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「ドーツ王国の鉱山が襲われたのだ」


 宴会の翌日にみんなでグロッシュラーの店を訪ねた。

賊として動いているラミアの情報を得るためである。

そしてグロッシュラーの口から出て来た話は、既にヒミコから聞いた話であった。


「知っているようだな。襲われた鉱山から掘り出されていた鉱物が全て無くなっていたそうだ」


「ふむ」


「前回と今回の鉱山襲撃で盗られた鉱物はミスリルとアダマンタイトだ」


「希少鉱物か……それが狙いかな?」


「鉄も残さずにもっていっているが、わしらはそう睨んでおる」


「でもミスリルやアダマンタイトの製錬や加工が出来る者は限られているんだろ?」


「そうなんじゃ。わしらドワーフ以外だと数えるほどしかおらん」


 グロッシュラーは言い切る。その顔は自信に溢れていて誇らしげだ。

グロッシュラーが言うならそうなんだろう。

希少鉱物を盗む理由か……武器防具を作るためだろうか?そのまま売るってのもあり得るが表だって売ることは難しい。俺が鉄を買うのですら難しかったからね。

国が関わっていれば売れるだろうけど、それなら自分の国で武器や防具を作って作った方が価値があるだろう。

だから賊は自分達で武器屋防具を作ろうとしていると考えられる。

つまり賊は希少鉱物の製錬や加工する当てがあるって事だ。

いやヒミコは鍛冶師も狙っているかもと言っていたな……鍛冶師の事も聞くべきだな。


「グロッシュラー、賊は自分達で希少鉱物で武器屋防具を作ろうとしていると思う。鍛冶師も狙われている可能性がある。誰か加工が出来る鍛冶師がいなくなっていないか?」


「ドワーフで加工出来る者は大丈夫だ。それ以外は解らんな」


「そうか……襲われないように注意した方が良い」


「ああ、ジェダイトに話しておこう」


 領主が関わってくれれば鍛冶師を守れるだろう。

ドワーフの鍛冶師については心配しないで済む。

後は……希少鉱物の掘れる鉱山を教えてもらえるかなだな。

次も賊は希少鉱物を狙って来るだろうから、俺達もそこで網を張りたい。


「俺達は賊を追おうと思っている。次に狙われそうな鉱山に心当たりはないか?」


「ふむ……」


 あまり考えるそぶりを見せないドワーフのグロッシュラーが考え込んでいる。

希少鉱物の掘れる鉱山をリストアップしているのか、俺達に教えて良い物かを悩んでいるのかは解らない。

これについては俺達が恩人だとかは問題にならない事だ。

鍛冶関係はドワーフにとって生命線といっても良いだろうからな。


「心当たりはあるが、こればかりはお前達にでも教えられぬ」


 グロッシュラーが重い口調で俺達に言う。

心当たりはあるのか。

教えてもらえないのは仕方ない。

アンドロメダとシーダがグロッシュラーに詰め寄ろうとしているのをかっちゃんが止めている。

かっちゃんも教えてもらえないのは当然と考えているのだな。

さて……どうするか。


「ドワーフ領以外の鉱山なら教えてくれるんか?」


「いやダメだ。そういう契約だからな」


 かっちゃんが訪ねるが、あっさり断られる。


「後はわしらに任せておけ。ドワーフの鍛冶師が狙われる可能性は高いだろう。ならば領主が動く」


「解った。領主への報告はしっかりしてくれよ」


「おう」


 そして俺達はグロッシュラーとの話を終えた。

俺達と一緒に店を出たグロッシュラーは領主の屋敷へ向かった。

俺達は意気消沈して宿へ戻った。


「トシ、どうするん?取り敢えずドーツ王国へ行くか?」


 宿の部屋で座り込んだ中で、かっちゃんが言う。


「そうだなぁ……まずはドワーフの動きを追おう。アリーナ、領主の屋敷を張ってくれ。軍が動くとは思えないが賊討伐へ人を差し向ける可能性がある。それを追跡しよう」


「解りました!」


「かっちゃんも一緒に行ってくれ。現場での判断がいる場合はかっちゃんに指示に従え」


「はいな」


「はい」


 かっちゃんとアリーナが了承してくれる。


「俺達はいつでも動けるようにして待機だ」


