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それぞれの楽しみ方

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 夜はデメトラお勧めの店で呑む事になった。

個室も取れたらしく、ゴンタ達も一緒で大丈夫と聞いて嬉しくなる。

店へ行こうという時間になるまで、俺はゴンタと遊んでいた。

遊んでいたというか『念動力』の練習でしたね。

魔鉄で作った玉は重くて動かせなかったので木片に変えて練習を始めました。

ゴンタの目の前で浮いている木片を見た時は、そうなると解っていても驚きました。

俺の『錬成』もそうだがギフトを使うのに何かを代償としている様子はない。

生命力や魔力が減るって事もないらしい。

神の贈り物とはいえ謎だ。

まさか寿命が減っているとか……嫌な想像にたどり着いてしまった。

便利なので気にせず使うけどな!


「トシさん、そろそろ店に行きますよー」


 デメトラから呑みに行くと言われた。


「ゴンタ、行こう」


わう


 デメトラが店を閉めた。

フェドラも一緒に呑みに行くらしい。

デメトラとフェドラはただの店主と店員という訳ではなさそうだ。

彼女達の後を着いていく俺達一行。


「そんなに大きい町ではないけど活気があるね」


「そうやな。ダンジョンのおかげやろなぁ」


 冒険者に商人、船乗りといった人々が通りを歩いている。

そして酒場から楽しげな声や怒声が聞こえてくる。


「ここです」


 デメトラが店を指し示し、そのまま中へ入った。

ほとんど木で出来た建物で、壁に漆喰を使っているのかな?白くて綺麗な壁だ。

食べ物を扱う店でこういう清潔感は良いね。

俺達もデメトラに続いて店に入る。

デメトラが店員と何かやり取りをした後で奥の個室へ向かう。

俺達全員が入っても余裕のある部屋だ。

部屋の天井は結構高く、壁には窓もあり窮屈には感じない。

テーブルや椅子は高級そうではないが頑丈そうだ。

みんな適当に席に着く。

ゴンタは俺の椅子の後ろに陣取った。

また『念動力』の練習を再開している。

新しい玩具を手に入れた子供みたいだね。

ミナモもゴンタの側で伏せてゴンタを見ている。


「先生から鑑定代としてお金をたっぷりもらいましたので、ここは私が持ちます」


「「おお」」


「ゴチになります!」


 デメトラが奢り宣言をしたので、大喜びをする俺達。

ここにいる誰も金には困っていないだろう。デメトラの気持ちが嬉しい。

因みに俺のかっちゃんへの借金はゴーレムの赤色魔石の売り上げで軽く消えた。

ヘビカメの赤色魔石はソフトボールほどの大きさがあり、通常の赤色魔石の十倍ほどで売れたそうだ。

売上総額で天光貨四十枚を超えそうだったので、半分しか買い取ってもらえなかったらしい。

アッツさん達と山分けにしても天光貨十枚の儲けが出た。

売れなかった分の赤色魔石はアッツさんが買い取ってくれた。

欲しがっている商人を知っているので任せろとの事。

デメトラへの鑑定代も持ってくれた。

俺達の資産は天光貨六枚以上の現金と大蛇から出た赤色魔石、その他の魔石が沢山ある。またオークションがあったら参加したいね。


 デメトラがガンガン注文してくれた料理と酒がテーブルを埋め尽くした。


「それでは再会と新たな力に乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


 デメトラが乾杯の挨拶をして宴が始まった。

ゴンタ達のために大量の肉も運ばれた。

ヤマトとミズホが嬉しそうに肉へ齧りついている。

噛みごたえがある肉の塊が好きなんだよな。

食欲も旺盛で見ているだけで気持ちが良い食いっぷりだ。

俺の好きな羊肉の串焼きもあった。

これをメインにタラモサラダをパンにこんもりと乗せて食べる。

白ワインも上等な代物だね。


「まぁ!氷の魔法ですか!?」


 デメトラの感嘆の声が聞こえた。

声の方を見ると、なっちゃんが葡萄ジュースの入ったカップを冷やしていた。


「うん。頑張って覚えたのー」


「お、覚えたんですか?」


「そうだよー。かっちゃんからコツを教わったのー」


「えっ!?」


 デメトラが混乱している様に見えた。

おそらく氷の魔法がギフト魔法だと思っていたからだな。常識ではそうなっているらしいからな。

複数人が覚えられたという事も驚くべき所なのだろう。

因みにアンドロメダとシーダもかっちゃんから教わっていたが習得には至っていない。

習得能力について、かっちゃんとなっちゃんがおかしいのだろう。


「ふっふっふー」


 アッツさんが不敵な笑いを漏らした。

そしてアッツさんもワインの入ったカップを冷やして見せた!アッツさんもおかしい側の人だった模様。

サムは何も言わなかったがカップを冷やして見せた。

うん、かっちゃんの一族はおかしいね。


「おっちゃんも習得出来たんやね」


「かっちゃんが出来て、わしが出来ん訳にはいかんやろ」


 アッツさんが妙なプライドを持っているのも解った。


「……」


 デメトラが口に両手を当てて絶句している。

俺にはこれがどれだけ異常な事か解らないが、魔法の根底というか常識が変わったというのは解った。

デメトラとなっちゃんの間にいるフェドラはなっちゃんからカップを冷やしてもらっている。

魔法使いにしか解らない驚きなんだろうね。

しかし、なっちゃんとフェドラは仲良さそうに見える。

