出航
26
カビーノが昨日すでに予約をし、支払いもすませてくれていたため俺達はカビーノに一人当たり銀貨3枚を支払った。ゴンタとミナモの分も支払いは必要だったとの事で、その分も渡す。
通常は定期便の管理事務所で支払うそうだ。
管理事務所の横を通り抜け、桟橋へ向かう。
この辺りは遠浅な場所が多いため、船は横に広く浅い帆船です。大きな屋形船といった感じです。しかし脇にサイドカーのような船も付いていますね、そちらへは荷物を積んでいるようです。
乗船案内の船員さんに50人乗りだと説明を受けました。ここから3日目にモラテコのミナトへ着くらしいので寝起きする場所も必要ですから結構窮屈そうです。
朝夕に食事はでるそうです。昼は自分らで出さないといけません。
トイレは水面直に垂れ流しですか……少し抵抗があります。
案内された部屋は大部屋です。他には貴賓室が1つあるだけとの事。
俺達は女性もいるので、纏まっていたほうがいいでしょう。カビーノが扉から入ってそのまま突当りに陣取りました。50人も横になれるのか怪しい広さです。木窓が有り外の空気が入ってきます。
ここより少し狭い自由に動いてもいい甲板もあり、そこで寝ても構わないが落ちても知らんぞといってました。
乗船案内の船員さんが、この船には風精霊持ちの魔法使いが3人乗船していて、彼らが交代で帆に風を受けさせて船進ませると言っていた。
一応魔法船になるのかなぁ。
あと水が必要ならば船員さんに言えば貰えるようだ、水を出せるマジックアイテムがあるってさ、お高いだろうに。
「ここで丸2日も過ごすのか」
「こんなもんや」
俺が愚痴を漏らすとカッツォがあっさりと言う。
カッツォ自身、船は嫌いと言っていたが何度か乗っているのだろう。
甲板で海を眺めて過ごすのも限界があるだろう、どうやって過ごすかな……出航の時は甲板にいようかな。と考えていたら部屋を出ていこうとした案内の船員さんが、ゴンタとミナモは甲板でお願いしますと言ってきた。ぬう。
「おれもゴンタ達と一緒に甲板で寝ることにするよ」
「うちもそうしたいけど海の近くは気が進まんから堪忍な」
「そうか、海に落ちるなよー」
「あいよ。行こうゴンタ、ミナモ」
わう
わふ
みんなと離れ甲板にいく。
今日は天気いいけど、雨が降ったらどうすんのかね……。
甲板で寄りかかれる場所に陣取る。庇があるので日射病にならないですむかなぁ。
クッションがわりに毛皮の風呂敷を使う、少しは尻が保護されるだろう。
乗客が次々と乗船してくる。
船の側で管理事務所の人と船員さんが何か話をしている。
船員さんが乗船してきた、出航かな。
「出航です!船縁には近づかないでください」
船員さんが大きな声で叫ぶ。
船と桟橋を固定していた綱が外された。
桟橋から何人かの職員さんが人力で船を桟橋から押し出している。
船の上でも離れるための帆に風魔法を当てているようだ。
桟橋から離れた所で前へ進みだした。風魔法すごい。
沖には出ずに、ある程度海岸線に沿って航行するようだ。
波も穏やかなので揺れはほとんどない。
進行方向は北って事になるのかな。右手に陸地、左手が海です。
「魔法すごいね」
わう
ゴンタを撫でながら話しかける。
そういやこういう時間も久しぶりかも。ミナモもいるけど。
俺がゴンタを撫でていても、ミナモは嫌そうな顔をしている気がするな。独占欲が強いね。
そんなミナモを撫でるわけにもいくまい。今までも撫でさせてくれた事はないけどさ。
いつでもゴンタ達が水を飲めるように皿を出し水を注いでおく。
「水を出しておくね。トイレの時は俺を前足で叩いておくれ」
わう
俺はそう言ってから、ぼんやりと海を見ていた。
出航してしばらくは海を見ていた乗客たちも部屋へ向かっていった。
カビーノが言っていたように3つほど島が見えた。
島で海水浴をしたいね。
俺とゴンタ達は訓練をしたり、海を眺めたりして船旅を過ごしていた。
ミナモの気功術を観察していたら、気の集中はできるようになっていた。
これで怪我の対処もできるだろう。
そういやミナモは俺とゴンタとは違い魔力を持っているんだな。魔法を使えたりしないかなぁ、後でカッツォに聞いてみよう。
海の魔物の姿も見えず、危なげない航海です。
外海はとても危険と聞いていますが、浅い所には出てこれないのでしょうかね。
海鳥もいるようですが魔物なのかは判りません。とりあえず襲ってきてはいません。
夕飯までの間に、みんなが何度か甲板に来て話しをしていってくれました。大事な話ではなくただの雑談です。
夕飯はパンと焼き魚でした。美味いのですが、飽きてきましたね。
夕暮れは水平線に消えて行って、とても感傷的にさせられました。
夏の夜ですが、海風もあり問題なさそうです。
寝ている間に海に落ちないようにどこか固定しておいたほうがいいのかな、まぁいいか。
なにはともあれ順調です。
お休みなさい。