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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
アヘルカ連合国編
27/387

迎撃

27


翌日も快晴です。


「おはよう、ゴンタ、ミナモ」


わう

わふ


ゴンタ達と一緒に日課の訓練をこなします。

瞑想し海の中も探ってみましたが、船の周囲には大きな気配を感じられません。

海の中は気配を読みずらいような気がします。水があるだけなのに何か違うのでしょうか?ふむ。


まだ周りは船員さん達くらいしか動いていないようなので、錬成の訓練もします。

甲板で寝ていたのは俺達だけでした。まぁ当然かも。

いつもは夜にやっているのですが、今も時間があり人の目もなさそうなのでやりましょう。


練習用の素材として鉄のインゴットが両手で楽に持てる程度、布はマジックバッグに服が20着作れる程度入っています、薄い布と厚めの布の2種類で色はベージュっぽいものだけです。

フライパンを作ったり、剣を作ったりしています。料理道具は普通に使えますが、剣は実用した事がないのでどの程度の代物なのかは疑問です。

布ではパンツなどの小物を作ります。服は意外と難しいです。何度か作り着てみましたがシャツですと、腕を動かすと袖が突っ張ったりしました。

パンツは問題無く作れました。勿論男物ですよ?


サヒラにいた時に塩や料理道具を売ろうかなと考えましたが、トラブルの元とも思い止めておきました。

日本での社会人生活が行動の邪魔をしてくるのです。

出る杭は叩かれる。

こちらでも既得権益や商人同士の繋がり、国の特権などありそうです。

出所の怪しい代物は危険でしょう。

俺にそれらを跳ね除ける力があれば問題ないのですが……今の俺には無理そうです。

お金がどうしても必要となれば躊躇はしませんがね。


おっと人の気配です。

2人の船員さんが朝飯を持ってきてくれました。

あまり揺れてないとはいえ、汁物の入ったお盆を持ちながら器用に移動するもんだ。

ゴンタ達には生の魚ですね。数種類の魚がてんこ盛りです。

礼を言って受け取ります。


「いただきます」


わう

わふ


朝飯も夕飯も変わり映えしません。新鮮な魚というだけでも、ありがたいですけどね。

後で皿を返しにいかないとな。


日中変わった事といえば沖合で、大きな魚っぽい魔物が跳ね上がった事くらいでしょうか?こちらに気付きもしませんでした、眼中無しですかね。


夏の暑さが幾分やわらいだ夕方に事件は起こりました。


「敵襲!陸地より大きな鳥が接近中!」


2本あるマスト上の監視場から叫び声が聞こえた。たぶん後ろのマストからだ。

確かに大きなモノがこちらへ向かってきている。

やつの周りに比較物がないので、どのくらい大きいかは判らない。


船員の叫び声によって船内から弓をもった船員が20名ほど出て来た。

俺達がいるのは前の甲板なので、後ろの甲板にも船員が戦闘準備をしているのではないかな。


「戦闘員以外の乗客は船内へ!」


船員のだれかが叫んだ。

どうする?俺は遠距離攻撃なんてできないしな。と考えていたら、カッツォ達が甲板に出て来た。

遠距離攻撃のある者に戦闘要請があったのだろう。


「カッツォ!あれだよ」


俺は接近中のモノを指し示す。


「ストームバードやん!」


「ちっ、めんどくせーのが来やがったな」


「そうっすね」


「俺は後衛の守りをすればいいな?」


「おう。俺達近接は周囲の警戒と後衛の壁になるぞ!」


「「おう!」」


ストームバードっていうやつなのか。

カビーノ達が知っていたので、少しだけ安心した。

未知のモノではないからな。

俺も壁として働こう。

こっそりと鉄を全て使いカイトシールドを作った。

後でそんなもん持ってたんだなって突っ込まれるかもだが仕方ない。


俺達は弓の船員の後ろに陣を構える。主力はカッツォ、オルタンシア、ホルフィーナの後衛である。

邪魔にならない位置でオクタビオと俺が盾を構える。

カビーノとキニートは遊撃として周囲の警戒にあたっている。彼らは投げナイフを数本持っているようだ。

まだ弓も魔法も届く距離ではないのでヤツが近づくのを待つ。

こういう待ちの時間は恐怖を増幅しやがる、いっそ交戦状態に入ったほうがましだな。


「ストームバードは風魔法を使ってくるで!斬撃系や」


「「おう」」


魔法使ってくんのかよ、俺との相性最悪だな。

遠距離攻撃できないし魔法も防御できない、くそったれ。


でかい!羽を広げきったら船の全長に匹敵しそうだ。こんなの倒せるのかよ!


「撃てー!!」


船長らしき人物の号令により、船員達の弓から矢が放たれる。


「ウインドスラッシュ!」

「アースランス!」


オルタンシアとカッツォは事前に詠唱を合わせていたのだろう、魔法名だけ叫んだ。それとともに攻撃魔法がストームバードを襲う。

ホルフィーナの矢もストームバードに刺さったようだ。


数本の矢がストームバードに刺さっている、攻撃は効くようだ。


こちらの攻撃と前後して、ストームバードが風魔法を撃ってきていた。

俺は初の攻撃魔法に面食らったが後衛の前に立ち盾に身を隠す、バシュッと衝撃が来た。踏ん張って抑え込む。ズズッと体がずれる。

カッツォの攻撃魔法は今まで一撃で魔物を倒していたが、ストームバードは倒せていない。

前にいた船員が数名倒れている。船にも傷跡が残っている、これは不味いな。

ストームバードはマストを掠めるように飛び去り、旋回してまた襲ってきた。


「グッ!野郎め」


「大丈夫かトシ」


「問題ない」


2度目の突撃時に、俺は盾で守り切れなかった右肩に風魔法をくらってしまった。気を集中し治療に入る。

血はでているが、思ったより浅い傷だ。


ストームバードの突撃に合わせての攻防が数度続いたが、どちらも決め手に欠けていた。しかし船の損傷も考えるとこちらが不利か?