髪飾りの売買でしか繋がりがないと思うが謎だ。

なっちゃんに関してはたまにこういう事があるなぁ。波長が合うって感じかね。


「ど、どういう事なんですか!先生!!」


 デメトラがアッツさんに詰め寄っている。


「ここだけの話やで?水の魔法が使えれば氷の魔法を習得できる可能性があるんや」


「……」


 またデメトラがフリーズした。


「かっちゃんのおかげで便利になったし、戦略の幅が広がったでー」


「ホンマや。かっちゃんにはいくら感謝しても足りんで」


 アッツさんとサムの言葉に照れているかっちゃん。

デメトラは放置かい、アッツさん。


「おっちゃんとサムには世話になったからなぁ。恩返しが出来たんなら嬉しいで」


「かっちゃん!」


「ええ子や……」


 サムとアッツさんは感動に震えている。


「と言うてもトシから原理を教えてもろたおかげや」


「そうやったな」


「トシ、おっちゃんとゆっくり話をしよかー?」


「そのうち時間が取れたら……」


 かっちゃんが俺に話を振る。

アッツさんから知識を寄越せと暗に言われました。

まぁ魔法自体は俺には無理だけどね。

かっちゃんと、アッツさん、サムは良い関係を築いているね。俺はワインを呑む。

周りを見るとアンドロメダも劇を見ている様に酒を片手にケットシー組を見ている。

アリーナはゴンタ一家にテーブルの食べ物を取ってやったり、皿に水を注いだり世話をしている。

本人が幸せそうなので良いだろう。

なっちゃんはフェドラに花ちゃんの話をしているね。購入した髪留めを誰にあげるのかって所から話が進んだのかな。

そしてデメトラは動きを止めている。


「氷の魔法はギフト魔法ではなかったのですか!?」


 あ、デメトラが戻ってきた。

美女なのに面白い人だ。ちょっと親近感が湧いた。


「そういうこっちゃ」


「水の魔法から派生する上位魔法って所やな」


 かっちゃん、アッツさんが答えた。

へー、氷の魔法はそういうモノだったのか。

水の温度変化って意味ならそうなのかも。

熱湯魔法とかも使い道がありそうね……対人戦には有効な気がする。

適当に思いついただけだが使えそうだ。

水の魔法は攻撃力が足りないから、良い使い方が見つかったのではないかな?今度かっちゃんに教えてみよう……ってお湯なら、お風呂で使っているはずだな。まぁ話だけでもしてみるか。


「水の魔法……上位……」


 デメトラがブツブツ言っている。

白衣を着て知的な彼女のイメージが段々崩れていく。

残念さすら漂ってきた。

アッツさんは相変わらずデメトラをスルーしてかっちゃん達を話をしている。

昔からこんな扱いだったのだろうか?可哀想なデメトラ。


「風の魔法には上位魔法はないのでしょうか!?」


 みんながワインのおかわりをして宝珠の話で盛り上がっているとデメトラが復活してきた。

みんなビクッとしてからデメトラを見た。

残念な人だ……美女だけど。


「トシ、どうなん?」


 かっちゃん、俺に振らないでもらいたかったよ!

ほら、デメトラがグリンッと首を俺の方に向けて来たじゃないか。


「ない事もないけど、人が簡単に死にそうだからなぁ」


「面白そうな話をしてるやん」


 あぁ、アッツさんも乗ってきた。

この人達の好奇心を甘く見ていた。

風の魔法の話だからか、なっちゃんも俺の隣に来た。

なっちゃん、無言で俺の袖をクイクイ引っ張るのを止めなさい!

魔法使い組が俺に集まったので興味を持ったのかエディ達戦士組も集まってきた……暑苦しいです。

男はいらない。


 洞窟や坑道での酸欠の話を例にして、酸素や二酸化炭素の話をした。

これが広まると俺も対応出来ないから、ここだけの話と釘を刺したが大丈夫だろうか……不安だ。

戦士組は理解に苦しんでいたが、そういう危険もあるって事だけは伝わった。

かっちゃんの理解は早く、既になっちゃんへ噛み砕いて説明している。

俺の説明より上だ……どんな頭の構造をしているのやら。

アッツさんとサム、デメトラ、アンドロメダもかっちゃんに質問を繰り返している所を見るとかっちゃんが特別なんだろう。


 途中から俺は用無しになったので、ワインを片手にゴンタの練習に付き合った。

既に魔鉄の鉄球を動かせるようになっていたのには驚いた。

これは即戦力かも知れない。


「ゴンタ、いずれ自分も持ち上げられるかもな」


わう!?


「空も飛べるかもよー?」


わうー!!


がうー

ばうー


 俺の適当な発言を聞いたゴンタは大興奮だ。

しばらくゴンタの興奮状態が続いた。

でも空を飛べる可能性もあると思うんだ。

なんせ『念動力』を使っても生命力が減ったりしないんだもの。

ずっと浮かせる事も出来るはず。


 宴はフェドラを含めた戦士組の呑み会と魔法使い組の魔法講習会、ゴンタの練習会へと変貌していた。

それぞれが楽しそうだったので良しとしよう。

エディがフェドラにぶん殴られていたのは見なかった事にした。

おそらくセクハラをしたんだろう。

デメトラにもあんな事をしたに違いない。

オディロンやクァンタンが大笑いして場が和んだのが救いだな。

フェドラも、それ以上怒ったりはしていなかった。

欲望に忠実というか、あけっぴろげなエディがちょっとだけ羨ましかったりする俺でした。


 新たな出会いとパーティの強化も出来た。

綺麗な海から始まった一日は良い一日でした。


修正。

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