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いせおち 《異世界転落物語 アカシャリーフ》  作者: 大和尚
アヘルカ連合国編
24/387

準備

24


「おはよう、ゴンタ、ミナモ」


わう

わふ


朝から仲良しだな君ら。

窓から明かりが差し込まれている。昨日のような暗さはない、晴れだ。

カッツォは、まだ夢の中のご様子。


「さぁ、日課の訓練を始めよう」


わうー

わふ


やるぞーってとこか。一緒に強くなろうな、先をいってはいけませんぞ。

柔軟体操の後、気功の訓練に入る。


ふぅぅぅぅぅ


カッツォは気功での攻撃は得意ではないと言っていたが、索敵と感知に関しては俺より上だ。感知で個人の特定も親しい人物なら判るそうだ。

最近、俺は瞑想しながら周囲の索敵をしていると、ぼんやり人の形が色付きで見える事がある、カッツォ曰くそれが特定できる要素らしい。確実性を上げたいものだ。

次は、体内で気を分散させ気配を薄くする訓練だ。小動物くらいの存在感しか判らなくなるようです。ゴンタとミナモが使いこなせたら狩りし放題だろうねぇ。


わう

わふ


「おはよーさん、ゴンタ、ミナモ、トシ」


「おはよう、カッツォ」


「今日は晴れとるようやな。旅の支度があるから良かったわ」


「そうだね。マジックバッグを買ったから、前より持っていける物多いね」


朝の挨拶をし、訓練を終わらせる。


「買い物以外ですることもあるやろ?」


「ん?挨拶とか?」


「冒険者ギルドのサブマスターが町出るとき手紙書くいうてたやん」


「アベルさんかぁ、そうだったね。忘れてたよ。俺の場合身分証明書として冒険者カードさえあればいいかなって思うんだけど、どうなんだろ?別にランク上げなくてもいいし」


「大きな町ではギルドへの移動連絡はいれたほうがええんやけど、トシのカードは普通に処理できんしなぁ」


「そこもアベルさんに聞いてみるか。期限切れみたいなのがなければ報告とかしたくないから移動連絡も入れずにすませたい」


「そか、トシがランクに拘ってないなら、ありなんちゃう?」


「だといいな」


今日の行動について話をした。

途中でダニエラが朝飯を持ってきたので、みんなで食べてから旅の準備に入った。

もっともゴンタとミナモは特にすることはないので、前日の憂さ晴らしも兼ねて森へ連れて行ってからの行動だ。


「じゃあ遊んでおいで。また夕方迎えにくるからね」


わうー

わふー


大森林入口まで一緒に行き、ゴンタ達に夕方まで遊んでいていいよと伝えた。

やはり嬉しそうだ。いってらっしゃい。


「さて町に戻って旅の準備だ」


「はいな」


ゴンタ達を見送ってから町へ足を向ける。

周りの畑では、忙しそうに働く人がちらほら見受けられる。


「せいがでますなぁ」


「ああ、畑仕事な。朝もはよから働かされてるのぅ」


「働いてるじゃないの?」


「あれは農奴やな。雇用主はのんびり朝飯なんじゃないんかの」


「農奴って奴隷!?」


「まぁ似たようなもんや。知らんかったんか」


「うん。俺達の世界ではすでに廃止されているからね。そうか、いるんだ奴隷……」


「サヒラは辺境やから、わりと大事に使われとるようやけど、酷い扱いの国や地域もあるで」


「そうなのか。だれでも奴隷にされる可能性はあるものなの?」


「それはあるやろ。犯罪奴隷なんかはマジックアイテムと闇魔法で厳重に管理されとる。一般奴隷や農奴なんかは普通の雇用と大差ないで」


「ほー。一般奴隷や農奴の扱いはまともなのか、少し安心した」


「借金が主な身売りの原因やね。たまに人攫いって例もあったようやが」


「ぬう。どこにでも闇はあるんだな」


「そやな」


「そういえば孤児院とかもあるのかな?」


「あるな。サヒラにもあったで。冒険者ギルドの区画と、職人区画にあったはずや」


「へー。都市で面倒を見てるの?」


「そうや。あと冒険者ギルドと職人ギルドも人材確保のため金を出してたかなぁ」


「健全な運営がされてそうで良かった」


「利益になるうちは大事にされるやろ」


「うん」


そうか、奴隷もいて孤児もいるのか。俺って表のほうしか見てなかったんだなぁ。俺に何ができるわけでもないけどさ。拠点も金もない。

カッツォと話したり、考えてこんでいたら町に着いていた。

冒険者ギルドのアベルさんに会いに行こう……。


「バルバラさん、アベルさんいますか?明日サヒラを出るんで挨拶に来ました」


