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「トシ、うちはおっちゃんと赤色魔石を売ってくるわ」


「あいよ」


「おっちゃんは遺跡の報告もあるから遅くなるで」


「ごゆっくりー」


 俺が返事をすると、かっちゃんはアッツさんとサムの所へ行った。

ケットシーが三人もいるなんて注目の的だな。

遺跡を出た俺達が通りを歩いていると通行人からの視線が集まる。

ゴンタ一家に、ラミアのアンドロメダ、はち切れんばかりの筋肉を持つエディとマルク、イケメンのオディロンと注目を集める要素満載だ。

なっちゃんも目立ってはいるが、狼の被り物で顔が見えないのでそれほどでもない。

俺とアリーナはここでも凡人っぽさが際立つ……アリーナは男装の麗人に見えなくもないから特殊な人に人気はあるかも知れない。

俺は身長が高いわけでもガタイが良いわけでもない。鎧は付けているが珍しくもない。

精々みんなの荷物持ちくらいとしか思われていない。

そこで安心してしまうのは俺が小心者だからだろう。


 かっちゃん、アッツさん、サムの三人が俺達に手を振って冒険者ギルドの方へ歩いて行った。


「俺達は呑むか!」


 エディが提案してきた。

まだおやつの時間だが悪くない。そう思う俺も冒険者に染まって来たな。


「「おう」」


 オディロンとクァンタンがエディに返事をした。


「うむ。仕事の後は呑まないとな」


「そうですね!儲かりましたし呑むべきでしょう」


 アンドロメダとアリーナも呑む気満々だ。


わう


「ん?ゴンタ達には肉をたっぷり持ってくよ」


 酒に興味のないゴンタには肉をあげよう。


わうー


 ゴンタへの答えは肉で正解だった模様。ゴンタの尻尾がブンブン振られている。


「トシちゃん、遠見の水晶はー?」


 なっちゃんが俺のズボンをクイクイと引っ張り聞いてくる。


「ごめん、まだ改造してないんだ。呑む前に改造するね」


「うん!」


 なっちゃんは花ちゃんの事が気になっていそうだ。

宝珠の鑑定が終わり次第、花ちゃんの屋敷に帰ろう。


「後ねー、帰りに世界樹に寄って欲しいのー」


「どんな御用かな?」


 俺はなっちゃんの口から世界樹という単語が出て来てドキッとした。

世界樹といえばエルフの領域だからな。

なっちゃんもエルフなので気にせずにはいられない。


「魔法の職業が変わるらしいのー」


「かっちゃんがそう言ってた?」


「うん」


「かっちゃんでも変更出来ないの?」


「かっちゃん自身も変わりそうって言ってたのー」


「そっか。それじゃ帰り道に寄ろうね」


「うん!」


 なるほど、世界樹で職業変更か。

本当のご両親に会いたいとかじゃなかったね。

アリーナの戦士は俺が追加してやったが、俺に魔法職はないから追加してあげられない。

かっちゃんとなっちゃん二人とも職業が変わるのか……何で解ったのかな?ステータスのスキル値が上がったのかね。

かっちゃんが上級職になる条件を知っていれば、それだろう。

俺達のパーティも激戦を続けて強くなっているから他のメンバーも変化があるかもな。

ちょうど良いか。


「俺は一仕事あるから、みんな先に呑んでいてよ」


 宿に着いた俺はみんなに言う。


「おう」


 そしてエディ達と別れた。


「トシ、何の仕事だ?」


 部屋で荷物を置いたアンドロメダが俺に聞いてくる。


「遠見の水晶の改造をやろうと思ってね。なっちゃんにマントを作るんだ。花ちゃんの方は花ちゃんに台座の座布団でも作ってもらうさ」


「ほう。それは良いな」


「ええ」


「だから二人はゴンタ達に肉を持って行った後で呑んでいてよ」


「はい」


「よかろう。肉はたっぷりだったな」


 アンドロメダは俺とゴンタの話を聞いていたらしい。


「おう。頼むぜ」


 そして部屋には俺となっちゃんの二人になった。

俺は遠見の水晶、綿、蜘蛛の銀糸で作った布、ブラッドベアの毛皮をマジックバッグから取り出しては机に置いていく。

なっちゃんはニコニコしながら期待に満ちた目で見ている。

正面から見られると照れる。

布を草から抽出した染料で染めるところまでは出来ている。

マジックバッグには染めるのを失敗した布が入っている。

ムラが出てしまって何度かやり直したのです。何かに使えるだろ。

ブラッドベアの毛皮をベースにする。

『錬成』でマントの形にする。

綿を平たくして乗せる。

その上に染色済みの布を乗せて『錬成』で布と毛皮と結合させる。

中の綿が偏らないようにマントの中心から上下左右へと布と毛皮を結合させた。

うん。こんなもんだろ。

魔鉄で板を二枚作り、遠見の水晶の上下に当てる。上下の鉄板を魔鉄の棒で繋ぎ遠見の水晶を固定する。

俺に美的センスがないと解ったね。そのうちセンスある人の監修で直すさ。

マントを留める首の下辺りに遠見の水晶が来るようにする。

マントの毛皮と布を加工して遠見の水晶を固定する。

着脱用のフックも付けた。

ちょっと着てみる。

肩が動かしにくかったので、ちょっと修正。

魔鉄の部分が胸に当たって痛いので、綿と布の厚みを増やす。

魔鉄のせいで少し重くなったが、なっちゃんなら大丈夫だろう。

遠見の水晶からは三方向が見えるはずだ。

よし!中々の出来栄え。


