宴会
14
ようやく状況も伝わって来た。
300ものオークにオークロード1、オークナイト5からなる襲撃だったそうだ。
この規模の襲撃は10年ほど前まで遡らないとないそうだ。
あれでオークキングはいなかったのか。
オークロードを倒したのは宿で見かけた、熊の獣人カビーノさんだった。
強そうだったもんなカビーノさん。
騎士団もオークナイト2匹を倒してからこちらへ来たそうだ。
あーあー、ここら一帯踏み荒らされてしまったな。
ここの農民に見舞金くらい出るのを祈っておこう。
なむ。
座って辺りを見ながらゴンタを撫でている俺だった。
なでなで
カッツォはケビンさんの所にいっている。
後始末の指示かな、凄まじい光景だものねぇ……。
こちら側の人的被害がなかったとも思えない。
少し気が重くなる。
「この子撫でたい……」
俺の肩を、ちょんっと指でつつかれた。と思ったら女の子に声を掛けられた。
よく見たら、宿でカビーノさんと一緒にいた若い子だ。
「ゴンタを撫でたいってさ?いいかい?」
わぅ
「いいってさ。どうぞ」
返答を聞いて少しだけ嬉しそうな顔になった。無口系無表情かっ!
でも笑った方がかわいいね。
ポニテなら元気っ子だと思い込んでたぜ。
「ありがとう…」
そういって近づきしゃがみ込む。
ローブ姿だから素敵なモノは拝めないね。
ゆっくり手を伸ばし、撫で始める。
なでりなでり
犬と美少女……イイッ絵になるな。
周りの殺伐さが少しだけ薄れた気がするね。
「みんな、お疲れさん!犠牲は出たが、オークの集団を殲滅することに成功した」
「「おう」」
「オークロードは《赤い旋風》のカビーノが仕留めてくれた。もうすぐ荷馬車が到着する、それにオークの死体を積み込んでくれ」
「「おう」」
「その後はこいつらを肴に、ぱーっといくぞ!」
「「「「「おぉーっ」」」」」
豚っぽいし食えるのだろう。他の人型魔物は食えたもんじゃなかったが。
酒もだしてくれるんだろうな。
解っているな冒険者ギルド!人の使い方がうまい。
「とりあえず、オークの死体を周りからここに集めてくれ。以上」
「「「おう」」」
みんなが動き出す。俺達もいくか。
ってお嬢さんお話聞いていましたか?ガン無視ですか?
なでりなでり
「お嬢さん、もういいだろ?俺達もオークの死体ここに運こばにゃならんのだ」
首だけ動かして、俺を見上げる。
かわええ。
「お嬢さんじゃない……オルタンシア」
「お、おう。俺はトシ、その子はゴンタな」
「ゴンタ……」
なでりなでり
わぅ
「オルタンシア、撫でるの終わり!」
「残念……」
「同じ宿にいるんだから、また会うこともあるさ。なぁゴンタ」
わう
「……そうだったの」
ようやく撫でるのをやめてくれた。
「じゃあの」
俺達は、その場を離れた。
オルタンシアは、ゴンタに小さく手を振っている。
「人気モノも大変だな。ゴンタ」
わぅ……
歩きながら話しかける。
カッツォも来た。
一番離れたとこから集めてこようかねぇ。
もう一仕事だ!
オークの死体を全て集めて荷馬車に積み込み終わった頃には13時を過ぎていた。
終わったところで、緊急クエストの支払いがされた。銀貨5枚づつだ。
何か所か火が起こされ、鉄板で焼肉が始まった。
いい匂いだ。豚の脂がはじける音も響く。
腹も空いているぞ。宴だーっ!
荷馬車に積んできたのか、食器や酒もある。
地べたに直接座り込んで、各々飲み食いを始める。
俺達も参加だ。
なぜかゴンタのとなりにピトッとオルタンシアが張り付いている。
懐かれたねぇ……。
オルタンシアが来たせいか、《赤い旋風》のパーティメンバーも同じ所で宴に参加している。
「おう!うちのオルが迷惑かけてるみたいだな」
「いいええ。ゴンタは可愛いですから」
カビーノさんが話掛けてきた。
俺も親馬鹿まるだしで返答する。
「カビーノ大活躍したそうやな」
「おぉ!?カッツォじゃねぇか。お前こっちに来てたのか」
「せやで。大森林に潜っとったんよ」
「ほう。なんか収穫はあったかよ?」
「こいつらやな。海沿いで見つけてん」
「なんじゃそら。がはははは!」
カッツォとカビーノは知り合いらしい。
話し方もざっくばらんだ。
オーク肉を食べる。
脂がうまい、塩だけだがいけるね。
臭みは気になるほどではない。
野菜は申し訳程度しか焼いてないな。
あ、でもトウモロコシっぽいのがあるな。あとで食べよう。
酒はエールだ、相変わらずぬるい。
大勢の中の1人に埋もれての宴会は嫌いではない。
なにも気にせず好き勝手食えるしな。
「ゴンタ、お肉……」
わう
オルタンシアがゴンタの餌付けに入ってる!
