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生活

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 花ちゃんの屋敷の隣にログハウスが建ったのは二週間である。

俺、なっちゃん、アンドロメダの新居だ。と言っても夜しか使ってないけどね。

そう、俺がなっちゃん、アンドロメダに告白して二週間が経っている。

結婚を承諾してもらった二日後に、仲間うちだけの小さな結婚式を挙げた。

花ちゃんが夜なべをしてウェディングドレスを作ってくれた。

俺が地球での結婚式の話をしたら、なっちゃんがウェディングドレスを着たいと言ったからね。

ウッドスパイダーの糸で作った布地は絹の様な手触りと光沢を持った真っ白な物でした。

そんな布地で出来たウェディングドレス姿は二人とも綺麗でした。

なっちゃんは満面の笑みで、アンドロメダは少し恥ずかしそうでした。

なっちゃんは綺麗な金髪を肩先まで流し、真っ白なウェディングドレスを着て神々しさすら感じました。

聖女が降臨したかと思いました。

純粋さでは聖女に負けていないです。

アンドロメダは、なっちゃんより少し濃いめの金髪を腰まで伸ばしている。

アンドロメダはボインボインでウェディングドレス姿だと胸が強調されていて目が離せませんでした。

なっちゃんがジィッと見て来たので、ほどほどでやめましたがね。

だって怖かったんですもの。

俺は適当な黒スーツ姿でした。

こういう時の男なんてオマケなんですよ。

ウェディングケーキも作ったよ。

砂糖、牛乳、卵が自由に使える状態になってて良かった。

それほど大きいケーキではなかったが、みんなで食べても余る大きさだった。

……はずなんだけど軽くなくなった。

それどころか翌日に、また作らされた。

生クリームたっぷりのスポンジケーキ、苺のシンプルなケーキは大人気でしたとも。


 ゴンタには、なっちゃんから送話魔法で結婚の報告をした。

かっちゃん、なっちゃん、けーちゃんで送話魔法を改良した結果、距離の制限がなくなったのである。

屋外のみって制限は解除出来なかったがね。

ゴンタからの返事はもらい様がないので、お祝いの言葉は先になるだろう。

ちなみにゴンタは、まだ山で生活している。

こっち世界での神使の在り方を勉強しているらしい。

俺達から会いに行くべきだろうかと悩んでいる今日この頃。


 なっちゃん、アンドロメダは花ちゃんに、料理、家事、裁縫を習っていた。

花嫁さんが頑張っているのを見るのも楽しかった。

そんな俺は、地球の知識を思いつくままに紙に書き出した。

系統立てて書いていないので、後で整理しないと解り難いだろうなぁ。

かっちゃん、けーちゃん、アッツさん、サムといったケットシーにはお宝だろう。彼らの好奇心は留まる所を知らない。

そういう彼らが俺は大好きだ。


 かっちゃん、アリーナ、けーちゃんの三人は一週間前にバッキンの店に向かった。

新婚の俺に代わってバッキンの店の商品補充を頼んだ。

けーちゃんはバッキンへ行った事がなかったというので、楽しそうに引き受けてくれた。

ドーツ王国の博士の所へ直ぐに戻るのかと思ったが、花ちゃんのお菓子に餌付けされたのか、戻る様子を見せない。

俺達にとっては、頼りになる経験豊富な先輩なので助かっているけどね。

バッキンにいるビアンカ、デイジーへのお土産としてクッキー各種を渡したが、けーちゃんが食べないか心配だ。


「花ちゃん、今日はお好み焼きを作ろう」


「はい!山芋を入れるとお好み焼きはふんわりするんでしたよね?」


「おう」


「私は豚玉ー」


「私は肉全部入りが良い」


「任せろー」


「いえいえトシさんは食べる人ですよ。ほら、なっちゃん、アンドロメダ、旦那様のために作りますよー」


「うん!待っててね旦那様ー」


「旦那様……頑張ろう」


 旦那様かぁ……良い!良いぞ。


「おやつはコーヒーゼリーを冷やしたのが良いな」