「なっちゃん、着てみてよ」


「はーい」


 俺はなっちゃんに着脱の仕方を教える。


「えへへー」


 なっちゃんがマントを着けてからクルッと回った。

おー!似合う。金髪と緑のマントのコラボは悪くないぞ。狼の被り物を着けちゃうから普段は地味になるけどね。


「似合うぞ、なっちゃん」


「えへへー」


 なっちゃんが更にクルクル回ってマントの裾をフワフワさせている。

膝下までマントがいっていたので、少し短く修正した。

歩きづらそうだからね。


「トシちゃんの手作りー」


「おう」


 なっちゃんはとても嬉しそうだ。

作った甲斐があったね。


「俺達も食堂へ行こうか?」


「うん!」


「あー、食堂でマントはおかしいと思うよ?」


 なっちゃんがマントを着けたまま行こうとしたので注意する。


「えー!みんなに見せるのー」


「それは今度ね……」


「うぅ……」


「ほら、これから暗くなってくるし、明るい時にお披露目した方が格好良いよ?」


 なっちゃんの涙目と上目づかいに負けそうだが頑張る。


「そ、そうかな?」


「そうだよ。食事で汚しても何だしさ」


「……そうする」


 なっちゃんは残念そうにマントを脱いでいる。

何とか説得出来た。

マントか……これから本格的に暑くなってくるのでマントはどうかとも思ったが、なっちゃんの氷の魔法で何とかしてくれるだろう。

他力本願な俺であった。


 俺となっちゃんも食堂へ行き、呑み食いを始めた。

かっちゃん達はまだ戻ってきていなかった。

俺はギルスア王国に来てから羊肉が大好きになった。日本にいた時はジンギスカンでしか食べた事がなかったが美味い。

独特の臭みを抑えるハーブや香辛料が羊肉を美味しく食べさせてくれる。

串焼きという簡単な調理法でありながら飽きない。

バッキンと同じ様にオリーブオイルとトマトを使う料理も多い。

アリーナは肉団子とトマトのパスタがお気に入りで、毎回の様に注文している。

某お姫様と泥棒の話に出てきたパスタに似ている。

クルクル巻き取っての取り合いとかしてみたい。

まぁもう一皿注文しちゃうんだけどな。

レタスと魚の燻製、トマトにオリーブオイルを掛けたサラダなんかも、この店では定番だ。

トマトは酸味が強いが魚の燻製の旨味と塩辛さ、オリーブオイルのまろやかさが合わさると丁度良い。


「戻ったでー」


「かっちゃん、お帰りー」


「お帰り」


 かっちゃん達が戻ってきた。

アッツさんとサムは少しお疲れの様だ。

かっちゃんの後ろで静かなままです。


 部屋に荷物を置いたかっちゃん達も食堂で食べ始めた。


「赤色魔石の換金は無事に終わりましたか?」


 アリーナがかっちゃんに聞いている。


「換金自体は直ぐに終わったんやけど、何から取ったかで話が大きくなってなぁ」


 ゴーレムの集団を倒した事で騒ぎになったのか。


「わしらはギルドの支部長や国の関係者に囲まれてしもうて、参ったで」


「ホンマやで……」


 アッツさんとサムがお疲れだった理由が解った。

面倒を押し付けたようで、申し訳ない。

エディ、大笑いするなよ。

オディロンとクァンタンはご愁傷様と言った様子。

マルクとガストンは話を聞いているものの呑む手を止めない。


「話は纏まったの?」


 俺は心配になったのでアッツさんに聞く。この村に足止めされても困る。


「奴らは焦っとったが、わしらの知ったこっちゃないわ」


「遺跡の攻略が終わったからなぁ」


 アッツさんとサムが言う。

そうか……遺跡から出てくる物を目当てに人が集まって出来た村だしな。

ダンジョンの様に継続して稼げるわけでもないもんな。

焦りもするか。

地下九階のアンデッド部屋も一掃してきちゃったしな。

隠し部屋や見つけていないお宝もあるかも知れないが、たかが知れているだろう。

アッツさんの言うように俺達の知ったことではないがね。

村自体は良い立地に出来ているから存続は出来るに違いない。

ラミアの里とギルスア王国の首都との間にあるし、魔物もかなり退治されている。

平地だから農業も出来る。

海へも遠くない。

大きな町になるかもな。


「明日は休みにするとして、明後日からは、わしの知り合いを訪ねに行くで!」


「はいな」


 アッツさんがほろ酔いで、ご機嫌になって言う。

かっちゃんもニコニコして返事をしている。


「目的地はどこですか?」


「ここから東にある島や」


「島かいな……」


 かっちゃんが船旅を想像したのか嫌そうな顔をした。


「かっちゃんも仲間と一緒なんや、そろそろ船旅嫌いを治さんとな?」


「海に落ちたら結界魔法が利かんからなぁ……」


「泳げるようにはなったんやろ?」


「そらそうやけど、何か苦手なまんまや」


 アッツさんとかっちゃんの話になってしまった。

どのくらいの日数が掛るかも聞きたかったが、着いて行くだけなので良いかと思い直す。

ゴンタを筆頭として俺には頼りになる仲間達がいる。

そして経験豊富なアッツさんのパーティも一緒だから心強い。

また見知らぬ土地へ行けるのかと思うとワクワクする。

危険も少ないので尚更だ。


 今度は何が待っているのかな!


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