺り……丹田とかいうやつだよな。

俺には魔力がないはずだから、なんかの力があればそれが気のはず。

かーめーはーめー。

こんな感じでいいはず!

おっ!丹田の辺りが温かくなってきたぞ!

これかっ!

おぉなんかが凝縮されていく感じー。

手とかに移動できるんだったな。

イメージイメージ。

生命力っつったら血液とかに溢れてそう。

血管を通って指先に集まる感じで。

できたか?

殴ってみよう。

ドゴッ


先生の殴った木ではない木を殴った。

手は痛くない。

大きな木だったせいか、折れはしなかったが根本が地面から引っこ抜けそうだ…。

すげーぞ、これ!


バゴッ


横を見たらゴンタが同じ大きさの木に体当たりをしてへし折っていた…。

いやいいんだ、だいたい解ってたよ。


「あんたらめちゃくちゃやな……」


「すごい力っす」


わうわうー


「威力もそうやけど、いきなりできすぎや……うちは苦手やけど周りからは習得が早いいわれてても2か月は掛ったのになぁ」


「きっと異世界補正っす。常識にあてはまらない事は全てそれでいけるっす」


わう


「そんな気功術使えるんはそうそうおらへんで。ランク1には匹敵するやろう」


「押忍ごっつぁんです!いいじゃないっすか俺達魔力ないってハンデあるんすから」


わうわう


「それもそうやな。あとは戦闘技術やこっちの情報を身に付ければランク0も夢やないで」


「頑張ります、ちょー頑張ります。戦闘で頼れる力が手に入ったのは嬉しいです」


わうー


「これも気を練ったり、体じゅうに気を回したり訓練すれば威力も展開速度も上がるんよ、きばりや」


「はいカッツォ先生!」


わう


「それまだ続いとったんか……」


魔法防御はなんともならんにしても、これで攻撃力は大幅にあがった。

めざせスーパー野菜人!

いずれは53万までー。


「いきますよゴンタさん」


わう


「どこいこうっちゅねん……」


そのまま訓練を続けて夕飯にジャーキーをあぶったものを食べ、ゴンタと戯れてはしゃいでから眠りについた。

おらわくわくしてきたぞ!

ゴンタも興奮してたみたい。


修正(×農業神、○旅行神)

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