「そうでしたか、少々お待ちください」


バルバラさんはそう言って奥へ向かっていった。アポ無しで来ちゃったしな。

数分でバルバラさんは戻って来た。


「アベルさんが会うそうです。こちらへどうぞ」


カウンターを出てバルバラさんが先導してくれる。


「あのー、今日はゴンタちゃんいないのですか?」


「ああ、今日は旅の準備をするのでゴンタ達には遊んでてもらっているんですよ」


「達?」


「こないだのオーク襲撃元調査に出て、ゴンタにお嫁さんが来たんです。だからゴンタ達です」


「お嫁さん!うぅ……私も会いたいですぅ」


案内の足を止められてしまった。仕方ない。


「夕方、森にゴンタ達を迎えに行った帰りにここに寄りますよ……」


「本当ですか!ありがとうございます」


先導を再開してくれた。

前にアベルさんと会った部屋だ。


「おう、来たか」


「アベルさん、ご無沙汰しております」


「まぁ、座ってくれ」


アベルさんは、俺とカッツォに座るよう促す。バルバラさんは一礼したあと部屋を出ていった。


「オーク襲撃と、やつらの村の発見で活躍したそうじゃないか?」


「俺だけの力じゃないですけどね」


「ふむ。で、明日サヒラを出るんだってな」


「はい」


「どこへ行くんだ?手紙が必要か?」


「アレゾルアを経由してバッキン教国かイチルア王国に向かう予定です。このギルドカードで身分証明さえできれば良いと考えているのですが……」


カードを机に置く。


「今後クエストはしないのか?」


「カッツォの手伝いってことでいこうかと思っています」


「ふむ……」


アベルは何か考えているようだ。まぁ身分証明書だけよこせなんて言われたらなあ。


「トシは魔力が無いんで見るもんが見ればすぐ変なやつってばれるやろうけど、なるべく秘密にしたいねん」


「そうか。まぁいいだろう。お前の身分を聞かれたら渡せる、俺に連絡をよこせと書いた手紙をやろう。俺の名前と冒険者ギルドの封蝋を付けてな」


「ええんか?」


「ふっ、身分を保証すると言質を取られるような書き方はしないさ。まぁ保険だな、手紙の存在自体で、ある程度の信頼はもらえるだろう。あと悪用すんなよ」


「勿論です。助かります」


「ついでだランク5にしといてやるよ。大活躍したお礼にな」


アベルは悪戯っぽく笑った後そういってくれた。


「いいんですか?」


「ああ権限もあるしな。トシオは今後まともにランクは上げられないだろうし、これくらいは問題ないさ」


「ありがとうございます」


「少し待ってろよ」


手をひらひら振ってカードを持ち部屋を出ていった。


「えらい扱いええな」


「本当だね」


「ありがたく受け取っとき」


「そうしとく」


「そういやカビーノが港に行くって言ってたけど、船でアレゾルアへ向かうの?」


「そや。と言ってもサヒラからアレゾルアへの直行便はないけどな」


少し嫌そうな顔でカッツォが言う。なんだろ。


「そうなの?」


「モラテコ、サヒラ、アレゾルアはモラテコを頂点とした潰れた三角形みたいな位置関係なんよ」


「あー、じゃあ陸路だとアレゾルアへ行けなくもないけど遠いのか」


「そやで。モラテコ経由してからアレゾルアやな。モラテコからは陸路か海路か判らんけどな」


「おー」


そうして俺とカッツォが旅の進路について話をしている間に、アベルが手紙と新しい冒険者カードを持って部屋に戻って来た。


「これを持っていけ」


「ありがたく頂いていきます」


俺はアベルから水色ラインの入ったランク5の冒険者カードと手紙を貰った。


「それじゃ、またな。無茶するなよ」


「はい、またいずれ」


「さいなら」


俺達は部屋を出た。


「ほな、買い物にいこか?」


「おう」



……。トシオ達が出て来た部屋で、アベルが独り言を呟いていた。


「貸しを作っとけってなぁ、本部長は何を企んでいるのやら」



俺達はそんな事は勿論知らず、食料や布をたくさん買って宿へ戻りましたとさ。


夕方にはゴンタ達を迎えに行き、帰りにギルドのバルバラへ別れの挨拶をしにいった。

最後にゴンタと戯れたかったようだが、ミナモに阻止されていた。ゴンタに俺とカッツォ以外が触れるのを許せないらしい。バルバラ含む受付嬢達は少し悔しそうに手を振って見送ってくれた。


仲良き事は美しきかな。なんちて。

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