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順番

291


「ゴンタ、移動中に話した通りだ。この貴族様のお屋敷からお仕事開始です」


わう!


 俺とゴンタの二人は日が落ちる頃にイチルア王国に入った。

スターインのおかげで短時間での移動が出来る。

そして怪我の回復も進んだ。

馬車や徒歩の移動ではこうはいかなかっただろう。

途中で俺達が戦う兵三千とその軍団大将とすれ違った。もっとも俺達は地下を進んだのでご対面はしていない。

何で交戦しなかったかはもちろん理由がある。

ものには順番ってものがある。


 今回の場合は敵兵三千と戦う前に派兵してきた貴族ガイウス・カトーネ……例の異世界人ゲンツを保護した貴族の屋敷に用がある。

兵はイチルア王国からの兵ではあるが、厳密にいうと国軍ではなくこの貴族の私兵であった。ほとんどが領民である様だが。

調べた結果、派兵にイチルア王国の王族は関与していなかった。

これだけの兵を動かし、隣国……元イチルア王国の一部ではあるがバッキン教国を攻めるのに王族の関与がないとは思わなかった。

どうもイチルア王国の王族は力が強くないらしい。

宰相、それから軍上層部の貴族と騎士団の力が強い。

今回の件は軍上層部の貴族であるガイウス・カトーネと宰相イゴール・イソラの密約によって動いていた。


 大陸と半島(バッキン教国とイチルア王国がある地域)の間にはエルフの森がある。そのため陸路では外国と繋がっていない。

そして半島からは大型の魔物は駆逐されていて魔物の脅威はほとんどない。強いて言うならば海からの魔物くらいであろうか。

船と魔法戦力により外国と交易が出来ているイチルア王国は魔物からの被害も少なく発展している。

食べ物は安定して供給され人口も順調に増えている。

そんな国が何故今戦いを起こしたのか?王族は戦いを望んではいないようだ。

宰相はバッキン教国を消して元のイチルア王国の版図を取り戻したいらしい。

軍上層部と騎士団は力の使いどころを求めてのいるらしい。

彼らが心の奥底で違う事を願っていたら違うかも知れない。本人でも気づかない事もあるって例もあったしね。


 魔物の脅威がないと力の矛先は同じ人間に向かうのか……人間とは悲しい生き物なのかも知れない。

この半島は安全については最高だというのに。


 戦いに踏み込ませた引き金は銃であった。

一般人でも銃を持てば役に立つ。

才能のいる魔法ではこうはいかない。



「さて頑張りますか。最後は屋敷を地下深くに沈めるからねー」


わう


 ゴンタがいるおかげで心細くない。

キリリとした顔のゴンタも可愛い。

なんとなく怒っている気がする。

かっちゃんの負傷を怒っているんだろうなぁ。

この貴族、それから派兵された兵も無事では済むまい。

もっとも軍団の大半は俺が仕掛けた落とし穴の餌食だろうがね。

俺は周りに人がいないほど無慈悲な事が出来る。

対軍団で敵を銃ごと消すのに俺の地形操作能力は絶大な威力を発揮する。

地下空間だけは用意しておいた。

この屋敷での仕事が終わったら、すれ違った兵三千を追いかけて落とし穴の発動をしないとな。



 俺は人同士で争う者を想い、若干の虚しさを抱えガイウス・カトーネの屋敷に潜入を開始した。



 貴族の屋敷の壁に錬成で穴を空けて入る。ちゃんと辺りを警戒したよ。


 ゴンタを先頭に進む。俺も索敵は欠かさない。索敵に掛る者は全て敵だから楽だ。


 庭の木の陰から屋敷を見る。三階建てかな?でっかい屋敷だねぇ。学校くらいの広さがありそうだ。

富を民に還元しているのだろうか?気になります。


 犬の様な魔物を飼って警戒させてるって事はなかった。


 二人組の巡回をやり過ごす。大した奴らじゃなさそう。少なくても気配察知は俺達の方が上だな。


 屋敷の外壁に体を預けて屋敷の中の気配を探る。ここはダメか。


 部屋に人がいなそうなの場所を見つけて外壁に穴を空けた。器物破損である。今更ではあるな。


 物置部屋らしい。雑多な物が置かれていた。金には用がないので箪笥を開けたり壺を割ったりはしないどこぞの勇者とは違うのだ。


 使用人達の話声が聞こえた。下世話な噂話らしい。世界は変わっても話すことは大差ないのかね。


 通路を進む。


 人の気配を感じて通路の角へ戻った。相手には気づかれていない。良かった。


 金の掛ってそうな絵画や花を活けてある花瓶もあった。割と良い趣味だと思った。少なくても成金っぽくはない。


 パツキンボインの綺麗で若いねーちゃんが高そうなドレスを着て歩いていたり。お供の女の子は引き立て役っぽい地味さだった。侍女も大変なんだろうね。


 人の気配を感じては息を潜めた。


 地下への階段発見。急な階段を降りる。降りる時に銃弾を受けた尻に痛みが走った。かっちゃんの具合はどうだろうか?花ちゃんの屋敷に戻ったらみんなからの怒られるんだろうなぁ。ちょっと憂鬱。


 暗い通路を進む。ゴンタは暗くても問題ないそうだ。羨ましい。


 地下は空気が澱んでいた。かび臭い。俺より鼻の利くゴンタは嫌そうにしていたと思う。これは羨ましくない。



 そしてこの屋敷での一番の目的地に到着した。世界樹の力……情報ってのは大事だね。

俺とゴンタのコンビならば怪盗として生きていけるに違いない。。女に気を付けないといけない泥棒か真っ白な恰好で空を滑空する泥棒か……どっちを目指すべきか。

そんなしょーもない事も頭を過った



「やぁ、こんばんわ」


 俺は錬成により鍵の付いた扉を開け部屋にいた人物達に挨拶をした。

スパイでもやっていけるかな?鍵なんて問題にならない。マジイカサマ臭い。


わう!


 ゴンタも挨拶をしていた。相手に伝わったかは知らん。


 さっさとこの屋敷での仕事を終わらせますかね。



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