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移動方法

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「《闘族》の奴らの船が近づいて来ている」


「来よったか」


「ああ、今夜暗くなってから上陸してくるよ」


「逃げんでくれて良かったなぁ」


「良かったー!」


「おう!」


 まだ日の高い時間帯に森の中で俺、かっちゃん、なっちゃんで待機している。

この森は《闘族》本隊の船の上陸予想地点から瞑想でギリギリ把握出来ない場所である。

俺の世界樹の力であいつらの位置が解るから《闘族》本隊が船から離れたら行動だ。


 奴らは順調に船で北上している。

このまま進んでくると今夜にイグルス帝国領に入るだろう。

最悪の状況は避けられそうだ。

逃げられて仕切り直しとなったら、安心して過ごせなくなる所だった。


「けーちゃん達の方はどうや?」


「俺達と同じように索敵範囲ギリギリで待機中だね」


「敵の数と船の数はあっちの方が多いんやろ?」


「うん。アンドロメダ達なら戦士団が帝都へ向かって動いたら問題なく船を沈められるさ」


「けーちゃんの火の魔法とアンドロメダの水、氷の魔法があるからなぁ」


「らくしょー!」


 楽勝と言えるほどではないと思うが、船を沈める事に関しては心配していない。

戦闘に関しては、けーちゃんがいるから何とかなると思う。

結界魔法を上手く使えば前線で固定砲台の様な働きが出来るから後衛のアンドロメダ、それを守るアリーナの安全も高まる。

戦い方は任せてあるので、どうなるかは解らないけどな。


「なっちゃん、けーちゃんに送話魔法で連絡を頼む。《闘族》本隊が今夜上陸しそうだと。計画続行ってね」


「はーい」


 軽い返事と共になっちゃんが魔法で連絡してくれている様だ。

屋外である事を距離に制限があるが便利な魔法だ。

あっちにも送話魔法が使えるけーちゃんがいるから、タイムラグがほとんどなしで話し合える。


「けーちゃんが、了解、良かったってさー」


「ありがとね」


「うん!」


 なっちゃんは素直で可愛いねぇ。


「冒険者ギルド本部の迎撃部隊は帝都近くの森に騎馬と共に待機しているね」


「周辺に多くの斥候は放っとるんやね」


「三十人以上の斥候が動き回っているよ」


「帝都に《闘族》が近づいた所で奇襲するつもりなんやろな」


「帝都に被害を及ばさないのと、逃がさない様にするのとで苦労しているみたいだ」


「うちらにとってもありがたい動きやな」


「《闘族》をここで仕留めるという点では一致している」


「がんばるよー!」


 俺達は情報を共有しつつ《闘族》、冒険者ギルド本部の動きを注視しつつ夜を待った。

もっとも夜の戦いになりそうなので、順番に昼寝をして夜に備えた。


 さすがに少し緊張している。

転移野郎や斧野郎に匹敵する幹部連中と古い情報しかない族長マグヌスが相手だからな。

ランク2くらいの強度までだが取り巻きが二十三名もいる。

非戦闘員を除いてこの数だ。

船の番人として数名は残るだろうが、単純に一対一で戦えそうにない。

土魔法の使い手が幹部も含めて三名もいる。

俺の地形操作による落とし穴も対応されてしまう可能性がある。

だが敵の数を減らすために使う事になるだろう。


 そして日が落ち森の木の間をぬって月明かりが差し込んで来た。

暗視が使えるのはかっちゃん、けーちゃん、アリーナだけだから月明かりはありがたい。

《闘族》本隊の船は……俺達が想定した上陸地点より少し東だが誤差の範囲内だ。

逃げずに来てくれたな。


「ちょっと東にずれたけど上陸してくるよ」


「来たんやな」


 かっちゃんは緊張していないね。平然としたものだ。


「けーちゃんに連絡する?」


「うん。《闘族》が上陸する。そっちの戦士も動きそうだと伝えて」


 アンドロメダ達のいる方の戦士団に合流した奴らの中で族長マグヌスから動くべき日時を知らされている奴がいた。

遠見の水晶や送話魔法のような連絡方法は持っていない様だった。

