名前
23
今日はキノーガルドに来て初めての雨だったのでした。
「これから図書館にいくけど、ゴンタ達はお留守番でいいかな?」
わぅ
わふ
さすがに一日部屋の中というのは嫌なのか悲しげです。
「ごめんな、我慢しておくれ。昼飯と水はここに置いとくね」
わぅ
ゴンタとミナモは宿でお留守番です。俺とカッツォは宿で厚い布地に油っぽいものを含ませた雨合羽を借りて図書館へ。
カウンターでお金を払い昨日と同じように調べます。
そしてようやく関係があるかもしれない本を見つけました。
バッキン教国の歴史書です。
これから判ったことは以下の通り。
これから向かおうとしているアレゾルアの先で内海を超えた所にある。
イチルア王国と隣接している国。
世界樹のあるエルフ領とも隣接している国。
元はイチルア王国であったが病気が流行し切り捨てられた地域だった。おそらく疫病であろうと思われる。
滅びかけた地域が国になった理由は、救済神と呼ばれ現在も崇められているモノが病気を治していったことによる。
切り捨てられたので怒った領主が独立を宣言。
切り捨てたイチルア王国も当時の民衆や一部貴族に強く批判された。結果として独立を認めざるを得なかった事。
その救済神の名前がヒミコである。
神様だったのかは判らないけど、治療されたものが手を握って感謝したとあったので実際にいた存在だろう。
俺の持っている錬成のように、ギフトで治療関係があれば可能かもしれない。
ヒミコって卑弥呼かなぁ。ヨシツネが、源義経であればあり得るかも。
ただ神様扱いなので、調べても粉飾されている可能性が高そうだ。通常の手段では真実にたどり着けるとは思えない。
俺の意見も交えてカッツォに報告した。
「確かに名前としては珍しいものや。ヒミコなんて聞いたことがないで」
「うん。いつ現れたとか足取りも追えそうにないし」
「そうか。そら難しそうやね」
「地球からキノーガルドに何人も紛れている可能性は出て来たね」
「どういう基準か知らんけど、そっちで有名な人物なんやろ?どっちも」
「歴史上の人物としての名前ならほとんどの人が知っていたね」
「おもろいなぁ」
「ギフトについても気になるね」
「そっちから来た人物は皆授かっとる件やろか?」
「うん、強力なギフトってのもあるけどさ。どういう経緯で持つことになったのやら」
「トシが前言ってたみたいに神様の関連を疑ってまうな」
「だよね」
「使徒や巫女から神様通じて聞けたらええんやけど」
「おぉ!その手があったか」
俺は日本育ちなので神様という存在にピンと来なかったので忘れていた。
こっちじゃ当たり前にいるらしいもんな。
「伝手のある巫女が捉まればええんやけどなぁ」
「神殿とかにいるもんじゃないの?」
「あの子はなぁ、旅行神の巫女なんよ……」
「旅に出てるって事か……」
「そうやねん」
「なんてこった」
「あとは行き当たりばったりで神殿向かうかやな」
「そうなるかぁ」
カッツォと相談した結果、一応の方針は決まったけど期待出来そうにない。
まだ時間はあるのでできるだけ本を調べていく。
昼飯は図書館の隣にある料理屋で買ってきておいた焼き鳥とパンだ。パンに切り込みをいれてサンドイッチにして食べた。
焼き鳥自体が美味かった。こうして売れば、もっと売れそうなのにね。
午後も調べ続けた。
途中で目が疲れたので、本から離れて錬成の検証もしていたり。
素材の集合体が何の事か解るのに結構かかった。
何だったかと言うと糸があれば布や服が作れる感じです。
確かにいままではできない事でした。
糸がなかったので実験では鉄線からワイヤーを作りました。間に絡ませるものがなかったのでワイヤーもどきでしたが。
たぶん砂鉄から鉄が作れるのではないでしょうか。
マジックバッグを手に入れたので鉄をもう少し買いたい所です。
イバンさんからは、もう買えないでしょうね……。
宿へ帰る途中に商人に聞いてみます。鉄欲しい。最悪鉄製品をインゴットにしてしまおうかな。
カッツォから召喚に関する魔法は見当たらなかったと報告があった。カッツォもお疲れのご様子。
テンプレじゃないのか。
カッツォの苦労に報いるため、お菓子を買いに行こうと提案したら元気を出してくれたようです。飴玉と蜂蜜パンを買って帰りました。鉄のほうは商人ギルドから職人ギルドへの販売しかしていないとのこと。イバンさんの名前は出せなくなった。
カッツォから買ったお菓子を、ちょっとだけ食べさせてもらいましたよ。甘いとだけいっときます。
宿に戻ったらカビーノ達は雨で退屈してたようで、エントランスでお茶を飲んでました。
その時に話をして明後日アレゾルアへ出発しようという事になりました。
明日からはアレゾルアへ向かう準備をしましょうかね。
知らない場所へ行くので、どきどきと不安が交互に頭をよぎります。
明日は雨が止んでいるといいなぁ。