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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
ヴァンパイア編
281/387

合流

281


「トシ!アレ(・・)を使うんか!?」


 おれが足を開き踏ん張った所で、かっちゃんの声が聞こえた。


「おう!」


「なっちゃん!風の遮音防壁展開!!」


「うんっ」


 お、そんな事が出来るのか……ありがたい。


シャァァッ


 俺の後ろで空気が流れる様な音がした。

なっちゃんの魔法が展開されたのかな。早い。


「喰らえっ!!」


ドゴッ!オォォォォ…ォォォ……


 俺の耳に残る轟音と共に俺の左腕から発射された弾丸。

今回の弾丸は先を潰してある。

貫通力より、衝撃力を狙った。

俺に剣を振ってきていた目の前のヴァンパイアを吹き飛ばし、尚且つ貫通した。

その弾丸は更に大盾を前に構えて突進して来たヴァンパイア達の一体、左側の奴を倒して後続の二体も倒した。

大盾の半分を粉砕しての結果だ。

弾丸を喰らった奴らはのたうち回っているが動いている。

俺は目の前で剣を持っていた右腕を失って倒れたヴァンパイアの首を刎ね、前に出る。

しかし俺が動く必要がないとばかりに、後衛から倒れたヴァンパイア達に向けて攻撃魔法が飛んだ。

倒れたヴァンパイア達を、素晴らしい精度で始末していく氷の槍改と石礫改であった。


「よっしゃ!」


「トシちゃん、すごーい!」


「結構音がしたわね……足元も少し揺れたし、盾の奴らは吹っ飛んでるし、なにしたのよ?」


「あぁ……」


 俺を見てくるファリンと、言葉を漏らすイオン。

それでも前方から目を離さない所は、さすがと言うべきであろう。

もっとも吹っ飛んだ大盾の後方にしかヴァンパイアの姿は見えない。

俺が銃砲を撃った時にファリン達の前にもヴァンパイアがいたと思ったのにな。

見えるヴァンパイアは……十体以上見える。奴らの後ろにどんだけ増援がいるんだよって話だ。


「ファリン!先は長そうだが、いけるか!?」


「とーぜんよ!!」


 俺の問いに左の拳を突き出して答えるファリン。

頼もしい。


わうー!


「ゴンタさん!!」


「お、ゴンタだっ!」


「後少しだぞ」


「気合入れろー!!」


「「おう!」」


「ヴァンパイアは一体だけね」


 俺達の後方からゴンタの声が通路に響き渡った。

それに答える様にヨゼフ達が気合を入れなおしたらしい。

直ぐに答えたのはアリーナだったけどな。

カミッラが言う通り俺達とアドルフ達の間にいるヴァンパイアが一体だけなら時間の問題だろう。

後方を気にしなくて良くなれば、次々に押し寄せてくるヴァンパイア達ともやりあえる。

アドルフ達も通路の一方向だけの戦闘になれば余裕が出来るだろう。

怪我人も出ているらしいから楽観は出来ないがな。


 戦いの続きだ。

大盾を持った奴はいなそうだ。

持ってこられても、さっきと同じ様にしてやるがな。

だが盾持ちヴァンパイアが混じってるな。

俺達と同じ様に領域を確保しながら距離を詰めてくるつもりらしい。

人並の知能を持っているヴァンパイアは力だけの馬鹿じゃない。面倒だな。


「トシちゃん、ヴァンパイアしか出て来てないよ?」


「ん?」


 なっちゃんが俺に見て解る事を言って来た。


「ちゃうねん。ヴァンパイアキングどころか、ヴァンパイアナイトすら出て来ていないんよ」


「そういう意味か……」


 ヴァンパイアナイトはいないのか。

俺には魔力の多寡が解らないから、通路から迫ってくるヴァンパイア達を見ても判断出来ない。

ヴァンパイアキングは何かを考えていそうだな。

俺は、魔剣フォーリンマンによって顔の切り傷が残っているであろうヴァンパイアキングの顔を思い浮かべた。


「今やれる事は決まっているがなっ!」


 俺は走りながら槍を突き出して来たヴァンパイアに対峙する。

そうだ目の前のヴァンパイア達を倒すしかない。

それが今の俺に出来る事だ。


 俺達だけでもヴァンパイアを十体以上は倒している。

アドルフ達も倒しているだろう。

ダンジョンに入ろうとしていた砦のヴァンパイア達の多くを倒したのに、何でこんなにいるんだろう?


