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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
ヴァンパイア編
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合流

270


「おぉ!やっぱゴンタだ」


「言った通りだろう」


「トシ達も応援に来たのね」


「これだけの戦いになっているんだ、来ているだろう」


「……」


 久しぶりに聞く声だ。


「だんちゃーん、ふっちゃーん!」


「「なっちゃん!!」」


 動いているスターインの上からダンテ、フリオに手を振って叫ぶなっちゃん。

少しスターインの速度を落として徐行する。

ダンテ、フリオを筆頭にヨゼフ、カミッラ、フリストも手を振り返してきた。いやフリストは振っていないね。


「ヴァンパイアキングがいるんだ!話は後だぜ」


「なにぃ!?」


「まじか!?」


 俺の警告に対して、ダンテとフリオが驚きの声と共に辺りを警戒した。


「アレか……」


「うそ……」


「……」


 ヨゼフ達もヴァンパイアキングを見つける事が出来た様だ。


「俺達は移動砲台として戦うから、お前らはどこかでがっちり守りを固めとけよ」


「防いでりゃ良いんだな?」


「ヴァンパイアキング以外は何とかして見せるさ」


「言うねぇ」


「じゃあ、後でな!」


「おう!」


 ヨゼフと話した後で、再びスターインの速度を上げた。

うちの子達は俺とヨゼフの会話中も攻撃魔法を止める事はなかった。

徐行していたのでヴァンパイアへの攻撃魔法の命中率が上がっており、ほとんどの攻撃が一撃必殺になっていた。

ずっと、こうやって戦っていた方が良いのだろうが、俺達のメインターゲットはゴンタが追っているヴァンパイアキングだ。

正確に言うならゴンタのフォローだ。

ゴンタに他のヴァンパイアを近づけさせないぜ。


 ヴァンパイアキングを倒すか、日が登るまで戦いは終わらない。


「ぎゃあああっ」


「カルロ!!」


「また噛まれたぞ!?」


わう!


 ゴンタの攻撃を凌ぎながら、強い冒険者に狙いを絞って吸血鬼化させているらしい。

ゴンタの攻撃でフルプレートの鎧の背中をボコボコにへこませているものの、ヴァンパイアキングは暴れている。

傷らしい傷は俺の魔剣で付けられた顔の傷だけだ。

俺の魔剣フォーリンマンで付けられた傷は塞がらない。

それは強力な再生能力を持つヴァンパイア、ヴァンパイアキングにも有効らしい。

良い情報だが、俺にヴァンパイアキングと接近戦をやれるだけの力はない。

たとえ体が万全だったとしてもだ。

奴に触れる事が出来れば倒す事は可能であろう。

だが、奴の速度についていけない。

やれるとしたら乱戦から抜け出し、自らを囮として目の前に落とし穴を用意して嵌めるくらいか。

執事野郎は地中からでも抜け出やがったから、落としただけでは終わらない。

体の自由が効き難い地中にいる間に俺が向かって奴に触って『錬成』するくらいしか手が思いつかない。


 乱戦か……これ以上の犠牲を出すくらいなら、冒険者ごと落とすってのもアリかも知れない。

後で文句を言われるだろうが、手としては悪くない。

落ちてもランク3以上の強者達だ、即死もするまい。

その後でヴァンパイアキングだけ更に深くへ落とせば、一緒に落ちた冒険者達と隔離出来るんじゃないか?」


「グワァッ!!」


「ア、アランまで……」


「パラディンが全滅だとっ……」


「対アンデッドの切り札が……」


 ヴァンパイアキングはパラディンに狙いを絞って吸血化させていたらしい。

あの光の魔法もきっちり回避していた所を見ると、あの光の魔法はヴァンパイアキングにも有効だったのだろう。


わうー!


「グッ!?何なのだ貴様っ!!」


 ヴァンパイアキングの顔の右側が煙を上げていた。

良く見ると右目、右耳、白い皮膚と肉、頭蓋骨の一部が欠けている。

ゴンタがやったのか!!

吸血の時を狙って気を乗せた一撃を入れたんだな!!

すげぇ!


 ってヴァンパイアキングはしゃべっているじゃないか。

おいおいおい……そこは大人しく死んどけよ。あ、死んではいるのか。


「さすがゴンタさん!!カッコイイ!」


「ゴンタの一撃を喰らっても倒れないのか……」


「ゴンタちゃん、すごーい!」


「ヴァンパイアの王は伊達やないなぁ」


「怪物やね……」


 うちの子達の声は、称賛と呆れの二つに分かれた。

あ、ゴンタの追撃を躱したヴァンパイアキングが走り出した。

逃げるのかよ!?