ヤツの動きは速く攻撃を当てるのすら難しい。


カッツォ達後衛とカビーノがなにやら相談している間も俺とオクタビオは壁を崩さない。

有効な手段があるのだろうか?


「俺とカッツォ、オルタンシアでマストに登りヤツを叩き落とす。追撃を頼むぞ」


「「「おう」」」


俺達以外の周りにいた船員も反応した。

カッツォ達の魔法を見て戦力だと判断してくれたのだろう。


詳しい事はいっていなかったが、落とせる算段が付いたのだろう。


ギシャァァッァァ


ストームバードが雄叫びとともに突っ込んでくる。

カビーノ達はどうするんだろうか?


おぉ!ストームバードの進行上に石の壁らしきものが出来た!カッツォだな。

オルタンシアも何かの魔法を使っていそうだ。

カビーノは護衛だったのかな。

石の壁に激突したストームバードはほぼ垂直に落下した!すげぇ!


船の真横に落ちたストームバードにホルフィーナや船員の矢が集中する。魔法も飛んでいる。


「撃ち方やめっ!」


ストームバードに矢が刺さりまくっているが、船長が攻撃停止を指示した。船長のかたわらには、いつの間にか降りてきていたカビーノがいた。

号令とともに矢が止まり、カビーノが船縁へ向かって走り出した。

大きく跳び大剣を振り上げている!


大きな水飛沫が上がった。

水飛沫が収まった後には首のないストームバードとカビーノがいた。


「「「「「おぉぉぉ!」」」」」


船から大きな歓声が上がる。

やった仕留めてくれた。カッコイイ!


「やったでー」


「おう、カッツォ、オルタンシアお疲れ様、叩き落とせたね!すごい」


「やろ?さすがうちらやで。にひひ」


「頑張った……」


上から降りてきていた、カッツォ達が言う。

そして、みんなから賞賛の声が挙がる。


「喜ぶのは後だ!船の修理にかかるぞ!あとヤツの死体も船で牽引して持ってくから綱を結んで来い」


船長が指示を飛ばす、さすが船長だ。


下ろした縄梯子からカビーノが上がって来た。


「よくやってくれた。さすがランク1だ」


船長がカビーノに向かって言う。そうかランクを明かして協力してもらったのか。

カビーノが橙色の魔石を船長に渡そうとする。


「ああ、それはあんたらの戦利品だ。文句は言わさせねぇ」


船長は男前であった。


「そうか、ありがたく頂いとくぜ」


カビーノがそう返す。


「喫水線まで傷はついてなかったが、船体が損傷してたぜ?」


「むう。仕方あるまい、問題は帆のほうだな2枚ともズタズタだ」


カビーノが海面から見た船体について船長にいうと、船長も帆を見上げながら言った。

確かに大きく破れていた。


「船長、船体の修理は今晩中には直せますが、帆のほうはなんとか1枚直せる分しか材料がありません」


「そうか……」


「あのー俺で良かったら帆の修繕しましょうか?」


困ってそうだったし、こんな危険な所にいつまでも足止めされたくない。俺はつい言ってしまった。


「できるのか?」


船長は訝しげに俺に向かって言う。


「マジックバッグに厚めの布が入ってますから、なんとかなると思います」


「むぅ……頼めるか?モラテコに着き次第金も払う」


「はい、準備があるので修繕は夜の間になります」


「それで問題ないのなら頼む。助手は何人いる?」


「あー俺と仲間たちだけで大丈夫です。船体の修理のほうに回してください」


「そうか……そうさせてもらう」


船長は本当にできるのか?と言った顔もしていたが、他に打つ手もないのだろう折り合いをつけたように言ってきた。

船長は現場の指示のため離れていった。


「オルタンシアはストームバードに何をしたの?」


「風を上から叩きつけた……」


「ほー」


「よくやったわね、さすがオル」


俺がオルタンシアに聞いていたら、ホルフィーナが割り込んできてオルタンシアに抱き付いている。妹大好きだな。


「カッツォ、ストームバードのほうを目で追っちゃったんだけど、あの石壁はどうなったの?」


「勿論落ちたんを確認してから消したでー」


「そっか、すごかったよカッツォ」


わうー

わふ


「さすがカビーノっす、すごい一撃だったっす」


「だな」


「おう!がはははは」


みんなで勝利を分かち合った。

俺も遠距離攻撃欲しいな。とも思った。


夜の間にマジックバッグを持ってマストを登った。錬成を見せたくないので俺一人である。

当然錬成の出番である。

夕方に帆だけ上に捲り上げておいてもらった。

恐る恐る帆の上部の梁を移動する。

思ったより怖い。暗くて下があまり見えないのは幸いである。

破れた個所に厚めの布をあてがい結合させる、不自然に見えないように布から糸で縫ってあるようにした。

ゆっくりマスト上部の監視場へ移動。

少し時間を潰してから、甲板に戻った。


船体の修理はまだやっているようだ。あっちも手伝ってもいいが、さすがに目立ってしまう。

修理が間に合えば時間は少し遅れそうだが明日モラテコ入りが出来るだろう。


昨日に比べて、忙しい一日だったな。


ゴンタ達とひと塊になって寝ました。

モラテコも楽しみだ。

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