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お出迎え

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わう!


がう!


「ほーあの山がそうなんか」


「なになに?」



 スターインから下りて並走していたゴンタとヤマトが吠えた。

そしてけーちゃんが感慨深げに目を細めていた。

俺も話に入れてー。



「草原の先に一際高い山があるやろ?」


「うん」


「あれがヤマト達が住んでいる山なんやて」


「おぉ!」


「ほう」



 俺達の進行方向のかなり先に高い山が見えている。

富士山に似ている。

山の半分くらいは雪に覆われているのか白い。

もう結構暑いのに……ひょっとしたらすごく高い山なのではないだろうか?

あれがヤマト達の住んでいる山かと思ったら声が出てしまった。

なるほどけーちゃんも似たような気持ちだったのかも知れない。

本を読んでいたカール博士も俺達の側に来ていた。


 炎竜戦の場所から東へ二日。

スターインでの二日なのでそれなりの距離はある。

確かにヤマトが住処が近いし帰ると言ったのも解る。

サトウキビ島へ行くよりはずっと近い所だった。

山を回避し森を抜け草原を突っ走っている。

川もあったし湖もあった。

戦闘はなるべく避けたが強そうなヤツが結構いた。

むしろ雑魚は生きられない所だと思う。

そんな場所なので人はまったく見かけなかった。

村も町はもちろん道すらなかった。

大森林に近い感じだ。

ただ草原も多いので生態系は大森林とは違うっぽい。

植生も違う。

野営の時にけーちゃんとカール博士が物珍しそうに森を歩いていたね。

薬草に使えそうな物や高級品だと言われているらしい果実を取ってホクホクしていたよ。

果実はサトウキビ島まで持って帰れるか怪しいのでミナモ、ミズホと一緒に食べようという事に。

寝る時はテントではなくスターインで寝ました。

さすがに危険そうだったのです。



 問題もありました。

遠見の水晶による定時連絡です。

天空島、炎竜戦でバタバタしていたので連絡が遅れました。

最初はけーちゃん達だけで話しをしていましたが、リオンがハイハイをしたと言われては俺も見に行かざるを得ません。

帽子も被らずに水晶に駆け寄ってしまいました。

ええ。

ぷーくすくすとかっちゃんに笑われ、なっちゃん、アン、シーダから即どうしたの?と問い詰められました。

ケットシーの笑い方は共通なのでしょうか?けーちゃんとそっくりでしたね。

なっちゃん達にはしどろもどろになりながら戦いで焼かれちゃったと報告しました。

戦った相手はぼかしつつ話しました。

怪我は?大丈夫?と心配されましたとも。

ほらなんともないよ?飯がいまいちだけど食欲も十分!と健康ですアピールはしっかりしました。

リオンを見せてーとせかして細かい所は誤魔化しましたよ。

後からけーちゃんに誤魔化せてはいなかったと突っ込まれましたけども……いいんだリオンが頑張っているのを見れたし。

花ちゃん達も元気そうだった。

次の連絡の時に言われるんだろうか?炎竜の事は伏せておきたい。

なんでそんな無茶したの!と怒られる事請け合いですからね。



 けーちゃんが遠見の水晶で景色を見せている。

俺は運転で忙しいからといって話には余り加わらない様にしている。

すっぱりと怒られておいた方が楽だったかも知れない。

点数の悪いテストを隠している小学生の気分だ。



『それでなー、あの高い山が見えるか?ヤマト達の住処なんやてー』


『なー!雪もあるし高い山なんやろー』


『そうやな雪乃は住みやすいやろ。でも花ちゃんの側が一番とちゃう?』


『山の神様がおるらしいけど、うちらは会えんやろ』


『菓子折りの一つでも持って挨拶したいんやけどねー』


『あーちゃうちゃう、山の麓の洞窟に住み着いてるんやて。配下のモンもおって縄張りを駆けまわってるらしいで』


『食べ物は豊富そうや。心配いらんで』


『ただ強そうな魔物は多そうや』


『ヤマト達なら問題ないやろ。強いからなぁ』


『次はみんなで来れたらええな!』



 けーちゃんが全開です。

次から次へと紙に書いて水晶越しに花ちゃん屋敷もみんなと話をしている。

止まりません。

何だかストレスが溜まっている模様。

かっちゃんやなっちゃんもノリノリで話してくれているっぽい。

上手くストレス発散が出来るといいんだけど。

俺やカール博士みたいな気の利かない男連中はお呼びではなさそう。

助かります。

空気なボクは運転手。







ばうー!