 ……ダンジョンに潜っていた冒険者達が吸血鬼化されたのか。

俺はヴァンパイア達の装備を見て思う。

ヴァンパイアキングがダンジョンに突入した時にどれだけの冒険者が潜っていたのかは解らないがヴァンパイアが増えているのは間違いない。


「うぉぉぉっ!」

「やった!」

「ありがてぇ……」

「まだやれる!やれるぞ!!」


  ヨゼフ達が後方のヴァンパイアを倒し、アドルフ達との合流に成功した。

と言っても、仲良くお茶なんぞ飲んでいる暇はなかったので、顔すら合わせていない。

目の前のヴァンパイア達を止めるので精一杯であった。

俺とイオンが倒れるだけで戦線が崩壊するかも知れないほどの状況だったが、ヨゼフ達が一息ついたら交代出来るだろう。

俺達が途切れる事のないヴァンパイア達を抑えていられるのは、かっちゃん、なっちゃん、それから後方担当だったアン、けーちゃんの後衛陣のおかげだ。

何度か横の壁を走ってくるなんて事をして来たヴァンパイアすらも攻撃魔法で叩き落としてくれた。

なっちゃんは、まだまだ魔力に余裕があるらしい。

かっちゃん、けーちゃんは半分くらいまで減っていると言っていた。

アンは、抑え抑えながら攻撃魔法を撃っていた。

主に俺の目の前にいるヴァンパイアに向けての氷の槍です。

ほぼ俺担当だな。

ファリンの所のミハイは既に魔力が尽きたので、下がって魔力回復に努めている。


 ゴンタ?ゴンタがどうしたのかって?

ゴンタはアドルフ達と合流してからヨゼフ達と休憩してもらっている。

無茶をした様で全身血塗れだったらしい。

ヨゼフ達から、大丈夫かと心配の声が上がっていた。

全て返り血だったので怪我はなかった様だ。

水やジャーキーで一息ついているだろう。


 ヨゼフ達がアドルフ達と直接話せる様になったので、状況を報告してもらえた。

《日輪》《月光》それぞれ一人ずつの怪我人を出している事。

彼らの戦線復帰は厳しいとの事。

順番に休んで前列の入れ替えをしている事。

魔法使いの魔力が尽きている事。

オークロードとオークナイトといった階層の主との戦闘もあった。

今はヴァンパイアとの戦闘が中心になっている。

これらの事が解った。

相当厳しい戦いを強いられているな。

魔法使いの魔力回復と、前列の入れ替えに期待するしかない。


「ファリン!大丈夫か!?」


 盾持ちヴァンパイアにハンマーパンチをぶち当てて後退させた所で声を掛ける。


「私らも、ちょっち厳しいわねぇ」


 ファリンがそう言う所を見ると限界が近いって事だな。

顔にも、声にも元気がなさそうだ。

ヴァンパイアに対して絶対に弱音なんて言わなそうな奴らだからね。


「ヨゼフ!前列の入れ替え準備しろ!」


「おう!」


わう!


「ゴンタが自分も行ける言うとるで」


「おぉ!そうか。ゴンタはヨゼフ達の前列入れ替えの手伝いをしてくれ」


わう


 俺は通路中央を目指して突っ込んで来たヴァンパイアを切る。

一撃で倒さなくても良いのだ。

体勢さえ崩せばアリーナと後衛が始末してくれる。


「やぁっ!」


 アリーナが魔剣を振るった様だ。

重い音も聞こえたので、かっちゃんの石礫あたりも炸裂したんだろう。


「その後はヴァンパイア達の後方を襲ってくれるか?」


わう!


「任せてやと」


 かっちゃんが教えてくれる。


「後衛陣も下がって休め」


「……アリーナ、なっちゃん、アンが先に休んどき。後で交代な」


 かっちゃんが言う。

俺とヨゼフ達で通路を塞ぐから休んでもらおうと思ったんだがな。


「解りました」


「はーい」


「少しだけ休ませてもらうぞ」


 アリーナ、なっちゃん、アンが、かっちゃんに答える。


「入れ替え準備は良いか!!」


「おう!」


わう


 ヨゼフとゴンタが答えてくれる。


「行動開始!!」


「「「おう!」」」


 ゴンタがファリン達の足元を抜けヴァンパイアに襲い掛かった。

気の乗った爪で足を薙ぎ払っている。

低い位置からの攻撃は防ぎ難いんだよな……それであの威力。

頼もしすぎる。

俺も盾ヴァンパイアをハンマーパンチで後退させる。

俺とゴンタが後続のヴァンパイアを抑えている間にヨゼフ達が前に出た。

ファリン達と、なっちゃん、アン、アリーナは後方へ下がった。


わうーー!!


 ゴンタは気合の入った声で吠えた後で、ヴァンパイア達の足元を駆けて行った。

ゴンタには無理をさせてしまうが勘弁してくれ。

これで守りと攻めの両方が出来る。


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