「うん」


「ドーツ王国でも賊討伐に動いているだろう。ドーツ王国の冒険者ギルドにクエストがあったら受けようか」


「ついでやな」


「かっちゃん、アリーナ、早速動いてくれ」


「はいな」


「行って来ます」


 かっちゃんと、アリーナが部屋を出て行った。


「トシはここの領主に貸しがあるのだろう?直接頼めないのか?」


 アンドロメダが俺に問う。


「いくら俺が恩人でも、鍛冶関係では譲らないさ」


「むぅ」


「かっちゃんと、アリーナを待ちましょ」


 シーダがアンドロメダを落ち着かせる。

彼女らは良い関係だ。上手くお互いの足りない所を補っている。

アンドロメダが考えて部隊を率い、シーダがムードメーカーで人間関係の調整をする。

ずっとこうやって来たのだろうな。


 部屋に残った俺達は情報のすり合わせと、考えられる展開について話し合った。

アンドロメダからは焦りを感じた。シーダも隠しているが焦っているようだ。

ラミアの賊の事が関係しているのは解るがここまで必死になる理由か……やはりラミアの賊は彼女達に親しい間柄なのではないかと思う。

何となくラミアの賊について聞きにくい、アンドロメダとシーダが話してこないからかな。


「トシちゃん、追跡って山でするんだよね?」


 なっちゃんが俺に聞いてくる。何だろう?


「たぶんそうなる。どうしたんだい?」


「あのねー、かっちゃんと作った魔法が役に立つと思うのー」


「お、どんな魔法?」


「離れている人に言葉を届ける魔法なのー」


 携帯電話みたいなもんか!?凄いじゃん。

ギルド間での通信で、そういうマジックアイテムが活躍しているとは聞いていた。

現在の魔法技術では作れないとも聞いていた。


「なっちゃん、それは凄い魔法だよ!」


「えへへー。でもね離れすぎるとダメなの。どちらかの人が家の中に居てもダメなのー。私が知らない人にも無理ー」


 そういう制限はあるのか……でも山の中では使えそうだな。


「今回の追跡では出番がありそうだね。かっちゃんも使えるの?」


「ううん。風の精霊に言葉を届けてもらっているから、かっちゃんは無理なのー」


「そっか。なっちゃんは凄いねー」


「照れるー」


 俺が素直に褒めるので、なっちゃんは顔を両手で挟みクネクネダンスを踊って照れている。

かっちゃん直伝か……可愛いからいいけどさ。


「本当に凄いよ。例えば今かっちゃんに帰って来てといえば帰って来てくれそうだもんな」


「うん。便利ー」


 俺達の行動の幅を広げてくれる素晴らしい魔法だ。

どうもなっちゃんからの一方通行な会話らしいが十分だ。


 俺達はかっちゃん、アリーナの報告を待った。



「動いたで!」


 そろそろ夕飯かという頃にかっちゃんが宿の部屋に戻って来た。


「思ったより早く動いたね」


「旅装で荷物を持ったドワーフの戦士っぽいのが十一人や。領主の屋敷から出て行ったで」


「アリーナが追跡しているのか?」


「そうや」


「なっちゃん、さっき教えてもらった魔法でアリーナに戦士達が向かった方向だけ解ったら宿に戻るように言ってくれ」


「はーい」


 なっちゃんは返事をした後で、何やらブツブツ言っていたが聞き取れなかった。


 俺達は纏めてあった荷物を持ち宿の前でアリーナの帰りを待った。

宿の代金がもったいないけど仕方ない。

俺は貧乏性だなぁとつくづく思う。


 ジリジリした気持ちでアリーナを待つ俺達。

やはり待つのは性に合わない。ジッとしているより動く方が好きだ。


「お待たせしました。彼らは北の山へ向かっています」


 しばらくしてアリーナが宿へ戻って来て報告してくれた。

その彼女は嬉しそうな顔をしていた。みんなの役に立ったのが嬉しいのではないだろうか?戦闘で役に立たないと嘆いていたからな。


「行くぞ!」


 俺達は戦士達の後を追って町を出た。

ゴンタ抜きでも索敵能力の高い俺達だ、離れて追うのも問題はない。


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