まぁいいか、ゴンタも嫌がってはいなそうだ。
「隣いいかしら?」
うひょ。綺麗な女性だ。って他に2人の男もいるな……。
上がったテンションが下がる。
「どうぞ」
3人が近くに座ってくる。
「うちのオルがご迷惑をお掛けしています。私はあの子の姉のホルフィーナです」
「オルがすまんね。俺はオクタビオだ」
「キニートっす」
「トシオです。こちらこそよろしくお願いします。《赤い旋風》の方たちですよね?」
「そうですけど、知ってたんですか?」
3人が順番に挨拶してくれた。
いい人達っぽい。
ホルフィーナは、オルタンシアをそのまま大きくした感じの綺麗なおねーちゃんだ。
オクタビオは鉄の胸当てをして壁になりそうな戦士かな。
キニートは小麦亭で見かけた普通っぽい青年だ。
「ええ。何日か前に小麦亭のエントランスでお茶を飲んでいるのをお見かけしました。その時カビーノさんがいましたので」
「あら、小麦亭のお客さんだったのね」
「そういや見かけたっす」
「そうなのか」
「オクタがホルと買い物にでていた時に見かけたっす」
「あの時か」
俺達3人は《赤い旋風》の人達と3グループに分かれて話をする事になったようだ。
先輩パーティの話が聞けるな。
「オークロードはカビーノさんが倒したそうですね。すごいです」
「そうっす!すごかったっす。マイケルさんが抑えていたところとはいえ、1撃目で剣を弾き飛ばし、2撃目で腹を裂き、止めに首を切り飛ばしてたっす!」
「見てみたかったです。カビーノさんが、あの大剣を振り回している所を」
「ですよねっ。あれはシビレますよ」
残りの2人は苦笑している。
キニートさんは、いつもこの調子なんだろう。
「うちのカッツォとカビーノさんは知り合いなんですか」
「ああ、そうだな。俺達と遺跡の探索で一緒に行動した事もあるしな」
オクタビオさんが返事をしてくれる。
しっかりした兄さんといった感じだ。
「そうねー。あの時も大変だったわね。帰り道でワイバーン3匹に追っかけられたし」
「思い出させないで欲しいっす……」
「ワイバーン3匹ですか!」
「そうよー。1匹ならまだしも3匹が連続で襲ってくるから、逃げるので精一杯よ」
やってらんなかったわという様に手でジェスチャーするホルフィーナさん。
「被害無しで切り抜けたんですか?」
「おう、軽傷ですんだぜ。町に報告して討伐隊に参加し、やり返してやったがな。」
「おぉー!そこんとこ詳しく聞きたいです」
「そうか!いいぞ」
オクタビオさんがノリノリで解説してくれたよ。
ホルフィーナさんも笑顔で相手してくれたし。
キニートさんはカビーノさん大好きってのは、よく解った。たぶん危ないほうじゃない。
俺が冒険の話を聞いている間、隣でオルタンシアがゴンタを撫で続けていた。ハゲないか心配だ。
カッツォとカビーノさんの周りには名の有る方々が集い盛り上がっていた。
ケビンさんやマイケルさんもいたね。
夕方まで宴会は続いた。
みんなで後片付けをして町へ戻った。
被害も出たが、みんなこういうのは乗り越えてきているのだろう。
今を楽しんでいるって気がする。
意気投合した俺達は、小麦亭に戻って宴会の続きをしたがね。
楽しかった。
未知の冒険が俺達にも待っているかと想像が膨らむ。
自分が死ぬのは怖いけどさ。
ちなみにカビーノがランク1、ホルフィーナとオクタビオがランク2、オルタンシアとキニートがランク3だったよ。
《赤い旋風》メンバーや俺達には別途褒賞を与えられるそうだ。
ケビンからカッツォが聞いていた。
明日そろっていこうという話になった。
《赤い旋風》メンバーと別れ、風呂に入りベッドへ飛び込んだ。
おっと、ステータス見とくか。
<サトウ・トシオ>
・71
・ポーター・バーサーカー・バトラー・オーラマスター
・錬成2
・ポーター
スキル運搬3体術3
・バーサーカー
スキル棒術3体術3内臓強化2制限解除2狂化1
・バトラー
スキル格闘3体術3軽功2
・オーラマスター
スキル気功術3体術3瞑想2
・錬成2
このレベルでは非生物が対象。
分離と結合が可能で結果として素材か、素材作成時の変形が可能。
強度が71に上がっている、後は制限解除2と軽功2が上がっているな。
制限解除ってのは人間にかかっているリミッターを一時的に自分である程度はずせる。
軽功はダッシュや壁走りなどの行動に補正が掛ってくれて、速くなったり吸い付いたりって感じだ。
体術も上がらないかなぁ。
さて寝るかね、お休みなさい。
今日はよく眠れそうです……。
Zzz。