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強面と子供達

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「この子達を助け出してくれて、ありがとう」


「「ありがとー」」


「おう」


わう


 草原で体育座りをしてゴンタを撫でていた俺にゲンツと子供達が礼を言って来た。

感動の再会を邪魔しちゃ悪いと思ってゴンタと眺めていたのは良いが、声を掛けづらかったので向うから言ってきてくれたのは助かった。


「あんたは俺の事を知っていた様だが……あんたは何者だい?俺のギフトでも解らんぞ」


 ゲンツが俺の前に座り込んで問いかけてくる。

ビーチェとキーンの姉弟もゲンツの隣に座り込んだ。


「俺はトシ。それからゴンタだ」


わう!


「ゴンタはお利口さんなんだよ!」


「私達の言ってる事が解ってるのー」


 俺が名乗ると姉弟がゲンツに興奮して話しかけた。

貴族の館から助けてからゴンタに興味深々で仲良くしてたしな。

とても嬉しそうに報告している。

子供が子供らしくしているのは何だか良いね。

助けた当初は警戒されまくりだったがゴンタのおかげで少しずつ警戒が解かれていった。


「そうか。ゴンタもビーチェとキーンに良くしてくれて、ありがとう」


わう!


 ゲンツはごっつい体で強面の癖に気づかいの出来る男だった。


「ゲンツ、子供達にはどこまで話をしてある?」


「……俺がこっち(・・・)に来て最初にあったのがこの子達だ。全て話したし色々教えてもらった」


「そうか……ならいいか」


わう


「俺とゴンタもゲンツとは違うがここではない所から来た」


わう


「なっ!?」


 ゲンツは俺の言葉を聞いて驚いている。

ちゃんと驚いてくれて良かった。

ゲンツが中々反応が良いので嬉しい。


「こっちで俺もゴンタもギフトを得た。それから生き延びて来た結果戦闘力も手に入れた」


「……」


「ゲンツの事を知ったのも俺とゴンタの情報をゲンツが読めないのも俺の力だ」


 ゲンツのギフトはゲームのメニュー画面を使ったような情報取得能力だ。

鑑定が出来、結果をマップ画面にも反映させられるらしい。

俺達情報化社会から来た者にとっては便利な力だ。

情報に関しては俺の方が上位権限があるので改竄してゲンツから見えないようにしてある。


「そうか」


「俺達がこの場に来た最大の理由は銃の封印だ」


「銃か……」


 ゲンツの顔色が変わった。

無理もない銃の情報を貴族に渡したのはゲンツだからな。


「まぁそんなに警戒しなくても良い。もう銃の現物と情報は地に埋もれている」


「情報ってガイウスに手を出したのか!?」


「この子達を助けた後に館を消してきた。銃に関する情報を持っている人物も残らずな。書類も残ってない」


「……」


「後は情報の発信源のお前さんだけだが……もう情報を出す事はないだろ?人質もいなくなったし無理強いもされまい」


 人質ってのはビーチェとキーンね。

イチルア王国の貴族ガイウス・カトーネの野望に感づいたゲンツがガイウスと手を切ろうとしたためだ。


「……ああ。俺が考え足らずだった」


 銃がどう使われるかなんて決まっているからな。

呑みの席で出た軽い話からとはいえゲンツも後悔している様だ。表情が暗い。


「それは否定できないが同情の余地はある。生活がひっくり返って頼れる物がなくなったんだものな」


わう


 俺の言葉に同意してくれるゴンタ。

俺達がこっちに落ちて来た時の事を思うとゲンツを強く責められない。

俺にはゴンタがいてくれたから良かったがゲンツは一人で落ちて来たからな。

何とか生きていく方法を模索するのは当然だ。

ある程度は何かに頼らねばなるまい。後ろ盾が貴族なら上手くいけば最高であったろう。


「俺とこの子達はどうなるんだ?」


 ゲンツがビーチェとキーンを一瞥した後で俺に向かって言って来た。


「イチルア王国にはいない方が良いだろう。バッキン教国で生活するのを勧めるぞ」


わう


「今回の件があるのに俺が行っても良いのだろうか?」


「いまんとこ俺とゴンタしか全貌を知っている者はいない」


わう!


「そうなのか?」


「俺の力の具体的な所まで知られちまうから、こっそり動いている」


「ふむ……」


「バッキンの教祖はヒミコ様と言って彼女の先祖は俺と同じ世界の人なんだ」


「なっにぃ!?」


 ゲンツは良いリアクションをしよる。


「俺とゴンタの話もした。俺達に理解ある頼れる人物だ」


「そ、そうか」


「ヒミコ様はゴンタにご執心でなー。とてもかわいがってくれている」


わぅ


「ゴンタはカワイイもんねー」


「えーカッコイイよぅ」


 話が砕けて来てゴンタの話題が出たせいか、空気を読んで黙って聞いていた子供達が参加して来た。


「だよなゴンタはカッコイイだよな」


「だよねー」


「カワイイだよー」


 ゴンタは可愛いけどカッコイイ男ってのが正しいだろう。

そんな意見の俺とキーンの男組に異論を叩きつけるビーチェ。

男と女では大きく意見が分かれるのかもしれない。

キノコタケノコ戦争の様な事にもなりかねないので、話題を戻すか。


「そんな俺達に良くしてくれる人達がいる所で生活しないか?」


「良いのだろうか?バッキンで既に事を起こした奴らがいると聞いた」


「確かに城や町で銃撃事件が起きたな。俺も被害者だったりする」


 マリアさんがヒミコ様に報告していたのを聞いた。

城では大臣の護衛が二人と文官一人が亡くなっており、町では俺とかっちゃん以外に商人とその家族を含め七人が亡くなっている。

負傷者はもっと多いとの事だった。

そうした混乱の中で軍による占領を狙っていたらしい。

半島で隔離され海上で強い軍を持っているとはいえ大胆な事をしたもんだ。

対外的にも問題ないと判断したのか。それだけの力があるってのは否定出来ないが大胆すぎる。


「……すまん」


「戦いの結果を剣を打った鍛冶師に取らせたりはしないさ。だがこれからは自分が出す情報は吟味すべきだな」


「ああ」


「こっちに落ちて来たゲンツを助けてくれたビーチェとキーン、その家族も一緒にバッキンに行って欲しい所だな」


わう


「あ!」


 俺の言葉でビーチェが家族の事を想い出したらしく声を上げた。


「お父さんとお爺ちゃんが殴られてた……うぅ」


 ゲンツを利用する人質としてビーチェとキーンが拉致された。

その時の事を思い出したのであろうキーンが涙目になってしまった。


「大丈夫だ。今は元気にしている。ビーチェとキーンの事で落ち込んではいるがな」


「本当?」


「おう。あんな人攫いが治めていた所にはもう住みたくないって思っているだろう。ゲンツと一緒にバッキンへ引っ越しだな」


「一緒?」


 キーンがゲンツを見る。


「だろ?」


「あ、あぁ」


 俺がゲンツに返事を促すと戸惑いながらも返事をした。

キーンもビーチェも表情を明るくしてゲンツに纏わりついた。

ゲンツは強面なのに懐かれているなぁ。


 話はこんなもんかな。

飯でも作ってやるか、肉でも焼いときゃいいだろう。

俺は腰を上げるのであった。


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