「コーヒーゼリーですね」


「冷やすよー」


「私も冷やすぞ」


「おう!期待して待ってるぜ」


 そんなやり取りを後ろでウロウロして見ている雪乃。

食べるのは好きらしい。特に甘いお菓子。

でも料理は焼くだけ、煮るだけしか出来ないらしい。

花ちゃんの屋敷に来てからは、料理は花ちゃんにお任せでニートまっしぐらである。

良いご身分だ。


 そう言えば、尾白も花ちゃんに会いに来たな。

俺がロセ帝国とフリナス王国が秘密裡に軍事同盟を結んでドーツ王国を攻めていると教えたら、かなり喰いついて来た。

フリナス王国でも指折りの商会なので情報が欲しいのは当然だろうとは思う。

尾白はロセ帝国との軍事同盟も、ドーツ王国の村々を賊に扮したフリナス王国の兵が襲っていた事も知らなかった。

知っていたら秘密裡でも何でもないけどさ。

でも情報が漏れていないという事は国、軍として正しく機能している。

貴族は腐り気味なのに大したものだ。

上層部に切れ者でもいそうだ。

尾白にドーツ王国とフリナス王国の国境付近は物騒だと忠告しておいた。

尾白は少し考えた後で、ドーツ王国方面への商売は控えると言っていた。

代わりにイグルス帝国の事件の詳細を教えた。

帝都で今、物資が不足して特需が発生しているのも伝えた。

帝都が情報封鎖したので、詳細がフリナス王国へは伝わっていなかった。

蛇の道は蛇という様に、裏の世界や情報屋の一部は知っていたけどね。

元々、イグルス帝国は他国との付き合いはほとんどしていない。というかお互い敵と認識しているらしい。

フリナス王国の商人も余りイグルス帝国を相手に商売はしていなかった。

いたとしても旅の商人くらいであった。

だから、尾白に危険はあるかも知れないが大儲けの機会でもあると言っておいた。

尾白が、どう判断するかは解らないが、ドーツ王国方面へ向ける商隊がイグルス帝国へ向かいそうな気がする。

尾白に何かあったら花ちゃんが悲しむからとも言っておいたから、尾白自身が行かないとは思う。

花ちゃんが……のくだりで尾白が嬉しそうな顔をしていた。

俺がその顔を見ていたら咳払いをして慌てて顔を背けていた。

解りやすい奴だ。



 昼飯を食べた後で、俺は左腕の義手のギミックを改造した。

ミスリルの塊を『錬成』で状況に合わせてドリルや剣にしたり、盾にしたりも良いが、飛び道具を仕込みたいよね。

この世界で火薬を使った武器は発達していないが、火薬自体はあるのが確認出来ている。

弓か魔法で十分事足りる世界なのだ。

転落して来た人の中で銃のある時代の人はいたが、火薬の知識がなかったのか、危険なので広めなかったのかは定かではない。

俺も流れ弾が怖いし、狙撃なんかされたら堪らないので大っぴらに使うつもりはない。

対空大型兵器として大口径のライフリング付の砲身を内臓させた。

火薬も腕に仕込んで、指くらいの大きさの弾を十発入れてある。

弾薬までは作れなかったので別々だ。

弾切れでも腕のミスリルを使えば『錬成』で即座に弾が作れる。

誰かに見られて聞かれたら魔法だとでも言おうかな。

左腕を失った時の喪失感は凄かったが、ロマンのある武器のおかげで少しは持ち直した。

失ったのが足でも利き腕でもなかったのは幸いと言うべきかも知れない。

特に足を失っていたら、まともに戦えなくなっていたろう。

地形操作で大規模攻撃しか出来なそうだよね。


 地形操作……星の力と言えば、一日の睡眠時間が十二時間を超えた。

やはり、何かおかしい。

毎日自覚できるほどの違いは感じられないが、以前より間違いなく眠っている時間が増えている。

俺が寝ている間に、俺の体を操られてはいないのは、なっちゃん、アンドロメダに確認済みだ。

この先、ずっと眠り続ける様な事態になってしまうのだろうか?解らないが可能性はある。

俺の意思が働いているうちにやりたい事をやっておこう。

残せる物も残したい。

俺に出来る事か……。


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