わう


がう




 山の圧迫感が強くなってきた頃に遠吠えが聞こえた。

ゴンタ、ヤマトが即答えた。

きっとミズホだ!



わうー!


がうー!



ばうー!!



「ミズホやて。嬉しいなぁ、お出迎えやなぁ」


「そっか」



 やはりミズホらしい。

何でわかったんだろう?匂い?まだ遠い、警戒網でも敷かれているのかな?

俺も嬉しい。


 そしてゴンタとヤマトがスターインを置いて先へ走っていった。

家族だもんな。

当然だろう。

俺達も直ぐ行くからね。



 木々の間を抜けスターインは進む。

あ、大きな気配。

ミズホだ!

ミズホの周りにはいくつもの気配がある。

その中にはミナモもいる。

他は狼達だろうか?配下がいるって言ってたもんな。



「おったで!」


「おー」


「凄いね。サトウキビ島のグレイウルフ達より数が多い」


「あんな数を前にのんびりできるなんて他じゃありえへん」


「まったくだね。貴重な体験だよ、これは」



 ゴンタがヤマト、ミズホとじゃれあっているのが見えた。

他の狼達を刺激しても悪いので速度を落としゆっくり進む。

ざっと見で百は下らない数の狼がいる。

じゃれあっている親子を前に整列している。

統率がとれているなぁ。

思わず感心してしまう。

やはりヤマトとミズホは巨体だ。

他の狼達はサトウキビ島にいるグレイウルフより一回り大きいかも。

ゴンタよりは大きい。

ゴンタが気にするから言わないけども。

小さくて愛らしいゴンタが大好きです。

それでいて強いんだぜ?

最高じゃん!!



『凄いお迎えや!』



 けーちゃんが遠見の水晶を構えた。

ゴンタ親子、狼達が見える様にだ。

そして興奮気味に解説している。

ケットシーは好奇心旺盛だから、こういうのに興奮しちゃうんだろう。

しかも整列してるんだから普通とは違う。

上下関係がキッチリしているんだろうね。

そしてゴンタ辺りから軍隊の話を聞いてマネしているのかも知れない。

この辺りを縄張りとしている者として守るべきものがあるって事かな。

威圧感が凄い。

数もそうだが整然と並ばれるってのも威圧感に繋がっていると思う。



わう!


「ええんかー?行くでー」


「来ていいって?」


「ええってゴンタは言うとる。はよ行こう!」


「くくっ」



 けーちゃんの興奮は収まらない。

カール博士も苦笑している。

そんなカール博士も楽しそうだ。


 俺はスターインを前に進める。

ギョッとした狼もいた。

目をクワッとひん剥いていたから驚いていたんじゃないかな?

全員ではないから個性なのかも知れない。

感情を表に出してもらえると安心する。

同じ生き物なんだなぁって。



「こんにちは!ミズホ、ミナモ、元気だったか?」


「こんにちはー!」


「おぉ、ちょっと怖いね」



 まずは挨拶だよね!

スターインから下りて狼達の前に立つ。

ある程度距離をとったまま挨拶する。

けーちゃん達も続く。

カール博士は違うか。

通じるのはミズホとミナモくらいだろうけど。

ミナモは言葉を理解していると思うんだよね。

ほとんど無視されるけども。

ゴンタと違って人間とは慣れあわないって態度は昔からだ。

ケンカをしたりはしないけど野生の生き物って感じです。

そんなミナモも好きですよ。俺は。

それ以上に愛らしいゴンタが好きですけども!!


 炎竜の肉をみんなで食べよう!宴会だ!!

いっぱいいる狼達に分けても余裕な量があるぞ!

ちょっとだけ塩焼きで食べたが美味かった。

何だか力が湧いた気もするしアレは良いものだ。



 俺もけーちゃんの事を言えないかも知れない。




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