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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
アヘルカ連合国編
34/387

初ダンジョン

34


 翌朝の酒場で飯を食べていた時に、宿の前を兵士が5人駆けていった。またヴァンパイアの犠牲者が出たのかと隣の席にいた冒険者らしき人達が噂していた。


 ダンジョン脇に兵士による管理所があった。ダンジョンの異変に対応するための人員らしい。10人ほどいるようだ。ダンジョンへの入場はタダであり、申請の必要もないが不穏な状況なのでカビーノが兵士に話を聞きに行く。


「これからダンジョンへ潜るんだが、今日は入っていったヤツらはいたかい?」


「ああ、2パーティ入っていったよ。自己責任とはいえ、あんたらも気を付けていけよ」


 歳の頃30ぐらいであろう男性が答えてくれる。建物の表にいたのは2人だけです。


「そうだな、ありがとう。今日は夜までには戻るつもりだしな」


「それがいい」


 カビーノが兵士と話している間に気が付いたのだが、ダンジョン入口正面にある酒場兼食堂にカビーノ級の気配を持つ2人とローブを着た人物がこちらを見ていた。

強そうなヤツらだな、ローブ姿の人物は性別が判らないが残りの2人は男女であった。

男は左頬に水平に走った切り傷があり鉄の胸当てを着けているががっしりした体格だ、座っていても大きく見える。

女のほうはおかっぱ頭で袖のない拳法着のようなものを着て小手と脛当てを装備していた。

なにか気になるヤツらだな……。


「隊形はキニートが先頭で、次がオクタ、俺と続いてホルとオルだ。かっちゃん達は後ろの索敵も頼むぞ、ゴンタ達を最後方にしてくれ」


「はいな」


わう

わふ


「解った」


「いくぞ」


「「おう」」


 カビーノの号令のもとダンジョンへ向かう。


「カビーノダンジョン向かいにいたヤツら見た?」


「おう、あれは強いな。見ていやがったな」


「なんだと思う?」


「さぁな、冒険者っぽかったがな」


「厄介ごとじゃないといいね」


「おう」


 カビーノも気づいていたようだ。話ながらダンジョンへ足を踏み入れる。カンテラのようなもので指向性のある光のマジックアイテムを持ったキニートが先頭を行く、かっちゃんもオルから借りて持っている。

わりと圧迫感がない、通路は縦4mくらい横幅が6mくらいあるだろう。所々苔が生えており、固く踏みしめられているような土で出来ているみたいだ。

カビーノ達に続いてかっちゃん、ナターシャ、俺と続き最後にゴンタ達が着いてくる。

だれもマッピングはしていなかったが、オルとかっちゃんは記憶出来ているみたいだ、どうなっているのやら十字路とかもあるのに。魔法でもあるのかね?


 そういやみんなのメイン職業だけ教えてもらった。カビーノはソードスペシャリストつまり剣豪だろう大剣を使う、オクタがヘビーウォリアーで盾と剣、キニートがシーフ兼ライトウォリアーでありバックラーと剣、ホルはレンジャーで弓を使い、オルがメイジで杖を持っている。

 

 ダンジョンへ潜る事10分ほど行くと最初の魔物がいたようで、キニートが合図を送って来た。キニートは盾役のオクタの後ろへ下がる。


「スケルトンが数体来る」


「おう」


 手短なやり取りをキニートとオクタがする。


「トシはダンジョンの戦い方を見ておけよ」


「おう」


 カビーノが言う。お手並み拝見だ。明かりに照らされていたのはスケルトンが5体でした。武器も持っており棍棒が3、剣が2だ、冒険者の遺品だろうか。

オクタが先頭になりスケルトン2体を抑えている。キニートがその後ろでオクタのサポートに入った。カビーノはその横に出て来たスケルトンを大剣でぶった切っていった。

なるほどアンデッドには気功術が有効なのか。気功術は生命力が元ともいわれているみたいだから、アンデッドの対極に位置しているのだろう。

カビーノとオクタは剣に気を通し切っていく。スケルトンは大した強さではなかった、駆け出し冒険者でも大丈夫であろう。

しかし切られても動いているスケルトン達。


「こいつらは骨を粉々にするか、胸骨の間に見える魔石を取るか砕くかしないと倒せない」


 カビーノは丁寧に教えてくれた。そして実際やって見せてくれた。倒れたスケルトンから魔石を抜きとったのである。ホルとオルは矢と魔力に限界があるのでまだ参戦しないとの事。

彼らにとってこの程度は敵ではないのだろう、あっという間に戦いは終わった。魔石を回収しながらカビーノが言う。


「ちょっと見ていようぜ」


「ん?この倒した骨をかい?」


「おう」


 10分程だろうか、倒した骨が地中へ吸い込まれていった。どういうことだ?


「ダンジョンの多くはこうやって死体を吸収するのさ」


「なんだってー!」


「おもしれぇもんだろ」


「面白い」


 ダンジョンに着いていきたいといった俺だが、こんなに丁寧に教えてもらえるとは思ってもいなかった、ありがたい。カビーノは教師に向いているな。


 その後も数度戦闘がありスケルトン以外にもジャイアントバットという蝙蝠も襲ってきた。

バックアタックを察知したゴンタとともに俺もスケルトンと戦った。ただ殴るだけだと骨が再生するのも判った、気を通した武器で殴ると再生しなかったがね。


 そしてキニートが階下への階段を発見した。1階は1時間強で抜けられそうだ。ちなみに部屋のようなものもあったが扉はなかった。


 下へ進む。少し明かりからずれて影が出来て暗くなったので壁に手を付いて降りようとして気づいた。この土っぽい壁は錬成できない……。

なんで錬成を試したかと言うと階段が無くても進めるんじゃないかな、と言うくだらない発想でだ。

今の俺の錬成に反応しないという事はダンジョンは生物という事になるのではないだろうか……。

驚愕である。

さっきの死体吸収も生物だから起こったのではないかな。

だとしたら人間を吸い込めない理由でもあるのか?

ナイフを突き刺そうともしてみたが刺さらなかった。材質的には土っぽいんだがなぁ。

ダンジョン考察をしながら進む俺であった。

 

 地下一階も同じくスケルトンとジャイアントバットしか出て来なかった。ちなみに宝箱の類は見当たらなかったね。


 地下二階では通路と同じ素材で出来た棺桶のようなものを見つけた。特に罠や鍵もなく蓋をずらすと皮鎧や袋、冒険者カードに少額の銅貨が入っていた、宝箱的なもののようだ。

死んだ冒険者遺品がこのように出てくる事はあるそうだ。

ダンジョンが生物だとして、知恵も持っていたとしたら、これは釣りの餌にあたるのではないだろうか。

だとしたらなんのために人を招き入れているのだろう……謎は深まるばかりである。


 そして事件は地下3階で見つけた大部屋で起こったのであった。


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