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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
アヘルカ連合国編
30/387

馬車

30


俺は今、カビーノが手配してくれた馬車に乗っている。

アレゾルアへ向かう商隊の護衛クエストはなかったようで、移動を専門にしているテイマーに頼んで馬車を出してもらっている。


ワイルドホースと呼ばれるごっつい馬が2頭で曳いている。他に偵察用に鳥がいた。

ワイルドホースは通常の馬と比べて、速度も速く持久力も高いそうだ。

荷台には人だけなら10人乗れそうな広さがあった。真ん中は通路になっており、左右の壁に座れる物入れが付いている。幌付きです。


テイマーさんはウナイさんと言って40歳くらいの男性です。

ウナイさんは小麦色の肌に茶髪で無精髭でわりとがっしりした体型です。身長は175cmの俺よりちょっと低いかな。


「ウナイさん、アレゾルアまで何日くらいですか?」


御者席にいるウナイさんに俺は背後から尋ねる。


「問題はなければ5日だな。もっとも普通の馬だったら1週間かかってもおかしくないがね」


「おー」


ウナイさんは振り返らず答えてくれた。

確かに力強い走りだ。ドドドドドッと爆走って感じです。


道の左手を少し行けば内海があり、道の右手は森になっています。


ゴンタとミナモはワイルドホースの横を苦も無く並走している。

ゴンタ達は時折先行して魔物を排除しているようです。

ちょっと遅れる事もありますが、匂いを追ってすぐ戻ってきます。

ゴンタ達はとてもイキイキしています。特にミナモが嬉しそうですね。

町の生活はいやだったのでしょうね……。


「あんたらの狼達はすごいな。それでテイマーじゃないのか……」


「あの子達は友達ですかね。ちょっと変わった子達なんですよ」


「こいつらと並走出来るどころか遅れても追い着いてこれるなんてな」


「持久力もあるんですよ」


「本当だなぁ」


ウナイさんは横目でゴンタ達を見て言う。

やはりテイマーさんから見ても、あの子達はすごいのか。


みんなは荷台で休んでいます。

オルタンシアだけは荷台の隙間から、熱い視線でゴンタを見ているようです。

俺は馬車なんて乗るのは初めてなので辺りを見ては、はしゃいでいます。

座るのもクッションになるものがないと尻が痛かったので、立って御者席に捉まっているというのもありますがね。


ウナイさんは馬の制御をしつつ、鳥も飛ばして索敵もしていますね。


「ウナイさんは鳥と意志疎通が出来るのですか?」


「いくらテイマーでも、そこまで出来るヤツはそうそういないさ。警戒しろみたいな気持ちがスキルで伝わってくるだけだな」


「言葉ではないんですねぇ」


「話せるってヤツもいるとは聞いているが、俺は違うな」


「ケットシーは話せますが人族でも話せる人がいるんですか?」


「そうらしいぞ、ギフトだって言われてるな」


「なるほど」


ウナイさんは別段忙しくもないのか、俺の質問に答えてくれる。


かなり移動した所で昼飯のため馬を止める。

ウナイさんは荷台から皿と水、藁束を出して馬の世話を始めた。塩も舐めさせているね。


「ゴンタとミナモは楽しそうに走りまわっていたねー」


わう


ゴンタはキラキラした目で返事をしてくれた。


「楽しいって言ってるで」


わうー

わふー


「そうかー良かったなぁ」


「町は窮屈だから、今は楽しいって?」


「そういってるなぁ」


「やっぱそうなのか、いつか居場所を作りたいね」


「お互い楽しめる場所があればなぁ」


「これからは金も稼ぐさ」


「そか」


「目標も決めたよ」


「聞かせてーな」


「俺達がこっちに来た理由と方法を調べる。居場所を作る。ドラゴンを見る。世界樹を見るの4つ」


「長期目標やな。ええんちゃうか」


「まずは世界樹かな」


「そやな召喚やらは、ぼちぼちやってこうや」


「おう、現状困ってないしね」


俺達は昼飯を食べながら今後の事を話す。


「ってなんか凄い事言ってたな」


「っすね」


「そうね。召喚とかこっちに来たとか」


「魔法なの……?」


「いいのか言っても?」


カビーノ達が反応する。小声で話していたわけじゃないしね。


「なんか変なやつだって思ってたろ?」


俺は言う。


「魔力感じなかった……」


「物知らずよねー」


「言わないから聞かなかったが、どういう心境の変化だ」


「俺とゴンタは、この世界の生まれじゃないんだ。穴みたいのに落ちて気づいたら大森林だったのさ。そこでかっちゃんに拾ってもらった」


「にひひ」


「うーん、よくわからんが、すっきりした顔はしてるな」


「そうね」


「そんなに判りやすい顔してた?」


俺は顔をひと撫でして言う。


「おう、単純なやつめ」


「カビーノに言われたくないよー」


「それはそうだろう。いい勝負だ」


「オクタてめー」


魔力無しってのは気づく人もいるしな、俺が信じた人達くらいは自分で話したいと思っただけだ。

かっちゃんにオルタンシアが召喚魔法の事で食いついていた以外は、あっさりしたもんだった。オルタンシアが珍しく長文で話していたね。


昼飯の間にゴンタとミナモが走り出して魔物を狩ってきた以外は、和やかなものでした。旅の間にゴンタとの実力差がさらに離されてしまうー。


午後の移動中に、ダンジョンに付いての話もした。


「それじゃー、一度ダンジョンに潜りだいんだな?」


「うん、カビーノ達がいいなら一度着いていきたい」


「俺らもお前らなら問題ねーよ、なぁ?」


「いいっす」


「問題ないわよ」


「一緒に行く……」


「後ろで警戒くらいはしてもらうぜ?」


「ありがとう」


わう


「ダンジョンなんて久々やわー」


一緒に潜らせてもらえる事になった。やっぱ気になるしさダンジョン。

マーフィーさんとかいるかもしれないしね、幽霊で。

石の中は怖いけど、トラップなんてあるかも判らない。

宝箱とかあんのかなー、刀とか聖なる鎧とかあればなぁ。

馬車の旅とダンジョンへの思いを楽しむ。


《赤い旋風》メンバーに言われて、これからは愛称で呼び合う事になった。

あとカビーノから旅の間に剣の使い方を教えてもらえる事になった。

剣には憧れがあったし嬉しい。


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