リアルタイムでの交信がないと解れば、各個撃破も出来るだろう。

俺、かっちゃん、なっちゃんで《闘族》本隊と戦うのはきびしい。

アンドロメダ達と合流して戦士団を先に叩いた方が良いのかも知れない。

《闘族》本隊と、冒険者ギルド本部の迎撃部隊が交戦したら、俺達も《闘族》本隊を襲いたい。

漁夫の利って奴だ。


「了解。気を付けろってさー」


「おう」


「トシ、もうちょっと離れんか?」


 かっちゃんが言ってきた。


「何かあった?」


「んー。何もないけど念のためかなぁ……」


 かっちゃんにしては煮え切らない態度だ。

でもかっちゃんはカンも良いからな。


「解った。移動しよう」


「はーい」


 俺達はスターインに乗り込み少し西へ移動した。

そして出入り口だけ地上に出した。


「けーちゃんからの連絡があるかも知れないから外に出ていよう」


「はいな」


「はーい」


 直ぐ移動出来る様に地中で待機しようかと思ったが、連絡が届かなくなったらアンドロメダ達を不安にさせてしまうだろう。

《闘族》本隊の船が陸地近くまで来ていた。

船を着けられる場所まで把握しているんだな。

船で海沿いの村や町を襲っているだけの事はある。

そう考えると海賊って言った方が近いのかも知れない。


 《闘族》の幹部連中が上陸した!

族長のマグヌスは確認出来ないが、幹部のログから伏字が見つかっているので同行しているのは間違いないと思う。

取り巻きは……十七人が上陸している。

船番は六人か。

ん、東に移動し始めたな。

北の帝都へ向かうんじゃないのか?

東っていうと港町があるな。

そこが目的地なのか?そんな話は出て来ていなかったが……むぅ。


「《闘族》幹部以外で十七人が上陸した。船番は六人だ。それで北の帝都方面ではなく東の港町の方へ移動し始めた」


「東かぁ……馬でも調達にいったんかな?」


 移動手段か。

船で逃げると言っても帝都との間の移動手段はいるよな……スターインを使ってばかりだから、考えから抜け落ちていた。

せっかく情報を手に入れられるのに、俺はマヌケだな……作戦そのものへの不安が増してきた。

仲間達の命も預かっているというのに、しっかりしろ!俺!!

俺は頬を両手で叩き気合を入れなおす。

《闘族》になったつもりで、どう動くか解っている情報を交えて考え直そう。


「かっちゃん、なっちゃん、聞いてくれ……」


 奴らの目的は転移野郎と斧野郎の骨を盗る事だ。

盗るのは帝都内部の貴族達の動きで牽制して侵入させている斥候集団と共に冒険者ギルド本部を襲うのだろう。

帝都への侵入は土の魔法で地下道を掘ってあるから、それを使うのだろう。

アンドロメダの方にいる戦士団は帝都内部の商家を襲うと言って誘っているな。

貴族の計画もあるから、だれの仕業か混乱するだろうな。

ここから帝都へ行くのに、歩いて行くと二十時間近く掛る。

転移魔法や飛行魔法がないのは確認済みだ。

帝都から逃げるのにも、ここから移動するのにも馬は必須か。

そして船で逃げる。

これらの考えを二人に聞いてもらった。


「特殊な移動方法がないんやから馬はいるなぁ」


「だよね……」


「トシ、大丈夫や!問題あらへん」


「大丈夫だよー」


「見落としがあって不安になっちゃってさ……」


「見落としはあいつらの移動方法だけやん。うちらの方が移動速度が速い以上なんの問題もあらへん」


「そうだよー」


「おう!」


 かっちゃん、なっちゃんの言葉を聞いて暗い気持ちが薄らいだ。

かっちゃんの言う通り、追撃に問題はない。

どう動かれても奴らが上陸したからには計画の半分は終わっていると言っても良い。

そう思ったら更に気が楽になった。


「船を沈めに行くよ!」


「はいな!」


「しずめるー!」


 《闘族》本隊がかなり移動したのを確認して、俺達も動くことにした。

アンドロメダ達に俺達が船を潰しに動く事を伝えた。

さてと、長い夜になりそうだな……。


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