岩場の向こうに行ってしまったので見えなくなった。

俺はスターインでゴンタとヴァンパイアキングを追う。


 木々の間も抜け野営地から完全に外れてもヴァンパイアキングの足は止まらなかった。

本当に逃げているらしい。

ちっ、木々が邪魔でスターインが動かし難い。落とし穴も無理か。

自分の脅威になりうる光の魔法使い……パラディンを吸血鬼化して十分だと判断したのか?ゴンタに勝てないと思ったのか?

解らないが戦場から離脱して廃都へ向かっているのは確かな様だ。

残り少なくなっているヴァンパイア達も逃走に入っている。

これは……。


「なっちゃん、ヨゼフ達に送話魔法で連絡を頼む。疲れている所を悪いが、廃都の防壁北側で人質の救出作戦を前倒しでやるってね」


「はーい」


「トシ、今やるんか?」


「今、廃都にヴァンパイアはほとんどいない。ここから敗走しているヴァンパイアを含めて四十体以下だ」


「そこまで減ったんか」


「このまま奴らが廃都へ入ったら、砦には逃げないと思う。城落としを狙うなら明日……いや今夜が良いと思うんだ」


「……状況次第では、このまま砦まで敗走ってのもありそうやで?まだ時間もある様やし」


「トシの落とし穴をヴァンパイアキングに気付かれとるんやないか?」


 かっちゃんに続いてけーちゃんも意見を言ってくれた。


「人質だけ助けておけば、今夜城落としをするでも、ヴァンパイア達を追って砦に向かうでも対応出来る」


「確かに無駄にはならんな」


「はいな」


 かっちゃん、けーちゃんも一応納得してくれたようだ。

ヴァンパイアキングを仕留めるのにゴンタだけでは厳しいだろう。

俺の落とし穴で環境を整える事が出来ればゴンタか、俺で仕留められると思う。

ばらけて砦以外に逃げられるのが最悪の状況と考えている。

ただのヴァンパイアですら確率は低いが人間を吸血鬼化させられるのだから……各地でひっそりとヴァンパイアを増やされたら堪らない。

下手な追撃は危険だ。

だから城落とし、砦落としで纏めて決着を着けたい所だ。


「ゴンタちゃんにも送話魔法で戻ってもらうー?」


「うん、戻ってもらおう」


「はーい」


 なっちゃんに頼んでゴンタに帰還してもらう。

うん。廃都や城の中に罠がないとも限らないし深追いはしない方が良いだろう。

突発的な大戦闘になってしまったので情報が足りなさすぎる。


「冒険者側の被害はどうなんだ?」


「ちょっと待ってくれ……」


 アンに質問されたので世界樹の力で調べる。

あぁ、攻撃部隊としては、もう成り立たないな……むしろ良く生き残ったと褒めるべきかも知れない。


「怪我人も入れて生存者は六十名弱って所だ……」


「二百人以上いたのにな……」


「ヴァンパイアと夜に戦ったんや、無理もないで……」


「チラッと見たが銀武器や聖銀武器持ちが多かったで」


「あぁ……良く戦えていると思ったら、そういう事だったのか」


 気功術と並んでアンデッドに有効な攻撃手段だ。


わう


「お帰りゴンタ!!助けてくれてありがとう」


 俺は空を飛んできたゴンタを胸で受け止める。

嬉しいなぁ。

本当に助かったよ。

嬉しいなぁ。

俺は想いを込めてゴンタの頭から首に掛けてを撫でる。なでなで。


「ゴンタさん!お帰りなさい!!」


わう


 アリーナは歓喜に震えている。

ゴンタを大好きとかいうレベルじゃねーな。崇拝って感じだ。


「ゴンタちゃーん!かっこよかったー」


わうー


 なっちゃんも嬉しそうだ。

お互い妹分、弟分って思ってそうだね。


「ゴンタ、助けてくれてありがとう」


わう


 アンは頭を下げている。

言葉に気持ちが籠っているのが感じられた。


「ゴンタ!元気そうやな!」


わう!


 かっちゃんは、俺に次いでゴンタとの付き合いが長い。

言葉は短いが、それで十分っぽい。


「ゴンタちゃん、つよなっとるなぁ……」


わう!


 けーちゃんはゴンタの気配の強さに驚いている様だ。

まぁ、驚くよね。俺もそう思ったもの。


 そしてみんなにもみくちゃにされるゴンタ。

水やらジャーキーやらも貢がれている。

ゴンタも嬉しそうだ。


 心強い仲間が戻ってきてくれたぞ!!


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